企業:除草剤・アトラジン(Atrazine):タイロン・ヘイズ(Tyrone Hayes)(米) 対 シンジェンタ社(Syngenta)(スイス)

2017年9月15日掲載。

ワンポイント:【長文注意】。スイスに本社がある農薬企業のシンジェンタ社が、2002年から2013年までの12年間、「除草剤・アトラジンは有害」と主張する米国のタイロン・ヘイズ教授(黒人男性)の研究妨害・個人攻撃をしたという「科学史上最も奇妙な抗争」事件。除草剤・アトラジンは欧州では2003年に使用禁止になっているが、米国や日本では2017年9月現在も使用禁止ではない。損害額の総額(推定)は153億5千万円(当てずっぽう)

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.日本語の解説
3.事件の経過と内容
4.白楽の感想
5.主要情報源
6.コメント
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●1.【概略】

スイスに本社がある農薬企業のシンジェンタ社(Syngenta)が、「除草剤・アトラジン(Atrazine、写真出典)は有害」と主張する米国のタイロン・ヘイズ教授(黒人男性)の研究妨害・個人攻撃をした事件である。この妨害・攻撃で製品の事実をゆがめるので、本記事では改ざんとみなした。

ダシュカ・スレーター(Dashka Slater)の言葉を借りれば、この事件は、「科学史上最も奇妙な抗争の1つ(one of the weirdest feuds in the history of science)」である。

2002年、カリフォルニア大学バークレー校のタイロン・ヘイズ教授(Tyrone Hayes、写真出典)は、シンジェンタ社の除草剤・アトラジン(Atrazine)の危険性を「Nature」論文で指摘した。

その頃から、シンジェンタ社は、あらゆる手段でヘイズ教授を個人攻撃し、ヘイズ教授を貶めようとした。

一方、ヘイズ教授もいろいろなメディアに出演してアトラジンの危険性を訴え、多数の攻撃的電子メールをシンジェンタ社に送って、激しい攻防戦を展開した。

2003年、欧州は除草剤・アトラジンを使用禁止にした。ところが、2017年9月現在も米国は禁止していない。日本も禁止していない。シンジェンタ社製のアトラジン(日本では、ゲザプリムという名称)をインターネット通販(写真同)でも購入できる。

2013年、イリノイ州マディソン郡巡回裁判所に提出された文書が公開された。その文書公開で、2002年から2013年までの12年間、ヘイズ教授を貶めようとしたシンジェンタ社の汚いビジネスが明るみにでた。

除草剤・アトラジン(Atrazine)の危険性を指摘する研究者はヘイズ教授の他にも、もちろん、いる。シンジェンタ社はその研究者たちも攻撃した。しかし、本記事では、話が拡散するのを防ぐため、ヘイズ教授に絞って、シンジェンタ社の不当な攻撃を示す。

巨大な企業・シンジェンタ社の環境汚染に果敢に挑むヘイズ教授は、ジュリア・ロバーツ主演の映画になった環境問題活動家「エリン・ブロコビッチ(Erin Brockovich、写真本人同)」の黒人男性版である。

2017年9月14日現在、15年に及ぶ「科学史上最も奇妙な抗争」事件の決着はついていない。

なお、本事件は論文や臨床試験の研究データがねつ造・改ざんされたネカト事件でなない。また、シンジェンタ社の除草剤・アトラジン(Atrazine)が原因で死亡した人及び健康被害を受けた人は報告されていない。ただし、個々人の被害は微弱で気がつきにくく、しかも広範に及んでいるために、自分が被害者だと思わない可能性は高い。

スイス・バーゼルのシンジェンタ社・本社(Syngenta headquarters in Basel)。写真By Taxiarchos228Own work, FAL, Link

  • 国:本社があるスイスとしたが世界企業で、米国で最も大きく問題視された
  • 集団名:シンジェンタ社
  • 集団名(英語):Syngenta AG
  • 集団の概要:2000年、ノバルティスのアグリビジネス部門とゼネカ(現:アストラゼネカ)のアグリケミカル部門が統合して、世界初のアグリビジネスに特化した企業として誕生(シンジェンタ – Wikipedia。従業員28,704人(2015年9月)。売り上げ134億ドル (2015年)(約1兆3400億円)
  • 日本法人:シンジェンタジャパン株式会社(東京都)。従業員数:約330名。事業内容:農薬・中間体の研究開発、製造、販売及び輸出入。種苗の生産に関する研究開発。種苗の生産、輸出入、販売及びその斡旋等
  • 事件の首謀者:シンジェンタ社・通信部長(Head, External Communications)のシェリー・フォード(Sherry Duvall Ford)
  • 分野:農薬
  • 不正年:2002年頃~2013年。その後、2017年9月現在も継続しているかもしれない
  • 発覚年:2013年
  • ステップ1(発覚):2013年、イリノイ州マディソン郡巡回裁判所に提出された文書が公開された。その文書公開で、2002年から2013年までの12年間、ヘイズ教授を貶めようとしたシンジェンタ社の汚いビジネスが明るみにでた。
  • ステップ2(メディア): 「Mother Jones」、「New Yorker」など多数
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ): ①カリフォルニア大学バークレー校。②米国・環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)。③裁判所:イリノイ州マディソン郡巡回裁判所。
  • 調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 不正:自社の除草剤・アトラジンの危険性を指摘する研究者を大規模に攻撃。この攻撃で製品の事実をゆがめるので、本記事では改ざんとみなした。研究公正局は研究妨害を改ざんとみなしている
  • 不正論文数:0報。論文データのねつ造・改ざんではない
  • 被害(者):①タイロン・ヘイズ教授。②アトラジン(Atrazine)が原因で死亡した者及び健康被害を受けた者は報告されていない。
  • 損害額:総額(推定)は153億5千万円。内訳 → ①シンジェンタ社のアトラジン反対論者対策費に15年間で150億円(当てづっぽう)。②タイロン・ヘイズ教授の被害額1億円、他のアトラジン反対論者全員の被害額1億円、計2億円(当てづっぽう)。③裁判所の経費を1億円。④調査経費(大学、環境保護庁)が5千万円。
  • 結末:現在も抗争中

