材料化学:プラレイ・マイティ(Pralay Maiti)(インド)、岡本浩孝(Hirotaka Okamoto)(日本)

2022年5月30日掲載 

ワンポイント:マイティはインドで育ち、30歳前後に5年間、日本の広島大学・講師や豊田工業大学・ポスドクをした。その後、バナラス・ヒンドゥ大学(Banaras Hindu University)・教授になった。2017年7月(49歳)、パブピアでマイティの「2012年8月のPhys Chem Chem Phys」論文に画像重複があると指摘され、2021年4月8日(52歳)に論文は撤回された。他に3論文が撤回されている。パブピアでは2001~2020年に出版したマイティの21論文にコメントがある。バナラス・ヒンドゥ大学はネカト調査をしていない。マイティは無処分。国民の損害額(推定)は5億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

プラレイ・マイティ(Pralay Maiti、ORCID iD:?、写真出典)は、インドで育ち、30歳前後に5年間、日本の広島大学・講師や豊田工業大学・ポスドクをした。その後、バナラス・ヒンドゥ大学(Banaras Hindu University)・教授で、専門は材料化学である。

2017年7月xx日(49歳)、パブピアでマイティの「2012年8月のPhys Chem Chem Phys」論文に画像重複があると指摘された。

マイティは似ているが異なる画像だと主張したが、生データを学術誌に提出しなった。

2021年4月8日(52歳)、学術誌は結局、「2012年8月のPhys Chem Chem Phys」論文を撤回した。

なお、パブピアでは2001~2020年に出版したマイティの21論文に画像重複を指摘するコメントがあり、2012~2020年に出版した4論文が2021年1~4月に撤回された。

この撤回4論文に含まれていないが、マイティが日本の豊田工業大学(Toyota Technological Institute)・ポスドクの時にマイティと岡本浩孝が共著で出版した「2001年のNano Letters」論文に画像重複があった。

2022年3月4日、その論文の画像重複を、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)がパブピアで指摘した。

豊田中央研究所の岡本浩孝(Hirotaka Okamoto、顔写真は見つからなかった)が返答した。

その返答に対し、ビックは論文データの新規性と画像の著作権を無視していると指摘した。岡本浩孝はその後何も返答していない。

白楽ブログの事件解説では、基本的に日本の個々の事件は解説しない。

しかし、上記のように、マイティと岡本の共著論文(「2001年のNano Letters」論文)の画像重複に関して、岡本の返事にネカト問題が含まれていたので、本記事ではその部分を記載した。

なお、プラレイ・マイティ(Pralay Maiti)をネカト犯として話しを進めたが、共著者がネカト犯という可能性はある。

バナラス・ヒンドゥ大学(Banaras Hindu University)。写真出典

  • 国:インド
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:インド科学育成協会大学・ジャダフプール
  • 男女:男性
  • 生年月日:1968年6月12日
  • 現在の年齢:56 歳
  • 分野:材料化学
  • 不正論文発表:2001~2020年(33~52歳)
  • 発覚年:2017年(49歳)
  • 発覚時地位:バナラス・ヒンドゥ大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)がパブピア(PubPeer)で指摘。ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth M Bik)も指摘
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②バナラス・ヒンドゥ大学は調査していない
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:調査していない(✖)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:4論文が撤回。パブピアで21論文にコメントがあり
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:岡本正巳(Masami Okamoto)(豊田工業大学・准教授)

