スリカント・サンタナム(Srikanth Santhanam)(米)

2019年1月18日掲載

ワンポイント:サンタナムはインド生まれ・育ちで、インドのヴェールール・クリスチャン医科大学(Christian Medical College Vellore)で研究博士号(PhD)を取得後、2013年5月1日(30歳?)に米国のセントルイス・ワシントン大学(Washington University in St. Louis)・ポスドクになった。2019年1月2日、研究公正局は、サンタナム(36歳?)の未発表の研究結果にデータ改ざんがあったと発表した。2年間の締め出し処分を科した。国民の損害額(推定)は5億8,300万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

スリカント・サンタナム(Srikanth Santhanam、ORCID iD:0000-0002-6961-2377、写真出典)は、インド生まれ・育ち、インドのヴェールール・クリスチャン医科大学(Christian Medical College Vellore)で研究博士号(PhD)を取得後、2013年5月1日(30歳?)に米国のセントルイス・ワシントン大学(Washington University in St. Louis)・ポスドクになった。医師ではない。専門は消化器科学。

2017年(34歳?)(推定)、ネカト疑惑の通報を受け、セントルイス・ワシントン大学が調査を開始した。その後、調査結果を研究公正局に伝えた。

2019年1月2日(36歳?)、研究公正局は、サンタナムの未発表の研究結果にデータ改ざんがあったと発表した。2018年12月14日から2年間の締め出し処分を科した。

セントルイス・ワシントン大学(Washington University in St. Louis)・医学キャンパス(Medical Campus)。医学キャンパスには、医科研究科(School of Medicine)を含め、Barnes-Jewish Hospital、St. Louis Children’s Hospital、the Alvin J. Siteman Cancer Center at Barnes-Jewish Hospital がある。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:インドのヴェールール・クリスチャン医科大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1983年1月1日生まれとする。2005年の大学院入学時を22歳とした
  • 現在の年齢:36 歳?
  • 分野:消化器科学
  • 最初の不正:2017年(34歳?)
  • 発覚年:2017年(34歳?)
  • ネカト行為時地位:米国のセントルイス・ワシントン大学・ポスドク
  • ステップ1(発覚):研究室のボスであるマシュー・シオルバ準教授(Matthew Ciorba)が見つけた(推定)。
  • ステップ2(メディア):
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①セントルイス・ワシントン大学・調査委員会。②研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:改ざん
  • 不正数:未発表の研究結果。撤回論文なし
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 職:解雇。その後の動向不明
  • 処分:NIHから2年間の締め出し処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5億8,300万円。内訳 ↓

  • ①研究者になるまで5千万円。研究者を辞めたとして、損害額は5千万円。
  • ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費・施設費など)は年間4500万円。ポスドクで5年半過ごしているので、損害額は2億4800万円。
  • ③外部研究費。サンタナムの獲得した外部研究費はないと思う。ボスのシオルバ準教授の外部研究費の内、サンタナムのネカト絡みのNIHの研究費は2016年の約1億7千万円だった。全研究費が無駄になったかどうか不明だが、一応全経費としての損額は1億7千万円。
  • ④調査経費。第一次追及者の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円、研究公正局など公的機関は1件200万円。学術出版局は1つの学術誌あたり100万円だが、未発表データなので学術誌の調査経費は0円。小計で1,500万円
  • ⑤裁判経費は2千万円。裁判はなかったので損害額は0円。
  • ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。撤回論文は0報なので損害額は0円。
  • ⑦アカハラ・セクハラではない。損害額は0円。
  • ⑧研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
  • ⑨健康被害:損害額は0円とした。

●2.【経歴と経過】

主な出典:①:ORCID

  • 生年月日:不明。仮に1983年1月1日生まれとする。2005年の大学院入学時を22歳とした
  • 2005年1月 – 2010年6月(22 – 27歳?):インドのヴェールール・クリスチャン医科大学(Christian Medical College Vellore)で研究博士号(PhD)を取得:消化器科学
  • 2013年5月1日(30歳?):米国のセントルイス・ワシントン大学(Washington University in St. Louis)・ポスドク:消化器科学
  • 2017年(34歳?)(推定):ネカト疑惑の通報を受け、セントルイス・ワシントン大学が調査開始
  • 2018年(35歳?)(推定):セントルイス・ワシントン大学は調査終了し、調査は研究公正局へ
  • 2018年12月1日(35歳?):セントルイス・ワシントン大学を辞職
  • 2019年1月2日(36歳?):研究公正局がネカトと発表。締め出し期間は2018年12月14日から2年間

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★研究の環境

スリカント・サンタナム(Srikanth Santhanam)はインドで生まれ育ち、2010年にインドのヴェールール・クリスチャン医科大学(Christian Medical College Vellore)で研究博士号(PhD)を取得後、2013年5月1日(30歳?)、米国のセントルイス・ワシントン大学(Washington University in St. Louis)のポスドクになった。

ボスはマシュー・シオルバ準教授(Matthew Ciorba、写真出典)だった。

サンタナムは、マウスを使って、大腸炎や胃腸疾患における遺伝子の役割を研究していた。

★研究公正局

2019年1月2日(36歳?)、研究公正局は、サンタナムの未発表の研究結果にデータ改ざんがあったと発表した。2018年12月14日から2年間の締め出し処分を科した。

