2017年5月9日掲載。
ワンポイント:シンガポールの南洋(ナンヤン)理工大学で博士号を取得し、ハーバード大学のポスドクになったインド出身の男性。2015年(推定)(31歳?)に南洋(ナンヤン)理工大学で発表した論文にねつ造・改ざんが発覚した。2016年(32歳?)に博士号がはく奪され、ハーバード大学のポスドクも解雇(辞職?)された。院生時代の指導教授であるラヴィ・カンバドゥル(Ravi Kambadur、53歳男性)も南洋理工大学を解雇された。損害総額(推定)は14億5千万円。「The Scientist」誌の2016年「論文撤回」上位10論文:2016年12月21日の1人で5番目にリストされた。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
サダーサナレディ・ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy、写真出典)は、シンガポールの南洋(ナンヤン)理工大学(Nanyang Technological University)・院生として研究博士号(PhD)を取得し、米国・ハーバード大学のポスドクになった。医師ではない。専門は細胞生物学だった。
2015年(推定)(31歳?)、経緯は不明だが、ロキレディの論文にデータねつ造・改ざんが発覚し、南洋(ナンヤン)理工大学が調査を開始した。
2015年12月12日(31歳?)、南洋(ナンヤン)理工大学はロキレディがネカトをしたと発表した。
2016年7月13日(32歳?)、南洋(ナンヤン)理工大学はロキレディの博士号をはく奪した。また指導教授だったカンバドゥル教授を解雇した。
事件は、ロキレディが南洋(ナンヤン)理工大学・院生の時に出版した論文でのネカトである。しかし、指導教授のラヴィ・カンバドゥル(Ravi Kambadur)、カンバドゥル教授の妻でミドゥラ・シャルマ(Mridula Sharma)・シンガポール国立大学・準教授も、撤回論文6報の共著者になっていた。
ネカトに関与したわけではないが、カンバドゥル教授は、研究室の動きに「故意に無頓着(wilfully negligent)」だったとの理由で大学を解雇された。シャルマ準教授はシンガポール国立大学を辞職した。
ネカトの主犯はサダーサナレディ・ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy)なので、本記事では、ロキレディを中心に扱い、他の2人は部分的に記述する。
ロキレディは、「2016年ランキング」の「The Scientist」誌の2016年「論文撤回」上位10論文:2016年12月21日の1人で5番目にリストされた。
シンガポールの南洋(ナンヤン)理工大学(Nanyang Technological University)。写真出典By Singaporean – 投稿者自身による作品, Copyrighted free use, Link
- 国:シンガポール
- 成長国:インド
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:南洋(ナンヤン)理工大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1984年1月1日生まれとする。あてづっぽう。インドで生まれる
- 現在の年齢:40 歳?
- 分野:細胞生物学
- 最初の不正論文発表:2011年(27歳?)
- 発覚年:2015年(推定)(31歳?)
- 発覚時地位:ハーバード大学・ポスドク
- ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)の南洋(ナンヤン)理工大学への公益通報
- ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」、「パブピア(PubPeer)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①南洋(ナンヤン)理工大学・調査委員会。②ハーバード大学
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:撤回論文が6報
- 時期:研究キャリアの初期から
- 損害額:総額(推定)は14億5千万円。内訳 → ①研究者になるまで1人5千万円が3人=1億5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円がロキレディが2年間=4千万円。カンバドゥル教授が10年分として=2億円。シャルマ準教授が10年分として=2億円。
③院生の損害が1人1000万円。④2009年にシンガポール国立研究財団(NRF:National Research Foundation)がボスのラヴィ・カンバドゥル教授(Ravi Kambadur)に3-5年間のプロジェクトとして1千万ドル(シンガポール・ドルとして、約8億円)。⑤調査経費(大学と研究公正局)が5千万円。⑥裁判経費が2千万円。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。6報撤回=1200万円。 - 結末:博士号はく奪。ハーバード大学は辞職(解雇?)
