法学:「経歴詐称」:クリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)(スペイン)

2018年7月15日掲載。

ワンポイント:マドリード州議会・議員だった2012年(47歳)、フアン・カルロス国王大学(King Juan Carlos University)で法学の修士号を取得した。そして、2015年(50歳)、マドリード州・知事に就任した。ところが、2018年3月(53歳)、上記の法学・修士号取得は虚偽だったことが発覚した。また、2011年(46歳)にスーパーマーケットで万引きした動画が2018年(53歳)に動画サイトにアップされた。結局、2018年4月(53歳)、マドリード州・知事を辞任し、その翌月、政界から引退した。損害額の総額(推定)は10億円(当てずっぽう)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

クリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes、写真出典)は、1991年にマドリード州議会・議員に26歳の若さで当選し、その後、2015年(50歳)まで、7回当選した。2015年(50歳)、スペインのマドリード州・知事に就任した。

2012年(47歳)、マドリード州議会・議員に在職のまま、フアン・カルロス国王大学(King Juan Carlos University)で法学の修士号を取得した。

2018年3月(53歳)、上記の修士号取得は虚偽だったことが発覚した。

2018年4月(53歳)、マドリード州議会・議員に在職中の2011年にスーパーマーケットで万引きし、警備員に持ち物を検査されている動画が動画サイトにアップされた。

2018年4月(53歳)、マドリード州・知事を辞任した。その翌月、政界から引退した。

フアン・カルロス国王大学(King Juan Carlos University:Universidad Rey Juan Carlos)。写真出典

  • 国:スペイン
  • 成長国:スペイン
  • 修士号取得:フアン・カルロス国王大学
  • 研究博士号(PhD)取得:なし
  • 男女:女性
  • 生年月日:1964年7月1日
  • 現在の年齢:54歳
  • 分野:法学
  • 最初の経歴詐称:2012年(47歳)
  • 発覚年:2018年(53歳)
  • 発覚時地位:マドリード州・知事
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はメディアの記者だが、詳細は不明
  • ステップ2(メディア): スペインの各種メディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①フアン・カルロス国王大学・調査委員会
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
  • 不正:経歴詐称、万引き
  • 時期:キャリアの中期から
  • 損害額:総額(推定)は10億円(当てずっぽう)。内訳 → ①経歴詐称は明白である。政治家としてその国と政界の権威・公正・信頼を失墜させ、学術界を腐敗させた。知事は10億円(当てずっぽう)。
  • 職:事件後に発覚時の地位をやめた(Ⅹ)
  • 処分:
  • 日本人の弟子・友人:不明
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cristina_Cifuentes_2018_(cropped).jpg

●2.【経歴と経過】

  • 1964年7月1日:スペインのマドリードで生まれる
  • 1986年(22歳):マドリード・コンプルテンセ大学(Complutense University of Madrid)で学士号取得:法学
  • 1991-2015年(26-50歳):マドリード州議会・議員に26歳の若さで当選し、その後、7回当選した
  • 2011年(46歳):エロスキ(ス―パーマーケット)で万引き
  • 2012年(47歳):フアン・カルロス国王大学(URJC:King Juan Carlos University)で修士号取得:法学。後に詐称と判明
  • 2015年5月(50歳):マドリード州・知事に就任
  • 2018年3月(53歳):修士号取得は虚偽だったことが発覚する
  • 2018年4月(53歳):2011年の万引き動画が動画サイトにアップされた
  • 2018年4月(53歳):マドリード州・知事を辞任

●3.【動画】

【動画1】
化粧品を万引きし警備員に検査されている動画:「クリスティーナ・シフエンテスがエロスキ(ス―パーマーケット)で万引きする(Cristina Cifuentes robando en Eroski con audio [GONE WILD])」(スペイン語)3分16秒。
Jonan BGoodが2018/04/25 に公開

●4.【日本語の解説】

この事件の日本語解説はたくさん(3つ以上)あった。

★2018年4月11日:スペインプレス:マドリード州クリスティーナ・シフエンテス州首相博士課程公文書偽造疑惑事件 ホアン・カルロス国王大学公法研究所副所長辞任へ

出典 → ココ

マドリード州クリスティーナ・シフエンテス州首相博士課程成績公文書偽造疑惑の件で、ホアン・カルロス国王大学公法研究所副所長ラウラ・ヌーニョが10日、個人的な理由により辞任したことが分かった。

地元メディアの報道によると、ヌーニョ前副所長はシフエンテス州首相の博士課程修了証に署名をしていないと言明。 さらに、同州首相に対して授業を行ったこともないと発言した。

★2018年4月17日:スペインプレス:クリスティーナ・シフエンテス州首相博士号公文書偽造疑惑「博士号を棄権」ホアン・カルロス国王大学学長に謝罪

出典 → ココ

クリスティーナ・シフエンテス州首相の公法博士課程修了証偽造に関し同州首相は17日、ホアン・カルロス国王大学ハビエル・ラモス・ロペス学長に謝罪文を送付、問題となっている博士号を破棄し学長に対し謝罪した。