●2.【日本語の解説】

日本語の解説は多数ある。それらを「修正」引用する。

★2010年3月1日:ナショナルジオグラフィック日本版サイト:「オスのカエルが産卵、除草剤の影響」

出典 → ココ 、(保存版

アメリカで最も普及している除草剤の1つに、オスのカエルを産卵できる身体へと変化させる働きがある可能性があるという最新の研究が発表された。 

アメリカの農地で雑草の防除に広く使用されているアトラジンは、動物の生殖系の機能を妨げる内分泌攪乱物質、いわゆる環境ホルモンの一種である。

カリフォルニア大学バークレー校の生物学者で研究を率いたタイロン・ヘイズ氏は、アトラジンが及ぼす影響をテストするために、遺伝的にオスのアフリカツメガエル40匹を、孵化してから成体になるまで濃度0.003%のアトラジン溶液の中で飼育した。すると、全体の10%にあたる4匹が通常のメスとまったく同じ姿へと成長した。

この化学物質が人間に与える影響についてはあまり研究例がないが、最近の研究の中にはアトラジンの使用と乳ガンを関連付けるものがある。アメリカ環境保護庁は最近になって、アトラジンが人間にどのような害を与えるか再調査中であると発表した。ヨーロッパ連合では2004年にアトラジンの使用が禁止されている。

★2010年3月9日:田舎人:田舎の日記:「除草剤が生態系にもたらす致命的害悪」

出典 → ココ 、(保存版

「除草剤でオスのカエルがメス化」 米化学者らの研究(CNN) 

米中西部の農業地帯などで広く使われている除草剤アトラジンの影響で、オスのカエルの生殖能力が低下し、一部はメス化して産卵することもあるとの研究結果を、米カリフォルニア大バークレー校の科学者らが発表した。世界各地で両生類が減少している原因のひとつとも考えられるという。

研究は、同大で爬虫類、両生類を研究するタイローン・ヘイズ氏らが実施し、米科学アカデミー紀要の最新号に掲載された。それによると、オスのカエルを低濃度(2.5ppm)のアトラジン溶液の中で長期間育てたところ、全体の4分の3に男性ホルモンや精子が減少するなどの兆候がみられ、1割は完全にメス化した。メス化したカエルはオスと交尾し、産卵したという。

アトラジンは長年、安くて手軽な除草剤として、とうもろこし農家などを中止に幅広く使用されてきた。人体への影響ははっきりしていないが、欧州連合(EU)は2004年、飲料水に含まれる量が有害物質の基準である0.1ppmを上回っているとして、使用を禁止した。

米国では2006年、米地質調査所(USGS)が実施した調査で、農業地帯から採取した河川の水の約7.5割、地下水の約4割からアトラジンが検出された。

水中のアトラジンは、公共給水施設や家庭で使われるカーボンフィルターで除去が可能とされる。しかし、小さな町などではこうした設備が普及していないため、一部住民がアトラジンの製造メーカーに除去費用の負担を求める訴訟を起こした例もある。

また、米環境保護局(EPA)は昨年、アトラジンとがんの発生の関連を調べる研究を開始。結果によっては現行の安全基準(飲料水で3ppm未満)を見直すなど、規制を強化する構えを示している。

一方、最大のメーカー、シンジェンタ(本社・スイス)はウェブサイト上で、「水中のアトラジンが消費者の健康を脅かす恐れはない」との立場を示す。同社はさらに、大学などでの研究により、アトラジンがカエルの成長などに影響を及ぼさないことも確認されたと主張している。

★2010年7月号:日経サイエンス:「性転換除草剤」

出典 → ココ 、(保存版

米国の農地は除草剤のアトラジンまみれだ。そのアトラジンが動物の性に影響するらしい。オスのカエルをメスに変えてしまう性転換作用があるのだ。

カリフォルニア大学バークレー校の生物学者ヘイズ(Tyrone Hayes)らは40匹のアフリカツメガエルを濃度2.5ppb(1ppbは10億分の1)のアトラジンに3年間さらし続けた結果を米国科学アカデミー紀要3月1日号に報告した。

米環境保護局(EPA)の基準で飲料水に許容されるアトラジン濃度は3ppbで,2.5ppbはこれを下回っているが,40匹のうち30匹が化学的に“去勢”され,生殖不能になった。また4匹は実際にメスに変化し,遺伝子的にはオスであるにもかかわらず,オスと交配してちゃんと卵を産んだ。アトラジンの影響を受けなかったカエル(性行動が通常通りだったもの)は6匹だけだった。

屋外環境中のアフリカツメガエルはアトラジンの影響を受けていないようだ。「アトラジンは南アフリカ共和国でも45年前から広く使われているが,私たちが調べたところでは,アフリカツメガエルは農業地域でも非農業地域でも問題なく生きている」と同国のノースウェスト大学にいるデュ・プリーズ(Louis du Preez)はいう。「もしアトラジンが屋外環境でもアフリカツメガエルに悪影響を及ぼしているのなら,すでに気づいているはずだ」。

それでも欧州連合(EU)は水質汚染の恐れありとしてアトラジンを禁止した。

独フンボルト大学の生物学者クロアス(Werner Kloas)は,「個人的には,環境化学物質に関する予防原則を適用して残留化合物を徐々に減らしていくという欧州の対処法が好ましいと思う」という。

米環境保護局は2006年にアトラジンの安全性を宣言したが,人間の健康への懸念から,この除草剤をもう一度調べ直すと2009年10月に発表した。

アトラジンは結局のところ多くの生物種に影響する。「ゼブラフィッシュや金魚,カイマンワニ,アリゲーター,カメ,ウズラ,ラットについて,アロマターゼやエストロゲンの分泌量を増やす」とヘイズは指摘する。「カエルだけの問題ではないのだ」。

