ジュリー・マス(Julie Massè)(米)

2018年2月24日掲載。

ワンポイント: 2015年7月(33歳?)、研究公正局が、ジュリー・マス(Julie Massè)の出版前の投稿論文にデータねつ造・改ざんがあったと発表した。締め出し期間は2年間。フランスのレンヌⅠ大学(Université de Rennes I)で研究博士号(PhD)を取得し、ペンシルベニア州立大学医科大学院(Pennsylvania State University College of Medicine)のポスドクになっていた。医師ではない。推定だが、2014年秋(32歳?)、ボスのダグラス・ステアーズ助教授(Douglas Stairs)がデータねつ造・改ざんに気が付いて大学に通報した。損害額の総額(推定)は1億8千万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

ジュリー・マス(Julie Massè、顔写真見つからない)は女性で、フランスのレンヌⅠ大学(Université de Rennes I)で研究博士号(PhD)を2012年(30歳?)に取得し、米国のペンシルベニア州立大学医科大学院(Pennsylvania State University College of Medicine)のポスドクになった。医師ではない。専門はがん細胞の生化学だった。

2014年(32歳?)、ネカト論文を学術誌に投稿。

2014年秋(32歳?)、推定だが、ボスのダグラス・ステアーズ助教授が論文原稿のデータねつ造・改ざんに気が付いて大学に通報した。

2014年10月(32歳?)、ペンシルベニア州立大学医科大学院を退職。

2015年7月(33歳?)、研究公正局がネカトと発表した。締め出し期間は標準の3年間より1年短い2年間を科した。

ペンシルベニア州立大学医科大学院(Pennsylvania State University College of Medicine)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:フランス
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:フランスのレンヌⅠ大学(Université de Rennes I)
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1982年1月1日生まれとする。2004年の大学卒業時を22歳とした
  • 現在の年齢:36 歳?
  • 分野:がん細胞の生化学
  • 最初の不正論文投稿:2014年(32歳?)
  • 発覚年:2014年(32歳?)
  • 発覚時地位:ペンシルベニア州立大学医科大学院(Pennsylvania State University College of Medicine)・ポスドク
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は、ボスのダグラス・ステアーズ助教授(Douglas Stairs)で、大学に通報した。
  • ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ペンシルベニア州立大学医科大学院・調査委員会。②研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)。
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文原稿数: 1論文原稿
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 損害額:総額(推定)は1億8千万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が2年間=4千万円。③院生の損害は②に含めた。④外部研究費の額は不明で、額は②に含めた。。⑤調査経費(大学と研究公正局と学術誌出版局)が5千万円。⑥裁判経費なし。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。撤回論文なしなので、損害額はゼロ円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分: ポスドク解雇。NIHから 2年間の締め出し処分

●2.【経歴と経過】

出典:(2) Julie Massé | LinkedIn

  • 生年月日:不明。仮に1982年1月1日生まれとする。2004年の大学卒業時を22歳とした
  • 2003-2004年(21-22歳?):フランスのレンヌⅠ大学(Université de Rennes I)で学士号取得:生化学
  • 2004-2006年(22-24歳?):同大学で修士号取得:生化学
  • 2006-2012年(24-30歳?):同大学で研究博士号(PhD)コースの院生。研究博士号(PhD)取得
  • 2012年4月(30歳?):米国のペンシルベニア州立大学医科大学院(Pennsylvania State University College of Medicine)でポスドク:生化学
  • 2014年(32歳?):ネカト論文を学術誌に投稿。ネカトと発覚
  • 2014年秋(32歳?):ペンシルベニア州立大学医科大学院がネカトと結論した(推定)
  • 2014年10月(32歳?):ペンシルベニア州立大学医科大学院を退職
  • 2015年7月(33歳?):研究公正局がネカトと発表した

●5.【不正発覚の経緯と内容】

ジュリー・マス(Julie Massè)はフランスのレンヌⅠ大学(Université de Rennes I)で学部・修士・博士を過ごし、2012年(30歳?)、イザベル・ペレリン教授(Isabelle Pellerin、写真出典https://fondation.univ-rennes1.fr/temoignage/isabelle-pellerin )の研究室で、研究博士号(PhD)を取得した。

