ピエール・コリー(Pierre Kory)(米)

2022年1月8日掲載 

ワンポイント:ウィスコンシン大学・医科/公衆衛生科大学院(University of Wisconsin School of Medicine and Public Health)・準教授で、「新型コロナ救命治療最前線同盟」(FLCCC: Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)代表でもあるコリーは、2020年12月8日(50歳?)、新型コロナ(COVID-19)の治療法としてイベルメクチン(ivermectin)が有効だと米国上院で証言した有名なイベルメクチン推進派医師である。その7か月前の2020年5月(50歳?)、コリーは米国上院で、「MATH +治療法」が新型コロナ(COVID-19)の治療に有効だと証言し、その後、そのことを「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文として発表した。しかし、多くの研究者に内容がズサンだと指摘され、2021年11月9日、学術誌はコリーの論文を撤回した。国民の損害額(推定)は100億円(大雑把)。この事件は、2021年ネカト世界ランキングの「1」の「7」に挙げられた。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ピエール・コリー(Pierre Kory、ORCID iD:?、写真出典)は、米国のウィスコンシン大学・医科/公衆衛生科大学院(University of Wisconsin School of Medicine and Public Health)・準教授、兼・救命救急サービス(Trauma and Life Support Center Critical Care Service)・医長(medical director)で医師である。専門は救命救急医学である。

コリーは「新型コロナ救命治療最前線同盟」(FLCCC: Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)代表でもある。

そして、2020年12月8日(50歳?)、イベルメクチン(ivermectin)の有効性を米国上院で証言し、新型コロナ(COVID-19)の治療法としてイベルメクチン(ivermectin)が有効だと主張し広めた中心人物である。

しかし、多くの臨床医学者はイベルメクチン(ivermectin)の有効性を否定している。

話しは戻るが、イベルメクチン有効性の議会証言の7か月前の2020年5月、コリーは米国上院で、「MATH +治療法」が新型コロナ(COVID-19)の治療に有効だと証言していた。

なお、「MATH +治療法」は、メチルプレドニゾロン、アスコルビン酸、チアミン、ヘパリンを用いた集中治療方法である。 → MATH+ 病院における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療に関するプロトコル [第15版 – 2021年9月18日]

コリーは「MATH +治療法」を「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文として発表した。

ところが、この論文は、内容がお粗末過ぎる、ズサンだと多くの専門家から批判された。

論文はサンタナ・ノーフォーク総合病院(Sentara Norfolk General Hospital)のデータを使用していたが、サンタナ・ノーフォーク総合病院は、使用されたデータは不正確だと学術誌に通知した。

2021年11月9日(51歳?)、上記通知を受け、学術誌はコリーの「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文を撤回した。

新型コロナ(COVID-19)のパンデミックで国民と医療医学界が大騒動の時、コリーは、「MATH +治療法」でデタラメ、イベルメクチンでもデタラメ、しかも、医療医学の専門家が信じるような議会証言をし、世界の人々の生命を脅かし国民と医療医学界を混乱させた。

この事件は、2021年ネカト世界ランキングの「1」の「7」に挙げられた。

なお、ウィスコンシン大学がコリーのネカト調査をしている様子はない。コリーはNIHから研究費を受給していないので、研究公正局は調査に乗りだしていないし、今後、乗りだすことはない。

ウィスコンシン大学・医科/公衆衛生科大学院(University of Wisconsin School of Medicine and Public Health)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:西インド諸島のセントジョージ大学
  • 研究博士号(PhD)取得:なし
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1970年1月1日生まれとする。1988年に大学に入学した時を18歳とした
  • 現在の年齢:52 歳?
  • 分野:救命救急医学
  • 不正論文発表:2020年(50歳?)
  • 発覚年:2020年(50歳?)
  • 発覚時地位:ウィスコンシン大学・医科/公衆衛生科大学院・準教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は同じ分野の多数の研究者
  • ステップ2(メディア):「Medscape」、「Insider」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①サンタナ・ノーフォーク総合病院(Sentara Norfolk General Hospital)。②学術誌・編集部
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:調査していない(✖)
  • 不正:ズサン
  • 不正論文数:2報撤回
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は100億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:FLCCC Alliance member CV – Dr. Pierre Kory