★2014年4月26日:青木 薫の「現代ビジネス [講談社]」記事:「無能な研究者のずさんな仕事・・・なのか?」

出典 → ココ 、(保存版
原典 → 2014年2月10日のレイチェル・アビブ(Rachel Aviv)の「New Yorker」記事:A Valuable Reputation | The New Yorker

除草剤アトラジンをめぐる長年の論争がひとつの山場を迎えているようで、『ニューヨーカー』の2月10日号にホットなレポートが載っていました。アトラジンは日本でも使われている除草剤でもあり、今後の成り行きが注目されます。

以下略ですが、青木 薫のこの文章を3章の【事件の経過と内容】で引用して解説します。

●3.【事件の経過と内容】

【シンジェンタ社】

シンジェンタ(Syngenta AG)は、スイスに本拠地を置く多国籍企業。農薬や種子を主力商品とするアグリビジネスを展開している。農薬業界で世界最大手。

2000年、ノバルティスのアグリビジネス部門とゼネカ(現:アストラゼネカ)のアグリケミカル部門が統合して、世界初のアグリビジネスに特化した企業として誕生。(シンジェンタ – Wikipedia)。

【除草剤・アトラジン(Atrazine)】

1958年、スイスのガイギー社(現・ノバルティス社)がアトラジン(Atrazine)を発見した。

なお、ガイギー社のパウル・ミュラー(Paul Hermann Müller)は1939年に殺虫剤・DDTを発見し、1948年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。つまり、当時のガイギー社(現・ノバルティス社)は農薬の発見・発明では優れた技術を持っていた。シンジェンタ社はその遺産を引き継いだ。

アトラジンは、長い間、米国の農業の柱だったし、現在も柱である。1959年に農薬として使用が認可され、現在は芝生、ゴルフコース、クリスマスツリー・ファームはもちろんのこと、米国のトウモロコシ畑の半分、サトウキビ畑の90%で使用されて、最も広く使用されている除草剤である。

シンジェンタ社は、最大のアトラジン生産者だが、アトラジンからの利益を開示していない。同社は選択的除草剤(特定の植物のみを殺す除草剤)で2010年の1年間に23億ドル(約2300億円)の収入を得た。

★ウィキペディア日本語版:アトラジン

出典 → ココ

アトラジン(Atrazine, 2-chloro-4-(ethylamine)-6-(isopropylamine)-s-triazine)はs-トリアジン環を持つ有機化合物。欧州連合では使用が禁じられているが、世界で最も多く使われる除草剤の一つ。「アトラジン」の名称以外にも商品名で呼ばれることも多い(日本ではシンジェンタから「ゲザプリム®」の名で市販されている)。

アトラジンは発芽直後の植物を枯らすのに有効なので、農作物生産時の除草剤としてよく使われる。アトラジンは幅広い農作物に使用可能であり、残留性も低いとされている。

アトラジンは土壌中の微生物により分解される。土中のアトラジンの半減期は、13~261日である。

アトラジンは地下水を汚染するとして、欧州連合では2004年に禁止された。アメリカ合衆国ではアトラジンは使用規制はあるが禁止はされておらず、広範囲に使われる除草剤の一つ

★タイロン・ヘイズ(Tyrone Hayes)

米国のカリフォルニア大学バークレー校のタイロン・ヘイズ教授(Tyrone B. Hayes、写真同)がアトラジンの毒性を指摘している。ヘイズ教授は、1967年7月29年生まれなので、現在、50 歳である。

アトラジンを製造販売しているシンジェンタ社は、2002年頃から2013年までの12年間に渡って、タイロン・ヘイズの活動を妨害しようと、さまざまな方法で攻撃した。その攻撃の様子は後で述べる。

ーーー以下の出典:青木 薫

写真は白楽が加えた

→ 2014年4月26日:青木 薫の「現代ビジネス [講談社]」記事:「無能な研究者のずさんな仕事・・・なのか?」
ココ 、(保存版

タイロン・ヘイズ(Tyrone Hayes)は、サウスカロライナ州出身のアフリカ系アメリカ人で、彼が生まれ育った地域では、人口の六割以上が高校を終えていないのだそうです(高校卒業率が40%を切る、ということですね。ちなみに日本は高校卒業率95%、アメリカ全体では78%程度です)。しかしヘイズは成績優秀だったため、奨学金をもらって別の地域の高校に進むことができました。彼が両生類に興味を持つようになったのは、この頃だったそうです。

ヘイズは奨学金を受けてハーバード大学に進みますが、大学ではひどいカルチャーショックに苦しめられました。ハーバードにはアフリカ系アメリカ人の学生もいるのですが、みんな裕福な家の出だったそうです。そんなキャンパスに居場所のなさを感じて大学を辞めることも考えたヘイズでしたが、幸いにも、韓国系アメリカ人の彼女(Kathy Kim)ができたり(同じ生物学専攻で、二人は卒業と同時に結婚します)、「うちの研究室に来ないか」と誘ってくれる教授(Bruce Waldman、写真出典)がいたりして救われます。

ハーバードを卒業後、カリフォルニア大学バークレー校に移って三年半で博士号を取得し、すぐに同校にポストを得ることができました。こうしてヘイズは、生物学の分野ではアメリカ全体でもわずか数名しかいないという、テニュアを持つアフリカ系アメリカ人の教授となりました(この時点では準教授)。同じ分野の研究者はヘイズのことを、「信じられないほどの天分に恵まれ、しかも猛烈に仕事をする」と評しています。しかも彼は教育にも力量を発揮して、教育実績に対してバークレーでも最高の賞を受賞しています。

ヘイズは研究者として順風満帆の船出をしたように思われました—1997年、三十一歳のときに、シンジェンタ社と契約し、除草剤アトラジンの影響を調べることになるまでは・・・。シンジェンタは、モンサント、デュポンに次ぐ世界第三位のアグリビジネスの多国籍企業で(本拠地はスイス)、この当時はまだ大手製薬会社ノバルティスの一部門でした。

ヘイズが除草剤アトラジンの影響について研究をするうちに、シンジェンタにとって思わしくない結果が出始めたのです。そのためシンジェンタとのあいだで緊張が高まり、2000年、ヘイズとシンジェンタとの契約は打ち切りになります。

アトラジンは、アメリカでは二番目に広く用いられている除草剤で、(一番目はモンサント社のグリフォセート)、年間売り上げは三億ドル(約300億円)と言われ、アメリカでは中西部のトウモロコシ農家で広く使われています。米環境保護庁の計算によれば、もしもアトラジンの使用をやめると、アメリカ全体でトウモロコシの生産量が6%減少し、年間二十億ドル(約2000億円)の減収になるということです。

―ーーー以下の出典:ウィキペディア日本語版
→ ココ

カリフォルニア大学のヘイズは2000年、アトラジンがアフリカツメガエルのオスを雌雄同体にする作用があると述べている。さらに2002年10月、科学雑誌ネイチャーに、アトラジンがヒョウガエルのオスに対して低濃度でも脱オス化を起こさせたと発表した。

「2002年のNature」論文の書誌情報は以下である。

一方、スイスの農業会社・シンジェンタ社は、ヘイズらの実験結果を再現できないとするいくつかの研究論文を示し、反論した。

ヘイズはこれに対し、それらの論文のほとんどは、シンジェンタ社が助成金を支給した研究だと指摘した。

2010年3月、ヘイズはアトラジンがカエルを激減させているとの論文を発表している。

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アフリカツメガエル(Xenopus laevis)。By Muffet – http://www.flickr.com/photos/calliope/549680516/in/photostream, CC BY 2.0, Link

ーーー以下の出典:【主要情報源】④のダシュカ・スレーター(Dashka Slater)の文章から抜粋意訳

ダーネル(Darnell)は、カリフォルニア大学バークレー校の生命科学棟の地下で、ステンレス製の棚にべられたプラスチック製の浴槽の中に住んでいる。彼は、両生類のラットと呼ばれるアフリカツメガエル(Xenopus laevis)である。

アフリカツメガエルは丈夫で長生きし、泳ぎは上手だが、はいまわるのは下手で、食欲旺盛である。彼は子供をもうけ、孫を育て、子孫繁栄している。 しかし、ダーネルについては珍しいことが1つある。

実は、彼はメスなんです。

ダーネルは、水道水のアトラジン基準値以下の2.5ppbのアトラジンを含む水槽で飼育されていた。ダーネルは遺伝的にオスだが、生殖器官などがメスになってしまった。それで、彼であるにも関わらず、オスと交尾し、産卵し、子供の母親になってしまった。

ほとんどの科学者は、米国で最も売れている除草剤が極微量にあるだけでカエルが性転換したことを発見すれば、その研究結果を論文に発表し、政府当局と農薬企業の間で勝敗を決着させることで満足する。

しかし、ヘイズ教授は普通の科学者ではない。

もちろん、研究成果を適切な学術誌に発表し、主要な学会で発表するが、彼はまた、アトラジンに対して社会的に激しく抗議し、政府の公聴会で証言し、新聞・テレビ・雑誌などのメディアに出演し、アトラジン反対のウェブサイト「AtrazineLovers.com」http://atrazinelovers.com/も運営している。

ヘイズ教授の活動がなければ、米国・環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)が10年間で3回もアトラジンの審査をしなかっただろう。また、中西部の40水域は、アトラジンが飲料水を汚染していると、州裁判所および連邦裁判所にシンジェンタ社を訴えなかっただろう。

環境保護庁の2つの委員会委員を務めたイェール大学の生態学者・デビッド・スカリー(David Skelly)は、「ヘイズ教授は卓越した人です。彼は目立つ人物なので、アトラジン問題を訴えるのに適したキャラです」と語っている。

シンジェンタ社はこのヘイズ教授を攻撃したのである。

【シンジェンタ社のさまざまな攻撃】

【動画】
事件ニュース「アトラジン:同性愛と性的錯乱を化学的に誘発する化学物質(Atrazine: Chemical Used to Chemically Induce Homosexuality & Sexual Confusion)」(英語)3分46秒
Irritated Genie Speaks が2016/01/07 に公開
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★シンジェンタ社の攻撃

以下の文章を「修正」引用する。
→ 2014年4月26日:青木 薫の「現代ビジネス [講談社]」記事:「無能な研究者のずさんな仕事・・・なのか?」
ココ 、(保存版

アトラジンについてヘイズが得た思わしくない結果というのは、オスのカエルの生殖器に異常が見られたことです。で、契約が打ち切りになった時点でアトラジンの研究も止めていれば、ヘイズは順風満帆のままだったのかもしれません。しかし、彼はその後もなんとか資金繰りをしながら、アトラジンの影響を調べ続けたのです。

そのころから、ヘイズの身の回りに奇妙なことが起こり始めます。ラボにかかってきた電話の受話器をとると、盗聴されているときの、あのカチカチカチという奇妙なノイズが聞こえたり、自分が得た最新のデータを、どういうわけかシンジェンタに漏れているらしいことが判明したり、学会や研究会に行くと、生物学者にしてはパリッとしたスーツを着た男を必ずいて、熱心にメモを取り、ヘイズの発表にケチをつけたり・・・。そんなわけで、重要な出張のときには、一晩ごとに宿泊するホテルを替えることもあったそうです。

