マリリア・ゴメス(Marilia de Brito Gomes)(ブラジル)

2016年6月5日掲載。

ワンポイント:学術誌の編集長が盗用検出ソフトで盗用をチェックしたら、もう1人の編集長の論文が盗用(?)だった

【概略】
faperj_mariliadebritogomes5peqマリリア・ゴメス(Marilia de Brito Gomes、写真出典)は、ブラジルのリオデジャネイロ州立大学(Rio de Janeiro State University)・内分泌学部・教授で、医師である。専門は内分泌学(糖尿病)で、ブラジル糖尿病学会(SBD)会長を務め、その時、糖尿病・代謝疾患の学術誌「Diabetol Metab Syndr」誌を創設し、2人の編集長の1人に就任した。

2014年(63歳?)、学術誌「Diabetol Metab Syndr」の共同編集長が盗用検出ソフトを導入し、盗用をチェックしたら、ゴメス・編集長の2論文が盗用に引っかかった。

但し、ブラジル糖尿病学会は、この2論文は総説なので、盗用に該当しないと結論した。

ゴメスは、盗用の責任は論文共著者のカルロス・ネグラット(Negrato CA)にあると述べた。リオデジャネイロ州立大学は調査に入った様子はなく、ゴメスは編集長を辞任したが大学教授は辞任しなかった。

この事件の日本語解説が1つあった。「サンパウロ新聞」で記事を本文に引用した。

01-08-2012-uerjリオデジャネイロ州立大学(Rio de Janeiro State University)。写真出典

  • 国:ブラジル
  • 成長国:ブラジル
  • 研究博士号(PhD)取得:サンパウロ連邦大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1951年1月1日生まれとする。1973年に大学卒業した時を22歳とした
  • 現在の年齢:66 歳?
  • 分野:内分泌学
  • 最初の不正論文発表:2013年(62歳?)
  • 発覚年:2014年(63歳?)
  • 発覚時地位:リオデジャネイロ州立大学・教授
  • 発覚:学術誌・編集長が盗用検出ソフトで発見
  • 調査:①学術誌・編集長。②ブラジル糖尿病学会・調査委員会
  • 不正:盗用?
  • 不正論文数:2報
  • 時期:研究キャリアの後期から
  • 結末:学術誌・編集長を辞任。教授職の辞職なし

【経歴と経過】
主な出典:Projeto de Resolução

  • 生年月日:不明。仮に1951年1月1日生まれとする。1973年に大学卒業した時を22歳とした
  • 1973年(22歳?):ブラジルのリオデジャネイロ州立大学(Rio de Janeiro State University)を卒業
  • 1980年(29歳?):サンパウロ連邦大学・医学部(Escola Paulista de Medicina)卒。医師免許
  • 1989年(38歳?):サンパウロ連邦大学で、研究博士号(PhD)取得。内分泌・糖尿病
  • xxxx年(xx歳?):リオデジャネイロ州立大学(Rio de Janeiro State University)・内分泌学部・教授
  • 2008-2009年(57-58歳?):ブラジル糖尿病学会(SBD)会長。「Diabetol Metab Syndr」誌を創設し、編集長に就任
  • 2013年(62歳?):「Diabetol Metab Syndr」誌に問題の論文発表
  • 2014年(63歳?): 盗用発覚
  • 2014年(63歳?):「Diabetol Metab Syndr」誌・編集長を辞任

【動画】

【動画1】
マリリア・ゴメス(Marilia de Brito Gomes)はテレビの糖尿病の情報番組に出演しコメントしている。3部作。
1部:「Dr Marília de Brito Gomes | Bem Estar – YouTube」(ポルトガル語)15分16秒。
Trevo Soluções em Comunicação が2014/12/22 に公開(収録は2011年9月28日)
下の写真をクリック(ゴメスは右から2人目)。
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【日本語の既解説】

★サンパウロ新聞:2014年6月9日

出典 → ブラジル人大学教授 発表した論文に盗作疑惑 » サンパウロ新聞保存版

ブラジル人大学教授 発表した論文に盗作疑惑
2014年6月9日

糖尿病と代謝障害に関する学術誌として世界的に権威のある「Diabetology & Metabolic Syn drome(D&MS)」誌は、当時同誌の編集長だったリオ州立総合大学(UERJ)内分泌学部のマリリア・ゴメス教授が同誌に共同執筆者として掲載していた2本の論文について盗作疑惑があることを明かした。5日付フォーリャ紙(ウェブ版)が報じた。

先月28日に行われたこの発表について、論文の筆頭執筆者であるカルロス・ネグラット氏は同氏とマリリア氏が盗作を行ったという事実はないとした上で、「2本の論文は文献レビューであり盗作には当たらない」と述べている。

これを受けて、同誌の発行元であるブラジル糖尿病学会(SBD)会長でカンピーナス総合大学(Unicamp)のワルテル・ミニクッチ教授は、学会上層部での会議の結果、ネグラット氏の説明を支持することを決定した。また、この目的で独立した調査委員会を設置して監査を行う方針を示した。

マリリア氏は2008~09年に同学会の会長を務めた経歴があり、その期間に創刊されたD&MS誌では編集長のポストを務めていたが、論文発表の5日前に突然辞任している。

同氏は、説明の責任は筆頭執筆者であるネグラット氏にあるとしてコメントを避けている。

2014年6月7日付

【不正発覚の経緯と内容】

2014年、糖尿病・代謝疾患の学術誌「Diabetology & Metabolic Syndrome」誌は盗用検出ソフトを導入した。

FOTOS0102人の編集長の1人が、自分の学術誌の論文を対象に盗用検出ソフトを稼働させたら、もう1人のゴメス編集長の論文が盗用だ検出された。

★「2013年5月号のDiabetol Metab Syndr」論文

以下が盗用論文。パブメドには総説(レビュー)「Review」と明記されていないが、「Diabetol Metab Syndr」誌の論文タイトル前に「Review」と明記されている。

撤回公告によると、被盗用論文は以下の3報(Retraction Note: Historical facts of screening and diagnosing diabetes in pregnancy | Diabetology & Metabolic Syndrome | Full Text)。

  1. Mestman JH: Historical notes on diabetes in pregnancy. Endocrinologist. 2002, 12: 224-242. 10.1097/00019616-200205000-00010.View Article
  2. Lynn PL, et al: Hyperglycaemia and Adverse Pregnancy Outcomes (HAPO) Study: An Overview. Gestational Diabetes Before and After Pregnancy. Edited by: Kim C, Ferrara A. 2011, London: Springer, 17-34. Chapter 2
  3. Mukesh A: Evolution of Screening and Diagnostic Criteria for GDM Worldwide. Gestational Diabetes Before and After Pregnancy. Edited by: Kim C, Ferrara A. 2011, London: Springer, 35-49. Chapter 3

★「2013年9月号のDiabetol Metab Syndr」論文

以下が盗用論文。こちらはパブメドに総説(レビュー)「Review」と明記されている。

撤回公告によると、多数の論文から盗用したとある(Retraction Note: Low birth weight: causes and consequences | Diabetology & Metabolic Syndrome | Full Text)。

2つの論文とも、盗用と指摘された部分を白楽が把握できないので、ここに具体的に示せない。ただし、2つの論文とも図表がなかったので盗用と指摘された重複部分は文章だけである。

総説なら、過去の論文の文章が重複しても、重複の程度・記載によるが、不正とは言えない気がする。

【論文数と撤回論文】

2016年6月4日現在、パブメド(PubMed)で、マリリア・ゴメス(Marilia de Brito Gomes)の論文を「Marilia de Brito Gomes [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2003~2016年の14年間の25論文がヒットした。

「Gomes MB[Author]」で検索すると、2003~2016年の14年間の125論文がヒットした。このデータで以下を調べた。

2016年6月4日現在、本記事で問題にした「2013年のDiabetol Metab Syndr」誌の2論文が2014年に撤回されている。

【白楽の感想】

《1》盗用ではない?

Marilia de Brito Gomesサンパウロ新聞記事では、第一著者のカルロス・ネグラットは、「2本の論文は文献レビューであり盗用には当たらない」と述べている。そして、ブラジル糖尿病学会のワルテル・ミニクッチ会長は、「学会上層部での会議の結果、ネグラット氏の説明を支持することを決定した」とある。

それなら、どうして、論文を撤回するの? 撤回したのは盗用だったからでしょう。ブラジルはおかしくないか? クロをシロと強弁していないか?

と思った一方、ネグラットの主張が正しいかも、とも思う。

第一著者のカルロス・ネグラットが主張するように、2報の論文はハッキリ「Review」と明記されている。総説(レビュー)の場合、過去の自他の論文をまとめるので、内容は少なくとも過去の自他の論文の内容をたくさん集めて記述する。集めるときに文章も一緒に集める。

そして、総説にまとめて発表するときは、文献引用が必須であるが、集めた文章をもとに記述することになる。

この時、文章を言い換えるのが難しい場合がある。というか、科学的文章をうまく言い換えるのは、実際は至難である(少なくとも白楽には)。それに言い換える時間と努力は無駄だ。それで、ある程度、文章を再使用することになるだろう。ここで、ポイントは、文献引用をしなければならない。

しかし、短い文章なら文献引用は不要だろう。大幅な言い換えをした場合(咀嚼して自分の文章として書いた場合)、文献引用の必要性は微妙である。

総説で、過去の自他の論文中の文章を、文献引用しないで、再使用する場合、どの程度の量と質なら許容範囲なのだろうか?

実は、学術界では明確な基準が示されていない。コンセンサスも、もちろんない。一般的な盗用事件の場合、明らかに盗用と思える量の文章を再使用している。ギリギリのケースで、盗用かどうか、量と質が議論されることはマレである。

ゴメス事件の該当論文の重複部分を読み比べていないが、ゴメスが、他人の文章・アイデアを自分の文章・アイデアのように記述しているのか、それとも、淡々と事実を記載しているのか、にも依存するだろう。

白楽には、時間をかけて調べないと、盗用かどうか、判断がつかない。

2014年6月9日の新聞報道では、ブラジル糖尿病学会が調査委員会を設けて調査すると書いてあった。それから約2年経つが、どうなったのだろう?

《2》その後?

無題本事件は、2014年6月9日に新聞報道されてから約2年になるが、その後、ゴメスの所属大学であるリオデジャネイロ州立大学が調査したという話はでてこない。

ブラジル糖尿病学会は、この2論文は総説なので、盗用に該当しないとした。

ゴメスは、盗用の責任は論文共著者のカルロス・ネグラットにあると述べた。リオデジャネイロ州立大学は調査に入った様子はなく、ゴメスは編集長を辞任したが大学教授は辞任しなかった。

ただ、2014年10月10日、サンパウロ新聞は、「論文盗作や改ざんなど 研究者5人の実名を公表 »」という記事を発表した。記事には研究者5人の実名が掲載されていないが、リオデジャネイロ州立大学は該当していない。従って、ゴメスは入っていない。

ブラジル研究ネカトへの対処があまいと思っていたが、実名を公表し、まともに対処するようになってきた印象だ。

【主要情報源】
① 2014年6月9日の「サンパウロ新聞」記事:ブラジル人大学教授 発表した論文に盗作疑惑 » サンパウロ新聞保存版
② 2014年6月4日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Editor in chief steps down after being found plagiarizing in her own journal – Retraction Watch at Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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