エリック・スマート(Eric J. Smart)(米)改訂

2018年7月27日掲載。

ワンポイント:ケンタッキー大学(University of Kentucky)・小児病研究所・準教授(白人男性)の生理学者で、2009年(43歳?)、セクシュアル・ハラスメントで謹慎処分を受けた。2010年(44歳?)、スマート研究室の研究員・ウィリアム・エバーソン(William Everson)がネカトを見つけ大学に公益通報した。2012年(46歳?)、研究公正局はネカトがあったと発表した。32歳頃から11年間もネカト行為をし、撤回論文は10報、投稿原稿の不正が1原稿、他に8件の研究費関係書類にネカトがあった。政府から総額8百万ドル(約8億円)の研究費を得ていた。NIHの締め出し年数は7年間と長い。ネカト事件としては大きな事件である。損害額の総額(推定)は12億4000万円。
スマート事件は、「2012年ネカト世界ランキング」の第1位だった。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

141117 pic-eric-smart[1]エリック・スマート(Eric J. Smart、写真出典)は、米国・ケンタッキー大学(University of Kentucky)・小児病研究所・準教授の生理学者で、栄養・肥満と心臓血管疾患・炎症の関係の生化学・分子生物学を研究していた。

2009年(43歳?)、セクシュアル・ハラスメントで謹慎処分を受ける。

2010年(44歳?)、スマート研究室の研究員・ウィリアム・エバーソン(William Everson)が、スマート準教の授研究ネカトを見つけ大学に公益通報した。

2010年8月(44歳?)、ケンタッキー大学・医科大学院は調査の結果、ネカトでクロと判定し、スマート準教授を停職処分に科した。研究公正局にも報告した。

2012年11月20日(46歳?)、研究公正局は調査の結果、スマート準教授の1998~2008年の11年間の10論文にデータねつ造・改ざんが見つかったと発表した。論文以外にも、1つの論文原稿と8つの研究費書類にデータねつ造・改ざんが見つかった。これらの論文・文書中の45個の図がねつ造・改ざんされていたのである。遺伝子改変マウスも存在していなかった。

研究公正局は締め出し年数を7年間とした。処分はかなり重い。
→ 「研究公正局の締め出し年数」ランキング | 研究倫理(ネカト)

スマート事件は大きな事件である。11年間もネカト行為をし、撤回論文は10報、投稿原稿の不正が1原稿、他に8件の研究費関係書類にネカトがあった。この間、政府から総額8百万ドル(約8億円)の研究費を得ていた。それで、締め出し年数は7年間と長い。「2012年ネカト世界ランキング」の第1位に挙げられた。

141117 kch_walkway[1]ケンタッキー大学・小児病院 写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ウィスコンシン大学マディソン校(?)
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1966年1月1日生まれとする。1993年に研究博士号(PhD)を取得したと仮定し、この時を27歳とした。米国で生まれる。
  • 現在の年齢:52 歳?
  • 分野:生化学
  • 最初の撤回論文発表:1998年(32歳?)
  • 発覚年:2010年(44歳?)
  • 発覚時地位:ケンタッキー大学・小児病研究所・準教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はスマート研究室の研究員・ウィリアム・エバーソン(William Everson)で大学に告発した。
  • ステップ2(メディア):「Lexington Herald-Leader」紙のリンダ・ブラックフォード(Linda B. Blackford)記者、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ケンタッキー大学・調査委員会。2009年4月~2012年3月。調査期間は3年間。②研究公正局。2009年8月~2012年10月。調査期間は3年3か月間
  • 不正:ねつ造・改ざん。セクハラ
  • 不正論文数:撤回論文10報。投稿原稿の不正1原稿。他に8件の研究費関係書類にネカトがあった。
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局がクロ判定(〇)
  • 被害:
  • 損害額:総額(推定)は12億4000万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が14年間=2億8千万円。③院生の損害が1人1000万円だが、人数は不明で、額は②に含めた。④外部研究費は辞職まで、政府から総額8百万ドル(約8億円)の研究費を得ていた。⑤調査経費(大学と研究公正局)が5千万円。⑥裁判経費なし。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。10報撤回=2000万円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円。
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)。高校教師に転職
  • 処分: 大学を解雇された(Ⅹ)。NIHの締め出し年数は7年で、処分はかなり重い。