ヘイズはそんな事態に頭を痛め、シンジェンタ社が自分の信用を落とし、学界で孤立させようとしている、と仲間の研究者にも語るようになりました。

ところが、昨年(2013年)の夏、中西部の二十三の自治体が、アトラジンの危険性を隠蔽しているとしてシンジェンタを訴えていた集団訴訟に関係する手続き上、シンジェンタの内部資料が開示されたのです。それは数百件に及ぶ、メモやノート、電子メールなどでした。それらの資料調べた結果、ヘイズは被害妄想でもなんでもなかったこと、そして「ここまでやるか!」というシンジェンタの手口が明らかになったのです。

シンジェンタ社・通信部長(Head, External Communications)のシェリー・フォード(Sherry Duvall Ford、写真出典)がヘイズ教授攻撃の中心人物だった。

シンジェンタとの関係を切った後の2002年に、ヘイズがアトラジンの影響に関する最初の論文を発表すると、シンジェンタのPRチームは対抗措置を講じ始めます。

いろいろな研究者に研究費を提供して、カエルの性転換にはアトラジンが関係していないという一連の研究発表を誘導した。これは、助成金バイアスではあるが、学術的な場での“学問的”論争で、ヘイズ教授の研究成果が間違っている印象を与える攻撃である。

助成金バイアスは汚い。しかし、シンジェンタ社の“学問的”論争で挑む攻撃は、結局、成功しなかった。

以下の「2010年のEnviron Health Perspect.」論文や「2011年のJ Steroid Biochem Mol Biol.」総説で見るように、ヘイズ教授の研究成果が正しいと思われる。

2011年、米国だけでなく、カナダ、英国、ベルギー、クロアチア、アルゼンチン、日本、ブラジルの8か国、18研究機関の21人の研究者と共著で、以下の「2011年のJ Steroid Biochem Mol Biol.」総説を発表した。

アトラジンはカエルのオスの生殖器異常をだけでなく、魚類、両生類、爬虫類、哺乳類のオスの生殖器異常を引き起こすことを、世界の研究者が認めたのである。

話を2004年に戻そう。

学問的な正否の勝負をすると、シンジェンタ社は自分たちに勝ち目はないと悟っていたのだろう。それで、シェリー・フォード部長は、汚い手を使ってヘイズ教授を引きずり下ろすことを画策したのである。

以下、青木 薫を再び修正引用しよう。

2004年になると、なんと週一回のペースで、ヘイズ対策ミーティングを開いていたこともわかりました。そのミーティングでは、ヘイズの信用を落とすために行うべきことのリストを作成したりしています。

シンジェンタは金もマンパワーもありますから、たとえば専門家の研究グループに社員をもぐりこませたりもしますし、時給500ドル(約5万円)で シカゴ大学の経済学者・ドン・コーシー教授(Don Coursey、写真出典)を雇い、アトラジンを市場から引き上げると、農作物にどれだけ損失が生じるかを計算してもらったり、GoogleのサーチワードにTyrone Hayesと入れると Throne Hayes Not Credibleといった検索語が出てくるようにしたり……。

わたしも2014年2月18日の時点で、ヘイズの名前でGoogle検索してみたのですが、誰が書いたのかわからない微妙なウィキペディアの次に出てくるのは、JunkScience.comというサイトでした。このサイトではヘイズのことを、デタラメな研究をする無能な科学者だとしていますが、じつは、このサイトを運営しているNPOの責任者でフリーランスのコラムニストであるスティーブン・ミロイという人物は、シンジェンタから数万ドルの金を受け取っているのだそうです。

シンジェンタは研究者個人に圧力をかけてきただけではありません。たとえば2003年には、人間の新生児に対する疫学調査の結果にもとづき(中西部で水中のアトラジン濃度が高い4月から7月までの間に受胎した子どもでは、先天的な性器の異常が多く見られるというもの)、『ニューヨーク・タイムズ』が、アトラジンの危険性に関する特集記事を組みました。

それに対抗してシンジェンタは、「ホワイトハウス・ライターズ・グループ」というアメリカでは非常に有名なコミュニケーション・コンサルティング会社と契約します。

同社の取締役の一人であるジョシュア・ギルダーは、シンジェンタへの電子メールに、「アトラジンの使用をやめれば経済的に大打撃になるという線で、われわれは新たな戦いを展開する」と述べ、ワシントンの有力者を招いてディナーパーティーをひらき、アトラジンは有害だとする研究の信用を落とすために努力する、などとと述べています。

余談になりますが、このジョシュア・ギルダーという人物は、レーガン大統領のスピーチライターをやっていた人で、『ケプラー疑惑』という(ケプラーがブラーエを暗殺したんじゃないかという疑惑)本の著者でもあります。この本の中では、もう、あることないこと、科学的にグダグダなことを書きまくって、害悪を撒き散らしてくれやがったヤロウなんです!

【動画】
事件ニュース「タイロン・ヘイズが除草剤会社シンジェンタの標的に(Tyrone Hayes on Being Targeted By Herbicide Firm Syngenta)」(英語)16分14秒
freespeechtvが2014/02/21 に公開
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★シンジェンタ社のティム・パストー(Tim Pastoor)

2005年、研究会でヘイズ教授が講演した時、会場にいたシンジェンタ社の科学者、ティム・パストー(Tim Pastoor、写真出典)が発言した。

パストーは、「ヘイズ教授はデータのチェリーピッキング(良いデータだけ選ぶ)をしている」と非難し、「あなたはチェリーピッキングしていませんか?」と質問した。

チェリーピッキングは良いデータだけ選ぶ行為なのでデータ改ざんである。研究会でこういう発言をすると、「火のないところに煙は立たず」なので、聴衆は講演者が「チェリーピッキングしているのではないか」と疑い、講演内容を信用しなくなる。つまり、ヘイズ教授を貶める無礼な行為である。

ヘイズ教授は、電子メールでパストーに「心配しないでください…。パパはあなたのチェリーを拾う(ピックする)つもりはありません」と返答したそうだ。

別の研究会で、ティム・パストーはアトラジンが米国の農家にとって「生活の道具」であると主張した。

ヘイズ教授はパストーに「アトラジンはあなたにとってどれくらい「生活の道具」でしたか? 私はあなたの「生活の道具」を握っていますよ」と電子メールした。

ヘイズ教授もなかなか挑戦的である。

イヤイヤ、「なかなか」どころか、言葉使いは「かなり激しかった」ようだ。

2009年4月1日付のカリフォルニア大学バークレー校の手紙は、ヘイズ教授がシンジェンタ社の社員に暴言を吐いたことに対して大学が対処したと書いている。

つまり、シンジェンタ社がヘイズ教授の暴言をカリフォルニア大学バークレー校に抗議したので、キャンパス環境/法令順守部・部長補佐(assistant Vice Provost, Campus Climate and Compliance Office)のナンシー・チュー(Nancy Chu、写真出典) は、ヘイズ教授と話し合って、暴言を吐かないよう処置した手紙をシンジェンタ社に送付している(以下)。

2010年2月、シンジェンタ社のティム・パストーは、イリノイ州議会委員会で証言をしようとしているヘイズ教授をつかまえて、「あなたが旅行してる時、家族の安全や研究室の安全は誰が面倒みてるの? 心配した方がいいよ。ティーバッグ野郎!」と、脅迫した。[白楽注:ティーバッグ(Tea Bag)は性的要素を含む表現で相手を挑発・侮蔑するスラングだそうです。]

このようにシンジェンタ社・社員がヘイズ教授に脅迫や暴言を吐いた。

反撃のヘイズ教授の言葉は質量ともにかな激しかったようだ。

2010年7月19日、シンジェンタ社は再びヘイズ教授の暴言をカリフォルニア大学・統括本部とバークレー校・学長に抗議している(以下は手紙の一部)。

シンジェンタ社が2回も大学上層部に、ヘイズ教授の暴言に抗議するということは、ヘイズ教授の言葉はかなり激しかったようだ。

2010年8月、そのヘイズ教授の暴言は、「ヘイズ教授:誇大妄想狂の生物学者(Dr. Tyrone Hayes:Biologist、Cock-Fixated Megalomaniac Email Addict)」などとブログに取り上げられたり、「2010年のネイチャー」記事になった(E-mails spark ethics row : Nature News)。

★米国農家はアトラジンまみれ

米国農務省の記述によると、米国の農業労働者の半分はヒスパニック系である。ヘイズ教授は「彼らの尿中のアトラジン濃度は、我々の研究室でカエルを性転換したアトラジン濃度の24,000倍も濃い」と指摘している。

2009年のニューヨークタイムズ紙の調査によると、3300万人の米国人が飲料水からのアトラジンに汚染されている。

2010年の米国・環境保護庁(EPA)データでは、10州のうち9州が連邦政府の許容基準値を超えている。中西部の水域では、許容基準値の9倍から18倍だと報告されている。

米国・環境保護庁(EPA)は、許容基準値をこの程度超えても、アトラジンは健康に有害ではないと主張した。

しかし、疫学的研究では、極めて低い濃度でも、出生前のアトラジン曝露は、先天性欠損、早産、低出生体重と関連すると報告されている。

ヘイズ教授は、「0.1ppbは低い濃度ではありません。エストロゲンは、それより100〜1000倍低い濃度で活性を示しています。内分泌かく乱物質と考えれば、0.1ppbのアトラジン濃度は、十分に高濃度です」と指摘している。

米国・環境保護庁(EPA)は、アトラジンの禁止や制限を再検討した。諮問委員会はアトラジンを疫学的には有害だという証拠が強いと指摘したが、発癌性は控えめ扱った。

しかし、諮問委員会の科学審査は4年間と長期に及んでいる。

ヘイズ教授は、米国・環境保護庁(EPA)・諮問委員会に期待していない。というのは、諮問委員会が意思決定する際の基礎となる査読付き学術論文の半分以上はシンジェンタ社からの助成金をもらった研究だからだ。

ヘイズ教授が懐疑的であるもう一つの理由は、トウモロコシ業界のロビー活動である。トウモロコシ農家はアトラジン賛同者である。アトラジンは労力を減らし、収穫を増やしてくれる。カンサス州トウモロコシ栽培協会長のジーレ・ホワイト(Jere White)は「ヘイズ博士の文章を読んではいけない」と述べている。

以下、青木 薫を再び修正引用しよう。

さて、米国環境保護庁は2014年現在、アトラジンを市場から引き上げるかどうか、あるいは継続使用するかどうかを改めて検討中です。アトラジンはヨーロッパでは2003年には使用禁止が決定されているのですが、米国環境保護庁はその後もずっと、「危険性を指摘する研究は信頼性が足りない」という理由により、継続使用を決めてきました。

話は長くなるので、ここでは詳しくは述べませんが、シンジェンタはもちろん! 環境保護庁にも回せる手は回していますので、今年の判断もどちらに転ぶかわかりません。

けれども、もしも今回市場からの引き上げが決定されれば、ヘイズにとっては15年間に及んだ戦いが、ひとまず決着するかたちになりますね。

今ではヘイズも孤立無縁というわけではなく、さまざまな分野の研究者がアトラジンの影響を調べており、両生類だけでなく、脊椎動物全般のオスに悪影響があるということで証拠が固まってきつつあるようです。

もちろん、天然であれ合成ものであれ、いかなる化学物質も毒にもなれば薬にもなります。大量に摂取すれば、なんだって毒になります。

とくに農薬の場合には、人口を支える食糧供給の問題も考えなければなりません。あらゆることを、バランスをとって判断しなければならないわけです。その点に関しては、シンジェンタやモンサントの言うとおりなんです。

しかし、だからこそ、公正な研究ときちんとした検討が必要なのに、そういう研究に取り組んでいる研究者を潰すためにここまで汚いことをやるなんて、ダメでしょそれは・・・って思うんですよね。巨額の金が絡むところでは何が行われるのか、われわれはそういうことも知る必要がありそうです。

★シンジェンタ社の攻撃:大学と結託し研究費操作

以下の内容の出典は、2013年10月27日のベン・クリストファー(Ben Christopher)記者の「California Magazine」記事: ①Hopping Mad: Frog researcher who galls industry loses UC lab funds | California Magazine、②Update: Hopping mad science feud boils down to frog fees | California Magazine

2013年、ヘイズ教授の研究費が枯渇寸前に陥った。

カリフォルニア大学バークレー校のグラハム・フレミング副学長(Graham R. Fleming 、写真出典)は、ノバルティス社(Novartis)から5年間で2,500万ドル(約25億円)の助成金を受け取る契約を守りたいので、ヘイズ教授の研究費を妨害してヘイズ教授を大学から追い出そうとしていた。なお、ノバルティス社はシンジェンタ社の関連会社である。

大学政治を良く知る人は、思い出すだろう。1999年、カリフォルニア大学バークレー校の植物・微生物学科は、スイスの製薬会社ノバルティス社(Novartis)と前例のない契約を締結した。毎年500万ドル(約5億円)の研究資金を5年間受け取るのと引き換えに、植物・微生物学科の研究成果を論文発表前にすべてノバルティス社(Novartis)に見せるという取引だった。

この取引は、学術界では賛否両論の議論を引き起こした。ただ、5年契約が終った2003年、ノバルティス社は投資に見合ったリターンがなかったことに失望し、契約を延長しなかった。

ノバルティス社は10年前に失敗した大学との契約を、2013年現在、再び持ち出してきたのである。

その頃、ヘイズ教授は研究資金調達に苦労していた。

カリフォルニア大学バークレー校・戦略的コミュニケーション部長のダン・モーグルフ(Dan Mogulof、写真出典)は、「ヘイズ教授は、研究室でカエルなどの生物を何千匹も飼っていて、その飼育料を請求されていまが、今、支払いできていないんです。なお、付け加えますが、ノバルティス社から大学に圧力がかかっているってことはありません。ノバルティス社との研究契約を守りたいと主張されている当のご本人(ヘイズ教授)も含めて、個々の教員は大学と企業の契約を把握しておりません」。

確かに、ヘイズ教授自身はノバルティス社との研究契約の正確な情報をつかんでいなかった。

ヘイズ教授は、実際に自分の研究費が足りないことを承知していて、大学は一貫して彼に生物飼育料を過大に課金していると抗議していた (ダン・モーグルフは過大に課金していないと反論している)。

ヘイズ教授は、ケージ1日当たり約48セントの生物飼育料を払っているが、数千匹の生物を飼育しているため、年間およそ6万ドル(約600万円)を払っていた。そのお金はNIHや「Kapor Center for Social Impact」財団などから得た研究費で賄っていた。

ヘイズ教授は、「他の教員は大学からの請求額のほんの一部を支払っているだけだ。私は同僚の80倍もの生物飼育料を払っている」と憤慨していた。

「バークレー校の遺伝学者・リチャード・ハーランド(Richard Harland)には、ケージ1日当たり8セントの生物飼育料が請求され、実際は2.5セントしか払っていない。一部の教員は請求額自体が安いうえに、支払いはその一部でいいとは、「禁止4文字」」とヘイズ教授の言葉は激しい。

生物飼育料のことで、ヘイズ教授は、大学の実験動物課(Office of Laboratory Animal Care)が料金を一方的に変更した2004年からもう10年間も大学ともめている(2013年現在)。

ダン・モーグルフは、大学はヘイズ教授に過大に課金していないと反論している。

実験動物課長のローヤル・ファン・アンデル(Roger Van Andel)に記者が意見を聞くと、「ヘイズ教授はリンゴとオレンジをいっしょくたにしています。カエルなどはスタティック飼育槽で飼育するのですが、維持するのにかなりの労力がかかります。一方、ハーランド教授などの生物飼育ケージはフロースルー・フィルター方式(スタティック飼育槽ではない)なので、少ない労力で維持できます。それで、ヘイズ教授のご指摘のように、生物飼育料は数十倍も安くなります」と解説してくれた。

「実は、ヘイズ教授のケージ1日当たり約48セントの生物飼育料は、本来の標準料金では1日当たり81セントです。研究者が飼育の世話をするという名目の「PI-labor」レートを適用して、約48セントと安くなっているのです。ヘイズ教授に「PI-labor」レートを適用していることは、大学も同意し、何年も前から実施しています。ヘイズ教授への料金請求はむしろ彼の同僚に比べ、約半額になっているのです」。

「「PI-labor」レートは過去12年間、実のところ、とても特別なケースにしか認められていません。私が知っている限り、「PI-labor」レートが認められたケースは2件しかありません」。

大学側の説明では、どうやら、ヘイズ教授は特別に生物飼育料を安くしてもらっているようだ。

ヘイズ教授は、「もちろん、「ノバルティス社の誰かが副学長に電話して、ヘイズ教授を切るように」、と言ったわけではない。しかし、私はシンジェンタ社と私の抗争が続いていると思っているし、ノバルティス社と大学との間に強い関係があるために、私の研究費獲得が妨害されていると思っている」と相変わらず憤慨していた。

★シンジェンタ社の攻撃:まとめ

わかっているだけで、シンジェンタ社がヘイズ教授に行なった研究妨害は以下の通りである。

  • ヘイズ教授を脅迫
  • ヘイズ教授の妻を脅迫・・・本記事で記載していない
  • 反ヘイズ教授キャンペーンを社内で企画実行
  • ヘイズ教授の講演で「ネカトしていないか?」と質問
  • 有力な経済学者に金を払い、除草剤・アトラジンを禁止すると農作物に大きな損失が生じるという論文を発表させた
  • Google検索で「Tyrone Hayes」と検索すると ヘイズ教授に否定的・悪評判の検索語が出るようした
  • 多数の同分野の研究者に金を支給し、除草剤・アトラジンに害はなく優れた農薬だという論文、ヘイズ教授論文への反論記事を書かせた
  • 裁判官の私生活を調査し、弱点を探り、何らかのアクションをした・・・本記事で記載していない
  • 政府・諮問委員会の科学者たちを調査し、弱点を探り、何らかのアクションをした・・・本記事で記載していない

【関連情報】

本記事はアトラジンの安全性を検証するブログではない。ネカト・ブログで、シンジェンタ社が不当に研究結果を歪めようとした点に絞って記載した。

しかし、アトラジンの安全性は気になるところでもある。以下に、日本語の関連情報を数件、羅列した。

★危険という意見

★安全という意見

  • 2015年5月14日。日本産業衛生学会ヒトの集団において,アトラジンの職業性曝露による明らかな健康影響が起こったという報告がなく,職場における濃度を測定した上での,健康影響を検討した結果もない.生殖毒性についても,現時点では,予防すべき影響とするほどの十分な科学的知見は,疫学的,毒性学的に明らかでない.発がん性に関しても,IARC は,動物実験で観察される腫瘍は系統特異的であってヒトには直ちに適用できるものはないとの判断に基づき Group3(ヒト発がん物質として分類できない)と分類している.
  • シンジェンタ社のウェブサイト:アトラジン。最も厳格な規制上の要求に適合した安全性の関係書類により、アトラジンは最良の世界で最も広範囲に研究された農薬製品です。アトラジンは、これまでに何百もの試験対象となってきました。シンジェンタの考え方 | 企業の責任 | シンジェンタジャパン

●4.【白楽の感想】

《1》社会派学者

ヘイズ教授は自分の研究結果が農薬の危険性を示していた。それを論文に発表しただけで物足りず、激しく、社会活動をした。現在、このヘイズ教授のような人は日本にいるのだろうか?

ヘイズ教授の勇気と行動力に敬服するが、日本では、正義派学者を支えるメディア、システム、資金提供者がいない。正義派学者は日本では絶滅危惧種あるいは既に絶滅している。

日本では、ほぼ100%近くの学者が、今や御用学者である。そういう社会構造になっている。

中国の言論統制を笑えない。

どうするといいんだろうか?

《2》事実が隠蔽されない社会

他の企業も、シンジェンタ社の研究妨害と同じような研究妨害を行なっているだろう。裁判資料が公開されてシンジェンタ社の蛮行の一部が明るみに出たわけだが、こういうを資料が公開される米国社会をうらやましい。

日本は、森友学園・加計学園や陸上自衛隊の日報問題でメチャクチャなことをしている。安倍首相と官邸、稲田朋美・元防衛相の事実隠蔽や虚偽答弁が明白である。

クロをシロとしたまま、押し通してしまえる日本の隠蔽社会に暗い闇を感じる。

「日本に正義はない」
「日本には真実を最も尊いとする思想がない」

どうするといいんだろうか?

《3》巨額なカネが絡むと真実がみえにくい

除草剤・アトラジン(Atrazine)は安全なのか危険なのか? 恵みの除草剤なのか、悪魔の除草剤なのか?

巨額なカネが絡むと真実がみえない。

とはいえ、シンジェンタ社の研究妨害・個人攻撃は明らかに度を越している。犯罪と認定されなくても、犯罪「的」なのは明らかである。

企業や政治団体を含め多くの巨大組織は、現在も犯罪「的」な行為をしているのだろう。

どうするといいんだろうか?

《4》人口が増える国・減る国

シンジェンタ社の除草剤・アトラジン(Atrazine)が原因で死亡した人及び健康被害を受けた人は報告されていない。

報告されてはいないのは、個々の被害は微弱で気がつきにくく、しかも広範に及んでいるために、自分が被害者だと思わない可能性がある。

一般的な事実として、男性の精子数が世界的に減少している。
→ 2010 年4月25日の「Independent」記事:Out for the count: Why levels of sperm in men are falling | The Independent

その理由として、マサカ、飲料水のなかの除草剤・アトラジンが原因ということはないでしょうね?

農薬が男性の精子数を減らし、人口減になるなら、農薬は民族を静かに弱体させる兵器にもなる。

日本の人口は2017年現在1億2600万人だが、33年後の2050年には1億700万人と15%(1900万人)も減少してしまう。
→ Japan Population (2017) – Worldometers

しかし、世界全体でみると、2017年現在75億1500万人の人口が、33年後の2050年には97億2500万人と13%(22億1千万人)も増加する。

だから方策はあるはずだ。

日本は、どうするといいんだろうか?

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●5.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Syngenta – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:Tyrone Hayes – Wikipedia
③ ウィキペディア英語版:Atrazine – Wikipedia
④ 2012年1・2月号のダシュカ・スレーター(Dashka Slater)の「Mother Jones」記事: The Frog of War、(保存版
⑤ 2013年6月17日の野口知美(化学物質問題市民研究会)翻訳の記事:EHN 2013年6月17日 特別報告:シンジェンタのアトラジン擁護キャンペーン 批判者の信用を傷つける、(保存版
⑥ 2014年2月10日のレイチェル・アビブ(Rachel Aviv)の「New Yorker」記事:A Valuable Reputation | The New Yorker
⑦ 2014年4月26日の青木 薫の⑥の日本語解説記事: 無能な研究者のずさんな仕事・・・なのか?() | 現代ビジネス | 講談社、(保存版
⑧ 2016年6月13日のジョナサン・ベイカー(Jonathan Baker)の「High Plains Public Radio」記事: Long-Term Legal Battle Ahead for Atrazine | HPPR
⑨ 「100 Reporters」のアトラジン記事群:100Reporters investigation sparks documentary coverage of pesticide | 100 Reporters
⑩ 2014年3月10日のジョン・エンティン(Jon Entine)の「Forbes」記事:Did The New Yorker Botch Puff Piece On Frog Scientist Tyrone Hayes, Turning Rogue into Beleaguered Hero?
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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