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

出典:(1):CV、(2):Curriculum vitae of Dr. Pralay Maiti

  • 1968年6月12日:インドで生まれる
  • 19xx年(xx歳):(推定):インドのxx大学(xx)で学士号取得
  • 1989年7月~1991年6月(21~23歳):インドのインド工科大学・カラグプル(Indian Institute of Technology, Kharagpur)で修士号(MS)を取得
  • 1991年8月~1997年6月(23~29歳):インド科学育成協会大学・ジャダフプール(Indian Association for the Cultivation of Science, Jadavpur)で研究博士号(PhD)を取得(推定)
  • 1997年7月~1999年9月(29~31歳):日本の広島大学・講師
  • 1999年10月~2002年3月(31~33歳):日本の豊田工業大学(Toyota Technological Institute)・ポスドク
  • 2002年3月~2004年4月(33~35歳):米国のコーネル大学(Cornell University)・客員研究員
  • 2004年5月~2004年11月(35~36歳):インドの中央皮革研究所(Central Leather Research Institute)・研究員
  • 2004年11月(36歳):インドのバナラス・ヒンドゥ大学(Banaras Hindu University)・教授
  • 2017年7月xx日(49歳):「2012年8月のPhys Chem Chem Phys」論文のデータ異常が指摘された
  • 2021年4月8日(52歳)、上記論文が撤回
  • 2022年5月29日(53歳)現在:バナラス・ヒンドゥ大学・教授職を維持

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★日本で5年間、研究生活

プラレイ・マイティ(Pralay Maiti)はインド出身だが、30歳前後に5年間、日本で研究していた。広島大学・講師や豊田工業大学・ポスドクをしていた。多分、日本語も話せるだろう。

マイティが日本に滞在した時、岡本浩孝(Hirotaka Okamoto)との共著論文を出版した。

ややこしいが、マイティの周囲に岡本姓が多い。豊田工業大学・准教授の岡本正巳(Masami Okamoto)、名古屋市工業技術研究所の岡本和明(Kazuaki Okamoto)も、マイティと以下の共著論文を出版している。

★発覚の経緯

2017年7月xx日(49歳)、パブピアでプラレイ・マイティ(Pralay Maiti、写真出典)の「2012年8月のPhys Chem Chem Phys」論文に画像重複があると指摘された。これが、最初のネカト指摘だと思われる。

数例の画像重複のうちの1つ目を挙げると、図2のaとbは別の試料なのに同じ図が使われていた。画像出典:https://pubpeer.com/publications/FE9C8A6198D27AEBBA9B4820B50510

画像重複の2つ目を挙げると、図11aと図13 bは別の試料なのに同じ図が使われていた。画像出典:https://pubpeer.com/publications/FE9C8A6198D27AEBBA9B4820B50510

2021年4月8日(52歳)、結局、「2012年8月のPhys Chem Chem Phys」論文が撤回された。 → 撤回公告:Retraction: Physical Chemistry Chemical Physics (RSC Publishing)

撤回公告は以下のようだ(かいつまみ)。

英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)は、論文データの信頼性に懸念があるため、論文を撤回します。

アナテース相のTiO2ナノ粒子を表す図2aは、ルチル相のTiO2ナノ粒子を表す図2bの重複使用です。著者は、画像は類似しているが同一ではないと主張しています。専門家は著者の回答を検討しましたが、懸念に十分に答えていないと結論しました。

PBS溶液で分解した後のPCL-A複合ナノファイバーを表す図13bは、同じ著者によるJournal of Biomedical Materials Research Part Aの論文の図11aの重複使用です。著者は、画像が異なると主張しています。しかし、論文の図13bの生データを提供しなかったため、この画像の信頼性に懸念があります。

著者に撤回を通知しましたが、返答はありませんでした。

撤回公告でもわかるように、「撤回監視(Retraction Watch)」の問い合わせに対しても、マイティは「同じように見える画像だが別の画像である」「撤回に同意していない」と述べている。

「2012年8月のPhys Chem Chem Phys」論文のネカトについて記載したが、他の論文でも同じようなネカトが見つかっている。

★エリザベス・ビックの指摘

マイティが犯したネカト・クログレイではないと思うが、日本で出版した共著論文に問題点が指摘されている。

マイティが日本の豊田工業大学(Toyota Technological Institute)・ポスドクの時、以下の「2001年のNano Letters」論文を出版した。

2022年3月4日、その論文に、別論文の画像と似た画像があると、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik、写真出典)がパブピアで指摘した。

以下画像と文章の出典:https://pubpeer.com/publications/66CA98C8C23B2AAB3FB15557FAAF87

ーーーー類似画像:その1

ーーーー類似画像:その2

豊田中央研究所の岡本浩孝が「同じ実験で得られた画像です」と答えた。

ビックは「岡本先生、お返事をいただき、誠にありがとうございます」とお礼を述べたあと、次のように問題点を指摘した。

「新規性と著作権の問題があります。両方の論文はオープンアクセスモデルで公開されていないことを考えると、これらの写真には著作権の問題があると思います。論文には、これらの写真を再利用する許可を得たという付記がありません。さらに、どちらの論文も、これらのデータが以前に公開されたと記載していません。画像は新しいデータとして提示されています」。

これはかなりマズイですね。

2022年5月29日現在、豊田中央研究所の岡本浩孝はその後、ビックの指摘に何も答えていない。

【ねつ造・改ざんの具体例】

上記したので省略。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2022年5月29日現在、パブメド(PubMed)で、プラレイ・マイティ(Pralay Maiti)の論文を「Pralay Maiti[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2021年の20年間の66論文がヒットした。

2022年5月29日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、本記事で問題にした「2012年8月のPhys Chem Chem Phys」論文・1論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2022年5月29日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでプラレイ・マイティ(Pralay Maiti)を「Maiti, Pralay」で検索すると、本記事で問題にした「2012年8月のPhys Chem Chem Phys」論文を含め 4論文が撤回されていた。

2012~2020年出版されたマイティの4論文が2021年1~4月に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2022年5月29日現在、「パブピア(PubPeer)」では、プラレイ・マイティ(Pralay Maiti)の論文のコメントを「Pralay Maiti」で検索すると、2001~2020年出版された21論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》不正をしていないと言いつづける 

「同じように見える画像だが別の画像である」と著者が主張し続けた時、どうするか? どうなるか?

プラレイ・マイティ(Pralay Maiti、写真出典)の主張である。

学術誌は画像の生データを提出するよう要請した。マイティは提出しなかった。それで、編集部の権限で論文は撤回された。

バナラス・ヒンドゥ大学(Banaras Hindu University)はネカト調査をしていない。それで、マイティは処分されていない。

日本も「不正をしていないと言いつづける」人・組織が多い。そして、困ったことに、日本では、「言いつづける」人・組織が勝つことがしばしばある。

《2》ネカト調査

マイティ事件はプラレイ・マイティ(Pralay Maiti)をネカト犯として話しを進めた。しかし、共著者がネカト犯という可能性はある。2019年4月23日の記事では、研究室に8人の室員がいた(写真出典)。

バナラス・ヒンドゥ大学(Banaras Hindu University)はネカト調査をしていない。それで、ネカト犯は特定されていない。これは、マイティがネカト犯でないなら、コマッタことにならないのだろうか?

さらに、ネカト犯を特定しないために、ネカト犯はネカト行為を続ける可能性もある。

日本ではネカト者を匿名にすることがかなり多い。この匿名は、かえって、ネカト者にネカト行為を断ち切らせる機会を奪っていないのだろうか。麻薬常習者のように。

ネカトの法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」

《3》新規性と著作権

マイティが日本の豊田工業大学(Toyota Technological Institute)・ポスドクの時に出版した「2001年のNano Letters」論文に画像重複使用を、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)がパブピアで指摘した。

この時、共著者の豊田中央研究所の岡本浩孝が返答したが、論文データには新規性が必要なこと、他の論文で使用した画像を別の論文に無断で使用すると、著作権侵害になること、をビックが指摘した。

岡本浩孝はその後何も返答していない。

多分、日本のかなりの研究者は、論文データ・画像の新規性と著作権に関する知識・意識が低いと思われる。何とかすべきである。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
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●9.【主要情報源】

① 2021年4月20日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:“[N]o intention to make any scientific fraud” as researchers lose four papers – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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