慶應義塾大学の里宇明元(医)と牛場潤一(理工):① データねつ造疑惑

2024年8月20日掲載

ワンポイント:【長文注意】。2018~2023年、慶應義塾大学・リハビリ医学/理工学の里宇明元・教授(医)と牛場潤一・教授(理工)の研究不正疑惑(+補助金不正受給疑惑)を、千野直一・慶應義塾大学・名誉教授と村岡慶裕・早稲田大学・教授が文部科学省と週刊文春に告発した。ボトックス注射、併用治療、被験者のすり替えで治療効果を得たにもかかわらず、自分たちが開発したBMI 治療器が有効だと里宇教授と牛場教授らが結論したBMI 治療器の臨床試験は、BMI 治療器の単独効果を偽装した研究不正である、と告発した。この臨床試験では20億円以上の公的研究費が使用されている。慶應義塾大学は調査の結果、シロと結論した。この事件の、告発状、調査結果、不服申し立て書、などの資料を公開した。日本のネカト調査は「かなり歪んでいる」と白楽は感想で述べた。

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慶應義塾大学・リハビリ医学/理工学の研究不正疑惑事件シリーズ
 ① 里宇明元(医)と牛場潤一(理工):データねつ造疑惑(2024年8月20日掲載)
 ② 千野直一の研究業績を里宇明元(医)が横取り疑惑(2024年8月30日掲載)
 ③ 村岡慶裕の研究業績を里宇明元(医)が横取り疑惑(2024年9月10日掲載)
 ④ その他(未定)

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.序章:文春記事
2.はじめに
3.疑惑者と追及者
4.データねつ造事件
 《1》その1:2018年7月20日告発:「2015年のKasashima 論文」
 《2》その2:2019年9月3日告発:「2016年のKawakami論文」
 《3》その3:調査委員の選考と調査が不適切
 《4》その4:2020年3月21日告発:「2015・2016年の3論文」
 《5》その5:牛場教授の過去18年間の研究成果
5.里宇教授と牛場教授が使用した研究費
6.日本のメディア報道
7.論文数と撤回論文とパブピア
8.白楽の感想
〇.コメント
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●1.【序章:文春記事】

事件を簡単に把握できるように、最初に「文春オンライン」記事を紹介する。

★2018年10月4日:森 省歩(文春オンライン):「STAP細胞事件より悪質」 慶応大は詐欺疑惑を究明できるか(リンク切れ)

慶応大学医学部で浮上した「公的研究費20億円」詐欺疑惑。「週刊文春」先週号が報じた夢のリハビリ機器・BMI治療器を巡る効果捏造問題が波紋を広げている。

実名告発に踏み切った慶応大学名誉教授の千野直一医師(79)と早稲田大学人間科学学術院の村岡慶裕教授(46)のもとへは、小誌発売直後からNHK、TBS、テレビ朝日、フジテレビなどからの取材が殺到。中には「ボトックス注射の効果をBMI治療器の効果にすり替えていたとすれば、組織的という点でSTAP細胞を巡る研究データ捏造事件よりも悪質だ」との認識を示す記者もいたという。

●2.【はじめに】

★おことわり

文中は敬称略です。但し、資料等中の敬称はそのまま使用した。

本シリーズの記事は事実を中心に中立の立場で記載するよう努めたが、告発者側からの情報を土台に記事をまとめている。従って、結果として、告発者側の見方に偏っている恐れがあることを、あらかじめお断りしておく。

白楽は、被告発者に取材していない。文部科学省や慶應義塾大学にも取材していない。

★記事の意図

本シリーズでは、慶應義塾大学・リハビリ医学/理工学の研究不正疑惑に関して、文部科学省 への告発状、慶應義塾大学の調査報告書、告発者の不服申し立て書、その回答、裁判記録(シリーズ②)、陳述書(シリーズ②)、さらに、関係者間のメールのやり取り、を公開した。

日本での、研究不正の告発、大学の調査、調査の問題点、関係者間の連絡など、研究不正疑惑とその対処に関する日本の実態を細部まで具体的に理解できると想定した。

意図は、日本の研究不正とその対処の実態、特に大学のネカト調査不正、を事例を通して知ることで、研究不正対処の改善点を考え・議論・実行してもらいたいということである。

大学のネカト対処関係者は、同じような間違いを繰り返さないで、一歩も二歩も進んだ対処をするよう学んでほしい。

また、研究不正をただす強い決意で巨大な組織に立ち向かってきた2人の告発者を紹介することで、日本の研究公正文化を高めたい意図もある。

これから、同じようにネカト告発をする人、ネカトハンティングする人の参考になることを願う。

白楽記事の方針は、事実に誤りがない限り、特定の個人・大学・機関にとって不利益・不愉快な情報でも、社会全般の利益(公益)を優先し、事件を具体的に理解できるよう、可能な限り実名で具体的に記述することである。

といっても、本事件は、日本の週刊誌に複数回、実名報道されているので、関係者の実名と顔写真は既に公表されている。

本シリーズの記事では、文部科学省等への告発状などを公開している。その告発状などに掲載された写真、論文などは、ウェブ掲載の許可を得ていない。しかし、告発状の該当部分を黒塗り・ぼかし・削除などをすると、全体像の理解がゆがむので、なるべく改変せずに公開した。重要さと公益性に鑑み、ほぼ原文のまま掲載することを、関係各位に、ご了承をお願いする。

●3.【疑惑者と追及者】

★疑惑者その1:里宇明元

慶應義塾大学リハビリテーション医学教室の里宇明元・教授(現・名誉教授)(りう めいげん、Riu, Meigen、Liu, Meigen、写真出典)の研究不正事件である。

本シリーズで扱う事件は、データねつ造事件1件と研究業績の横取り(盗用、不正引用)事件2件の3つの別々の事件である。

なお、3件とも、慶應義塾大学は里宇教授を無罪としている。それで、読む人の立場や解釈によって、「事件」ではなく、「疑惑事件」や「冤罪事件」と読みかえてください。

【里宇教授の経歴】

主な出典:里宇明元(りう めいげん)

生年月日:仮に、1955年1月1日生まれとした。2018年9月27日の週刊文春の記事に63歳とあったので。

1979年  慶應義塾大学医学部卒業、 同大学病院研修医
1984年  米国ミネソタ大学医学部レジデント(リハビリテーション科)
1985年  国立療養所東埼玉病院理学診療科医長
1987年  日本リハビリテーション医学会専門医取得
1989年  医学博士号取得
1993年  埼玉県総合リハビリテーションセンターリハビリテーション科医長
1999年  同リハビリテーション部長
2002年  慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室助教授
2004年  慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室教授(49歳?)
2020年  慶應義塾大学・教授を退職し、名誉教授(65歳?)

