2018年8月12日掲載。
ワンポイント:16年前の2002年9月6日(52歳?)、研究公正局は、ケンタッキー大学医科大学院(University of Kentucky School of Medicine)・教授(男性)のプラサッドの1件の論文原稿、1件の研究費申請書、それに「1999年のBrain Research」論文にデータねつ造・改ざんがあったと発表した。3年間の締め出し処分を科した。プラサッドはインド出身。国民の損害額の総額(推定)は11億7600万円。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
レヌーカ・プラサッド(M. Renuka Prasad、男性、顔写真見つからない)は、インド出身で、米国のケンタッキー大学医科大学院(University of Kentucky School of Medicine)の教授になった。医師ではない。専門は神経科学である。
2002年9月6日(52歳?)、発覚の経緯は不明だが、研究公正局が、プラサッドの1件の論文原稿、1件の研究費申請書、それに「1999年のBrain Research」論文にデータねつ造・改ざんがあったと発表した。2002年8月19日から3年間の締め出し処分を科した。
ケンタッキー大学医科大学院(University of Kentucky School of Medicine)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:インド
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:インドのインド理科大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1950年1月1日生まれとする。当てずっぽう。
- 現在の年齢:74 歳?
- 分野:神経科学
- 最初の不正:2000年(50歳?)(推定)
- 発覚年:2000年(50歳?)(推定)
- 発覚時地位:ケンタッキー大学医科大学院・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)はプラサッドの研究室員(推定)
- ステップ2(メディア):
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ケンタッキー大学医科大学院・調査委員会。②研究公正局
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:論文1報撤回。1件の論文原稿と1件の研究費申請書でも不正
- 時期:研究キャリアの後期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
- 処分: NIHから3年間の締め出し処分
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は11億7600万円。内訳 ↓
- ①研究者になるまで5千万円。
- ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費など)は年間4500万円。在職年数は不正確だが、20年間とし、損害額は9億円。
- ③外部研究費。1992年-2000年に1億5875万円受給していたが、ネカトに関する研究費「番号NS-34264」は約1億円だったので、損害額は1億円。
- ④調査経費。第一次追及の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円。研究公正局など公的機関は1件200万円。学術出版局は1件100万円とした。小計で1,600万円
- ⑤裁判経費は2千万円。裁判ないので損害額は0円。
- ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。共著がいる撤回論文が1報だったので損害額は1,000万円。
- ⑦研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
- ⑧健康被害:不明なので損害額は0円とした。
●2.【経歴と経過】
ほとんど不明。
- 生年月日:不明。仮に1950年1月1日生まれとする。当てずっぽう。
- xxxx年(xx歳):xx大学(xx University)で学士号取得
- 1977年(27歳?):インドのインド理科大学(Indian Institute of Science/ IISc)で研究博士号(PhD)を取得:http://nyx.uky.edu/dips/xt7m901zf08h/data/201470/201470.pdf
- xxxx年(xx歳):ケンタッキー大学医科大学院(University of Kentucky School of Medicine)・教授
- 1992年(42歳?):米国のケンタッキー大学医科大学院(University of Kentucky School of Medicine)からNIHの研究費を得ている
- 2000年頃(50歳?):経緯は不明だが、ネカトが発覚した(推定)
- 2002年9月6日(52歳?):研究公正局がネカトでクロと発表。締め出し期間は3年間
- 2002年(52歳?):ケンタッキー大学医科大学院・辞職(推定)
- 2003年(53歳?):ケンタッキー大学医科大学院から最後の論文を発表した
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★NIH研究費
レヌーカ・プラサッド(M. Renuka Prasad)は、NIH・国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)から1992年-2000年に9件、計1,587,546ドル(約1億5875万円)の研究費を受給していた。ネカトに関する研究費は「番号NS-34264」で研究費は約1億円である。
★ネカト事件の詳細は不明
レヌーカ・プラサッド(M. Renuka Prasad)のネカト事件の詳細は不明である。ネカト行為を犯した状況、発覚の経緯、ネカトの具体的内容、処分、処分のその後、どれも不明である。
2000年頃(50歳?)、経緯は不明だが、ネカトが発覚した(推定)。
2001年頃(51歳?)(推定)、ケンタッキー大学医科大学院・調査委員会は、レヌーカ・プラサッド(M. Renuka Prasad)のネカトを調査し、クロと判定し、研究公正局に伝えた。
2002年9月6日(52歳?)、研究公正局は、レヌーカ・プラサッド(M. Renuka Prasad)にネカトがあったと発表した。締め出し期間として3年間を科した。
★ねつ造・改ざんの内容
レヌーカ・プラサッド(M. Renuka Prasad)は、1件の論文原稿、1件の研究費申請書、1報の「1999年のBrain Research」論文でネカトを犯した。
NIH・国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)の研究費申請書「R01 NS34264」・「外傷性脳損傷におけるホスホリパーゼI(Phospholipases in traumatic brain injury)」でネカトを犯した。
【論文原稿と研究費申請書】
学術誌「Brain Research」に投稿したプラサッドの論文原稿「ラットにおける実験的脳損傷後のBcl-2 mRNAおよびミトコンドリアシトクロムc放出の部位的発現(Regional expression of Bcl-2 MRNA and mitochondrial cytochrome c release after experimental brain injury in the rat)」にねつ造があった。
プラサッドは、論文原稿の図2および図3に示した4か所の脳領域のBcl-2 mRNA強度の標準誤差をねつ造したのである。
論文原稿の図2および図3は、NIH・国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)の研究費申請書「R01 NS41918-01」・「外傷性脳損傷における神経化学的メカニズム(Neurochemical mechanisms in traumatic brain injury)」の図11および図12にも使用したので、必然的に、研究費申請書もデータねつ造になった。
論文原稿や研究費申請書のねつ造・改ざんの内容は、しかし、白楽には、上記以上はわからない。
【「1999年のBrain Research」論文】
以下の論文の図1と図3のデータを改ざんした。この論文は、NIHグラントNS-34264の助成を受けていた。この番号のNIH研究費は、1996年に開始し、2000年まで毎年約2000万円、計1億円を受給していた。
- Kynurenate attenuates the accumulation of diacylglycerol and free fatty acids after experimental brain injury in the rat.
Dhillon HS, Prasad RM.
Brain Res. 1999 Jun 19;832(1-2):7-12. Retraction in: Dhillon HS, Prasad RM. Brain Res. 2003 Mar 7;965(1-2):299.
図1と図3を原典から引用し以下に示す。赤色は「撤回Retraction」表示の一部である。無視してよい。
出典:https://ac.els-cdn.com/S0006899399014377/1-s2.0-S0006899399014377-main.pdf?_tid=ed03d273-310e-4596-aed5-a2e8ce261915&acdnat=1533623209_e08a6b3bd76fd83d79a4dc563ee45be8
図1。赤色は「撤回Retraction」表示の一部である。無視してよい。
図3。赤色は「撤回Retraction」表示の一部である。無視してよい。
図1と図3は棒グラフで、これは、第三者がいくら眺めていてもネカトがどこかわからない。生データと突き合わせないと、改ざん部分はわからない。
従って、レヌーカ・プラサッドの不正行為を見つけたのは、同じ研究室の研究室員しかいない。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
2018年8月11日現在、パブメド(PubMed)で、レヌーカ・プラサッド(M. Renuka Prasad)の論文を「Renuka M. Prasad [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2003年の1撤回公告がヒットした。
「Prasad RM[Author]」で検索すると、1962年の1論文、1995~2003年の9年間の16論文、2012~2018年の8論文、計25論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者の論文は1995~2003年の9年間の16論文と思われる。
2018年8月11日現在、「Prasad RM[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、1論文が撤回されていた。
- Kynurenate attenuates the accumulation of diacylglycerol and free fatty acids after experimental brain injury in the rat.
Dhillon HS, Prasad RM.
Brain Res. 1999 Jun 19;832(1-2):7-12. Retraction in: Dhillon HS, Prasad RM. Brain Res. 2003 Mar 7;965(1-2):299.
★パブピア(PubPeer)
省略
●7.【白楽の感想】
《1》詳細は不明
この事件の詳細は不明です。
2002年頃の事件は新聞記事になったような大きな事件を除いて詳細は不明である。16年も経過しているので当時の資料は簡単には見つからない。ましてや、インターネットは今ほど発達していなかったので、ネット上の情報はそもそも少なかった。
ネカト防止策は、この事件からは学べない。
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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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●8.【主要情報源】
① 2002年9月6日、研究公正局の報告:NIH Guide: FINDINGS OF SCIENTIFIC MISCONDUCT
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント