非ネカト:ミシェル・ファン・デル・バンク(Michelle van der Bank)(南アフリカ)

2018年8月20日掲載

ワンポイント:盗用無罪。ヨハネスブルグ大学(University of Johannesburg)のファン・デル・バンク・教授が指導下の院生・ヘンリー・イへアナッチョ(Henry Iheanacho)に、2018年(54歳)、ツイッターで、盗用だと訴えられた。大学は直ちに否定した。実は、話が逆で、院生・イへアナッチョがファン・デル・バンク教授の研究成果を盗用していたのだった。国民の損害額(推定)は1100万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

ミシェル・ファン・デル・バンク(Michelle van der Bank、写真出典)は、南アフリカのヨハネスブルグ大学(University of Johannesburg)・教授で、医師ではない。専門は植物学である。

ファン・デル・バンク教授の指導下の院生・ヘンリー・イへアナッチョ(Henry Iheanacho)は自分の論文をまとめ、学術誌に投稿したところ、同じ論文が既に投稿されていると知らされた。

自分の研究成果が指導教授のファン・デル・バンク教授に盗用されたのだ。

2018年(54歳)、それで、院生・イへアナッチョはツイッターで、ファン・デル・バンク教授が盗用者だと訴えた。

実は、話が逆で、その前年の2017年、ヨハネスブルグ大学は、院生・イへアナッチョがファン・デル・バンク教授の研究成果を盗用したと結論していた。

2018年、ところが、院生・イへアナッチョは大学の結論に不満で、ツイッターで、自分が盗用者ではなく、ファン・デル・バンク教授が盗用者だと訴えたのである。

ヨハネスブルグ大学は、直ぐに、院生・イへアナッチョの申し立ては「根拠がなく、事実ではない」と新聞を通して発表した。

つまり、ファン・デル・バンク教授は無罪である。

本ブログはネカト・ブログだが、ネカトと非ネカトの境界線が見えてくると期待し、ネカトではないと判定された事件もなるべく解説する。

ヨハネスブルグ大学(University of Johannesburg)。写真出典

  • 国:南アフリカ
  • 成長国:南アフリカ
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ヨハネスブルグ大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:1963年12月27日
  • 現在の年齢:54 歳
  • 分野:植物学
  • 最初の不正論文発表嫌疑:2018年(54歳)
  • 発覚年:2018年(54歳)
  • 発覚時地位:ヨハネスブルグ大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は同じ研究室の院生・ヘンリー・イへアナッチョ(Henry Iheanacho)で、盗用だとツイッターに書き込んだ
  • ステップ2(メディア):「Times Live」、「Nova Mentis News」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ヨハネスブルグ大学の内部調査。調査委員会は設置していないと思う
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
  • 不正:盗用無罪
  • 不正論文数:1報
  • 盗用ページ率:不明
  • 盗用文字率:不明
  • 時期:研究キャリアの後期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)。無罪なので辞める理由なし。
  • 処分:無罪なので処分なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1100万円。内訳 ↓

  • ①研究者になるまで5千万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
  • ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費・施設費など)は年間4500万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
  • ③外部研究費。無罪なので損害額は0円。
  • ④調査経費。大学の調査費用は内部調査なので100万円。損害額は100万円
  • ⑤裁判経費は2千万円。裁判はなかったので損害額は0円。
  • ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。撤回論文はないので損害額は0円。
  • ⑦研究者の時間の無駄と意欲削減は1000万円。
  • ⑧健康被害:なし。損害額は0円。

●2.【経歴と経過】

主な出典:http://acdb.co.za/wp-content/uploads/2017/07/CV_Michelle_van_der_Bank_May2017.pdf