  • 生年月日:不明。仮に1970年1月1日生まれとする。1988年に大学に入学した時を18歳とした
  • 1988〜1994年(18〜24歳?):米国のコロラド大学ボルダー校(University of Colorado, Boulder)で学士号取得:数学
  • 1994〜1996年(24〜26歳?):米国のニューヨーク大学(New York University)で修士号取得:化学
  • 1998〜2002年(28〜32歳?):西インド諸島のセントジョージ大学(St. George’s University Grenada)で医師免許(MD)を取得
  • 2002〜2005年(32〜35歳?):コロンビア医科大学(Columbia College of Physicians and Surgeons)・研修医
  • 2005〜2008年(35〜38歳?):アルベルト・アインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine)・研修医
  • 2008〜2012年(38〜42歳?):同大学・助教授
  • 2016〜2020年(46〜50歳?):ウィスコンシン大学・医科/公衆衛生科大学院(University of Wisconsin School of Medicine and Public Health)・準教授
  • 2020年5月6日(50歳?):米国上院で、「MATH +治療法」(MATH+ protocol)が新型コロナ(COVID-19)による死亡のリスクを減らしたと証言
  • 2020年12月(50歳?):「MATH +治療法」を「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文として発表
  • 2021年11月9日(51歳?):上記論文は内容がズサンということで撤回された

●3.【動画】

【動画1】
2020年12月8日、米国議会での証言
日本語字幕付き動画は以下をクリック
https://sp.nicovideo.jp/watch/sm39555138?ref=video_ranking_society-politics-news_all_24h_79

2020年12月8日、米国議会での証言(英語版)
以下をクリック
https://covid19criticalcare.com/senate-testimony/

【動画2】
上と同じ画面を含め英語字幕や音楽を加えた批判動画:「Dr. Pierre Kory gets COVID-19 despite taking ivermectin to PREVENT the coronavirus! – YouTube」(英語)1分51秒。
Tech ARP が2021/09/04に公開

【動画3】
インタビュー説明動画:「Review of the Emerging Evidence For Use of Ivermectin in the Prophylaxis and Treatment of COVID – YouTube」(英語)1時間11分30秒。
Associazione Naso Sanoが2020/11/13に公開

●4.【日本語の解説】

★2020年5月9日:柳澤厚生(鎌倉元気クリニック 名誉院長):「米国にてCOVID-19治療にビタミンC点滴を含むプロトコルが誕生」

出典 → ココ、(保存版) 

8つの州の大学病院ならびに関連病院において、救急医療、急性呼吸器疾患、感染症の専門家ら8人が共同で「新型コロナウイルス(COVID-19)最前線におけるクリティカルケア・ワーキンググループ」を組織し、新型コロナウイルスの治療プロトコルをリリースしました。

目的は救急外来(ER)を受診した患者や入院患者が呼吸困難を発症した時、このプロトコルで早期に治療介入し、急激に増強する炎症を抑えることで人工呼吸器装着を減らし、かつ患者の命を救うためです。

この治療プロトコルは「MATH+」と呼ばれています。

「MATH+」とは

「MATH+」は下記の略称です。

:Intravenous Methylprednisolone(メチルプレドニゾロン静注)
:High Dose Intravenous Ascorbic Acid [Vitamin C](高濃度ビタミンC点滴)
:PLUS optional Treatment components(オプション治療)
H:Low Molecular Weight Heparin(低分子ヘパリン)

注視すべきは「サイトカインストーム」

ワーキンググループの救急医療の専門家は、集中治療室(ICU)への入院または人工呼吸器の装着が必要となる前すなわち疾病経過の早い段階で、強力な治療法である「MATH +」の採用を同僚の医師にも強く求めています。「MATH +」の積極的な早期導入によって、ICUの入院患者を減らすこと、人工呼吸器が必要になる前に多くの命を救うことを予測しています。

ワーキンググループのメンバーであるピエール・コリー医師(ウィスコンシン大学 救急治療責任者)は、

「緊急治療室で『MATH+』の早期導入を開始し、6時間毎にメチルプレドニゾロンとビタミンCを点滴投与できれば、この疾患の死亡率と人工呼吸器の必要性が大幅に低下する可能性があります。患者を殺すのはウイルスではなく、ウイルスによって引き起こされた激しい炎症『サイトカインストーム』が肺の機能不全を引き起こすためです。重篤な急性呼吸窮迫症候群(ARDS)への悪化を防ぐには、コルチコステロイド(メチルプレドニゾロン)が必要です」と述べています。

★2020年12月10日:北里大学 大村智記念研究所 感染制御研究センター:著者不記載:「FLCCC アライアンスのコリー博士は上院委員会で証言」

出典 → ココ、(保存版) 

FLCCC アライアンスの会長であるピエールコリー博士は、国土安全保障と政府問題に関する上院委員会で、早期外来 COVID-19 治療を検討していると証言しています。コリー博士は、イベルメクチンが事実上 COVID-19 に対する「奇跡の薬」であると証言し、政府の医療当局(NIH、CDC、および FDA)に最新のデータを緊急に確認し、医師、ナースプラクティショナー、Covid-19 にイベルメクチンを処方する医師の助手向けのガイドラインを発行するよう求めました。

★ウィキペディア日本語版:ピエール・コリー – Wikipedia

ピエール・コリーは、COVID-19のパンデミックの際に、COVID-19の治療法として特定の薬剤の適応外使用を広めることを提唱したことで注目を集めたアメリカの救命救急医である。

コリーはCOVID-19に関して米国議会上院の前で2回証言した。 2020年12月の証言の中で、コリーは、駆虫薬のイベルメクチンがCOVID-19に対して「奇跡的な効果」を持つ「不思議な薬」であると主張した。

COVID-19論争

2020年12月、米国上院国土安全保障委員会の委員長であるロン・ジョンソンは、上院の公聴会を利用して、COVID-19に関する周辺のアイデアを宣伝した。

目撃者の一人であるコリーは、イベルメクチンを「奇跡的」であり、COVID-19に対して使用される「不思議な薬」であると説明した。この発言に関する動画はソーシャルメディアで話題になり、数日で100万回以上再生された。コリーは、パンデミック全体でイベルメクチンの使用を提唱し、科学情報を独占したい「科学の神」によってその真の有効性が抑制されているとする陰謀論を推進した。

コリーはパンデミックの初期、一般的な推奨療法が単に支持療法であったときに、COVID-19で入院している人々のためにステロイドの用量を増やすことを提唱した。コリーは、自身のアプローチを立証するものとして、コルチコステロイドの低用量からの利益を示した回復試験からのその後の証拠を見ている。

医学研究者のケビン・J・トレーシーは、コリーのアプローチが有益であるか有害であるかはまだ不明であると述べている。コリーは、ファモチジンや静脈内ビタミンCなど、適応外の他の薬剤を治療計画に使用している。

★2021年02月15日:黒川清(政策研究大学院大学名誉教授):朝日・論座:「大村博士発見のイベルメクチンにコロナパンデミックを終息させる可能性」

出典 → ココ、(保存版) 

大村智・北里大学特別栄誉教授が発見した寄生虫病の特効薬イベルメクチンが、新型コロナウイルスの治療と予防に効いているという医学報告が世界各地から多数あがっている。コロナパンデミックを終息させる切り札になるかもしれないという見方さえ出てきた。イベルメクチンの「発見国」の日本は、もっと積極的にこの薬の効能判定に関わり、世界に先駆けて処方(薬の使用法)を確定し、コロナ治療・予防薬としてイベルメクチン使用を進めるべきだと考える。

米国の医師グループの驚くべき報告

FLCCCのホームページに掲載されているピエール・コリー会長(左)の解説動画の一場面
https://covid19criticalcare.com/media/flccc-lecture-for-ypo-gold-on-ivermectin/

2020年12月8日、米上院国土安全保障と政府問題に関する委員会で証言に立った「新型コロナ救命治療最前線同盟」(FLCCC: Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)代表のピエール・コリー会長は、「政府機関は早急にイベルメクチンの効果を評価し、処方を示すべきだ」と迫った。

アメリカを中心としたこの医師団は、昨年春から世界中で使用されているイベルメクチンの臨床試験の情報を集めて分析し、Web上で公表してきた。委員会でのコリー会長の発言は衝撃的だった。イベルメクチンを投与した臨床試験の成果の部分だけをあげてみる。

① 患者の回復を早め軽症から中等症の患者の悪化を防ぐ
② 入院患者の回復を早め、集中治療室(ICU)入室と死亡を回避させる
③ 重症患者の死亡率を低下させる
④ イベルメクチンが広く使用されている地域では、コロナ感染者の致死率が著しく低い

などだ。

続きは、原典をお読みください。途中から閲覧有料で、白楽未読。

★2021年10月9日:レイチェル・シュレア、ジャック・グッドマン(BBC):訳者不記載:「イベルメクチン、 誤った科学が生んだ新型ウイルス「特効薬」」

出典 → ココ、(保存版
原典: 2021年10月6日:Ivermectin: How false science created a Covid ‘miracle’ drug – BBC News

イベルメクチンに関する議論では、少数の医師が水増しされた影響力を誇っている。有名な推進派、ピエール・コリー博士は、治験が大きく問題視されても、自らの見解は変えていない。問題だとする人たちについては、「続々出現する治験データを表面的に解釈している」と批判している。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★研究費

ピエール・コリー(Pierre Kory)はNIHや科学庁(NSF)から研究費を受給していない。 → Grantome: Search(図出典も)

★「MATH +治療法」の有効性

ピエール・コリー(Pierre Kory)は、ウィスコンシン大学・医科/公衆衛生科大学院(University of Wisconsin School of Medicine and Public Health)・準教授だが、「新型コロナ救命治療最前線同盟」(FLCCC: Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)代表でもある。

2020年5月6日(50歳?)、コリーは、米国上院で、「MATH +治療法」(MATH+ protocol)が新型コロナ(COVID-19)による死亡のリスクを減らしたと証言した。

つまり、「MATH +治療法」は新型コロナ(COVID-19)の治療法とし有効だと証言したのだ。

なお、「MATH +治療法」は、メチルプレドニゾロン、アスコルビン酸、チアミン、ヘパリンを用いた集中治療方法である。 → MATH+ 病院における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療に関するプロトコル [第15版 – 2021年9月18日]

「MATH +治療法」のより詳しい解説は、「4.【日本語の解説】」の「2020年5月9日記事」をご覧ください。ただ、この「2020年5月9日記事」の中の「T:PLUS optional Treatment components(オプション治療)」は間違っていて、「T」は「Thiamine(チアミン)」である。

以下は2020年5月6日の証言の文書で、その冒頭部分(出典:同)。全文5頁は → https://www.hsgac.senate.gov/imo/media/doc/Testimony-Kory-2020-05-06-REVISED.pdf

コリーは米国上院で証言した「MATH +治療法」の内容を少し改善し、「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文として発表した。

次に述べるイベルメクチン(ivermectin)は「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文投稿時には入っていなかった。しかし、論文投稿後、修正し、イベルメクチン(ivermectin)も加えている。

★イベルメクチン(ivermectin)の有効性

ピエール・コリー(Pierre Kory)は、新型コロナ(COVID-19)の治療法としてイベルメクチン(ivermectin)の有効性を主張し広めた中心人物である。

撤回された論文は先に述べた「MATH +治療法」に関する「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文だが、イベルメクチン(ivermectin)のコリーの方が有名なので、そのことも少し書いておく。

2020年5月6日(50歳?)に米国上院で、「MATH +治療法」の有効性を証言した7か月後の2020年12月8日、コリーは、今度は、新型コロナ(COVID-19)の治療法としてイベルメクチン(ivermectin)が有効だと米国上院で証言した。

ただ、医療研究の国際評価機関であるコクラン(Cochrane)によると、新型コロナ(COVID-19)の治療法としてイベルメクチン(ivermectin)を使用することを支持しない研究結果が主流である。 → ①2021年7月28日の「Cochrane Library」記事:Ivermectin for preventing and treating COVID‐19 – Popp, M – 2021 | Cochrane Library。②2021年8月2日の「Scientist」記事:Ivermectin (Still) Lacks Scientific Support as a COVID-19 Drug | The Scientist Magazine®

★ズサン発覚

話しを、「MATH +治療法」に関するコリーの「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文に戻す。論文の書誌情報を以下に示す。

「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文は、「MATH +治療法」の有効性を査読付き論文として発表された最初の論文である、

以下の内容は、2020年12月21日の「Medscape」記事から抽出した → 2020年12月21日のジリアン・モック(Jillian Mock)記者の「Medscape」記事:Doctors Publish Paper on COVID-19 Protocol; Experts Unconvinced

この論文は、COVID-19患者を「MATH +治療法」で治療した2つの病院、テキサス州のユナイテッド記念病院(United Memorial Hospital)とバージニア州のサンタナ・ノーフォーク総合病院(Sentara Norfolk General Hospital)からの未発表の死亡率データを使用した。

2つの病院は、2020年7月20日時点で、それぞれ140人と191人のCOVID-19患者を「MATH +治療法」で治療した。

28日死亡率はユナイテッド記念病院で4.4%、サンタナ・ノーフォーク総合病院では6.1%で、合わせた死亡率は5.1%だった。

この率を、COVID-19患者を「MATH +治療法」で治療していない米国(72病院)、英国(386病院)、中国(3病院)の計461病院の死亡率と比較した。計461病院での COVID-19患者の死亡率は、15.6%から32%の範囲で、平均死亡率は22.9%だった。

上記の数値を繰り返すと、「MATH +治療法」で治療した時の死亡率は5.1%で、他の方法だと22.9%だった。それで「MATH +治療法」の治療法が有効だと結論した。

ここまでが「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文の主要なデータである。

しかし、他の多くの医師はこの分析と解釈に強く反発した。

論文では、COVID-19の患者を対象にした「MATH +治療法」のランダム化比較試験をしていない。「「MATH +治療法」が実施されている2つの病院の結果と他の病院で公表された結果の死亡率を、単純に比較することはできません」とイェール大学医科大学院(Yale University School of Medicine)のペリー・ウィルソン準教授(F. Perry Wilson、写真左出典)は述べている。

「病院間で異なる死亡率がでるのは多くの要因があります。異なる死亡率は治療法ではなく、しばしば病院の集中治療室(Intensive Care Unit)の質を反映しています。たとえば、多くの集中治療室はパンデミックに圧倒され、患者の治療が不十分だったが、十分にケアした集中治療室もかなりありました」とニューヨーク大学付属ランゴーン病院(NYU Langone Health)のサム・パルニア(Sam Parnia、写真出典)は指摘した。

「「MATH +治療法」は有効かもしれないという仮説レベルで、前向きな臨床試験をしましょうという段階です。異なる時期の異なる病院からの総死亡率を異なる症例と合わせて比較するのは、治療法の有効性ウンヌンではなく、新しい仮説を生み出すレベルがせいぜいです」と、ミシガン大学アナーバー校(University of Michigan, Ann Arbor)のダニエル・カウル感染症教授(Daniel Kaul、写真出典)は批判した

ニューヨーク州マンハセットにあるノースショア大学病院(North Shore University Hospital)のヒュー・カシエール救命救急医学・部長(Hugh Cassiere、写真出典)は、「どうこじつけても、これは研究と呼べるしろものではない。このデータ比較は意味のない比較です。治療法の真の比較ではありません。治療が効果的かどうかを証明できるのは、ランダム化プラセボ対照試験だけです。この「MATH +治療法」は放棄されるべきです」と強く非難した。

結局、多くの医師・教授は「MATH +治療法」が「無謀で無責任」であると指摘した。

2021年11月9日、「2021年2月のJ Intensive Care Med」論文は撤回された。 → 撤回公告:Retraction Notice, 2021

撤回公告を意訳(大改編)すると以下のようだ。

学術誌は、論文で報告されたバージニア州のサンタナ・ノーフォーク総合病院(Sentara Norfolk General Hospital)のCOVID-19病院の死亡率データの正確性についてサンタナ・ノーフォーク総合病院から懸念が通知されたので、論文を撤回します。

サンタナ・ノーフォーク総合病院からの通知は、次のようです。

サンタナ・ノーフォーク総合病院のデータは論文の表2です。このデータは不正確です

2020年3月22日から2020年7月20日までのCOVID-19患者のデータを注意深く検討すると、表2の191人の患者の死亡率は6.1%ではなく10.5%です。さらに、これらの191人の患者のうち、73人の患者(38.2%)だけが4つの「MATH +治療法」のうち少なくとも1つを受け、その死亡率は24.7%でした。 191人の患者のうち25人(13.1%)だけが4つのMATH +療法すべてを受け、その死亡率は28%でした。

この誤った死亡率を公開された報告と比較し、「絶対リスク75%の削減」を主張することは正しくありません。

【ズサンの具体例】

上述したので省略。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2022年1月7日現在、パブメド(PubMed)で、ピエール・コリー(Pierre Kory)の論文を「Pierre Kory[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2007~2021年の15年間の48論文がヒットした。

2022年1月7日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文・1論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2022年1月7日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでピエール・コリー(Pierre Kory)を「Kory, Pierre」で検索すると、 2論文が撤回されていた。

2020年12月15日に出版された「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文が2021年11月9日に、2021年1月1日に出版された「2021年1月のFrontiers in Pharmacology」論文が2021年3月1日に撤回された。

★パブピア(PubPeer)

2022年1月7日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ピエール・コリー(Pierre Kory)の論文のコメントを「Pierre Kory」で検索すると、本記事で問題にした「2020年12月のJ Intensive Care Med」論文を含め2論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》「研究者は正しい」というウソ 

コリー事件は、ズサンな研究なのだが、新型コロナ患者を治療できるという重大な治療法をピエール・コリー(Pierre Kory)は堂々と主張した。そして、それを多くの人が信じた、という事件である。

現実として、ズサンな研究を論文発表する研究者はゴマンといる。

ただ、ズサンな研究をしているコリーを議会で証言させた人がマズイというか、マヌケだと思う。

議会で証言したので、議会が信頼性を保証し、大勢の人がコリーの主張を信じてしまった。

その悪影響は膨大で、この事件による死亡者数や健康被害者数は算定されていないが、間接的には、かなりの数に上るのではないだろうか?

しかし、一般的に、研究者のウソを見抜けない人は多いようだ。

10年前の2012年、読売新聞・科学部は大誤報をしでかした。

森口尚史は、2012年(平成24年)10月、読売新聞により「ハーバード大学客員講師」の肩書きで「iPS細胞を使った世界初の心筋移植手術を実施した」と大々的に報じられたが、多方面から数々の疑義が提起され、その2日後に同新聞は「同氏の説明は虚偽」とし、それに基づいた一連の記事は誤報であったことを認めた。(出典:森口尚史 – Wikipedia

大橋編集局長は「一連の誤報について深くおわびする。iPS細胞移植の臨床応用への期待を裏切ったことに責任を痛感している。裏付け取材の甘さに弁明の余地はない。全力で再発防止に取り組んでいく」とコメントした。(2012年10月26日記事:読売新聞、編集局長ら処分 森口氏記事「6本誤報」:日本経済新聞

白楽は、読売新聞・科学部にお茶の水女子大学の学生を社内見学に連れて行ったことがある。また、読売新聞に1年間、記事を連載したこともある。

それで白楽がお世話になった科学部関係の恩人が何人もいる。森口尚史事件当時の読売新聞関係者に知人がいる。

しかし、なんで、読売新聞・科学部がダマされてしまったか?

新聞記者は「スクープ」とか「ココだけの話し」と持ちかけられると、記事内容が漏れるといけないから、研究者を含め他の人に相談しない・できない。

そして、話を持ちこんだ研究者を肩書で単純に、信じ込んでしまう。

記事には、“米ハーバード大のM研究員と東京医科歯科大など”と書かれていたので、記者は大学・学会関係者にインタビューすれば容易に検証可能だったと思われるが、メディアはM博士だけの話を信じ何処にも具体的な検証をしなかった。(2015年の田中嘉津夫の記事:インターネットにおける論文不正発覚史

日本は「研究者は正しい」と思い込む文化なのだ。実際は、ウソやワルが多いというのに。

メディアの皆さん、「研究者は正しい」という思い込みを変えましょう。

《2》責任

ピエール・コリー(Pierre Kory)を議会で証言させる人もマヌケだと思うが、研究の信憑性を見抜けない人は多い。

コリーのズサン論文で、直接・間接に、死亡した人や健康被害を受けた人の数は不明だが、影響受けたためにこうむった経済的損失を含めると被害額は少なくない。本記事では100億円とした。

今回の事件を起こしたコリーを犯罪者として刑事事件とすべきだと、白楽は思う。

嘘をついて読売新聞・科学部をダマした森口尚史は、東京大学を解雇されただけである。しかし、どう見ても、間がさしてネカトをしたというレベルをはるかに超え、計画的・意図的にダマそうとしている。犯罪者として処罰すべきだと思う。

イタリアの地震学者は研究上の誤判断(予想ハズレ、ミス?)で「禁固6年の実刑判決」が下された。

2009年4月に住民309人が死亡したラクイラ地震について、国家委員会に属していた地震の専門家6人と政府当局者1人は、2012年10月の一審で、適切な警告を出さなかったとして有罪判決が下されていた。

2012年10月に7人全員が殺人罪で有罪となった一審では、全員に禁固6年の実刑判決と、公職からの永久追放、さらに、住民たちへの損害賠償金として900万ユーロ(約13億円)の支払いが命じられていた。

これはいかにもやり過ぎだと思う。だから、

しかし二審裁判所は(2014年)11月10日、一審の有罪判決を覆した(上記の出典も:2014年11月11日記事:地震予知できなかった科学者を殺人罪とする判決、一転無罪に:イタリア | WIRED.jp

「禁固6年の実刑」は過剰だと思うが、イタリアの地震学者に、それなりの罪はあったと思う。

研究者は研究上「自由に何を言っても良い」わけではない。

科学者の発見・発言が人命・経済・社会に大きなプラスの影響を与えた時、名誉だけでなく、もっと金銭も与えるべきだと思うが、小さな賞から~文化勲章などの名誉が授与される。

でも、科学者の発見・発言が人命・経済・社会に大きなマイナスの影響を与えた時、科学者へのペナルティは何もない。おかしくないか? 

だから、科学者(含・医師)は「当たるも八卦」的な発言をしがちである。

2022年の冬のインフルエンザ・ワクチン予防接種でも、昨秋、「この冬は大流行するかもしれないから、打った方がいい」と勧める医師はかなりいた。そして、2022年1月7日現在、インフルエンザに罹った人はすごく少ない。

製薬会社とグルなのか、「打った方がいい」と勧めた医師は、責任を取らない。

いい加減なことを言って、人命・経済・社会に大きなマイナスの影響を与えた時、科学者(含・医師)にそれなりのペナルティを科すべきだと思う。

子供だって自分の発言への責任を負わせられる。すべての職業人は職業上の発言に責任がある。

どうして、科学者(含・医師)は自分の発言に責任を負わなくて良いのだろうか?

ピエール・コリー(Pierre Kory)。 https://archive.ph/wip/JMq95

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
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●9.【主要情報源】

① ウィキペディア日本語版:ピエール・コリー – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:Pierre Kory – Wikipedia
③ 2020年12月21日のジリアン・モック(Jillian Mock)記者の「Medscape」記事:Doctors Publish Paper on COVID-19 Protocol; Experts Unconvinced
④ 2021年9月17日のヒラリー・ブリュック(Hilary Brueck)記者の「Insider」記事:Why Is Ivermectin Used to Treat COVID-19? Fringe Doctors Leading the Charge
⑤ 2021年11月9日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Bad MATH+? Covid treatment paper by Pierre Kory retracted for flawed results – Retraction Watch
⑥ 2021年12月21日の「撤回監視(Retraction Watch)」が書いた「Scientist」記事:The Top Retractions of 2021 | The Scientist Magazine®保存版
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