ジェームズ・ウォーン(James Warne)(米)

2021年7月30日掲載

ワンポイント:2014年12月17日(35歳?)、研究公正局は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California San Francisco)・上級研究員だったウォーンの2件の研究費申請書、2011-2013年(32-34歳?)の3年間の2報の発表論文の測定データにねつ造・改ざんがあったと発表した。2014年11月18日から3年間の締め出し処分を科した。国民の損害額(推定)は3億円(大雑把)。なお、ウォーン事件とは無関係だが、2021年2-7月の6か月間、研究公正局は事件を発表していない。異常事態が発生しているようだ。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ジェームズ・ウォーン(James Warne、James P Warne、ORCID iD:、写真出典)は、英国に育ち、インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)で研究博士号(PhD)を取得し、米国のカリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California San Francisco)・ポスドク、その後、上級研究員になった。専門は肥満の生化学である。

ネカト発覚の経緯は不明である。

しかし、「2013年7月のJ Neurosci.」論文のネカトが指摘されていて、2014年6月(35歳?)にカリフォルニア大学サンフランシスコ校を辞職しているので、発覚時期は、両方の間の2013年秋(34歳?)頃と推定される。

一次追及者は不明だが、ネカトは測定値のねつ造・改ざんである。研究室内部の人しかネカトだと指摘できないと思われる。それで、ここでは、一次追及者をボスのアリソン・シュウ教授(Allison W Xu)とした。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校がネカト調査を終え、クロと判定し、研究公正局に報告した(と思われる)。

2014年12月17日(35歳?)、研究公正局は、ウォーンの2件の研究費申請書、2011-2013年(32-34歳?)の3年間の2報の発表論文の測定データにねつ造・改ざんがあったと発表した。

2014年11月18日(35歳?)から3年間の締め出し処分を科した。3年間の締め出し処分は普通の処分である。

なお、ウォーン事件とは無関係だが、2021年2-7月の6か月間、研究公正局は事件を発表していない。異常事態が発生しているようだ。

University_of_California_San_Francisco_School_of_Medicine_UCSF_5655751カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:英国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:インペリアル・カレッジ・ロンドン
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1979年1月1日生まれとする。1997年に大学に入学した時を18歳とした
  • 現在の年齢:42 歳?
  • 分野:肥満の生化学
  • 不正論文発表:2011-2013年(32-34歳?)の3年間の2論文
  • 発覚年:2013年(34歳?)?
  • 発覚時地位:カリフォルニア大学サンフランシスコ校・上級研究員
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は推定だが、ボスのアリソン・シュウ教授(Allison W Xu)としておく
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①カリフォルニア大学サンフランシスコ校・調査委員会。②研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:研究公正局は2件の研究費申請書、2011-2013年(32-34歳?)の3年間の2論文を不正とした。2021年7月29日現在、撤回論文は2論文
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:NIHから 3年間の締め出し処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:James Warne | LinkedIn

  • 生年月日:不明。仮に1979年1月1日生まれとする。1997年に大学に入学した時を18歳とした
  • 1997年 – 2000年(18 – 21歳?):英国のインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)で学士号を取得:生物学
  • 2000年– 2004年(21 – 25歳?):同大学で研究博士号(PhD)を取得:薬理学
  • 2005年1月 – 2009年12月(26 – 30歳?):カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California San Francisco)・ポスドク
  • 2010年1月 – 2014年6月(31 – 35歳?):同・上級研究員
  • 2013年(34歳?)?:不正研究が発覚(推定)
  • 2014年7月 – 現(35歳? –):サンフランシスコの広告代理店であるイヴォーク・ジャイアント社(Evoke Giant)の編集者・コピーライター
  • 2014年12月17日(35歳?):研究公正局がネカトと発表

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★ネカト

ジェームズ・ウォーン(James Warne)は英国に育ち、インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)で研究博士号(PhD)を取得し、2005年1月(26歳?)、米国のカリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California San Francisco)のポスドク、その後、上級研究員になった。

ボスはアリソン・シュウ教授だった(Allison W Xu、写真出典

ネカト発覚の経緯は不明である。「2013年7月のJ Neurosci.」論文のネカトが指摘されていて、2014年6月(35歳?)にカリフォルニア大学サンフランシスコ校を辞職しているので、発覚時期は、2013年秋(34歳?)頃と推定される。