  • 生年月日: 1963年12月27日。南アフリカのヨハネスブルグに生まれる
  • 1986年(22歳):ヨハネスブルグ大学(University of Johannesburg)で学士号取得:生物学
  • 1988年(24歳):同大学で修士号取得:動物学
  • 1992年(28歳):同大学で学士号を取得:生化学
  • 1999年(35歳):同大学で研究博士号(PhD)を取得:植物学。学位論文「Genetic variation and phylogenetic relationships in the Podalyrieae and related tribes (Fabaceae)”」
  • 1996-2001年(32-37歳):ヨハネスブルグ大学(University of Johannesburg)・講師
  • 2002-2009年(38-45歳):同・上級講師
  • 2009-2015年(45-51歳):同・準教授
  • 2016年(52歳):同・正教授
  • 2018年(54歳):盗用嫌疑騒動

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
講演動画:「ミシェル・ファン・デル・バンクの教授就任講演(Professorial Inauguration Professor Michelle van der Bank) – YouTube」(英語)52分27秒。
The University of Johannesburgが2018/03/27 に公開

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★院生がツイッターに盗用と訴えた

2018年4月15日(54歳)、ヨハネスブルグ大学(University of Johannesburg)の院生・ヘンリー・イへアナッチョ(Henry Iheanacho、写真出典)は博士論文のデータがミシェル・ファン・デル・バンク教授(Michelle van der Bank)に盗用されたとツイッターに書き込んだ。
→ 2018年4月15日:Kingsway SRCさんのツイート: “The Professor who stole the work of a student is Prof. Michelle van der Banlk from the Faculty of science. Here is what happened:… https://t.co/ntncjCliVj”

院生・イへアナッチョは2014年に大学院に入学し、ツイッターに書き込んだ2018年4月15日当時、4年生だった。

院生・イへアナッチョの主張は次のようだ。

自分の研究成果を論文にまとめ、学術誌に投稿したところ、ミシェル・ファン・デル・バンク教授を著者とする同じ内容の論文が既に投稿されていると知らされた。つまり、院生・イへアナッチョの投稿論文は盗用ではないかと指摘された。

それで、いろいろ考えて、次のようにツイッターに書き込んだ。

指導教授のファン・デル・バンク教授は私(院生・イへアナッチョ)に過大な研究課題を与えた。私は、結局、課題をこなせなくなり課題を投げ出した。その後、ファン・デル・バンク教授は私のデータを使って、他の院生と一緒に論文として出版した。だから、私が自分のデータをまとめ、投稿したところ、同じ論文が既に投稿されている事態になったのだ。

★院生・イへアナッチョ院生の盗用

ミシェル・ファン・デル・バンク教授(Michelle van der Bank)、https://twitter.com/ujapk_src/status/985483250410967040

実は、話が逆で、院生イへアナッチョがツイッターで盗用と訴える前に、院生・イへアナッチョ自身が盗用者だと大学から糾弾されていた。

2017年(53歳)、ヨハネスブルグ大学の学生懲戒委員会(Student Disciplinary Committee)は、院生・イへアナッチョがファン・デル・バンク教授の研究成果を盗用したと結論していた。

院生・イへアナッチョは大学の結論に反論する権利がある。そして、その反論の権利として、数回の審問が認められていた。

その審問期間中に、院生・イへアナッチョは、ツイッターで自分が盗用者ではなく、ファン・デル・バンク教授が盗用者だと訴えたのである。

2018年4月23日(54歳)、ツイッター発信の8日後、ヨハネスブルグ大学は、内部調査の結果、ファン・デル・バンク教授に対するデータ盗用の申し立ては「根拠がなく、事実ではない」と、新聞メディアを通して発表した。

ヨハネスブルグ大学のハーマン・エスターホイズン広報担当者(Herman Esterhuizen)は、「残念ながら、ソーシャルメディアは、実証されていない主張をアップできることです」と付け加えた。

★盗用の具体例

このファン・デル・バンク事件で、白楽は盗用論文と被盗用論文を比較した盗用分析図など、盗用の具体的な証拠をつかめなかった。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年8月19日現在、パブメド(PubMed)で、ミシェル・ファン・デル・バンク(Michelle van der Bank)の論文を「Michelle van der Bank [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2004~2017年の14年間の20論文がヒットした。