141117 eric-smart3[1]写真出典

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1966年1月1日生まれとする。1993年に研究博士号(PhD)を取得したと仮定し、この時を27歳とした。米国で生まれる。
  • 1993年(27歳?)?:ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison )で研究博士号(PhD)を取得(?):生化学。ブルース・セルマン教授(Bruce R. Selman)
  • 1993年(27歳?)?:テキサス大学・サウスウェスタン・メディカルセンター(University of Texas Southwestern Medical Center)・ポスドク(?)
  • 1996年(30歳?):米国・ケンタッキー大学・医科大学院・小児病研究所・準教授
  • 2000年(34歳?):最初のNIH研究費(100万ドル:約1億円)を受給
  • 2003年(37歳?):バーンステーブル=ブラウン糖尿病・研究教授(Barnstable-Brown Chair in Diabetes)の格を得る
  • 2009年(43歳?):セクシュアル・ハラスメントで謹慎処分を受ける
  • 2010年(44歳?):ネカトが発覚する
  • 2010年8月(44歳?):ケンタッキー大学から停職処分をうける
  • 2011年8月(45歳?):バーボン・カウンティー高校の化学教師に就職
  • 2012年3月(46歳?):ケンタッキー大学の調査で、ネカトが確定する
  • 2012年5月(46歳?):ケンタッキー大学を辞職
  • 2002年11月(46歳?):研究公正局がネカトと発表

●5.【不正発覚の経緯と内容】

http://www.uky.edu/PR/News/Archives/2003/May2003/03-05_smart_appts.htm

【研究内容】

長年に渡って肥満だと、マクロファージは炎症過程に関与し始める。長期的に活性化したマクロファージは膵臓細胞を殺し、大動脈にプラークを生じさせ、心臓発作の危険を増大させる。

スマート準教授は、肥満におけるマクロファージの活動を重要と考え、栄養・肥満と心臓血管疾患・炎症の関係を生化学・分子生物学的に研究していた。

【不正発覚の経緯】

経緯の主な出典は「主要情報源」である。

141117 Eric-J-Smart[1]2009年2月(43歳?)、研究室のほとんどの女性にセクシュアル・ハラスメントをしたことで、スマート準教授は、1年間の謹慎が科された。

セクシュアル・ハラスメントの内容は、「実験室で、からかう、押す、叩く、くすぐる、触る、イタズラする。さらに、床の上でレスリングしたり、もう一人の人の上に乗っかったりする(性行為の別表現?)」ということだ。写真出典(c Linda Blackford)

2009年4月(43歳?)、エリック・スマート研究室の研究員・ウィリアム・エバーソン(William Everson)は、スマート準教授の2005年の研究費報告書を読んでいた。なお、エバーソンは、2003年にシンシナティ大学(University of Cincinnati)からケンタッキー大学のスマート研究室の研究員に採用されていた。

すると、そこに、2007年頃まで研究室には存在していなかったハズの遺伝子改変マウスが報告されていた。ウィリアム・エバーソンはデータねつ造ではないかと悩んだ末、ケンタッキー大学・医科大学院・学院長のジェイ・パーマン(Jay Perman)に公益通報した。

2009年4月(43歳?)、公益通報を受け、ケンタッキー大学・医科大学院は、1回目の調査を開始した。

2010年8月(44歳?)、ケンタッキー大学・医科大学院は調査の結果、ネカトでクロと判定し、スマート準教授を停職処分に科した。さらに、2回目の調査を開始し、同時に連邦政府にも通知した。

スマート研究室には通報者のウィリアム・エバーソンを含め、研究室員が11人いた。ケンタッキー大学・医科大学院はスマート研究室を閉鎖させたが、移籍のために、11人には1年間の猶予を与えた。

スマート準教授は通報者・エバーソンを非難した。さらに、エバーソンが研究で飼育中のマウスを殺すなど、かなりのイジメを繰り返した。

エバーソンは他大学への移籍がうまく進まなかった。「私は自分のキャリアを元に戻したい。また 殺されたマウス系統を回復したいと思っています。でも、小児糖尿病の原因を理解しようと構築してきた今までの努力が台無しにされたのが、私の最も大きな悲劇です。我々がやってきた研究は、ユニークで重要だったのですが、今は消えてしまいました」

2011年8月(44歳?)、スマート準教授は、ケンタッキー大学を解雇されると踏んで、バーボン・カウンティー高校の化学教師になった。後述するが、この時、不思議なことに、上司のティモシー・ブリッカー医学部小児科長(Timothy Bricker)が推薦状を書いている。

2012年3月5日(45歳?)、ケンタッキー大学・研究担当副学長のジム・トレーシー(Jim Tracy、写真出典)は、内部調査の結果、「1998年~2008年の14論文(含・原稿)および4つのNIH7研究費書類に広範囲なねつ造・改ざんがあった。それらの責任はエリック・スマート1人にある」と米国・研究公正局に通知した。

2012年5月(45歳?)、スマート準教授はケンタッキー大学を辞職した。

なお、スマート準教授は、ケンタッキー大学から164,000ドル(約1640万円)の年収を得ていた。辞職まで、政府から総額8百万ドル(約8億円)の研究費を得ていた。

2012年10月(45歳?)、研究公正局は調査の結果、スマート準教授に広範囲のデータ改ざんがあったと結論した。報告書は2012年12月10日付け(NOT-OD-13-014: Findings of Research Misconduct)。

【不正の内容】

★研究公正局の報告

2012年12月10日の研究公正局の報告書は、1998~2008年の11年間の10論文がネカト論文だと指摘している(NOT-OD-13-014: Findings of Research Misconduct)。

  1. J. Biol. Chem. 277(7):4925-31, 2002
  2. Am J. Physiol. Cell Physiol. 291(6):C1271-8, 2006
  3. Am J. Physiol. Cell Physiol. 294(1):C295-305, 2008
  4. J. Lipid Res. 42:1444-1449, 2001
  5. J. Biol. Chem. 275:25595, 2000
  6. J. Biol. Chem. 277(26):23525-33, 2002
  7. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(10):3450-5, 2004
  8. J. Biol. Chem. 280(33):29543-50, 2005
  9. J. Biol. Chem. 273:6525-6532, 1998
  10. Am J. Physiol. Cell Physiol. 282:C935-46, 2002

研究公正局の報告書では、以下の投稿原稿にも不正があったと結論している。
“Effects of HIV protease and nucleoside reverse transcriptase inhibitors on macrophage cholesterol accumulation in humans,” submitted August 6, 2008

さらに、以下の8研究費書類に不正があったと結論している。

  1. R01 HL078976-01
  2. R01 HL078979-01A1
  3. R01 DK063025-01A2
  4. R01 HL088150-01
  5. U54 CA116853-01
  6. R01 HL093155-01
  7. R01 HL068509-01A1
  8. Progress reports HL078976-02, -03, and -04.

それぞれ、10論文・1原稿・2研究費書類のどの図表が不正なのかも示している。

  1. Figures 5 and 7, J. Biol. Chem. 277(7):4925-31, 2002
  2. Figure 4B, Am J. Physiol. Cell Physiol. 291(6):C1271-8, 2006
  3. Figures 2A, 3A, 6A, and 7A, Am J. Physiol. Cell Physiol. 294(1):C295-305, 2008
  4. Figures 3, 5, and 6, J. Lipid Res. 45:1444-1449, 2001
  5. Figure 2A, J. Biol. Chem. 275(33):25595-99, 2000
  6. Figures 2A/B/C and 4A/B, J. Biol. Chem. 277(26):23525-33, 2002
  7. Figures 2B/D and 4, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(10):3450-5, 2004
  8. Figures 1A and 5B, J. Biol. Chem. 280(33):29543-50, 2005
  9. Figures 1A, 2A/B, and 4A, J. Biol. Chem. 273:6525-6532, 1998
  10. Figure 1B, Am J. Physiol. Cell Physiol. 282:C935-46, 2002
  11. Figures 2A, 4, 6B, 7, and 8 in a submitted manuscript
  12. Figures 7A, 8A, 9A, and 10B in grant application HL093155-01
  13. Figures 4, 7, and 13 in grant application HL068509-01A1.