地元メディアOkDIARIOが報じたところによると、クリスティーナ・シフエンテス州首相は学長に対し送付した謝罪文で、添付した博士課程授業料領収書などから分かるように「違法なことは何一つしておらず、大学が要求したことに従っただけである。」と指摘しつつも、同大学事務局の不正行為の可能性により修了証が正式な(署名の)ものではなかったとし、なぜこのような事態になったか分からないと証言。

★2018年4月26日:AFPBB News:修了証書偽造に万引き疑惑、スペイン・マドリード州知事が辞任

出典 → ココ(保存版)

【4月26日 AFP】スペイン・マドリード州のクリスティナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)知事(53)が25日、辞任した。シフエンテス氏をめぐっては、修士課程の修了証書を偽造したと取り沙汰されていた上、2011年に40ユーロ(約5000円)相当の化粧品を万引きした疑惑も浮上していた。

シフエンテス氏をめぐっては、フアン・カルロス国王大学(URJC)の2011~12年度の修了証書を、必要な全試験を受けず、講義にもほとんど出席していなかったにもかかわらず取得したとして、1か月ほど前からメディアの注目を集めていた。

★ウィキペディア日本語版:クリスティーナ・シフエンテス – Wikipedia

2015年5月21日、第5代マドリード州首相に就任した。

2018年3月21日、フアン・カルロス王大学の修士号を不正に取得したとの疑いがかけられ、4月5日にはこの疑惑の司法調査が開始された。4月17日にはフアン・カルロス王大学の学長に対して謝罪文を送付し、修士号の破棄を表明した。なお、この案件ではフアン・カルロス王大学の公法研究所副所長が「個人的な理由」により辞任している。

2018年4月下旬には、2011年5月にスーパーマーケットで40ドル相当のアンチエイジングクリームを万引きして警備員に呼び止められているビデオが暴露された。修士号不正取得疑惑と万引き疑惑の最中の4月25日、シフエンテスはマドリード州首相を辞任した。4月28日には国民党マドリード州支部長の座を辞任した。5月8日にはマドリード州議会議員の座も辞任し、政界からの引退を表明した。

El presidente de Portugal Marcelo Rebelo de Sousa, recepción Palacio Real. 写真出典:http://www.lasexta.com/noticias/nacional/cristina-cifuentes-evita-por-segunda-vez-coincidir-con-mariano-rajoy_201804165ad46bfe0cf264760ed06642.html

●5.【不正発覚の経緯と内容】

事件の日本語解説が詳しく、追加する事項はあまりないが、少しだけ追加する。

不正は、メディアの記者が見つけ追及した。

2018年3月21日(53歳)、デジタル日刊紙「eldiario.es」は、クリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)はフアン・カルロス国王大学の法学コースを修了しておらず、成績証明書は後で修了したように改ざんしたと発表した。

シフエンテスは、出席が必要であったにもかかわらず授業に出席しなかったり、試験を受けなかったことを認めた。しかし、多忙だったので、社会人院生が利用できる別メニューで教員の授業を受けたと主張した。

フアン・カルロス国王大学は、「シフエンテスは最終論文を作成していない」と発表した。

オンライン日刊紙「El Confidencial」は、大学文書であるシフエンテスの論文合格証明書の署名のうちの2つが偽造されたように見えると報告した。署名したとされる2教授は署名した覚えはないと明言した。

シフエンテスは、修士号はフアン・カルロス国王大学の公法研究所(Institute of Public Law)で研究し執筆したと主張した。

ところが、公法研究所のラウラ・ヌーニョ副所長(Laura Nuño、写真出典)は、「私はクリスティーナ・シフエンテスを院生として教育したことは一度もありません」と否定した。

とはいえ、シフエンテスが2012年にラウラ・ヌーニョ副所長のコースを受講した証明書にラウラ・ヌーニョ副所長の署名がある。

しかし、この署名についても、ラウラ・ヌーニョ副所長は、偽造されたものだと述べた。

公式には「個人的な理由」と言いながらも、実際はこのトラブルでラウラ・ヌーニョは副所長を辞任した。

2018年4月25日(53歳)、結局、クリスティーナ・シフエンテスはマドリード州・知事を辞任した。

経歴詐称とは関係ないが、クリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)はファッショナブルである。

https://smoda.elpais.com/celebrities/vips/cristina-cifuentes-presidenta-comunidad-madrid/
http://cadenaser.com/emisora/2018/04/19/radio_madrid/1524128742_956965.html
https://www.larazon.es/espana/cifuentes-contra-todos-EA17719379
https://www.elle.com/es/extra-elle/revista/news/a675248/cristina-cifuentes-comunidad-de-madrid/

少し若い頃

https://www.20minutos.es/noticia/1901005/0/cifuentes/hospital-la-paz/protesta-sanidad-privada/
https://www.revistamongolia.com/noticias/escribe-tu-carta-de-dimision-para-cristina-cifuentes

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

省略

★パブピア(PubPeer)

省略

●7.【白楽の感想】

《1》大学事務員の質

クリスティーナ・シフエンテスはスペインのマドリード州・知事で学歴を詐称をしていた。スペインのマドリード州・知事は日本の東京都・知事に相当する。

そういえば、東京都・知事の小池百合子の学歴詐称の疑念が勃発している。石井妙子・記者が小池百合子のカイロ大学「卒業証書」がおかしいと追及しているのだ。
 → 2018年6月15日の「文春オンライン」記事:小池百合子都知事のカイロ大学「卒業証書」画像を徹底検証する | 文春オンライン

石井妙子・記者(あるいは文春、または東京都事務局、小池百合子本人でも)がカイロ大学・事務局に小池百合子が卒業したかどうかを問い合わせればシロクロがハッキリすると思うのだが、どうして問い合わせないのだろう?

大学を含め教育機関は在学証明書や卒業証明書を発行する義務があるので、在学生・卒業生の記録はしっかり保持しているハズだ。

もっとも大学といっても、記録の保持や外部の問いわせに応じるのは大学・事務員である。教授は専門家集団で知的レベルは高いので、多くの人は、大学というだけで、知的レベルが高いと誤解しがちである。

大学・事務員は知的レベル・事務レベルが高いわけではない(勿論、高い人もいる)。平均して見ると、多分、大企業の総務係の方がレベルが高い。

白楽は、東京医科歯科大学・事務局に関係者の経歴詐称を問い合わせたことがある。大学事務局は、個人情報という理由で教えてくれなかった。問い合わせ内容は個人情報ではなく、大学が普通に公開している情報である。

白楽は唖然とした。

大学事務員の質の悪さは一般的にあまり追及されないが、米欧のネカト事件を調べていると、大学事務員の質の悪さが原因で事件がこじれた、また、ネカト調査が失敗したと思える事件に遭遇する。さらに、挙句の果ては、透明性が欠ける発表のため政府機関やメディアに叩かれた事件にも遭遇する。

世間は大学では教授がすべて判断し対応していると想定するかもしれないが、ネカト関係で実際に運営・判断をする際の事務員の役割は大きい。そして、一般的に、彼(女)らはかなり尊大で、ネカトに関する知識・スキルは乏しい。

小池百合子の学歴詐称では、カイロ大学・事務局に問い合わせたかどうかの記載がないので、カイロ大学の事務員に問題があるのかどうかわからないが、シフエンテス事件では、フアン・カルロス国王大学はシフエンテスの修士号や在籍状況を積極的に公表している。大学はこうあるべきだ。

https://elpais.com/elpais/2018/04/05/inenglish/1522917812_737577.html

《2》政治家の経歴詐称

政治家にとって、選挙で当選するのは死活問題である。少しでも選挙民の尊敬を集めたいために、学歴詐称してしまうのだろう。

どうせすれば防げるか?

ネカト研究者の立場から、政治家の学歴詐称を防ぐのは、透明性の維持と多くの人(国民、メディア、政治家など)の監視が有効だと考える。

また、学歴詐称でクロの場合、「あ~、間違えました。訂正します」で済まさせてはイケナイ。謝って訂正して済むなら、学歴詐称した方が得である。その場合、あとからあとから学歴詐称する人がでてくる。

クロなら厳罰に処すべきだ。現在の地位の辞任は、その時点の不正に対する責任の取り方である。10年前の不正を現在見つけたら、10年前から現在まで得た名声・収入などの色々な利益が不当であり不正だったのである。人生と社会を10年前に戻せるリセットボタンはないので、金銭で償ってもらうことになる。現在の地位の辞任だけでなく、例えば、学歴詐称以降の収入の半分を没収するなどのペナルティを科すべきだろう。

日本では政治家の経歴詐称は少ないが(実際に少ないのか、摘発されないだけなのか不明)、欧州ではたくさんある。特にドイツやロシアに多く、それを摘発する民間組織も活躍している。
→ 1‐4‐10.ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki) | 研究倫理(ネカト)
→ 1‐4‐12.露 ディザーネット(Dissernet) | 研究倫理(ネカト)

https://elpais.com/elpais/2018/04/18/inenglish/1524038496_862026.html

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●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Shoukhrat Mitalipov – Wikipedia, the free encyclopedia
② ウィキペディア日本語版:クリスティーナ・シフエンテス – Wikipedia
③ 2018年4月5日の「EL PAÍS」記事:Education in Spain: Madrid regional leader facing probe over claims of falsified master’s degree | In English | EL PAÍS、(保存版)
④ 2018年4月6日。アデン・ヘイズ(Aden Hayes)記者の「Local」記事:ANALYSIS: How fake degree scandal is provoking a new crisis in Spain’s government – The Local
⑤ 2018年4月10日。スティーブン・ブルゲン(Stephen Burgen)記者の「Guardian」記事:Fake degree claims dog prominent Spanish politicians | World news | The Guardian(保存版)
⑥ 2018年4月17日。ディエゴ・トーレス(Diego Torres)記者の「POLITICO」記事:Spain’s degree scandal hits at heart of government – POLITICO、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

https://www.casadellibro.com/libro-cristina-cifuentes-una-politica-sin-ataduras-y-el-futuro-del-pp/9788490606865/3008328

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