2016年11月8日掲載。
ワンポイント:2015年に1論文、2016年に2論文が盗用行為で撤回されたが、未だに、盗用と判定されていないアズサ・パシフィック大学の30代男性・助教授。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
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●1.【概略】
クリストファー・コリンズ(Christopher S. Collins、写真出典)は、米国・カリフォルニア州のアズサ・パシフィック大学(Azusa Pacific University)・助教授で、専門は高等教育学である。
2015年5月(35歳?)、他人の論文の文章を引用せずに使用し、1論文が撤回された。アズサ・パシフィック大学は、この行為を盗用とせず、「間違い」とした。
2016年10月(36歳?)、同様に、他人の論文の文章を引用せずに使用し、今度は、2論文が撤回された。
今度は、アズサ・パシフィック大学は、盗用と判定するのか、今度も「間違い」とするのか?
それにしても、高等教育学を専門とする大学・助教授が盗用行為とは。
- 国:米国
- 成長国:米国
- 研究博士号(PhD)取得:カリフォルニア大学ロサンゼルス校
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1980年1月1日とする。2002年の大学卒業時を22歳とした
- 現在の年齢:44 歳?
- 分野:高等教育学
- 最初の不正論文発表:2011年(31歳?)
- 発覚年:2014年(34歳?)
- 発覚時地位:アズサ・パシフィック大学・助教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は盗用ハンターのマイケル・ドハティ哲学教授らしい。学術誌「Higher Education」に公益通報したと推定される
- ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌出版局。②アズサ・パシフィック大学・調査委員会
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 不正:盗用行為だが、「間違い」と認定
- 不正論文数:3論文が撤回
- 時期:研究キャリアの初期から
- 研究費:不明
- 結末:辞職なし
●2.【経歴と経過】
- 生年月日:不明。仮に1980年1月1日とする。2002年の大学卒業時を22歳とした
- 2002年(22歳?):米国・カリフォルニア州のペパーダイン大学(Pepperdine University)を卒業。専攻:社会学
- 2005年(25歳?):米国のオクラホマ・クリスチャン大学(Oklahoma Christian University)で修士号取得。専攻:聖職
- 2006年(26歳?):米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)で修士号取得。専攻:高等教育と機構改革
- 2009年(29歳?):米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)で研究博士号(PhD)取得。専攻:高等教育と機構改革
- 2011-2013年(31-33歳?):米国のハワイ大学マノア校(University of Hawaii at Mānoa)・助教授
- 2013年(33歳?):米国・カリフォルニア州のアズサ・パシフィック大学(Azusa Pacific University)・助教授
- 2014年11月(34歳?):1つの論文の盗用行為が発覚し、翌年、論文撤回されたが、盗用ではなく「間違い」と認定された
- 2016年10月28日(36歳?):さらに2つの論文の盗用行為が発覚し、論文撤回された。盗用と認定されるのだろうか?
●3.【動画】
【動画1】
大学のスタッフ紹介動画:「Meet the Faculty: Christopher S. Collins, Ph.D.」(英語)50秒。
Azusa Pacific Universityが2014/10/22 に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★2015年5月、1つ目。「間違えて引用せずに使用」し論文撤回
2014年11月(34歳?)、学術誌「Higher Education」の編集者がコリンズの「2014年のHigher Education」 論文の文章が他人の論文の文章と酷似していることを、コリンズに伝えた。
第一次追及者は、盗用ハンターのオハイオ・ドミニカン大学のマイケル・ドハティ哲学教授(Michael Dougherty、写真出典)かもしれない。
2015年1月(35歳?)、学術誌「Higher Education」の編集者は、論文撤回することをコリンズに伝えた。
クリストファー・コリンズは、撤回監視の質問に対して、状況を説明している(次の文章)。
retraction-watch-response-from-chris-collins
2015年5月(35歳?)、クリストファー・コリンズ単著の「2014年のHigher Education」 論文が撤回された。理由は、2012年の学会で発表された他人の論文の文章を間違えて引用せずに使用してしまったためだ。
- Can funding for university partnerships between Africa and the US contribute to social development and poverty reduction?
Christopher S. Collins
Higher Education, December 2014, Volume 68, Issue 6, pp 943-958
引用せずに使用した部分が撤回公告に記載されている(Retraction Note to: Can funding for university partnerships between Africa and the US contribute to social development and poverty reduction? | SpringerLink)。
使用した部分は、論文の最初の3ページ(ページ943-945)である。被使用された原典は、2011年のFelly Chiteng Kotの発表論文 “Factors Associated with International Partnership Engagement: Results of a Survey of Two African Universities”、 さらに、2011年のKotのミネソタ大学の博士論文“Factors Associated with Partnership Experiences, Attitudes, and Perceptions: A Comparative Case Study of Two African Universities”と、その博士論文を2011年に出版した論文の文章である。
★2016年10月28日、2つ目。「間違えて引用せずに使用」し論文撤回
2016年10月28日(36歳?)、「2013年のJournal of Asian Public Policy」論文が、「間違えて引用せずに使用」した文章が含まれていた理由で撤回された(撤回公告)。
- Collins, C. S., 2013. A higher education learning profile in the Asia-Pacific.
Journal of Asian Public Policy , 6 (3), 247-262.
doi.10.1080/17516234.2013.850220
★2016年10月、3つ目。「間違えて引用せずに使用」し論文撤回
2016年10月(36歳?)、「2011年のExcellence in Higher Education」論文が、「間違えて引用せずに使用」した文章が含まれていた理由で撤回された。撤回公告:Retraction Note to: “Global Assessment in the World Bank Education Strategy 2020” | Collins | Excellence in Higher Education
●7.【白楽の感想】
《1》「間違い」じゃなく、「間違い」なく盗用でしょう
1回目の論文は、「間違えて引用せずに使用(was mistakenly used in the Introduction without proper reference to the original source)」とある。
白楽から見れば、というか、一般的に、この行為は、明白な盗用に思える。しかし、本人はもちろん、学術誌もコリンズが所属するアズサ・パシフィック大学も「間違い」で押し通した。
しかし、2回目、3回目となると、どう見てもコリンズは連続盗用者としか思えない。
本記事では示していないが、酷似部分の文章を併記すれば、誰の目から見ても盗用が明白になると思える。
アズサ・パシフィック大学はどう決断するのでしょう?
●8.【主要情報源】
① 2016年10月26日のシャノン・パラス(Shannon Palus)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Can you plagiarize by mistake? In three papers? – Retraction Watch at Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。