―――以下事件絡み――

  • 2013~2018年(58~ 63歳?):この6年間で25億円以上の研究費を使用
  • 2016年12月18日、森省歩・記者のサンデー毎日の記事
  • 2017年12月31日(62歳?):村岡教授のサンデー毎日の記事
  • 2018年7月20日(63歳?):村岡教授・千野名誉教授が文部科学省に1回目の告発
  • 2018年9月27日(63歳?):森省歩・記者の週刊文春記事
  • 2018年10月4日(63歳?):森省歩・記者の文春オンライン記事
  • 2019年9月3日(64歳?):千野名誉教授・村岡教授が文部科学省に2回目の告発
  • 2020年3月21日(65歳?):千野名誉教授・村岡教授が文部科学省に3回目の告発

★疑惑者その2:牛場潤一

慶應義塾大学・理工学部・ 生命情報学科の牛場潤一・教授(うしば じゅんいち、Ushiba, Junichi、写真出典)は、里宇教授の共同研究者だが、里宇教授の定年退職後、里宇教授の研究費と研究内容を引き継ぐ形で、研究不正を続けていると指摘されている。

【牛場教授の経歴】

主な出典:牛場潤一 – Wikipedia

生年月日 1978年7月8日生まれ。
1991年 慶應義塾幼稚舎卒業
1994年 慶應義塾普通部卒業
1997年 慶應義塾湘南藤沢高等部卒業
2001年 慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒業
2002年 慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻修士課程修了
2003年 オルボー大学感覚運動統合センター客員研究員
2004年 慶應義塾大学大学院理工学研究科、博士(工学)の学位を取得
2004年 慶應義塾大学理工学部助手
2007年 慶應義塾大学理工学部専任講師
2012年 慶應義塾大学理工学部准教授
2018年 研究成果活用企業 Connect株式会社 創業
2019年 Connect社 (現Lifescapes社)代表取締役 CEO 兼務
2022年 慶應義塾大学理工学部教授(43歳)

―――以下事件絡み――

  • 2023年7月19日(45歳):森省歩・記者の週刊文春(電子版)記事
  • 2023年7月27日(45歳):森省歩・記者の週刊文春記事

★2人の追及者

データねつ造事件と研究業績の横取り事件の追及者の1人は、慶應義塾大学の同じリハビリテーション医学教室の先任教授であった千野直一・名誉教授(ちの なおいち、CHINO Naoichi、写真左出典)である。

千野名誉教授は、慶應義塾大学・医学部・リハビリテーション医学教室の初代教授である。20年以上、脳卒中片麻痺患者の機能評価、治療用機器の開発などを研究し、日本リハビリテーション医学会・理事長も務め、2003年に慶應義塾大学を定年退職した。里宇教授は、2004年、リハビリテーション医学教室の助教授から教授に昇格した。里宇教授は千野名誉教授の弟子でかつ後継教授だった。

もう1人の追及者は、早稲田大学の生体計測工学・リハビリテーション科学者である村岡慶裕教授(むらおか よしひろ、写真右出典)である。また、研究業績の横取り事件の2件目では、直接の被害者で、単独で里宇教授を追及している。

村岡教授は、慶應義塾大学・ 理工学部・計測工学科/理工学研究科・生体医工学専攻で学部生/院生、その後、教員を務めたのち、現在は早稲田大学・健康福祉科学科・医工人間学系の教授である。慶應義塾大学に学部生/院生・教員として在籍していたので、慶應義塾大学の状況に精通している。

慶應義塾大学病院。写真出典

●4.【データねつ造事件】

★事件の概略

慶應義塾大学リハビリテーション医学教室の里宇教授は、25億円以上の公的研究費(原資は国民の税金)を使用し、BMI治療器の治療効果を試験する臨床試験を行なった。[注:BMIはブレイン・マシン・インターフェイス(Brain-Machine Interface)]

その成果の1つとして、2015年4月(60歳?)、里宇教授は、「2015年4月のJ Rehabil Med.」論文を発表し、臨床試験の結果、BMI治療器が有効だと結論した。

ところが、2018年(63歳?)、里宇教授の教室の先任教授であった千野名誉教授は、里宇教授の上記論文の臨床試験にデータねつ造箇所があることに気が付き、文部科学省等に告発した。

里宇教授の立場から、事件を項目化すると以下のようだ。

  1. 国:日本
  2. 医師免許(MD)取得:慶應義塾大学
  3. 研究博士号(PhD)取得:慶應義塾大学
  4. 男女:男性
  5. 生年月日:仮に、1955年1月1日生まれとした。2018年9月27日の週刊文春の記事に63歳とあったので
  6. 現在の年齢:69 歳?
  7. 分野:リハビリテーション医学
  8. 不正疑惑論文発表:2015~2018年(60~63歳?)の4年間
  9. 不正行為時の地位:慶應義塾大学・教授
  10. 発覚年:2018年(63歳?)
  11. 発覚時地位:慶應義塾大学・教授
  12. ステップ1(発覚):第一次追及者は千野名誉教授と村岡教授。文部科学省等に告発
  13. ステップ2(メディア):「週刊文春」、「サンデー毎日」
  14. ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①慶應義塾大学・調査委員会
  15. 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。慶應義塾大学はシロと結論
  16. 大学の透明性:発表なし(✖)。慶應義塾大学はシロと結論
  17. 不正:慶應義塾大学は、ねつ造・改ざんなしと結論
  18. 不正疑惑論文数:2015~2018年(60~63歳?)の4報。撤回論文は0報
  19. 時期:研究キャリアの後期から
  20. 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  21. 処分:なし。慶應義塾大学はシロと結論
  22. 対処問題:大学隠蔽、大学調査不正
  23. 特徴:数十億円(25億円以上)の公的研究費を受給した研究成果のデータがねつ造だった。サンデー毎日(森省歩・記者、村岡教授)、週刊文春(森省歩・記者+文春取材班)が報道したが、ジャニーズ事件と同様、主要メディア、国は静観

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は30億円(大雑把)。

★事件の医学部分:苦手な人は飛ばしてOK

データねつ造疑惑は臨床試験データのねつ造なので、臨床試験の内容を理解した方がわかりやすい。とはいえ、医学用語が苦手な人はこの節を飛ばしても、研究不正疑惑のポイントは問題なく理解できる。

【動画】
ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-machine Interface : BMI)の解説。疑惑者その2の牛場教授が解説している。
 → BMI技術を応用した神経リハビリテーションと人間拡張/應義塾大学理工学部 牛場潤一研究室/研究成果活用企業 株式会社LIFESCAPES【DCEXPO2022】 – YouTube

ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-machine Interface : BMI)は、

ウィキペディアの解説によれば、

脳波等の検出・あるいは逆に脳への刺激などといった手法により、脳とコンピュータなどとのインタフェースをとる機器等の総称である[1]。(ブレイン・マシン・インタフェース – Wikipedia

疑惑者その1の里宇教授の説明によれば、

「脳介機装置」と訳され、「人と機械の意思や情報の仲介のためのプログラムや機器であるマンマシンインターフェース(人介機装置)のうち、脳波を解析して機械との間で電気信号の形で出入力するためのプログラムや機器」と定義される。

リハビリテーション医学におけるBMIは「脳機能の一部と機械を融合させ、障害を低減するための技術」と位置付けられ、臨床応用が実現すれば本人のADL、QOLの向上、社会参加の促進をもたらすだけでなく、社会全体の医療・介護に係わる負担を軽減することで、大きな福音となりうる。(出典:2010年の日本障害者歯科学会総会および学術大会レポート