一次追及者は不明で、特定できない。ただ、後述するように棒グラフにした測定値のねつ造・改ざんである。研究室内部の人しかネカトだと指摘できない。それで、ここでは、一次追及者をシュウ教授とした。

2014年12月17日(35歳?)、研究公正局はウォーンが2件の研究費申請書、2報の発表論文の画像をねつ造・改ざんしていたと発表した。研究費申請書のネカトは発表論文のデータを使用した結果なので、基となるネカト行為は発表論文にある。

研究公正局は 、2014年11月18日から3年間の締め出し処分を科した。3年間の締め出し処分は普通の処分である。

2件の研究費申請書は以下の通り。

  1. R01 DK080427-06A1 submitted to NIDDK, NIH
  2. R01 AA022665-01A1 submitted to the National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism (NIAAA), NIH

2報の発表論文は以下の通り。2011-2013年(32-34歳?)の3年間の2論文である。

  1. Cell Metabolism 14:791-803, 2011
  2. Journal of Neuroscience 33(29):11972-85, 2013

なお、著者たち(シュウ教授も含めてだと思う)は、データはねつ造だが、論文の結論は正しいと主張している。事実、他の研究室が追試できているそうだ。

毎度のことながら、どうしてこのような主張をするのか、白楽は理解に苦しむ。飲酒運転で信号無視し、警察官に捕まった時、「でも、人をひいてません」と主張するように感じる。事故を起こさなくても、規則違反が許されるわけないんですが。

【ねつ造・改ざんの具体例】

2014年12月17日(35歳?)の研究公正局の発表は、ジェームズ・ウォーン(James Warne)の各研究費申請書・論文のネカト部分を指摘している。

しかし、言葉で説明されてもわかりにく。研究公正局がネカトと判定した2論文を以下に詳しく見よう。2論文は、「2011年12月のCell Metab」と「2013年2月のJ Neurosci.」である。

★「2011年12月のCell Metab」論文

「2011年12月のCell Metab」論文の書誌情報を以下に示す。2015年4月7日に撤回された。

研究公正局は以下の図をネカトと指摘した。

図2DEFがねつ造・改ざんとあった。図2DEFは棒グラフである(図の出典は原著)。

Dはノルエフィネフリン(NE)量、Eはレプチンレベル量をELISA法で測定したデータだが、それらをねつ造した。Fは定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)実験でマウス肝臓のmRNA量を定量したデータだが、それをねつ造した。

次いで、図7Cがねつ造・改ざんとあった。図7C も棒グラフである。ノルエフィネフリン(NE)量のデータだが、その測定値をねつ造した。

このような棒グラフの数値のねつ造・改ざんは、図を見ただけの第三者には、どの図のどの部分がどのようにねつ造・改ざんされたのか、さっぱりわからない。生データを知っている人しか、ネカト箇所がわからない。

★「2013年7月のJ Neurosci.」論文

「2013年7月のJ Neurosci.」論文の書誌情報を以下に示す。2014年10月8日に撤回された。

研究公正局は以下の図をネカトと指摘した。

図5A、6F、9Aがねつ造・改ざんとあった。どれも棒グラフである(図の出典は原著)。

先の「2011年12月のCell Metab」論文のねつ造データと同じで、ノルエフィネフリン(NE)量、レプチンレベル量をELISA法で測定したデータだが、それをねつ造した。

まず、図5Aを示す。

次いで、図6Fを示す。

最期に図9を示す。今まで、ねつ造データとされた図だけを切り取って示したが、ここでは、図9全体を示す。

このうち、ねつ造データと指摘されたのは、図9Aだけである。図9はAからKまでの11個の図が良く似ている。生データを知らなければ、図を見ただけの第三者には、ねつ造・改ざん箇所がさっぱりわからない。

つまり、先の論文でも書いたが、このような棒グラフの数値のねつ造・改ざんは、図を見ただけの第三者には、どの図のどの部分がどのようにねつ造・改ざんされたのか、さっぱりわからない。生データを知っている人しか、ネカト箇所がわからない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2021年7月29日現在、パブメド(PubMed)で、ジェームズ・ウォーン(James Warne、James P Warne)の論文を「James P Warne [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2006~2015年の10年間の22論文がヒットした。

2021年7月29日現在、「Retracted Publication」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、本記事で取り上げた「2011年12月のCell Metab」と「2013年7月のJ Neurosci.」の2論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2021年7月29日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでジェームズ・ウォーン(James Warne、James P Warne)を「Warne」で検索すると、0論文が訂正、0論文が懸念表明、2論文が撤回されていた。

本記事で取り上げた「2011年12月のCell Metab」が2015年4月7日に、「2013年2月のJ Neurosci.」が2014年10月8日に、撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2021年7月29日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ジェームズ・ウォーン(James Warne、James P Warne)の論文のコメントを「James P Warne」で検索すると、本記事で取り上げた「2011年12月のCell Metab」・1論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》研究公正局 

以下、「リー・チェン(Li Chen)(米)」に書いたが、少し変えて再掲する。

米国の研究公正局は、毎年約10件ほどネカト事件を発表している。それで、白楽は、研究公正局の最新事件をほぼ毎月1回、記事にしている。

ところが、今年(2021年)は2021年1月28日にイビン・リン(Yibin Lin)の事件を発表して以降、2021年2-7月の6か月間、研究公正局は事件を発表していない。異常事態が発生しているようだ。 →  イビン・リン(Yibin Lin)(米) | 白楽の研究者倫理

白楽ブログでは、研究公正局の異常事態とは無関係に、折に触れ、古い事件も徐々に記事にしている。

研究公正局がクロと発表した2015年以降の事件はすべて記事にしているので、今回、米国・研究公正局がクロと発表した2014年の事件を取り上げた。ただ、研究公正局の異常事態はとても気になる。

《2》ネカトと論文の結論 

ネカト者はしばしば、データはねつ造でも論文の結論が正しいと主張する。

ウォーン事件でも、著者たち(シュウ教授も含めてだと思う)は、論文の結論が正しいと主張した。

以下、本文に書いたが、再掲する。

毎度のことながら、どうしてこのような主張をするのか、白楽は理解に苦しむ。飲酒運転で信号無視し、警察官に捕まった時、「でも、人をひいてません」と主張するように感じる。事故を起こさなくても、規則違反が許されるわけないんですが。

つまり、論文の結論の正否とネカトは別次元である。単純な話である。それなのに、このような主張をする背景・過程は何なのだろう?

  • 論文の結論が正しければ、ネカトは免罪されると思うためか?
  • ネカトと非難されたことに悪あがきでもいいから、弁解したいためか?
  • 論文撤回に抵抗したいためか?
  • 事件を報道する記者の考え方がヘンで、そのような報道記事を書くためか?

《3》ポスト・ネカト人生 

研究者がネカト事件でクロとなると、ほぼ全世界の国々は、ネカト者を研究界から排除する。研究界に生き残る人もいるが、ごくわずかである。

ただ、日本(と韓国・中国)は特記するほど例外で、処分が甘く研究界に生き残るネカト者が多い。

白楽は、全世界のネカト事件を調べていることもあり、研究界からネカト者を排除するという国際基準を日本にもシッカリ適用すべきだと思っている。

国際統一基準を適用しないと、日本の研究者及び研究論文が国際研究界で信用されなくなる。既に、日本人研究者を暗黙下に無視・軽視・蔑視する行為は少しあると思うが、だんだん大きくなるだろう。このようなことは、あからさまにならないので、ハッキリしてきたら、かなり重症である。

とはいえ、ネカト処分された後もネカト研究者は人間として生きるしかない。

どう生きるのが良いのか? について、白楽は、気になる。

ジェームズ・ウォーン(James Warne)は、ネカト発覚後、すぐ、研究者を廃業した。そして、サンフランシスコの広告代理店であるイヴォーク・ジャイアント社(Evoke Giant)の編集者・コピーライターになった。現在、そこで成功しているようだ。ポスト・ネカト人生としては良かったなあと思う。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

①  研究公正局の報告:(1)2014年12月17日:Findings of research misconduct.。(2)2014年12月15日の連邦官報:2014-29337.pdf 。(3)2014年12月15日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2014年12月17日:NOT-OD-15-041: Findings of Research Misconduct
② 2015年5月5日のアラ・キャッツネルソン(Alla Katsnelson)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Authors retract leptin paper due to “fabricated data” – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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