マハンドゥーナウト・チェットラム(Mahandranauth Chetram)(米)

2017年12月20日掲載。

ワンポイント:2017年11月27日(32歳?)、研究公正局がネカトと発表した。ジョージタウン大学(Georgetown University)・ポスドクの時、さらに、その後のエモリー大学医科大学院(Emory School of Medicine)・ポスドクの時、2つの論文原稿と2通のグラント申請書でウエスタンブロット画像とPCRデータの改ざんを行なった。締め出し期間は標準の3年間。ボスは、ネカト原稿の1つを訂正し出版した。この「訂正し出版」する方法は、研究費、研究成果、共著者の業績や貢献をムダにせず、優れた救助法と思える。損害額の総額(推定)は2億2千万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

マハンドゥーナウト・チェットラム(Mahandranauth Chetram、写真出典)は、米国のジョージタウン大学(Georgetown University)・ポスドク、その後、エモリー大学医科大学院(Emory School of Medicine)・ポスドクになった。専門は癌の生化学だった。

2016年(31歳?)頃、ジョージタウン大学の内部からチェットラムのデータに異常があると大学に通報があった。

ジョージタウン大学は研究公正局に報告する一方、調査を始めた。結局、チェットラムをクロと判定した。

このことは、チェットラムが次のポスドクに移籍したエモリー大学医科大学院にも伝えられ、エモリー大学医科大学院も調査の結果、チェットラムをクロと判定した。

2017年11月27日(32歳?)、両大学の調査に基づき、研究公正局は、独自の調査を加え、チェットラムに改ざんがあったと発表した。締め出し期間は標準の3年間を科した。

エモリー大学医科大学院(Emory School of Medicine)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:クラーク・アトランタ大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1985年1月1日生まれとする。最初の論文を2011年1月に発表した。この時を26歳とした
  • 現在の年齢:39 歳?
  • 分野:生化学
  • 最初の不正文書申請・原稿:2016年(31歳?)?
  • 発覚年:2016年(31歳?)?
  • 発覚時地位:エモリー大学医科大学院・ポスドク
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)はジョージタウン大学の同じ研究室の人なので、指導教授の ラビンドラ・ロイ準教授(Rabindra Roy)だろう。
  • ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ジョージタウン大学・調査委員会。②エモリー大学医科大学院・調査委員会。③研究公正局。~2016年5月24日
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 不正:改ざん
  • 不正文書数:原稿2報、グラント申請書2通
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 損害額:総額(推定)は2億2千万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が4年間=8千万円。③院生の損害はゼロ円。④外部研究費の額は不明で、額は②に含めた。⑤調査経費(大学と研究公正局)が5千万円。⑥裁判経費なし。⑦論文撤回なし。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 結末:辞職。3年間の締め出し処分

●2.【経歴と経過】

不明が多い。

  • 生年月日:不明。仮に1985年1月1日生まれとする。最初の論文を2011年1月に発表した。この時を26歳とした
  • 2007年(22歳?)?:米国のネブラスカ大学リンカーン校(University of Nebraska-Lincoln)で学士号取得:生化学
  • 2012年(27歳?)?:米国のクラーク・アトランタ大学(Clark Atlanta University)で研究博士号(PhD)を取得。指導教員はシモーナ・ヒントン準教授(Cimona V.Hinton)
  • 2012年(27歳?)?:ジョージタウン大学(Georgetown University)・ポスドク。指導教授は ラビンドラ・ロイ準教授(Rabindra Roy)
  • 2013年3月(28歳?):ジョージタウン大学(Georgetown University)の優秀賞を受賞した。
  • 2015年(30歳?)?:エモリー大学医科大学院(Emory School of Medicine)・ポスドク。指導教授はケビン・バンティング教授(Kevin Bunting)
  • 2016年(31歳?)?:不正研究が発覚する
  • 2016年(31歳?)?:エモリー大学医科大学院(Emory School of Medicine)・ポスドクを解雇(辞職)
  • 2017年11月27日(32歳?):研究公正局がクロと発表した

●5.【不正発覚の経緯と内容】

シモーナ・ヒントン準教授(Cimona V.Hinton)

2011年1月(26歳?)、マハンドゥーナウト・チェットラム(Mahandranauth Chetram)はクラーク・アトランタ大学(Clark Atlanta University)の院生の時に最初の論文を出版していいる。

指導者はシモーナ・ヒントン準教授(Cimona V.Hinton、写真出典)である。

ラビンドラ・ロイ準教授(Rabindra Roy)

チェットラムは、クラーク・アトランタ大学で研究博士号(PhD)を取得し、ジョージタウン大学のラビンドラ・ロイ準教授(Rabindra Roy、写真出典)の研究室でポスドクをした。

ケビン・バンティング教授(Kevin Bunting)

その後、2回目のポスドクとして、エモリー大学医科大学院でポスドクをした。エモリー大学医科大学院でのボスは、ケビン・バンティング教授(Kevin Bunting、写真出典)である。

チェットラムは、院生・ポスドクの2011~2016年の6年間に11論文を出版した。11論文の内、9論文が、最初の指導教員であるヒントン準教授との共著である。

シイラ・ジメット研究倫理官(Sheila Zimmet)

ジョージタウン大学のシイラ・ジメット研究倫理官(Sheila Zimmet、写真出典)は、「チェットラムのデータに異常があると内部の人から指摘され、大学は調査委員会を設けました。但し守秘義務があるのでこれ以上はお話できません」と、撤回監視に答えている。