●2.【経歴と経過】
- 生年月日:不明。仮に1984年1月1日生まれとする。あてづっぽう。インドで生まれる
- 2009年(25歳?):インドのスリ・クリシュナ・デーヴァ・ラーヤ大学(Sri Krishnadevaraya University)・バイオテクノロジー学科を卒業
- 2010年(推定)(26歳?):シンガポールの南洋(ナンヤン)理工大学・院生。カンバドゥル教授
- 2014年末(推定)(30歳?):シンガポールの南洋(ナンヤン)理工大学で研究博士号(PhD)を取得した
- 2015年(推定)(31歳?):ハーバード大学・医科大学院・ポスドク。アルフレッド・ゴールドバーグ教授(Alfred Goldberg)
- 2015年12月12日(31歳?):南洋(ナンヤン)理工大学はロキレディがネカトをしたと発表した
- 2016年7月13日(32歳?):南洋(ナンヤン)理工大学はロキレディの博士号をはく奪した。また指導教授だったカンバドゥル教授を解雇した
- 2016年(32歳?):ハーバード大学・医科大学院・ポスドクを辞職(解雇?)
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★ロキレディのボス
ロキレディのボスのラヴィ・カンバドゥル(Ravi Kambadur)と妻のミドゥラ・シャルマ(Mridula Sharma)は、インドで生まれ育った。
1997年、ラヴィ・カンバドゥル(Ravi Kambadur、当時35歳)と妻のミドゥラ・シャルマ(Mridula Sharma)は、ニュージーランドのルアクラ農業研究センター(Ruakura Agriculture Research Centre)で、大発見をした。つまり、牛の肉の成長を2倍にするマイオスタチン(myostatin)遺伝子の変異を発見したのである。この発見は、食肉増産に大いに役立つと期待された。
- Mutations in myostatin (GDF8) in double-muscled Belgian Blue and Piedmontese cattle.
Kambadur R, Sharma M, Smith TP, Bass JJ.
Genome Res. 1997 Sep;7(9):910-6.
PMID:9314496
ラヴィ・カンバドゥル(Ravi Kambadur)の略歴
→ NTU professor fired for data falsification – Youthphoria – Stomp(保存版)
ラヴィ・カンバドゥルは、インドのスリ ・ ヴェンカテスワラ大学(Sri Venkateswara University)で、学士号(生物学)、修士号(生化学)を取得し、医学教育研究大学院(Postgraduate Institute of Medical Education and Research in Chandigarh)で研究博士号(PhD)を取得した。
その後、米国・NIHのスタッフ・フェロー、ニュージーランドのルアクラ農業研究センター(Ruakura Agriculture Research Centre)、シンガポールのシンガポール臨床科学研究所(Singapore Institute for Clinical Sciences)を経由して、2013年(51歳)にシンガポールの南洋(ナンヤン)理工大学・教授に就任した。
ラヴィ・カンバドゥル教授(Ravi Kambadur)(左)(54歳、2016年7月時点)。カンバドゥル教授の妻でシンガポール国立大学(National University of Singapore)・準教授のミドゥラ・シャルマ(Mridula Sharma)(中央)。サダーサナレディ・ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy)(右)。写真出典
★ロキレディ:南洋(ナンヤン)理工大学の院生
本記事の主人公のロキレディは、インドで生まれ育った。
インドのスリ・クリシュナ・デーヴァ・ラーヤ大学(Sri Krishnadevaraya University)・バイオテクノロジー学科から、2008年2月に最初の論文を第一著者で発表している。2009年6月には2報目を同じ大学所属の第一著者として発表している。
この大学でのロキレディの身分は、学部生とは思えない。院生? 教員?
2010年(推定)、ロキレディはシンガポールの南洋(ナンヤン)理工大学のカンバドゥル教授の研究室の大学院生になった。この時、カンバドゥルは、シンガポールのシンガポール臨床科学研究所(Singapore Institute for Clinical Sciences)部長(?)だった。2013年に南洋(ナンヤン)理工大学の教授に就任した。
2014年末(推定)、ロキレディはシンガポールの南洋(ナンヤン)理工大学のカンバドゥル教授の研究室で、研究博士号(PhD)を取得した。
ネカトの告発はいつ誰が行なったのか不明である。
だが、南洋(ナンヤン)理工大学の研究公正官(Research Integrity Officer)は、欧州をベースに研究倫理で活躍したトニー・メイヤー(Tony Mayer、写真出典)がいる。
南洋(ナンヤン)理工大学がいつ調査を開始したか、白楽は把握できていない。
だが、調査の中で、ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy)は「自分がネカトしました」とトニー・メイヤー研究公正官に告げた。
2015年12月12日、南洋(ナンヤン)理工大学は調査結果を発表した。
→ Notice on Myostatin Research (保存版)
まず、「南洋(ナンヤン)理工大学は、研究において最高基準と最高行動を維持し、研究不正を100%許容しない。研究公正に違反する人には断固たる処分をする」と述べている。スバラシイ!
次いで、氏名を上げていないが、マイオスタチン(myostatin)の研究論文にデータ改ざんがあった。それらの論文はコレコレと示している(論文名は後述する)。
2016年7月13日、南洋(ナンヤン)理工大学は、マイオスタチン(myostatin)の研究論文のデータ改ざんをしたのはサダーサナレディ・ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy)と発表した。彼の博士論文でも改ざんがあったとのことで、博士号をはく奪した。
→ FURTHER NOTICE ON MYOSTATIN RESEARCH(保存版)
また、ロキレディの指導教授であったカンバドゥル教授は研究室の動きに「故意に無頓着(wilfully negligent)」だったという理由で、南洋(ナンヤン)理工大学はカンバドゥル教授を解雇した。
なお、カンバドゥル教授の妻でシンガポール国立大学(National University of Singapore)・準教授のミドゥラ・シャルマ(Mridula Sharma)も、それ以前に、シンガポール国立大学を辞職(解雇?)している。
★ロキレディ:ハーバード大学・医科大学院のポスドク
ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy)は、ハーバード大学・医科大学院のアルフレッド・ゴールドバーグ教授(Alfred Goldberg、写真同)の研究室のポスドクになっていた。
2015年12月には、第一著者の論文を出版した(以下)。
- cAMP-induced phosphorylation of 26S proteasomes on Rpn6/PSMD11 enhances their activity and the degradation of misfolded proteins.
Lokireddy S, Kukushkin NV, Goldberg AL.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Dec 29;112(52):E7176-85. doi: 10.1073/pnas.1522332112.
PMID:26669444
上記の論文のネカト疑念は生じていない。
しかし、シンガポールの院生時代のネカトが発覚し、2016年7月13日に博士号がはく奪されたのを受け、2016年8月2日時点では、ロキレディはハーバード大学・医科大学院のポスドクを辞めていた(解雇された?)。
●【ねつ造・改ざんの具体例】
2015年12月12日、南洋(ナンヤン)理工大学は調査結果を発表した。
→ Notice on Myostatin Research (保存版)
データ改ざんがあった以下の3論文の撤回を学術誌に要請した。
- ‘The Ubiquitin Ligase Mul1Induces Mitophagy in Skeletal Muscle in Response to Muscle-wasting Stimuli’ by Sudarsanareddy Lokireddy1, Isuru W. Wijesomu1, Serena Teng1, Sabeera Bonala1, Peter D. Gluckman2, Craig McFarlane2, Mridula Sharma3, and Ravi Kambadur1,2.
Cell Metabolism 16, 613-624, 7 November 2012 (Elsevier). - ‘Myostatin is a novel tumoral factor that induces cancer cachexia’ by Sudarsanareddy Lokireddy1, Isuru W. Wijesomu1, Sabeera Bonala1, Meng Wei1, Siu Kwan Sze1, Craig McFarlane2, Ravi Kambadur1,2 and Mridula Sharma3
Biochemical Journal 2012 Aug 15, 446(1), 23-36. - ‘Myostatin induces degradation of sarcomeric proteins through a Smad3 signaling mechanism during skeletal muscle wasting.’ by Sudarsanareddy Lokireddy1, Craig McFarlane2, Xiaojia Ge1, Huoming Zhang1, Siu Kwan Sze1, Mridula Sharma3, and Ravi Kambadur1,2
Molecular Endocrinology 2011 Nov 25(11) 1936-49.
しかし、何がどのようにねつ造・改ざんされたのか、南洋(ナンヤン)理工大学は発表していない。
仕方がないので、パブピアで探った。
上記の3論文での指摘を以下に詳しく見よう。また、「撤回」ではなく、「訂正」された「2014年のMolecular Endocrinology」論文のデータ異常も示そう。
★「2012年のCell Metabolism.」論文
パブピアのコメントを見てみよう。
2015年12月1日、論文の図2D, 4B, 6D, 6E, S5Bが改ざんされ、論文が撤回されたと、著者自身が記述し、謝罪の言葉を述べていた「Unregistered Submission: ( December 1st, 2015 9:08pm UTC )」。
図2Dと図4Bをみてみよう。
図2Dを論文から探ると以下の電気泳動像だった。赤字の「C」は論文に貼られた「RETRACTED」印(撤回印)の「C」部分である。どの部分をどう改ざんしたのか、図からは判明できない。
次は図4Bだが、これも電気泳動像だ。どの部分を改ざんしたのか、図からは判明できない。
★「2012年のBiochemical Journal.」論文
パブピアのコメントを見てみよう。
2015年12月8日、論文の図7Fが示され、別の実験なのに同じ電気泳動バンドが使われていた:「Peer 1: ( December 8th, 2015 2:06pm UTC )」。これは、データねつ造である。
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/E3983221D9670D51F59A89C4BAE019#fb41480
★「2011年のMolecular Endocrinology」論文
パブピアのコメントを見てみよう。図2C、図3C、図4Aを順に見ていこう。
電気泳動バンドのねつ造が指摘されていた。同じバンドをそのまま別に貼り付けるだけでなく、反転したり鏡像にしたり、不正操作が巧みである。それだけ、ねつ造・改ざんが意図的という証拠になる。
論文の図2C:2015年12月7日、「Peer 1: ( December 7th, 2015 3:43pm UTC )」。以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/7B69CE19D264554A8ABE773925031B#fb41426
論文の図3C:2015年12月8日、「Peer 1: ( December 8th, 2015 7:27am UTC )」。以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/7B69CE19D264554A8ABE773925031B#fb41460
論文の図4A:2015年12月7日、「Peer 1: ( December 7th, 2015 4:00pm UTC )」。以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/7B69CE19D264554A8ABE773925031B#fb41430
★「2014年のMolecular Endocrinology」論文
2017年5月8日現在、撤回されていないが、数点のデータ異常が指摘されている。1点だけ示す。なお、論文は2016年2月に「撤回」ではなく「訂正」されている。
- Myostatin augments muscle-specific ring finger protein-1 expression through an NF-kB independent mechanism in SMAD3 null muscle.
Sriram S, Subramanian S, Juvvuna PK, Ge X, Lokireddy S, McFarlane CD, Wahli W, Kambadur R, Sharma M.
Mol Endocrinol. 2014 Mar;28(3):317-30. doi: 10.1210/me.2013-1179.
Erratum in: Mol Endocrinol. 2016 Feb;30(2):272-3.
PMID:24438338
論文の図2Aと3A:2015年10月28日、「Peer 1:( October 28th, 2015 2:09pm UTC )」。以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/0B0D7FED8EC61672B53DB398636FBF#fb39415
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
2017年5月8日現在、パブメド(PubMed)で、サダーサナレディ・ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy)の論文を「Sudarsanareddy Lokireddy [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2008~2015年の8年間の16論文がヒットした。
2017年5月8日現在、パブメドの論文リストでは6論文が撤回されている。撤回論文の全部に、ラヴィ・カンバドゥル教授(Ravi Kambadur)とミドゥラ・シャルマ準教授(Mridula Sharma)が共著者に入っている。
- Myostatin induces insulin resistance via Casitas B-lineage lymphoma b (Cblb)-mediated degradation of insulin receptor substrate 1 (IRS1) protein in response to high calorie diet intake.
Bonala S, Lokireddy S, McFarlane C, Patnam S, Sharma M, Kambadur R.
J Biol Chem. 2014 Mar 14;289(11):7654-70. doi: 10.1074/jbc.M113.529925.
Retraction in: J Biol Chem. 2016 Jul 1;291(27):14392.
PMID:24451368 - Pid1 induces insulin resistance in both human and mouse skeletal muscle during obesity.
Bonala S, McFarlane C, Ang J, Lim R, Lee M, Chua H, Lokireddy S, Sreekanth P, Leow MK, Meng KC, Shyong TE, Lee YS, Gluckman PD, Sharma M, Kambadur R.
Mol Endocrinol. 2013 Sep;27(9):1518-35. doi: 10.1210/me.2013-1048.
Erratum in: Mol Endocrinol. 2015 Jan;29(1):153.
Retraction in: Mol Endocrinol. 2016 Aug;30(8):949.
PMID:23927930 - The ubiquitin ligase Mul1 induces mitophagy in skeletal muscle in response to muscle-wasting stimuli.
Lokireddy S, Wijesoma IW, Teng S, Bonala S, Gluckman PD, McFarlane C, Sharma M, Kambadur R.
Cell Metab. 2012 Nov 7;16(5):613-24. doi: 10.1016/j.cmet.2012.10.005.
Retraction in: Cell Metab. 2015 Dec 1;22(6):1090.
PMID:23140641 - Myostatin is a novel tumoral factor that induces cancer cachexia.
Lokireddy S, Wijesoma IW, Bonala S, Wei M, Sze SK, McFarlane C, Kambadur R, Sharma M.
