ジェイソン・リリー(Jason W. Lilly)(米)

2018年8月21日掲載

ワンポイント:13年前の2005年6月7日(31歳?)、研究公正局は、コーネル大学のボイス・トンプソン研究所(Boyce Thompson Institute)・ポスドクのリリーの1論文にデータねつ造・改ざんがあったと発表した。2年間の締め出し処分を科した。研究室のボスであるデビッド・スターン教授(David Stern)が見つけ、告発したと思われる。国民の損害額(推定)は2億6600万円。

ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
ーーーーーーー

●1.【概略】

ジェイソン・リリー(Jason W. Lilly、写真出典)は、米国・コーネル大学のボイス・トンプソン研究所(Boyce Thompson Institute)・ポスドクだった。医師ではない。専門は植物学(クラミドモナスの細胞遺伝学)である。

2005年6月7日(31歳?)、研究公正局は、リリーの1論文にデータねつ造・改ざんがあったと発表した。2005年3月4日から2年間の締め出し処分を科した。ネカト発覚の経緯は不明だが、研究室のボスであるデビッド・スターン教授(David Stern)が見つけ、告発したと思われる。

2018年8月20日(44歳?)現在、ジェイソン・リリー(Jason W. Lilly)は学術界にいない。

コーネル大学のボイス・トンプソン研究所(Boyce Thompson Institute)。写真:By Unidyne7Own work, CC BY-SA 3.0, Link

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ウィスコンシン大学マディソン校
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1974年1月1日生まれとする。2001年に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした。
  • 現在の年齢:44 歳?
  • 分野:植物学
  • 最初の不正:2002年(28歳?)
  • 発覚年:2003年(29歳?)
  • 発覚時地位:コーネル大学のボイス・トンプソン研究所・ポスドク
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は研究室のボスであるデビッド・スターン教授(David Stern)と思われる。
  • ステップ2(メディア):
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①コーネル大学のボイス・トンプソン研究所・調査委員会。②研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:データねつ造・改ざん
  • 不正論文数: 1報の論文撤回
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 職:事件後に発覚時の地位をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分: NIHから2年間の締め出し処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億6600万円。内訳 ↓

  • ①研究者になるまで5千万円。
  • ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費・施設費など)は年間4500万円。2年間で損害額は9000万円。
  • ③外部研究費。2001年と2002年にNIHから613万円の奨学金を受給していた。奨学金は給与なので②に含めた。
  • ④調査経費。第一次追及者の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円、研究公正局など公的機関は1件200万円。学術出版局は1件の学術誌あたり100万円とした。小計で1,600万円
  • ⑤裁判経費は2千万円。裁判ないので損害額は0円。
  • ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。共著者がいる撤回論文が1報なので損害額は1,000万円。
  • ⑦研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
  • ⑧健康被害:不明なので損害額は0円とした。

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1974年1月1日生まれとする。2001年に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした。
  • 19xx年(xx歳):ミシガン州立大学(Michigan State University)で学士号取得:農学
  • 2001年(27歳?):ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin, Madison)で研究博士号(PhD)を取得。指導教授はジミン・ジアン教授(Jiming Jiang、写真出典
  • 2001年(27歳?):NIH奨学金でコーネル大学のボイス・トンプソン研究所(Boyce Thompson Institute)・ポスドク。ボスはデビッド・スターン教授(David Stern)
  • 2002年8月(28歳?):米国植物学会・若手ベスト論文賞(Young Scientist’s Best Plant Biology Paper-of-the-Year Award)・受賞
  • 2002年11月(28歳?):後で問題になる「2002年のPlant Cell」論文を出版
  • 2003年(29歳?)(推定):経緯は不明だが、ネカトが発覚した
  • 2004年(30歳?)(推定):ボイス・トンプソン研究所(Boyce Thompson Institute)を辞職
  • 2005年6月7日(31歳?):研究公正局がネカトでクロと発表。締め出し期間は2年間

●5.【不正発覚の経緯と内容】

クラミドモナス。出典:By Dartmouth Electron Microscope Facility, Dartmouth College [Public domain], via Wikimedia Commons

★NIH研究費

ジェイソン・リリー(Jason W. Lilly)は、NIH奨学金でコーネル大学のボイス・トンプソン研究所(Boyce Thompson Institute)のポスドクになった。