研究費番号で示すが、ボスのシオルバ準教授は、NIH・国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)から.「R01 DK109384」、「R03 DK100737」、「P30 DK052574」、「T32 DK077653」の5件、NIH・国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID)から「R01 AI126587」、「U01 AI1095776」の2件、国立がん研究所から「R21 CA206039」、「P30 CA091842」の2件の研究助成を受けていた。その研究で、サンタナムはデータ改ざんした。

「St. Louis Post」紙の記事に、2016年、マシュー・シオルバ準教授は結腸癌を治療するより良い方法を研究するためにNIHから170万ドル(約1億7千万円)の助成金を受給したとあるので、この170万ドル(約1億7千万円)の研究成果でデータ改ざんがあったのだろう。

改ざんは、未発表の研究データであって、出版論文、研究費申請書のデータではない。従って撤回する論文はない。

★改ざんデータ

改ざんデータがどのようなものか?

研究公正局がネカトとしたのは未発表の研究結果であって、出版論文ではない。すると、ウ~ン、第三者は知りようがない。イヤイヤ、文章でネカト内容を伝えている。

ネカトは、学術誌「Cancer Research」への投稿原稿とその再提出原稿のデータ改ざんである。

原稿のタイトルは「IDO1 and kynurenine pathway metabolites activate PI3K-Akt signaling in the neoplastic colon epithelium to promote cancer cell proliferation and inhibit apoptosis」である。つまり、大腸癌細胞の細胞生物学の論文である。

研究公正局はデータ改ざん点を以下のように列記した。

  • 投稿原稿の図2Aと再提出原稿の図3Aの、キヌレニン(Kyn)およびキノリン酸( QA )の細胞質画分および核画分バンド、また、β-カテニンの核画分バンドは、無関係の実験から得たバンドを流用した。
  • 再提出原稿の図4A、8A、8Bは、HCT116細胞(図4A)、マウスAOM/DSS 腫瘍オルガノイド(図8A)、ヒト FAP 腫瘍オルガノイド(図8B、pPRAS40のみ)に対するキヌレニン(Kyn)およびキノリン酸( QA )の効果を示すウエスタンブロットと説明しているが、実際には全部、HT29細胞を使用していた。
  • 再提出原稿の図4Bで、pAKT S473 と表示したバンドは実際はPRAS40だった。
  • 投稿原稿の図S2C、再提出原稿の図3Cと図S3Aで、合計AKTと表示したバンドは、実際には未知のソースからのバンドを使用していた。
  • 再提出原稿の図7Bの、スタウロスポリン誘導アポトーシスと表示したバンドは、実際は、図 7AのTNF-α誘導アポトーシスと表示したのと同じタンパク質サンプルだった。
  • 再提出原稿の図3A、3B、 4Aで使用した細胞株は3〜10継代とあるが、実際は10回を超えて継代した細胞株だった。

ただ、投稿原稿とその再提出原稿のデータなので、白楽は具体的なネカト図を入手できなかった。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2019年1月17日現在、パブメド(PubMed)で、スリカント・サンタナム(Srikanth Santhanam)の論文を「Srikanth Santhanam [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2007~2018年の11年間の9論文がヒットした。

「Santhanam S[Author]」で検索すると、1978~2018年の41年間の75論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者以外の論文が多く含まれていると思われる。

2019年1月17日現在、「Santhanam S[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2019年1月17日現在、「パブピア(PubPeer)」はスリカント・サンタナム(Srikanth Santhanam)の0論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》詳細は不明

スリカント・サンタナム(Srikanth Santhanam)(左)、ボスのマシュー・シオルバ準教授(Matthew Ciorba)(右)http://www.ciorbalab.org/ciorba-ibd-group-pictures-.html

この事件の詳細は不明です。

2019年1月2日に研究公正局がクロと発表してすぐに資料を集めたが、スリカント・サンタナム(Srikanth Santhanam)のウェブ上の情報はほとんど削除された(ようだ)。また。少数の新聞がサンタナム事件を報じたが、ネカト状況を掘り下げる取材をしていないので、研究公正局の発表と「撤回監視(Retraction Watch)」記事以上のことはわからない。

非常に最近の事件だが、ネカト発生の状況を理解できる情報がない。ネカト防止策を考えたい立場の白楽には、残念というか、モッタイナイ。

インド出身者が米国でネカトしがちであるという以外、ネカト防止策は、この事件からは学べない。

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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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●8.【主要情報源】

① 研究公正局の発表:(1)2019年1月2日:Case Summary: Santhanam, Srikanth | ORI – The Office of Research Integrity、(2)2019年1月16日: 米国政府機関の閉鎖で、2019年1月17日現在、官報(Federal Register)がアップされない。代わりの報告:Santhanam, Srikanth
② 2019年1月3日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Wash U scientist admits to research misconduct, resigns post – Retraction Watch
③ 2019年1月5日のブライス・ベルンハルト(Blythe Bernhard)記者の「St. Louis Post」記事:Washington University scientist resigns after falsifying data in disease research | Metro | stltoday.com
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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