院生のヘンリー・イへアナッチョ(Henry Iheanacho)との共著論文はなかった。

「van der Bank M[Author]」で検索すると、2001~2017年の17年間の27論文がヒットした。

2018年8月19日現在、「van der Bank M[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2018年8月19日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ミシェル・ファン・デル・バンク(Michelle van der Bank)の論文のコメントはない:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》指導教員がデータを盗用

ミシェル・ファン・デル・バンク教授(Michelle van der Bank)、http://toyotaoutreach2009.blogspot.com/2009/09/delegates.html

院生が指導教員にデータを盗用されたという主張は珍しくない。白楽の経験では、その大半は、院生の誤解だと思うが、実際に盗用された場合もあるだろう。

今回のファン・デル・バンク事件を読み解くと、実は、話が真逆で、院生・イへアナッチョが盗用者だった。大学が自分を盗用者と結論したことに腹を立てて、腹いせに、ツイッターで、ファン・デル・バンク教授が盗用者だと訴えたのだ。

つまり、教授は実際の盗用者ではない。むしろ、院生が盗用者なのだ。

類似事件
→ 工学:シャヒド・アザム(Shahid Azam)(カナダ)

《2》ツイッターでネカト告発

米国のトランプ大統領はツイッターでいろいろ発言しているが、ツイッターは発言内容に第三者のチェックなしで発信できる。

ネカトでも、ネカト者がツイッターやフェイスブックで自分に有利な情報を上手に発信すると、世間は混乱し、何が正しいのかわからなくなる。院生、研究者、大学、大手メディアはフェイク・ニュースに翻弄され右往左往する。
→ アニンディタ・ユーキル(Anindita Ukil)(インド)

現代はそういう時代なんだ、と受け止める。

しかし、院生がツイッターやフェイスブックで自分に都合のいい情報を発信すると、ウソやデマであっても、世間は信じてしまう可能性が高い。

ウソやデマを打ち消すにはどうすると良いのだろうか?

ヨハネスブルグ大学は、半ば公的なメディアである新聞を通して、院生・イへアナッチョの主張はウソだということを、社会に通知した。

それで、本来は新聞記事にならないような盗用事件が新聞記事になったのだ。

日本の新聞にこの役割を期待できるだろうか?

《3》指導教授の承認を得ないで論文投稿

院生・イへアナッチョのツイッター情報が正しいと仮定しよう。

院生・イへアナッチョは自分の論文をまとめ、学術誌に投稿したところ、同じ論文が既に投稿されていると知らされた。つまり、院生・イへアナッチョが盗用したと指摘されたのだ。

この流れの中で、不思議に感じるのは、「院生・イへアナッチョは自分の論文をまとめ、学術誌に投稿」である。

院生なら、通常、指導教授と相談の上、論文にまとめる。だから、指導教授が院生の論文投稿を知らないハズがない。指導教授の承認を得ないで論文投稿することは、通常、考えられない。でも、もしそうしたのなら、その時点で、院生・イへアナッチョが何らかの不正をした可能性が高い。今回の事件では、イへアナッチョが盗用したから、指導教授に無断で投稿したのだろう。ヨハネスブルグ大学が、院生・イへアナッチョが盗用したと結論していたことに納得がいく。

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●8.【主要情報源】

① 2018年4月15日:Kingsway SRCさんのツイート: “The Professor who stole the work of a student is Prof. Michelle van der Banlk from the Faculty of science. Here is what happened:… https://t.co/ntncjCliVj”
② 2018年4月18日のカガウジェロ・マスウェニング(Kgaugelo Masweneng)記者の「Times Live」記事:UJ finds student’s claims of plagiarism to be baseless
③ 2018年4月23日のクイントン・ローレンス(Quinton Lourens)記者の「Nova Mentis News」記事:UJ Denies Academic Theft by Professor | Nova Mentis News、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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