2012年4月(30歳?)、米国、ペンシルベニア州立大学医科大学院(Pennsylvania State University College of Medicine)のポスドクになった。

研究室のボスはダグラス・ステアーズ助教授(Douglas Stairs、写真出典https://profiles.psu.edu/profiles/display/112870)で、食道下部の細胞が食道がんになる状態のバレット食道(Barrett’s esophagus)を研究していた。

【ねつ造・改ざんの具体例】

研究公正局が問題視した論文は、「Molecular Cancer Research」論文原稿である。

発覚の経緯は不明だが、論文原稿なので、ネカト告発者は共同研究者しかありえない。2014年(30歳?)、研究室のボスのステアーズ助教授がデータねつ造・改ざんに気が付き、大学に通報したのだろう(推定)。

★「Molecular Cancer Research」論文原稿

2014年に投稿した「Molecular Cancer Research」論文原稿のタイトルは以下の通りである。共著者は不明だ。

Cellular invasion following p120-catenin loss is mediated by AP-1, ITGA2 and MMP11

研究公正局が指摘したねつ造・改ざんは、図2、 3、S1、S2のウェスターンブロット画像、定量的PCRデータ、細胞侵入データ、細胞移動データとあるが、論文原稿なので、第三者はこれ以上知ることができない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年2月23日現在、パブメド(PubMed)で、ジュリー・マス(Julie Massè)の論文を「Julie Massè [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2009~2016年の8年間の6論文がヒットした。

2018年2月23日現在、Julie Massè [Author] AND retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、撤回論文はなかった

★パブピア(PubPeer)

2018年2月23日現在、「パブピア(PubPeer)」はジュリー・マス(Julie Massè)の論文にコメントしていない:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》大学院・研究初期のネカト

白楽は、院生の論文原稿でのネカトを研究公正局レベルの事件にしてしまうのは、指導教員がおかしいと思う。ヘレン・フリーマン(Helen C. Freeman)(米)の記事の【白楽の感想】にその思いを具体的に書いた。そちらを読んでほしい。

一方、院生の時にネカト行為を見つけて、早々と研究界から排除するシステムは優れていると思う。グズグズしていると、知識・スキル・経験が積まれ、なかなか発覚しにくくなるし、ネカト行為の影響が大きくなり、被害が大きくなる。

《2》投稿論文のネカト

出版前の投稿論文のネカトが事件報道されるケースは珍しい。しかしいくつか見つかってきた。

  1. 2014年5月29日、研究公正局が発表したヘレン・フリーマン(Helen C. Freeman)(米) | 研究倫理(ネカト)
  2. 2017年11月27日、研究公正局が発表したマハンドゥーナウト・チェットラム(Mahandranauth Chetram)(米) | 研究倫理(ネカト)
  3. 2017年12月8日、研究公正局が発表したマシュー・エンド(Matthew M. Endo)(米) | 研究倫理(ネカト)

そして今回、2015年7月、研究公正局が発表したジュリー・マス(Julie Massè)事件である。

《3》特許はどうなる?

2015年3月13日、ジュリー・マス(Julie Massè)とダグラス・ステアーズ助教授(Douglas Stairs)が発明者で、特許「バレット食道の段階を診断する組成と方法(Compositions and Methods for Diagnosing Barrett’s Esophagus Stages)」が申請された。
→ Compositions and Methods for Diagnosing Barrett’s Esophagus Stages — Research at Penn State
→ ココ

ジュリー・マス(Julie Massè)はデータねつ造・改ざんで、2014年10月に研究室を去っている。特許申請日(2015年3月13日)は、事件発覚後である。事件発覚後に特許申請するのもどうかと思うが、ねつ造・改ざんデータが特許に記載されているに違いない。どうするのだろうか?

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●8.【主要情報源】

① 研究公正局の報告:(1)2015年8月11日:NOT-OD-15-142: Findings of Research Misconduct、(2)2015年7月30日:http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2015-07-31/pdf/2015-18756.pdf
② 2015年7月27日のアリソン・マクック(Alison McCook)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事: Penn State postdoc faked data in cancer manuscript – Retraction Watch at Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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