【その1:「2015年のKasashima 論文」】

★2018年7月20日:文部科学省に告発

「2018 年7月20 日付け、文部科学省 への告発状」から、ポイントを以下に抜粋・流用・編集した。

ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-machine Interface : BMI)は、「脳の神経ネットワークに流れる微弱な電流から出る脳波を計測機器によって感知し、これを解析する事によって人の思念を読み取り、電気信号に変換する事で機器との間で情報伝達を仲介する」と定義されている。

疑惑者その1の里宇教授は、頭部に脳波用電極内蔵のヘッドギアを取り付け、指を伸ばすイメージをすると、頭皮上から指伸展に対応した部位の活動(正常人の3 ~ 4%にみられる脳波であるμ波の減衰)をヘッドギアが感知し、手関節部の装具の手指伸展をトリガーする非侵襲 BMI 治療器を開発した。

2008年(53歳?)、里宇教授はBMI 治療器を完成した。

そのBMI 治療器を毎日約 45 分間使用することで、全く指が伸びない患者でも、10 日間程で僅かに指が伸びるようになると、里宇教授は「2015年のKasashima 論文(J Rehabil Med.)」で発表した。疑惑者その2の牛場教授は共著者である。

2024年8月19日現在、論文は撤回されていない。

しかし、BMI 治療器が完成したと報じた 2008 年以降、10 年以上、臨床試験を続けて来たにもかかわらず、BMI 治療器の動作やその効果を確認した者は、里宇教授の研究グループ以外誰一人いない。

また、BMI 治療器に関心を持っていた臨床家や研究者が特に疑問に感じていた事は、そもそも、慢性期脳卒中で重度麻痺になり、手指の伸展運動が全く認められない状態の患者が、図 2(下図、出典:本告発状)のように実験架台上に手指を伸ばした状態に固定出来るのか、という疑問だった。

種明かしをすると、実は、里宇教授は臨床試験の被験者にボトックス**を注射していた。

ボトックス**:日本小児神経学会の説明
ボトックス®とはボツリヌス毒素筋肉注射製剤の商品名です。その効果は、筋肉に注射すると、その筋肉へ入り込んでいる運動神経の末端に作用して、注射された筋肉のみを弛緩させることができます。

重症の脳性麻痺では、からだの痛み、良い姿勢がとれない、着替えなどの介護が大変なことがみられます。また、骨格変形が早期に進み、股関節脱臼や脊柱変形を生じます。このような場合でも、ボトックス®治療によって劇的に症状を軽快させることができます。

(出典:根津敦夫(横浜医療福祉センター港南神経小児科)、Q34:脳性麻痺患者へのボツリヌス(ボトックス)治療の有効性について教えてください。|一般社団法人 日本小児神経学会)

日本小児神経学会の上記の説明にあるように、ボトックスには筋弛緩効果があることは、以前から知られていた。

さらに、フェノールなどと同様にボトックスの副次効果として、弛緩した筋肉と反対の作用をする拮抗筋の随意筋活動を促進することも、リハビリ治療において一般的に知られていた。 → 藤原俊之(被告発側の人):(3)脳卒中後痙縮に対する リハビリテーション [特集:脳卒中リハビリの今]、No.4763 (2015年8月8日)、日本医事新報会

2018年6月10日、村岡教授・千野名誉教授は、里宇教授の臨床試験で、被験者だった患者の闘病日記にボトックスが使用されていたことを見つけた。

ボトックスを注射したから、重度麻痺の被験者の手指を伸ばすことができ、実験架台上に伸びた状態の手指を固定出来たのである。

これで謎がとけた。

つまり、 BMI治療器の治療効果は実際はボトックスの効果だったのだ。

それを隠すために(白楽の推定)、里宇教授は、ボトックスを使用したことを論文に記載しなかった。それどころか、薬物治療を行なっていないと論文に記述していた。

里宇教授がBMI 治療器を完成したと2008年に発表してから10 年が経過するが(告発した2018年当時)、里宇教授の研究グループ以外、BMI 治療器の治療効果を再現できていないのも、納得できる。

村岡教授・千野名誉教授は、BMI治療器の効果を偽装したデータねつ造事件だと確信した。

里宇教授の「2015年のKasashima 論文」は、データをねつ造していたのだ。

村岡教授・千野名誉教授は、十分に検証を重ね、2018年7月20日、里宇教授のデータねつ造を文部科学省・研究振興局/振興企画課/競争的資金調整室などに告発した。

以下は「2018 年 7 月 20 日付け、文部科学省・研究振興局/振興企画課/競争的資金調整室 への告発状」(45ページ)の冒頭部分。閲覧・ダウンロードは冒頭部分をクリック、または、 → ココ

★2019年3月14日:調査報告書

村岡教授・千野名誉教授が文部科学省 に告発した2018 年 7 月 20 日付けの告発状は、調査の主体である慶應義塾大学に伝えられた。

慶應義塾研究コンプライアンス委員会(青山委員会、後述)は、慶應義塾大学・医学部の三村 將・教授(みむら まさる、精神・神経学が専門、写真出典)を委員長とする委員会を設置し、本調査を行なった(三村委員会とする)。

告発から8か月後の2019年3月14日、三村委員会は調査報告書をまとめ、シロと結論した。

三村委員会の結論を以下に示す(下線は白楽)。

以上のとおり、被告発者における本臨床研究においては、本件論文中に記載はなされてはいないものの、ボトックス使用の事実は認められるところである。

しかし、当該ボトックスの使用が本臨床研究に与える影響はごく限定的であり、本臨床研究が実施された当時の他の論文におけるボトックス使用に関する記載の状況とも照らし合わせてみれば、被告発者において重大な倫理指針不適合はなく、また特定不正行為に該当する行為もなかったものと判断する

以下は「2019年3月14日の調査報告書」(14ページ)の冒頭部分。閲覧・ダウンロードは冒頭部分をクリック、または、閲覧・ダウンロード先 → ココ

★2019年5月17日:不服申し立て

三村委員会の調査報告書を受け取った千野名誉教授・村岡教授は調査報告書を精査し、そのデタラメな調査と結論に唖然とした。

2か月後の2019年5月17日、千野名誉教授・村岡教授は調査報告書の問題点をまとめ、文部科学省・研究振興局/振興企画課/競争的資金調整室 に提出した。

調査報告書の問題点のポイントを以下に示す。

三村委員会の報告書では、

本調査を行った結果、本研究に併用してはならないボトックスが複数の被験者に使用された事実が判明し、かつ、その事実を研究結果の論文に一切記載していない事実も判明した。

とある。

しかし、おかしなことに、三村委員会は、重大な倫理指針不適合はない、特定不正行為はない、と強弁した。

それで、千野名誉教授・村岡教授は、

本調査結果は、①手続的な適正さを欠くこと、②内容としても明らかな事実誤認及びこれに基づく判断(被告発者からの一方的なヒアリングによる事実認定、及び、学術的に誤った見解に基づく判断)が行なわれており、極めて不適切であり、そのことを指摘の上、本調査をやり直すべきであります。

と、不服を申し立てた。

早い話、三村委員会はまともな調査をしていないので、やり直せ、と指摘したのだ。

ちょっと乱暴な言葉でまとめてしまった。ゴメン。

以下の「2019年5月17日、慶應義塾研究コンプライアンス委員会による本調査結果の問題点」(29ページ)を読んでいただくと、よくわかる。

閲覧・ダウンロードは冒頭部分をクリック、または、閲覧・ダウンロード先 → ココ

★2019年6月25日:不服申し立てへの回答

「2019年5月17日、慶應義塾研究コンプライアンス委員会による本調査結果の問題点」に対して、2019年6月25日、慶應義塾研究コンプライアンス委員会の青山藤詞郎・委員長(専門は機械工学、あおやま とうじろう、写真出典)は、次のように回答してきた。

①は、ご指摘には当たらないと認識しております。

②は、複数のご指摘をいただいておりますうち、「先行論文」との表現については、論文の書かれた時期から「当該分野での他の論文」等の表現が適当であったと思われますので、ここに訂正させていただきます。その他はいずれも本調査委員会で議論された点であり、事実誤認はないと認識しております。

結局、本学としては本調査のやり直しは必要ないと判断いたします。なお、ボトックスの効果等に関するご指摘については、研究不正ということではなく、むしろ学会などの学術的なオープンな場でご議論いただくのが適当ではないかと思料いたします。(出典:「2019年6月25日、本調査結果に対する申立てについて」)

この回答を含め、調査委員会の回答スタイルを、8章の「白楽の感想」の「《4》大学のネカト御用調査 【御用調査その2:論点ずらし】」で解説した。

ジラスわけではないので、ここで、一言、白楽の感想を述べておく。

この回答が誠実な回答だというなら回答した人の能力に問題があり、能力がある人が回答したのなら誠実さに欠ける回答だと、白楽は思った。

つつみ隠さず資料を示しているので、読者の皆さんは、自分なりに判断されたい。

以下は「2019年6月25日、本調査結果に対する申立てについて」(1ページ)。閲覧・ダウンロードはこちらでも可能 → ココ

190625 慶應(回答)

 

【その2:「2016年のKawakami論文」】

★2019年9月3日:文部科学省に告発

前節「その1」で、千野名誉教授・村岡教授は、2018 年7月20 日、里宇教授の「2015年のKasashima 論文(J Rehabil Med.)」のデータねつ造・改ざんを文部科学省に告発した。

その1年2か月後の2019年9月3日、里宇教授の別の論文である「2016年のKawakami論文(Restor Neurol Neurosci.)」(牛場教授は共著者)のデータねつ造・改ざんを、文部科学省・研究振興局/振興企画課/競争的資金調整室 に告発 した。

2024年8月19日現在、論文は撤回されていない。

BMI-HANDS 療法の効果を臨床試験するには、告発者の1人である村岡教授が開発した「HANDS 療法用電気刺激装置 MUROsolution(以下、MURO)」(図出典は告発状)が正常に動くことが必須である。

ところが、村岡教授は、2013年1月7日、デンマークに研究留学中の新藤恵一郎医師から、MUROが正常に動いていないという連絡を受けた。

調べたところ、誤作動していた。

ということは、2013 年1 月以前は、慶應義塾大学・リハビリテーション医学教室のMUROも正常に動いていなかった、ことになる。

それなのに、2013 年1 月以前に行なった慶應義塾大学 のBMI-HANDS 療法の臨床試験を報告した「2016年のKawakami論文」は、BMI-HANDS 療法が有効だと報告していた。

MUROが誤作動しているのに、BMI-HANDS 療法が有効なはずがない。

これは、おかしい。

つまり、「2016年のKawakami論文」はデータねつ造・改ざんとしか思えない。

千野名誉教授・村岡教授は、十分に検証を重ね、2019年9月3日、里宇教授のデータねつ造・改ざんを文部科学省・研究振興局/振興企画課/競争的資金調整室 等に告発した。

以下は「2019年9月3日、文部科学省・研究振興局/振興企画課/競争的資金調整室 への告発状」(16ページ)。閲覧・ダウンロードはこちらでも可能 → ココ

190903告発2

 

★2020年7月10日:調査報告書

千野名誉教授・村岡教授が文部科学省 に告発した2019年9月3日の告発状は、調査の主体である慶應義塾大学に伝えられた。

慶應義塾大学・研究コンプライアンス委員会は、慶應義塾大学・医学部の岡村 智教・教授(おかむら とものり、衛生学公衆衛生学が専門、写真出典)を委員長とし、本調査を行なった(岡村委員会とする)。

告発から10か月後の2020年7月10日、岡村委員会は調査報告書をまとめ、シロと結論した。

調査報告書は22ページもある。数行でまとめると、全体を歪めてしまう。

読者には、調査報告書を読んでいただいただほうが良いと思う。お忙しい人のために、岡村委員会の結論(19ページ目)だけ、以下に書いた(下線は白楽)。

2 結論

以上のとおり、被告発者における本臨床研究においては、本件対象論文中に記載はなされてはいないものの、ボトックス使用の事実は認められるところである。

しかし、当該ボトックスの使用が本臨床研究に与える影響はごく限定的であり、本臨床研究が実施された当時の他の論文におけるボトックス使用に関する記載の状況とも照らし合わせてみれば、被告発者において重大な倫理指針不適合はなく、また特定不正行為に該当する行為もなかったものと判断する

「2020年7月10日、調査報告書」(22ページ)の閲覧は以下の冒頭部分をクリック、または、閲覧・ダウンロード先  → ココ

【その3:調査委員の選考と調査が不適切】

前々節「その1」、前節「その2」で、慶應義塾大学・研究コンプライアンス委員会は、三村委員会と岡村委員会を設け、2件、本調査を行なった。

前々節「その1」で述べたように、千野名誉教授・村岡教授は調査報告書の問題点をまとめ、不服申し立てをした。

前節「その2」で、千野名誉教授・村岡教授は公式には不服申し立てをしていない。しかし、調査報告書に納得していないのは明らかである。

2024年8月5日と2024年8月19日、千野名誉教授、そして、村岡教授は、問題点を説明した文書を白楽に送ってきた。

重要な点を指摘している。

そのまま公開する。

村岡教授のは11ページと長いけれど、是非、読んで、問題点を把握してください。

★千野名誉教授の指摘

2024年8月5日、白楽記事の作成中、告発者の千野名誉教授から、両委員会の委員の構成が不可解であること。また、告発者にヒアリングしなかった点は不適切だったと指摘した。

以下は千野名誉教授の指摘の冒頭部分である。全文PDFファイル(1ページ)の閲覧・ダウンロードは以下をクリック、または、こちらでも可能  → ココ

★村岡教授の指摘

2024年8月19日、村岡教授は、両委員会の委員の構成が不可解であること。また、告発者にヒアリングしない、重要書類を破棄した、ボトックス注入記録の調査をしない、など、調査がおかしかった、と白楽に文書を送付してきた。

村岡教授は、選出委員や調査方法について改善するよう要望したが、結果的には全て拒否された、とのことである。

以下は村岡教授の指摘の全文PDFファイル(11ページ)。閲覧・ダウンロードはこちらでも可能 → ココ

240819 8村岡:調査委員の選考と調査が不適切」の指摘240819

 

【その4:「2015・2016年の3論文」】

★2020年3月21日:文部科学省に告発

「その1」節、「その2」節でデータねつ造と指摘した以下の2論文+1論文の別の部分にもデータねつ造があった。

  1. 「2016年の里宇論文(Jpn J Rehabil Med )」
    脳卒中後重度上肢麻痺の回復に向けての挑戦
    里宇明元
    Jpn J Rehabil Med 2016;53:465-470
  2. 「2015年のKasashima 論文(J Rehabil Med.)」 → 「その1」で告発
  3. 「2016年のKawakami論文(Restor Neurol Neurosci.)」 → 「その2」で告発

里宇教授は、BMI 治療器は,「これまで治療が困難であった重度の慢性期脳卒中患者の約 70%の手指伸展筋の筋活動を回復させることができる画期的な装置」で、その効果について臨床的エビデンスを得たと述べている。

しかし、「2015年のKasashima 論文」の被験者の約 7 割は、重度上肢麻痺患者ではく、この論文の結論はデータねつ造に基づいている。

同様に、「脳卒中後重度上肢麻痺の回復に向けての挑戦 」とある「2016年の里宇論文」の「重度上肢麻痺」はデータねつ造に基づいた虚偽である。

さらに、「2016年の里宇論文」中に「未発表データ」として記載した臨床試験データは、後に、「2016年のKawakami論文」として発表した。

その論文では、約半数の上肢重度麻痺患者を麻痺の程度が軽い患者(通常の作業療法などでも回復が見込めるにすり替えていた。

そのことで、通常の作業療法の効果なのに、あたかも BMI 治療器の効果であるかのように見せかけていた。

つまり、明白なデータねつ造・改ざんである。

2020年3月21日、このような点を、千野名誉教授・村岡教授は、文部科学省・研究振興局/振興企画課/競争的資金調整室などに告発した。

以下は「2020年3月21日、慶應義塾大学リハビリテーション医学教室における被験者偽装と一般治療併用による BMI 治療効果の改竄および補助金不正受給の告発状」(6ページ)。閲覧・ダウンロードはこちらでも可能 → ココ

200321告発3

 

★2020年8月18日:慶應義塾大学の回答

「2020年3月21日、慶應義塾大学リハビリテーション医学教室における被験者偽装と一般治療併用による BMI 治療効果の改竄および補助金不正受給の告発状」に対する文部科学省の回答はなかった。

代わりに、慶應義塾研究コンプライアンス委員会の青山藤詞郎・委員長(あおやま とうじろう、機械工学が専門、写真出典)が、「2020年8月18日、申立て事項に係る調査結果について(通知)」で、回答してきた。

結論だけ書くと、御推察の通り、次のようである。

(3)結論

以上の結果を踏まえ、当委員会において議論を行った結果、申し立て者の主張については本調査を行うことの合理性はない、と判断するものである。

以下は「2020年8月18日、申し立て事項に係る調査結果について(通知)」(3ページ)の冒頭部分である。全文PDFファイルの閲覧・ダウンロードは以下をクリック、または、こちらでも可能 → ココ

【その5:牛場教授の過去18年間の研究成果】

慶應義塾大学・理工学部・ 生命情報学科の牛場潤一・教授(うしば じゅんいち、Ushiba, Junichi)は、里宇教授の共同研究者だが、里宇教授の定年退職後、里宇教授の研究費と研究内容を引き継ぐ形で、研究不正を続けている。

牛場教授が2024年8月19日現在まで出版した112論文のうち、2004年に26歳で助手に就任した2年後の 2006年(28歳)から、教授に就任した2022年(43歳)の18年間に里宇教授と共著で40論文も出版している。

つまり、研究者の初期(28歳)から、18年間も里宇教授と共同で、子弟のように研究してきたと思われる。

牛場教授の過去18年にわたるリハビリ医工学の研究は「その1」「その2」「その4」で示した里宇教授のデータねつ造研究に基づいている。

そして、データねつ造研究なのに、牛場教授は数十億円の公的研究費を得ていることになる。そのことを千野名誉教授は問題視した。

それで、千野名誉教授は週刊文春の記事で告発した。

2023年7月19日の森省歩・記者の週刊文春(電子版)記事「名誉教授が実名告発 “慶応の学長候補”の公的研究費38億円詐取疑惑」と、2023年7月27日の森省歩・記者の週刊文春記事で告発した。

記事の要点は次のようだ(2023年7月19日の森省歩・記者の週刊文春(電子版)記事の閲覧無料箇所から流用した)。

疑惑の目が向けられているのは、慶応大学理工学部教授の牛場潤一氏が社長を務める株式会社ライフスケイプス(以下、ライフ社)。そして、慶応発のベンチャーとして設立された同社が目下、公金を得ながら開発にいそしんでいるのが、「BMI治療器」と呼ばれるリハビリ機器だ。

・・・中略・・・

「BMIはブレイン・マシン・インターフェイスの略称で、牛場君らはBMI治療器の研究開発のためと称して、これまでに少なくとも26億円にも上る多額の公的研究費を得てきました。ところが、BMI治療器は以前、私がその研究開発を巡る不正を告発し、調査委員会まで立ち上げられた、疑惑まみれのリハビリ機器なのです。にもかかわらず、牛場君らは手を変え品を変え、さも完成間近のように何度も偽っては、研究費を獲得し続けてきました」(千野氏)

2023年7月27日の週刊文春の記事で千野名誉教授は次のように研究不正(+補助金不正受給)を糾弾した。

●5.【里宇教授と牛場教授が使用した研究費】

★里宇教授の使用研究費

2018年9月27日、週刊文春は、里宇教授の使用した研究費を20億円と報道した。

別の方法で調べると、里宇教授は、下記の3件(代表)だけで、6年間(2013~2018年)に、約25億円の研究費を(無駄に?)使用していた。→ 【研究者データ】里宇明元 | 日本の研究.com

上記の25億円を含め、里宇教授は、2008~2018年の11年間に日本政府から支援を受けた研究費(下図)を里宇教授自身が示している。 → 2016年記事:脳卒中後重度上肢麻痺の回復に向けての挑戦

★牛場教授の使用研究費

2023年7月19日、森省歩・記者の週刊文春(電子版)記事によると、牛場教授は、国民の税金を原資とする38億円(採択時の額で実際の使用額は約26億円)の研究費を、(多分、無駄に?)使用していた。

別の方法で調べると、牛場教授は、2015~2024年の10年間に代表および分担で9件の研究費を得ていた。

2024年現在は代表1件および分担3件と重複して受領している。

代表と分担があるので、使用研究費の総額を算出できないが、代表分を合計すると18億円(17億8339万7千円)である。分担を加えれば、約26億円(推定)を使用したと思われる。→ 【研究者データ】牛場潤一 | 日本の研究.com

【現在】

【過去】

●6.【日本のメディア報道】

里宇教授と牛場教授の事件は以下の記事になっている(なるべく集めたが、多分、全部ではない)。

【週刊誌】

【一般主要メディア】

  • 主要な新聞に記事なし:朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、NHKのウェブに記事は見つからなかった
  • 慶應義塾大学の大学新聞に記事なし:慶應塾生新聞に記事は見つからなかった → 検索結果: 里宇明元 
  • 主要なテレビに記事なし:NHK、TBS、テレビ朝日、フジテレビなどで報道したかどうか白楽は把握していない。少なくとも、ウェブの記事・動画は見つからなかった

【研究界メディア】

【一般人メディア】

●7.【論文数と撤回論文とパブピア】

データベースに直接リンクしているので、記事閲覧時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。

★パブメド(PubMed)

【里宇明元】

2024年8月19日現在、パブメド(PubMed)で、里宇明元・教授(現・名誉教授)(りう めいげん、Riu, Meigen、Liu, Meigen)の論文を「Meigen Liu[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2023年の22年間の163論文がヒットした。

163論文のうち、2006 ~2023年の18年間の41論文が牛場教授と共著だった。

2024年8月19日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

【牛場潤一】

2024年8月19日現在、パブメド(PubMed)で、牛場潤一・教授(うしば じゅんいち、Ushiba, Junichi)の論文を「Junichi Ushiba[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2024年の23年間の112論文がヒットした。

112論文のうち、2006 ~2022年の18年間の40論文が里宇教授と共著だった。

2024年8月19日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

【里宇明元】

2024年8月19日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースで里宇明元・教授(現・名誉教授)(りう めいげん、Riu, Meigen、Liu, Meigen)を「Meigen Liu」で検索すると、 0論文が撤回されていた。

【牛場潤一】

2024年8月19日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースで牛場潤一・教授(うしば じゅんいち、Ushiba, Junichi)を「Ushiba」で検索すると、 0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

【里宇明元】

2024年8月19日現在、「パブピア(PubPeer)」では、里宇明元・教授(現・名誉教授)(りう めいげん、Riu, Meigen、Liu, Meigen)の論文のコメントを「authors:”Meigen Liu”」で検索すると、3論文がヒットしたがコメントは1論文だけだった。3論文とも牛場教授と共著だった。

【牛場潤一】

2024年8月19日現在、「パブピア(PubPeer)」では、牛場潤一・教授(うしば じゅんいち、Ushiba, Junichi)の論文のコメントを「authors:”Junichi Ushiba”」で検索すると、3論文がヒットしたがコメントは1論文だけだった。3論文とも里宇教授と共著だった。

●8.【白楽の感想】

《1》大事件 

2018年以降、リハビリテーション医学を専門とする慶應義塾大学・里宇明元教授(現・名誉教授)、川上途行(慶應義塾大学・准教授)、藤原俊之(順天堂大学・教授)、そして、理工学部の牛場潤一(慶應義塾大学・教授)の研究不正疑惑について、千野名誉教授から情報提供を受け、【日本の研究者のネカト・クログレイ事件一覧】に数回記載した。表を「千野」で検索すると5件ヒットする。

今回、里宇教授と牛場教授を研究不正疑惑の中心人物として扱った。

文部科学省 への告発状、慶應義塾大学の調査報告書、告発者の不服申し立て書、その回答、さらに、関係者間のメールのやり取り、など、研究不正告発とその対処の資料を広範に開示し、解説を加えた。

里宇教授は公的研究費25億円以上、牛場教授は 数十億円(18億円以上。約26億円(推定))を使用している。公的研究費はあなたの税金が原資である。

データねつ造なら、使われた公的研究費だけでなく、研究不正の調査費、該当教授の育成費、在任中大学が支払った給料、ネカト教員に指導を受けた学生・教室員の損害、ねつ造論文に基づいたその後の研究、機械の開発費などなど、プラス数億~数十億円は無駄になった。

合わせて、日本国民は数十億円(43億円以上?:大雑把な推定額)の損害を被ったことになる。

金額だけでなく、リハビリ医学/理工学の進歩、研究者への信用・信頼、慶應義塾大学への信用・信頼も大きく損なわれた。

データねつ造でないなら、冤罪となり、里宇教授と牛場教授、慶應義塾大学には大変申し訳なく思う。

《2》動機 

里宇教授と牛場教授の研究不正疑惑は大きな事件である。

ただ、里宇教授の不正疑惑論文は、2015~2018年(60~63歳?)の4年間に出版した論文である。

白楽記事では、里宇教授は、60歳(?)近くになって、初めて単独で研究不正をしたとした。

しかし、2004年、49歳(?)で、慶應義塾大学・医学部・教授になり、多額の研究費を受給している人が、教授就任10年後の60歳(?)近くになって、単独で、データねつ造・改ざんをするだろうか?

あり得るけど、どうだろう?

安泰な身分で、危険をおかす必要はない。欲求もない、はずだ。

でも、「した」なら、里宇教授は、どんな動機・心境・理由・状況だったのか、興味深い。

一方、そうではないとすれば、以下があり得る。

  1. 若い時から研究不正をしていた。つまり、根っからのネカト体質の研究者だった。でも発覚しなかった。
  2. 論文の共著者である教室員の誰かがネカトをした

慶應義塾大学がシロと結論したので、この質問への答えは闇の中である。

《3》かなり歪んでいる 

里宇教授のネカト疑惑事件に対する慶應義塾大学の対処は、日本の他の多くのネカト事件と同じように、「かなり歪んでいた」と白楽は思う。

白楽が関与した以下のネカト事件でも日本の研究不正対処は「かなり歪んでいた」。

白楽は読んでいないけど、ジャーナリスト・三宅勝久の最近の記事・「日本を滅ぼす研究腐敗」も「かなり歪んだ」実態を掘り下げているようだ。

実は、日本の多くの(ほぼすべての?)研究不正対処は「かなり歪んでいる」と白楽は思っている。

しかし、ごく少数の人しか「かなり歪んでいる」実態を認識していない。

何故なら、「かなり歪んでいる」実態が具体的に示されることが、ほとんどなかったからだ。

また、研究不正対処の資料は当事者間だけの資料で、外部にほとんど流失しない。

白楽は、今回、多数の資料を入手したが、通常は入手できない。

従って、資料に基づいて「かなり歪んでいる」実態を示すことが難しい。

この裏事情もあり、ほとんどの研究者と国民は、あまり考えもせず、大学や文部科学省が「ちゃんと対処している」と思い込んでいる(根の部分は、大学と文部科学省を信頼しているためだと思う)。

だから、日本のほとんどの研究不正対処が「かなり歪んでいる」と白楽がいくら主張しても、多くの研究者と国民は何もしない。

マー、人それぞれですが。

今回はどうでしょう。「かなり歪んでいる」と思いました?

思ったでしょう。

思ったとして、それで、このような事件から私たちは何を学び、どう前に進んでいくとよいのか? 

「歪んでいる」ことを理解した研究者と国民は、日本と日本の研究界をよくするために、できれば、「歪みをただす」何らかの行動をして下さい。

院生・ポスドクなどは、とりあえずは何もしなくてもいいけど(してもいいけど)、いづれ、機会を見つけて、是非、「歪みをただし」、日本の研究不正行為の減少、研究不正対処の向上につなげて下さい。

あなたが住み・生きる日本と日本の研究界なんです。外国人がよくしてくれるわけではありません。

あなたが、「歪みをただし」、日本と日本の研究界をよくしていきましょう。私も努力するけど。

《4》大学のネカト御用調査 

里宇教授(と牛場教授)は、数十億円の公的研究費を使用したのに、研究成果は、実用化されないどころか、データねつ造疑惑が指摘されている。

慶應義塾大学は調査委員会を立ち上げて、調査した。

調査報告書を読むと、調査委員会の対応が「歪んでいる」と白楽は思った。

白楽の経験では、非常に残念だが、日本の大学の調査委員会の多くは腐敗している。

研究不正を防止するどころか、容認している。もちろん、ちゃんとした調査委員会もあるようだが、少数という印象だ。

どうしてそうなのか?