NIH奨学金として、NIH・国立一般医科学研究所(NIGMS)から2001年に番号「1 F32GM064276-01」で34,832ドル(約348万円)、2002年に「5 F32GM064276-02」で26,469ドル(約265万円)、計約613万円の奨学金を受給した。

研究課題は「クラミドモナスの細胞遺伝学的分析(Cytogenomic analysis of Chlamydomonas ReinhardtII)」だった。

★ネカトの経緯

ネカト事件の詳細は不明である。ネカト行為を犯した状況、発覚の経緯、ネカトの具体的内容、処分、処分のその後、どれも不明である。

2003年(29歳?)、経緯は不明だが、ネカトが発覚した。後述するように、研究室のボスであるデビッド・スターン教授(David Stern)が見つけ、告発したと思われる。

2004年(30歳?)、コーネル大学のボイス・トンプソン研究所・調査委員会は、ジェイソン・リリー(Jason W. Lilly)がネカトでクロと判定し、研究公正局に伝えた。

2005年6月7日(31歳?)、研究公正局は、ジェイソン・リリー(Jason W. Lilly)の1論文(「2002年のPlant Cell」論文)にネカトがあったと発表した。締め出し期間として2005年3月4日から2年間を科した。

ネカトは発表された論文のデータねつ造・改ざんだが、第三者がその不正行為を見つけるのは困難である。研究室のボスであるデビッド・スターン教授(David Stern、写真)が見つけ、告発したと思われる。

★「2002年のPlant Cell」論文

ジェイソン・リリーはこの論文の図1、図4、図5、でねつ造・改ざんを行なった。

【図1】
上記論文の図1(以下に示す)のRNAブロット画像で、2つの異なる遺伝子(psbF and PsaG)のコントロール16Sに同じ画像を使用した。つまり、ねつ造である。

【図4】
図4は実験を3回行ないその平均値だと記載したが、実際は、実験を1回しか行なっていなかった。つまり、改ざんである。

以下に図4を示すが、図を見ても、どの部分が改ざんなのかわからない。

【図5】
さらに、以下の図5で、実験を2回行なったと記載したが、実際は、実験を1回しか行なっていなかった。つまり、改ざんである。こちらも、図5を見ても、どの部分が改ざんなのかわからない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年8月20日現在、パブメド(PubMed)で、ジェイソン・リリー(Jason W. Lilly)の論文を「Jason W. Lilly [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002年の1年間の3論文がヒットした。

「Lilly JW[Author]」で検索すると、2000~2002年の3年間の9論文と2012年の1論文、計10論文がヒットした。2012年の1論文は本記事で問題にしている研究者の論文ではないと思われる。

2018年8月20日現在、「Lilly JW[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、1論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

省略

●7.【白楽の感想】

《1》不正の初期

「研究上の不正行為」は、初めて不審に思った時、徹底的に調査することだ。

ジェイソン・リリー(Jason W. Lilly)の場合、コーネル大学のポスドクの2年目か3年目で研究ネカトが発覚している。ポスドクなので、教員のネカトに比べれば被害が少ない。

不正の初期にネカトを見つけて処分したのは正解である。

2018年8月20日(55歳?)現在、ジェイソン・リリー(Jason W. Lilly)は学術界にいない。

ただ、問題視された「2002年のPlant Cell」論文以前に、コーネル大学のポスドクとして2002年に1報、ウィスコンシン大学マディソン校の院生の時の2001年に5報、2002年に1報、出版している。

法則:「ネカト癖は院生時代に形成されることが多い」。

コーネル大学はネカト調査をしたが、ウィスコンシン大学は調査していない。ウィスコンシン大学・院生時代の計6論文にもネカトがあると十分に思えるのだが、どうなっているのだろう? 誰も調査しない。

約20年も古い論文のデータをウンヌンする奇特な人はいないだろう。この問題はどうすると良いのだろうか?

放置? 時効とする? ウィスコンシン大学に調査させる? 学術誌に調査させる? 調査する組織を作る?

ーーーーーー
日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓

ーーーーーー

●8.【主要情報源】

① 2005年6月7日、研究公正局の報告:NOT-OD-05-049: Findings of Scientific Misconduct
② 2002年5・6月、「The Newsletter of the American Society of Plant Biologists」記事:https://aspb.org/newsletter/archive/2002/2002MayJun.pdf
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメントは承認待ちです。表示されるまでしばらく時間がかかるかもしれません。