2016年(31歳?)頃、同じ研究室に人(多分、指導教員のラビンドラ・ロイ準教授)がネカト告発をしたのだろう。

【ねつ造・改ざんの具体例】

★研究公正局の結論

2017年11月27日(32歳?)、研究公正局は、マハンドゥーナウト・チェットラム(Mahandranauth Chetram)にネカトがあったと発表した(【主要情報源】①)。

【ジョージタウン大学ポスドク時代】

ネカトは、ジョージタウン大学ポスドク時代の不採択グラント、グラント申請書「R01 CA193344-01A1」、「2017年のCancer Cell」投稿原稿でのウエスタンブロット画像とPCRデータの改ざんである。

「2017年のCancer Cell」投稿原稿のタイトルは「The DNA Repair Protein, NTHL1 Functions as an Oncoprotein by Activating the Canoncial Wnt Pathway」である。

研究公正局の報告書に、ネカト箇所は「2017年のCancer Cell」投稿原稿の図6Aと図S7Lで、その図が、グラント申請書「R01 CA193344-01A1」にも使用されたと書いてある。しかし、いかんせん、グラント申請書や投稿原稿は関係者しかアクセスできない。白楽はネカト内容を具体的に知ることができない。

【エモリー大学医科大学院ポスドク時代】

チェットラムはジョージタウン大学ポスドク時代だけでなく、エモリー大学医科大学院ポスドク時代にもネカトをした。

チェットラムは「2017年のSci Rep」投稿原稿で、RT-PCR データのエクセル表を改ざんし、改ざんデータに基づいて図を作製した。

改ざんが発覚したのは投稿原稿だったので、ボスのケビン・バンティング教授(Kevin Bunting)は投稿原稿を一度引き下げた。

引き下げた投稿原稿を検討し、チェットラムが担当したデータ部分とチェットラムの名前を削除し、チェットラムの了解を得て、以下の論文として発表した。

研究公正局の報告書には、ネカト箇所はRT-PCR データのエクセル表とその図とあるが、こちらも、ネカト原稿が引き下げられ、訂正された原稿が論文として発表されている。従って、白楽はネカト内容を具体的に知ることができない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2017年12月19日現在、パブメド(PubMed)で、マハンドゥーナウト・チェットラム(Mahandranauth Chetram)の論文を「Mahandranauth Chetram [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2011~2016年の6年間の11論文がヒットした。

11論文のうち9論文がヒントン準教授と共著である。

2017年12月19日現在、「Mahandranauth Chetram [Author] AND retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2017年12月19日現在、「パブピア(PubPeer)」はマハンドゥーナウト・チェットラム(Mahandranauth Chetram)の論文にコメントしていない:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》大学院・研究初期

チェットラム(写真出典不明)は2011~2016年の6年間に11論文出版している。

そのうち、クラーク・アトランタ大学・院生時代の2011~2013年の3年間に8論文を出版している。スゴイ優秀である。全部、指導教員のシモーナ・ヒントン準教授(Cimona V.Hinton)と共著である。

チェットラムはジョージタウン大学時代だけでなく、エモリー大学医科大学院時代にもネカトをしていた。両方とも身分はポスドクである。

それで、誰もが容易に想像つくと思うが、クラーク・アトランタ大学・院生時代の3年間の8論文にネカトがあるだろうということだ。

ところが、クラーク・アトランタ大学は調査しない。研究公正局も調査を指示していない。米国はいつもこうだ。なんかヘンである。

と言っても、こういうことは米国だけではない。日本や欧州も同様である。ネカト調査は、どの国の大学・研究機関も、「指摘されたからイヤイヤ調査する」態度が濃厚である(もちろん、そのような態度をあからさまにはとらない)。

まともにネカトを撲滅しようとする人はいないのかい?

現状では、まともにネカトを撲滅できるシステムになっていないのだ。

《2》訂正し出版

エモリー大学医科大学院ポスドク時代に、チェットラムは「2017年のSci Rep」投稿原稿で、RT-PCR データのエクセル表を改ざんし、改ざんデータに基づいて図を作製した。

ボスのケビン・バンティング教授(Kevin Bunting)は投稿原稿を一度引き下げ、チェットラムが担当したデータ部分とチェットラムの名前を削除し、論文として発表した。

これは、研究費と研究成果をムダにしない優れた方法に思える。さらに、共著者の業績や貢献もムダにしなかった点も重要である。

投稿原稿だからできたことかもしれないが、ネカト論文を「訂正し出版」することは、良いことだ。古い論文では無理だろうが、出版2年以内なら(2年は例えばです)、ネカト論文を「訂正し出版」することをルーチン化してはどうだろう。もちろん、論文の中枢データがネカトでは無理だが、傍流データなら、救助できるのではないだろうか。

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●8.【主要情報源】

① 2017年11月27日、研究公正局の報告:(1)Case Summary: Chetram, Mahandranauth Anand 、(2)Federal Register :: Findings of Research Misconduct、(3)2017-25549.pdf 、(4)2017-25550.pdf
② 2017年11月27日、アイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Former Emory, Georgetown postdoc falsified cancer research data: ORI – Retraction Watch at Retraction Watch
③ 2017年12月19日現在、「パブピア(PubPeer)」はマハンドゥーナウト・チェットラム(Mahandranauth Chetram)の論文にコメントしていない:PubPeer – Search publications and join the conversation.
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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