【御用調査その1:結論ありき】

慶應義塾大学・調査委員会は、「シロ」という結論ありきの調査をしている。

これは当該大学に調査させるという異常なシステムに起因する構造的な問題である。

調査委員会が、もし、クロと結論したら、数十億円の研究費を国に返還しなければならない。慶應義塾大学の信用もガタ落ちになる。

だから、調査委員長の三村 將・教授や岡村 智教・教授は、最初から公正な判定をしない・できない。

といっても、最初から慶應義塾大学の意向に沿った御用委員が任命されるので、三村教授や岡村教授は本人なりには誠実に調査し、公正に判定したと思っているに違いない。

日本の「かなり歪んでいる」ネカト対処の1つの姿である。

改善するには、白楽は麻薬取締部などの捜査権を持つ格上機関がネカト調査すべきだと主張している。

そこにはなかなか至らないと思うので、次善策を提案しよう。

現在の大学調査委員の半数を告発者側が選び、半数を大学側が選び、委員長は双方了解で本当の第三者を選ぶ。

こうしないと、御用委員の悪習制度はなくならない。勿論、利害関係者は委員になれない。この案は、現実的ではないとしても、考え方として「どうでしょう?」。

【御用調査その2:論点ずらし】

「シロ」という結論ありきなら、明確な研究不正があった場合、それをどう「シロ」という結論にもっていくのか?

疑惑論文はデータが5つあって結論に至ったと仮定しよう。そのうちのデータ3が明確に研究不正だったとしよう。

告発側と調査委員会の主張は以下のようになる。

  • 告発側:5つのデータのうち1つ(データ3)がおかしい → だから明確な研究不正である
  • 調査委員会:データ3はおかしいが、データ1,2,4,5は良いのだから、おかしいのは限定的で、全体的には良い、と結論する

実際、調査委員会(三村委員会)の結論を以下に再掲する(下線は白楽)。

  1. ボトックス使用の事実は認められるところである。
  2. しかし、当該ボトックスの使用が本臨床研究に与える影響はごく限定的であり・・中略・・特定不正行為に該当する行為もなかったものと判断する。

つまり、「1」で研究不正があると認めているのに、「2」で限定的だから、全体的には良いとしている。

間違いである。

調査委員会のこの論理は、研究公正の観点からは、全くの間違いである。

データねつ造・改ざんは、論文の全体や結論を問題にしているのではなく、部分を問題にしている。

それを、「問題は限定的で、全体は良し。結論も問題ない」と、論点をずらして、シロと結論するのは、話にならないほど、おかしい。

自動車の運転で、1回信号を無視したけど、4回はちゃんと守った。目的地にも到着できた。1回の信号無視は限定的だから、シロという判定をした。

この判定を、警察(道路交通法)も国民も認めるだろうか?

おかしいでしょ。

信号を100回守ろうが、1万回守ろうが、1回の信号無視は信号無視だ。道路交通法違反になる。

告発側はその1回(実際はもっと多い)を指摘している。

論文の全データがねつ造・改ざんという場合もまれにはあるが、ごく少数である。

ねつ造・改ざんの指摘は、ほとんどの場合、全体のデータの部分(数か所)であってデータ全部ではない。

だから、告発する側はデータの部分(数か所)を不正だと指摘する。

ところが、調査委員会はその論点をずらして、「全体的にはおおむね良し」と結論し「シロ」と判定する。

この「論点ずらし」をすれば、明確な研究不正があった場合でも、調査委員会はほぼ全部の調査結果をシロと判定できる。日本のネカト調査委員会の常套手段である。

「論点ずらし」をするから、本事件でみるように、調査が終わっても告発者は、調査不正と強く感じ、不信・不満を抱く。

この状況が続く日本の現状は、研究倫理を25年研究してきた白楽にとって「かなり歪んでいる」と思う。

結果的に、調査委員会の調査は研究公正の改善にまるで役に立たない。

役立たないどころか、それをいいことに、研究不正を助長しかねない。

これが、日本の「かなり歪んでいる」ネカト対処のもう1つの姿である。

《5》ネカトの告発先 

千野名誉教授は文部科学省・研究振興局/振興企画課/競争的資金調整室 へ告発状を送付している。また、週刊文春の記事にしている。

日本では文部科学省に告発する人は多いが、本事件で示したように、また《6》で解説するように、ほぼ役に立たない。

研究不正は研究者の所属する大学・研究所が調査する決まりなので、文部科学省は受けた告発を、大学・研究所に伝えるだけの、たらい回しをするだけだ。

週刊文春の記事にするという告発手法は、珍しい。強力である。

ただ、スキャンダルでないと週刊誌は記事にしない。それで、スキャンダルとなったのだが、スキャンダル化すると研究者間では冷静な議論がしにくく、学術界は嫌う人が多い。

国際的(米国中心で話す)には、一般的に他の方法でも告発する。

①「パブピア(PubPeer)」で出版論文の不正を指摘するのは、常套手段になっている。

② 当該大学の窓口に通報することもよく行なわれる。日本の大学に比べ、米国の方が研究公正に誠実である(そうでない場合も多いけど)。

③また、学術誌・編集長に研究不正だと指摘し、論文撤回を要求するのも、国際的には、ほぼ常套手段である。

学術誌は独自に調査し、著者が拒否していても、編集長の権限で論文を撤回することがある。ただ、学術誌・編集部は多忙あるいは怠慢なことが多く、対応が遅い。また、出版社や編集長の公正観によって、対応が大きく異なるので、期待できない面はある。

④ そして、研究者どうしや研究公正活動家の間に研究不正疑惑を伝え、議論することが、かなりある。そのような活動家は3桁数いる。一部はネカトハンターも兼ね、ネカトハンターは、2桁数(数十人)いる。

ただ、根本的な問題として、日本には、相談できるネカト専門家がいない。ネカトの指摘やネカトの議論ができるウェブサイトがない。ネカトハンターはいない。

つまり、研究不正を指摘・議論する組織が弱体である。研究公正文化を支援・育てる体制の強化が望まれる。

不正を告発した千野名誉教授と村岡教授は、慶應義塾大学と中央省庁(文部科学省・厚生労働省)という巨大な組織に立ち向かった個人である。失うものが大きいし、危険でもある。

それなのに日本という国を憂えて立ち向かっている。

「大型研究費を含めて我が国での研究活動が国家を中心に堕落している状況をこのままにしておいたら、日本の研究活動は3流、4流になってしまいます」(2024年7月17日、千野名誉教授の白楽への私信)。

村岡教授は、「慶應義塾大学からの圧力に屈せずに研究不正を追求したいと思います」と述べている。「決死の覚悟」だとも述べていた。

しかし、日本は、そういう個人を支援するシステムが「ない」。

《6》大学のデタラメ調査を防止する仕組み 

文部科学省は告発を受け付けるが、受け付けた告発を自力で調査することはなく、全部、当該大学に丸投げする。

更に情けないことに、当該大学の調査報告書が異常でも、それをチェックし、当該大学に是正するよう、文部科学省は行政指導をしない・できない・したことがない。

文部科学省は大学のデタラメ調査に厳罰を科すこともしない・できない・したことがない。だから、大学はデタラメ調査のし放題になる。

これは、文部科学省の役人が怠慢とか無知・無能というわけではない。規則でそうなっているからである。

ところが、文部科学省は研究不正の告発窓口を設け、公然と受付けている → 研究に関する不正の告発受付窓口:文部科学省

公然と受付けているものだから、多くの研究者は、文部科学省が研究不正の調査をしてくれると勘違いしてしまう。

しかし、文部科学省は調査をしない。

受付けた告発内容を被告発者の所属する大学・研究所に転送するだけである。

研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日文部科学大臣決定)」の「4-1 調査を行う機関、①」で、調査は 当該研究機関が行なうと決めている。

告発者をダマすような受付窓口を設け、かつ、なんか無駄なような周りくどいシステムをどうして文部科学省は構築したのだろう?

少なくとも、本記事のような巨額の税金を投入した研究プロジェクトでの研究不正疑惑は、当該大学の調査に全面的に依存すべきではない。

文部科学省(や厚生労働省)は、当該大学と利害関係がなく、研究不正調査では実力・公正・権威ともに格上の専門委員(常勤)に独自の調査を依頼すべきである(航空・鉄道事故調査委員会みたいな委員会)。

規則がそうなっていないなら、そういう規則に改訂すべきである。

そして、告発者も納得する調査を行なうべきである。

従来から、白楽は、研究不正の調査は捜査権を持つ麻薬取締部や警察のような組織がすべきだと主張しているが、事は容易に進まない。

少なくとも、それまでの間、大学のネカト調査の問題点を検証し公表する調査チームを作るべきである(航空・鉄道事故調査委員会みたいな委員会)。その際、今回のように問題化した事件も再度掘り起こして調査する。

そのようにして、日本の研究公正を高め・維持し、研究不正大国の汚名を返上していこうではないか。

ーーーーーーー
日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる
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Minami
Minami
2024年8月21日 7:39 AM

今回は文春が報道したみたいですが、文春みたいなマスコミが増えてほしいです。科学者並に勉強し、科学者とけんかできるジャーナリストを育成すべきです。例えば、NHKの科学文化部が、まだ、「大学教授は正しい」という感じです。『クローズアップ現代 特集:研究不正世界一』という番組を制作し、NHK科学文化部長が出演して、「今日から科文は、科学者の手下ではなく、科学者の話を疑って聞き、つじつまがあっていたら賛同し、まちがっていたら『まちがっていると思います』とツッコミを入れる科学文化部になります」とクリティカル・シンキング宣言してほしいです。
日本医療ジャーナリズム協会や、日本科学技術ジャーナリズム協会などの団体があるようなのですが、毎月医者や科学者を講師に招いて講演会をやっているみたいです? 1回ぐらい、「ぼくたちは学者の手下をやめよう。科学者とけんかできるジャーナリストになろう」という討論会を開催し、血気盛んになってほしいです。
科学者側も、NHKの取材を受けたり、日本医療ジャーナリズム協会等から講師をたのまれたら、「みなさん、ぼくの言うことを丸呑みしないでください。ぼくの言うことを『ほんとうかな?』とうたがって、まちがっていたらツッコミを入れてください」と教育してください。
あと、文系学部に行ってほしいです。理系は、理系だけで研究不正を片付けようとします。文系学部に行かないんです。ではなく、大学の同じ敷地の中の、文系学部までトコトコ歩いて行って、例えばジャーナリストを育てる学部に行ってみましょう。例えば早稲田大学ジャーナリズム大学院とかありますので、そこまで行きます。教授がいますから、「すみません。わが国は研究不正が世界一多いです。科学者の手下にならない、私たち科学者をやっつける、ファイティング・スピリッツあふれるジャーナリストを作ってください」と頼む。実際にどう人材育成すべきかは、2人でうんうん悩んで、議論しましょう。
研究不正をもみけす文科省を作っているのは科学技術社会論や公共政策学部、法学部等です。そこにも行って、教授と二人で、「研究不正世界一の汚名を返上するために、オール・アカデミアでがんばりましょう」と、殊勝な議論をしましょう。社会教育学部にも行って、「学者の手下みたいな市民を作らずに、学者にはむかう市民科学者を育成してください」と要請してください。
人々が学者にはむかいにくい心理的な要因とは、儒教道徳(昔、中国の孔子という思想家が考えた「教師を尊敬しましょう」という美徳、社会規範)です。人文学部の倫理学者や国学者、中国哲学者等のところにも行って、教授と、「われわれ大学人のいんちきをずばずば指摘できる市民を育成すべきです」と熱血議論をしてください。
社会学部に行って、「おたくは非常に評判が悪いです。みんなに謝りましょう」と言ってきてください。
仕事がたくさん増えて大変ですが、働き者はみんなから尊敬されます。「あの人は、一生懸命、あちこちに奔走して、状況改善の取り組んでいる」と評判になるでしょう。
最近、大学は悪徳が栄える場所になっています。研究不正隠蔽教授、傲慢教授、X(旧称:ツイッター)で市民をつるし上げにする通称「医クラ」(医師のアカウントの群れという意味で、「医学クラスタ」の略で医クラと呼ばれるようです)、エロ教授、ばかっぽい教授、Xで「教育予算を増やせ」「科研費を増やせ」としか言わない単細胞教授等です。美徳がありません。誠実さ、謙虚さ、公共心、性的潔癖さ、博学、倹約等です。大学人は、自分が楽になるように職場や社会秩序をデザインする癖があります。自分にとってつらい職場や社会秩序にしてください。大学にいると、自然と誠実さや謙虚さ等の美徳が身に付く、霊魂修行の場になるように改善してください。不祥事を起こした大学人が学長等に栄転している例がありますから、淘汰してください(例:伊藤穣一千葉大学長。小児性愛者エプスタインからお金をもらってスキャンダルになっているのに、なぜか学長になっているようです?)
そういう取り組みをしていれば、国民は大学人を見直します。汗水たらして働いていると、いままでは国民理解を得られなかった、科学研究費や教育予算の増額等の要求に対して、理解が得られるようになるでしょう。
あとやってほしいのは、大学で、「日本学術会議の『科学者の行動規範』を読む会」をやってほしいです。「こういう会を何月何日にやります!」とツイッターで宣伝してほしいです。

あいうえお
あいうえお
2024年8月20日 6:56 PM

疑惑論文の分野に近い研究者達に(匿名)アンケートを取り、コンセンサスを明らかにするでは駄目なんでしょうか?
正直、分野の専門家でないと真偽は分かりかねるし、マスコミも触らぬ神に祟りなしで報道していない部分もあると思います。
匿名でも専門家のコンセンサスが研究不正なら、報道しやすくなるのではと思いました。
的外れならすいません。