Biochem J. 2012 Aug 15;446(1):23-36. doi: 10.1042/BJ20112024. Erratum in: Biochem J. 2015 Feb 15;466(1):201.
Retraction in: Lokireddy S, Wijesoma IW, Bonala S, Wei M, Sze SK, McFarlane C, Kambadur R, Sharma M. Biochem J. 2016 Apr 15;473(8):1111.
PMID:22621320 - Peroxisome proliferator-activated receptor β/δ induces myogenesis by modulating myostatin activity.
Bonala S, Lokireddy S, Arigela H, Teng S, Wahli W, Sharma M, McFarlane C, Kambadur R.
J Biol Chem. 2012 Apr 13;287(16):12935-51. doi: 10.1074/jbc.M111.319145.
Retraction in: J Biol Chem. 2016 Jul 1;291(27):14391.
PMID:22362769 - Myostatin induces degradation of sarcomeric proteins through a Smad3 signaling mechanism during skeletal muscle wasting.
Lokireddy S, McFarlane C, Ge X, Zhang H, Sze SK, Sharma M, Kambadur R.
Mol Endocrinol. 2011 Nov;25(11):1936-49. doi: 10.1210/me.2011-1124.
Erratum in: Mol Endocrinol. 2015 Jan;29(1):153.
Retraction in: Mol Endocrinol. 2016 Feb;30(2):274.
PMID:21964591
★パブピア(PubPeer)
「パブピア(PubPeer)」ではサダーサナレディ・ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy)の7論文にコメントされている:PubPeer – Results for Sudarsanareddy Lokireddy
●7.【白楽の感想】
《1》インド人のネカト
サダーサナレディ・ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy)のネカトを防止するにはどうすべきだったのだろうか?
ロキレディはネカトを悪いと知っている。しかし、得だから、見つからないようにネカトした。
ロキレディは、ネカトするズル価値観をどこで身につけたのだろうか? 先輩や仲間から学んだのだろうか?
インド人はネカトが多い。インド人研究者の価値観、研究文化、生活哲学が深く関与していると思われる。一度、しっかり分析したいと思っている。
《2》指導教授の責任
「南洋(ナンヤン)理工大学は、研究において最高基準と最高行動を維持し、研究不正を100%許容しない。研究公正に違反する人には断固たる処分をする」
このポリシーは立派だ。
ただ、カンバドゥル教授とシャルマ準教授の2人は、ネカトに関与していない。
カンバドゥル教授の解雇の理由は、研究室の動きに「故意に無頓着(wilfully negligent)」だったとある。ネカトに関与していなかったが、院生・ロキレディの指導教授としての責任を問われたのだ。
院生のネカトは、指導教員にかなりの責任があると、白楽は考えている。
しかし、欧米では指導教授の責任が問われることは滅多にない。日本でも同様に、大阪大学の事件では、院生に大きな処分をし、2人の指導教授の処分はひどく軽度だった。
しかし、ネカト事件を含め一般的に、日本では、上司というだけで、連帯責任の処分が科されることが多い。
職場での上司と部下の関係と、研究室での指導教員と院生の関係は大きく異なる。職場の部下は一人前の職業人だが、院生は未熟で教育を受ける半人前の訓練生である。
本事件は、指導教員と院生の関係であるが、ことのついでに、上司と部下の関係に言及する。
上司と部下の関係で上司に連帯責任を科すシステムは異常だと思う。個人の責任なのに、上司に連帯責任を負わせると、責任の所在も事件の本質もあいまいになる。対策もおかしくなる。もっと、個人に焦点を合わせるべきだ。
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●8.【主要情報源】
① 2015年12月15日のシャノン・パラス(Shannon Palus)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事とその後:You searched for Sudarsanareddy Lokireddy – Retraction Watch at Retraction Watch
② 2016年1月13日のケリー・グレンス(Kerry Grens)の「Scientist」記事:Expected Retraction Published | The Scientist Magazine®(保存版)
③ 2016年7月16日のfarhanの「Singapore news today」記事:Singapore news today | 3 INDIAN FT SCIENTISTS FAKED RESEARCH PAPERS WHILE ON MILLIONS OF STATE GRANTS(保存版)
④ 2016年7月22日のリン・ヤンチェン(Lin Yangchen)の「Straits Times」記事:‘Zero tolerance’ for research misconduct here, Singapore News & Top Stories – The Straits Times(保存版)
⑤ 「パブピア(PubPeer)」ではサダーサナレディ・ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy)の7論文にコメントされている:PubPeer – Results for Sudarsanareddy Lokireddy
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント