「アカハラ」:電子工学:アクバル・サイード(Akbar Sayeed)(米)

2020年5月27日掲載

ワンポイント:アカハラ被害院生が自殺した事件。サイードはウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin–Madison)の教授で、長年、研究室の院生・ポスドクにアカハラ行為(「F*ck」、「解雇するぞ」、「サル」、「脳を使って考えない赤ちゃん」、「どあほ、脳タリン」、「嘘つき」と発言)を繰り返していた。2016年10月(47歳?)、サイード研究室の院生・ジョン・ブレイディ(John Brady)(28 歳)が自殺した。大学は調査し、クロと判定し、2018年1月1日~2019年12月31日の2年間、無給休職を科した。2020年1月1日(51歳?)、その前月に学生が激しい復帰反対デモをしたが、大学は、サイードを復職させた。2020年5月26日現在、同大学・教授に就いている。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

アクバル・サイード(Akbar Sayeed、写真出典)は、ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin–Madison)・工学部(College of Engineering)・電子・コンピューター工学科(Electrical & Computer Engineering)・教授で、専門は電子工学である。

2016年10月(47歳?)、サイード研究室の院生・ジョン・ブレイディ(John Brady)(28 歳)が自殺した。原因はサイード教授のアカハラ行為だった。

2017年5月(48歳?)、調査委員会は、サイードがアカハラ行為(「F*ck」、「解雇するぞ」、「サル」、「脳を使って考えない赤ちゃん」、「どあほ、脳タリン」、「嘘つき」と発言)を繰り返していた、と報告した。

処分は、2018年1月1日~2019年12月31日の2年間、無給休職が科された。

2019年12月(50歳?)、2年間の無給休職期間が終わり、サイードがウィスコンシン大学マディソン校・教授に復帰する前の月、ウィスコンシン大学マディソン校の学生が大規模な反対運動を行なった。

しかし、2020年5月26日(51歳?)現在、サイードはウィスコンシン大学マディソン校・教授に復帰し在職している。復帰反対運動は失敗に終わった。 → Sayeed, Akbar – UW-Engineering Directory | College of Engineering @ The University of Wisconsin-Madison、(2020年5月26日保存版

ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin–Madison)のサイード研究室がある工学部棟(Engineering Hall)。写真by Steve Apps State Journal:出典

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1969年1月1日生まれとする。1991年に大学を卒業した時を22歳とした。米国生まれ・育ちと想定した
  • 現在の年齢:52 歳?
  • 分野:電子工学
  • アカハラ行為:xxxx年-2016年(xx-47歳?)の長年
  • 発覚年:2016年(47歳?)
  • 社会に公表年:2019年(50歳?)
  • 社会に公表時地位:ウィスコンシン大学マディソン校・教授
  • ステップ1(発覚):サイード研究室の院生・ジョン・ブレイディ(John Brady)(28 歳)が自殺した。父親が大学に公益通報
  • ステップ2(メディア):地元紙の「Minnesota Daily」のみ
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソサイードティ):①ウィスコンシン大学マディソン校・調査委員会
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学・処分のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:機関以外が詳細をウェブ公表(⦿)
  • 不正:アカハラ
  • 被害者数:多数の院生・ポスドク。1人の男性院生が自殺
  • 時期:研究キャサイードアの中期から
  • 職:事件後に2年間の無給停職(▽)後、復職
  • 処分:2年間の無給停職
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Viewing details for Akbar M Sayeed

  • 生年月日:不明。仮に1969年1月1日生まれとする。1991年に大学を卒業した時を22歳とした。米国生まれと想定した
  • 1991年(22歳?):米国のウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin–Madison)で学士号取得
  • 1996年(27歳?):米国のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University of Illinois-Urbana Champaign)で研究博士号(PhD)を取得
  • 1997年(28歳?):ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin–Madison)・ポスドク、その後、教授
  • 2016年10月(47歳?):指導下の院生・ジョン・ブレイディ(John Brady)がアカハラで自殺
  • 2017年5月(48歳?):調査委員会はアカハラがあったと結論した。2018年1月1日~2019年12月31日の2年間、無給休職の処分を科した
  • 2019年12月(50歳?):ウィスコンシン大学マディソン校の学生が大規模な復職反対デモ
  • 2020年1月1日(51歳?):ウィスコンシン大学マディソン校に復職
  • 2020年5月26日(51歳?)現在:ウィスコンシン大学マディソン校・教授として在籍:Sayeed, Akbar – UW-Engineering Directory | College of Engineering @ The University of Wisconsin-Madison、(2020年5月26日保存版

●5.【アカハラ発覚の経緯と内容】

★アクバル・サイード(Akbar Sayeed)の人生

アクバル・サイード(Akbar Sayeed、写真出典)は、1991年(22歳?)、米国のウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin–Madison)で学士号取得している。それで、米国生まれ・育ちと想定した。

しかし、パキスタンの軍国主義的環境で育ったとあるので、米国で生まれ・育ったが、パキスタン人の父親が軍国主義的だったのだろう。

父親のスパルタ教育を身につけ、ウィスコンシン大学マディソン校の自分の研究室で、その教育スタイルを実践したために、アカハラ事件を起こしたと思われる。

2009年10月24日(40歳?)、サイードはローリー・フラッドマーク(Laurie Fladmark、1979年4月1日生まれの20歳)と結婚した。結婚1周年の写真がウェブにあった(出典)。

女児が1人いると思うが、不確かである。アカハラ行為をしていた時、家庭があり、私生活は充実していたと思える。

サイードのウィスコンシン大学マディソン校での年俸は$166,650(約1,666万円)だった。

外部研究費は沢山獲得していた。新聞記事によると、ウィスコンシン大学マディソン校の記録では、1997年の着任以降、440万ドル(約4億4千万円)の外部研究費を獲得したとある。白楽が調べると、以下に示すように、1998-2017年の20年間に科学庁(NSF)から13件、総額は・・・集計してません。ザッとみて、440万ドル(約4億4千万円)ありそうですね。表をクリックすると表は2段階で大きくなります。本ブログの図表は基本的に全部拡大できます。

★アカハラ事件経緯

ウィスコンシン大学マディソン校のサイード研究室には、何年もの間、院生・ポスドクが頻繁に辞め、また、入室していた。その結果、院生・ポスドクは少なくなり、残った院生・ポスドクにますます多くの作業が課された。また、サイードが研究室員に向けて怒り・侮辱する度合いが、研究室員1人当たり、ますます多くなっていた。

2016年10月(47歳?)、アクバル・サイード(Akbar Sayeed)研究室の院生・ジョン・ブレイディ(John Brady、写真出典)(28 歳)が自殺した。原因はサイード教授のアカハラ行為だった。

ブレイディが自殺し、父親のジム・ブレイディ(Jim Brady)が電話で問題を訴えた。

イアン・ロバートソン工学部長(Ian Robertson、写真出典)は、父親からの訴えを聞くまで、サイード教授のアカハラ行為に気づかなかった、と弁解している。

ロバートソン工学部長は、ブレイディの死後まもなくサイードのアカハラ言動を調査する委員会を設置した。調査委員長はウィスコンシン大学マディソン校のパトリシア・ウォレット名誉教授(Patricia Wolleat)が務めた。

2017年5月(48歳?)、調査委員会は調査の結果をまとめた。その報告書に、サイード教授は、院生に「F*ck」言葉で罵倒し、(院生にお金を払っているので)「解雇するぞ」と脅し、「サル(monkeys)」、「脳を使って考えない赤ちゃん(babies who do not use the brain to think)」、「どあほ、脳タリン(dumb asses)」、「嘘つき(liars)」など、頻繁に汚い言葉で呼んでいた、とある。

そして、サイード教授を、2018年1月1日~2019年12月31日の2年間、無給休職処分に科すことを推奨した。

2017年8月(48歳?)、サイード教授は調査報告書への回答として、研究室を監督する立場の人間として、自分の言動への責任があると認め、謝罪した。しかし、教授としての権限を悪用したことはない、と主張した。また、新聞記者の質問には答えなかった。

2019年4月8日(50歳?)、ウィスコンシン大学マディソン校は調査報告書を含めサイード教授のアカハラ行為に関する記録を新聞記者に公表した。

★事件後の改善点

写真(出典)は、2016年、アクバル・サイード(Akbar Sayeed)(左)、ジョン・ブレイディ(John Brady)(右)

2016年10月にブレイディが自殺した後、ウィスコンシン大学マディソン校は、院生の研究環境とメンタルヘルスに関連するいくつかの改善を行なった。改善点を次に示す。

ウィスコンシン大学マディソン校

  • さらに10人のメンタルヘルス・プロバイダー(mental health providers)を雇った。(白楽はメンタルヘルス・プロバイダーの機能をわかっていません)。
  • 学生の最初の連絡窓口となることが多い大学院プログラム・コーディネーターに自殺防止トレーニングを行なった。(白楽は大学院プログラム・コーディネーターの機能をわかっていません)。
  • 院生への給付額をアップした。
  • 院生研究助手の雇用関連規則を改訂した。
  • その他。白楽が省略

工学部

  • 院生指導方法について、新任教員をトレーニングした。
  • 大学院担当の学部長補佐の職を新設した。
  • アカハラについてのトレーニングを行なった。
  • その他。白楽が省略

電気コンピューター工学科

  • 院生担当の副学科長を新設した。大学院退学率を監視し、院生の直接の相談窓口とした。
  • アカハラからの保護について、目立つ言葉で院生ハンドブックを更新した。

★アカハラ教授の復職反対デモ

2020年1月1日(51歳?)、2年間の無給休職期間が終わり、サイード教授はウィスコンシン大学マディソン校に復帰する。

この復帰の数週間前、ウィスコンシン大学マディソン校の学生が大規模な反対運動を行なった。

社交メディアも復帰を非難した。 → 例:Akbar Sayeed Doesn’t Belong on This Campus : UWMadison

多数のメディアが復職反対デモを報じた。

2020年5月26日(51歳?)現在、しかし、現実には、サイードはウィスコンシン大学マディソン校・教授として在籍している。従って、学生の反対デモは効力がなかったということだ。 → Sayeed, Akbar – UW-Engineering Directory | College of Engineering @ The University of Wisconsin-Madison、(2020年5月26日保存版

各メディアから1枚ずつ、復職反対デモの写真(最初のは動画)を以下に張り付けた。

この写真だけ動画である。動画を見るには、記事のサイトにアクセスし、動画をクリックする。なお、この動画で、「Akbar Sayeed」を「アクバル・サイード」と呼んでいる。2019年12月16日記事:Petition calls on UW-Madison to prevent return of suspended professor | WMSN

2019年12月5日記事:UW-Madison Students Protest Return of “Abusive” Professor – WORT 89.9 FM

2019年12月5日記事:Community Rallies Against Abuse of Graduate Workers, Calls for Policy Change – TAA – Graduate Worker Union of UW-Madison

2019年12月6日記事:UW-Madison students demand accountability and change following ‘toxic lab’ report | Higher education | madison.com

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

論文数は調べていない。

★撤回監視データベース

2020年5月26日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでアクバル・サイード(Akbar Sayeed)を「Akbar Sayeed」で検索すると、0論文がヒットし、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2020年5月26日現在、「パブピア(PubPeer)」では、アクバル・サイード(Akbar Sayeed)の論文のコメントを「Akbar Sayeed」で検索すると、0論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》アカハラ被害院生が自殺

サイード事件は、アカハラ被害院生が自殺した事件である。アカハラ被害で院生・ポスドクが自殺したのは米英では珍しい。このブログで記事にするのは初めてである。

しかし、2017年に山形大学、2016年に大分大学、2012年に東北大学、年不明だが日本大学で2人などなど。日本では、アカハラで10人近くが自殺している。なお、アカハラ自殺と認定されていない自殺も相当数あると思われる。

日本では、アカハラで自殺しても、政府・大学・高等教育界は真剣な対策を講じていない。

一体何人死ねば、政府・大学・高等教育界は対策を講じるのだろう?

《2》「種と畑」または「遺伝と環境」 

ネカトも、性不正も、アカハラも「種と畑」だ。つまり、研究者個人の性向・体質が根本にあって、それが、現れやすい畑で成長する。「遺伝と環境」説でもいい。

但し、「種」と「畑」の寄与度は、どちらが大きいかというと、アカハラの場合、「種」の寄与度が大きいと思う。

アラン・クーパー(Alan Cooper)の記事に以下のように書いたが、アカハラは研究者個人の性向・体質が原因だろう。
 →  「アカハラ」:アラン・クーパー(Alan Cooper)(豪)

アデレード大学は、センター室員に訴えられると、クーパーを注意した。クーパーは注意された直後から1-2週間は収まるが、その後、アカハラ行為を再開した。つまり、アカハラはクーパーの人格的特性や考え方によるもので、いわば、「体質」や「個性」による。つまり、修正不能と思われる。

アカハラは「体質」によるもので修正不能なら、予防は早めに検知し、その「体質」を持つ研究者を研究界から排除することだ。

《3》デモ 

本記事のアクバル・サイード(Akbar Sayeed)事件では、2019年12月(50歳?)、2年間の無給休職期間が終わり、サイードがウィスコンシン大学マディソン校・教授に復帰する前の月、ウィスコンシン大学マディソン校の学生が大規模な反対運動を行なった。

日本では、とても不思議なことに、こういうデモは全く起こらない。学生の親が抗議することもない。学内で問題視することもない。

そもそも、大学がアカハラ教員の名前を公表しないことに、学生の親、識者、メディアが抗議しない。文科省がそのような隠蔽を許していることにも抗議しない。とても不思議である。

性不正でも同じで、日本の学生は、「セクハラ教員は大学から出ていけ!」運動をしない。学生の親は、危険な教員がいることを承知で可愛い娘・息子を大学に通わせている。とても不思議である。

学生は自分で自分を守ろうとしない。親も危険なことを承知で放置している。世界のすべての国を調べたわけではないが、多分、この状況(犯人匿名)は日本だけである。韓国も少し隠蔽するが日本ほどではない。

2019年12月6日記事:UW-Madison students demand accountability and change following ‘toxic lab’ report | Higher education | madison.com

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギサイードシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●8.【主要情報源】

① 2019年10月30日のケリー・マイヤーホーファー(Kelly Meyerhofer)記者の「Wisconsin State Journal」記事:UW-Madison failed to inform federal agency of ‘abusive’ professor’s conduct, unpaid leave | Higher education | madison.com
② 2019年10月31日のケリー・マイヤーホーファー(Kelly Meyerhofer)記者の「Wisconsin State Journal」記事:‘Toxic’ lab lasted for years. UW-Madison had little idea until a student died by suicide | Higher education | madison.com
③ 2019年11月4日のコリーン・フラハティ(Colleen Flaherty)記者の「Inside Higher Ed」記事:Graduate student’s death at UW Madison is a devastating cautionary tale
④ 2019年12月5日の「WORT 89.9 FM」記事:UW-Madison Students Protest Return of “Abusive” Professor –
⑤ 2019年11月18日のジェフリー・マーヴィス(Jeffrey Mervis)記者の「Science」記事:NSF unwittingly hired a professor guilty of bullying, highlighting the ‘pass the harasser’ problem | Science | AAAS

★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではあサイードません。

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