そして、研究公正局はNIHの締め出し年数を7年間とした。処分はかなり重い。
→ 「研究公正局の締め出し年数」ランキング | 研究倫理(ネカト)

★「2002年のJ. Biol. Chem.」論文

研究公正局の報告書には、10論文・1原稿・8研究費関連文書に45個のデータねつ造・改ざんが見つかったとある。具体的にどのレベルのねつ造・改ざんなのかを見てみよう。

「J. Biol. Chem. 277(7):4925-31, 2002」の図5と図7がネカトだとある。

下の写真は撤回されたエリック・スマートの論文「J. Biol. Chem. 277(7):4925-31, 2002」の図5と図7である。出典:http://www.jbc.org/content/277/7/4925.long

図5

図7
141117 F7.large[1]

図5と図7とも、タンパク質試料をHSP56、サイクロフィリン40(Cyp40)、アネキシンⅡ(annexin II) 、カベオリン(caveolin)、サイクロフィリンA (CypA)の各抗体で染色したウェスタン・ブロット像である。

一見問題ないように見える。

しかし、調査員は、とても優秀で、また、熱心に精査したのだろう。問題のあるバンドを指摘した。

皆さん、おわかりになります?

 

 

どう?

 

 

降参?

 

 

白楽も降参です。

 

似ているバンドはあるけど、このバンドだと確信できない。

調査員は、こんなバンドを見て、どのように不正を見破ったのでしょう? スゴイというか、なんというか、スゴイ。

★「2002年のAm J. Physiol. Cell Physiol.」論文

研究公正局の報告書では「2002年のAm J. Physiol. Cell Physiol.」の図4がネカトだとある。

下の写真は撤回されたエリック・スマートの論文「2002年のAm J. Physiol. Cell Physiol.」の図4である。出典:https://www.physiology.org/doi/full/10.1152/ajpcell.00211.2006

図4

 

似ているバンドがある。バンドの再使用があるとわかっていれば、コレとコレは同一のバンドと特定できそうである。

しかし、そういう予備知識がなければ、イヤイヤ予備知識があっても、同一のバンドを再使用したと「確信」できない。

残り8論文もどこがネカトなのか、御用とお急ぎでない方は、ご自分で試してごろうぜよ。

【事件の深堀】

「リトラクチョン・ウオッチ(Retraction Watch)」記事のコメントに、スマートのセクハラ事件が暴露されていて、それが研究ネカトの公益通報に至ったと憶測されている。

2009年2月20日(43歳?)、機会均等副学長・補佐・パティ・ベンダー(Patty Bender)が、ティモシー・ブリッカー医学部小児科長(Timothy Bricker)にマル秘の手紙をしたためた。そのマル秘手紙に、スマート準教授は、セクハラ行為や怒りを抑えられない性格であると述べている(以下手紙の一部、出典)。

以下の手紙(の一部)をクリックすると、手紙のPDFファイル(160 KB、3ページ)が別窓で開く。

141117 手紙

コメントでは、スマート準教授のセクハラ事件が暴露され、それが研究ネカトの公益通報に至ったとある。

しかし、公式見解では、スマート準教授のセクハラ行為がキッカケで不正研究が公益通報されたという憶測は間違っていると指摘された。

2009年4月(43歳?)、エリック・スマート研究室の研究員・ウィリアム・エバーソン(William Everson)が、2005年時点ではなかったハズの遺伝子改変マウスが研究費書類に記載されていることから、データねつ造の公益通報をしたことになっている。

しかし、ケンタッキー大学は、上記のセクハラ行為のマル秘手紙を受け取った2か月後にスマート準教授の調査を開始していた。

当時、エリック・スマート研究室には11人の研究室員がいたが、多分、ボスのセクハラや怒りを抑えられない性格、脅迫行為で、研究室は荒廃し、人間関係はスサんでいただろう。

研究者の事件のほとんどは、そういう、人間関係が破たんしスサんだ研究室で発覚する。

白楽は、スマート準教授の常習的セクハラ行為に研究室員が嫌気がさして、スマート準教授の研究ネカトを告発したのだと深読みする。

教授も大学院生も人間だから完全ではない。でも、研究室の人間関係が良好なら、公益通報する前に、話し合い、過ちが修正され、不正行為があったとしても、事件にしない(ならない)ことが多い、と白楽は思っている。

大学の内部調査でも、研究公正局の調査でも、こういう研究室の裏事情は公表されない。研究室の人間関係悪化が、事件発覚の本当の理由であれ、そういう裏事情は、よほどのことがないとわからない。スマート準教授のセクハラ行為を記した手紙は「マル秘」である。今回は入手できたが、通常は、まず入手できない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

【撤回論文】

2018年7月26日現在、パブメド(PubMed)で、エリック・スマート(Eric J. Smart)の論文を「Eric J. Smart[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2012年の11年間の42論文がヒットした。

「Smart EJ[Author] 」で検索すると、1991~2012年の22年間の75論文がヒットした。

2018年7月26日現在、「Smart EJ[Author] AND Retracted 」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、10論文が撤回されていた。

最も新しい「 2008 のAm J Physiol Cell Physiol.」論文は、出版から5年後の2013年4月に撤回された。

そして、最も古い「1998 年のJ Biol Chem. 」論文は、出版から15年後の2013年3月に撤回された。

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2012年12月10日の研究公正局の報告書では、1998~2008年の11年間の10論文が撤回されている(NOT-OD-13-014: Findings of Research Misconduct)。

  1. J. Biol. Chem. 277(7):4925-31, 2002
  2. Am J. Physiol. Cell Physiol. 291(6):C1271-8, 2006
  3. Am J. Physiol. Cell Physiol. 294(1):C295-305, 2008
  4. J. Lipid Res. 42:1444-1449, 2001
  5. J. Biol. Chem. 275:25595, 2000
  6. J. Biol. Chem. 277(26):23525-33, 2002
  7. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(10):3450-5, 2004
  8. J. Biol. Chem. 280(33):29543-50, 2005
  9. J. Biol. Chem. 273:6525-6532, 1998
  10. Am J. Physiol. Cell Physiol. 282:C935-46, 2002

研究公正局の報告書では、以下の投稿原稿にも不正があったと結論している。
“Effects of HIV protease and nucleoside reverse transcriptase inhibitors on macrophage cholesterol accumulation in humans,” submitted August 6, 2008

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「撤回監視(Retraction Watch)」によると、撤回論文数はトータル8論文である。

★パブピア(PubPeer)

2018年7月26日現在、「パブピア(PubPeer)」はエリック・スマート(Eric J. Smart)の1論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》上司が不正者の推薦状を書く

2010年8月(44歳?)、スマート準教授の不正が発覚した。

2010年9月7日(44歳?)、事件が発覚して1か月もたたないし、1年前にはセクハラ行為もあった。それなのに、上司のティモシー・ブリッカー医学部小児科長(Timothy Bricker)は、当地の教育委員会(Education Professional Standards Board)あてに、大学の便せんを使用して、「エリック・スマート氏は、すべてのレベルの生徒に対し、内容と教育スタイルの両方の観点からみて、素晴らしい教師である」と7枚に及ぶ推薦状を書いている。(After UK researcher’s suspension, his boss wrote him a recommendation letter)。

2011年8月(45歳?)、ティモシー・ブリッカー医学部小児科長の推薦状に威力があったのか、スマートはバーボン・カウンティー高校(Bourbon County High School )の化学教師に就職した。

日本の推薦状はなんでも褒めると世界で非難されているが、それでも、セクハラ事件とネカト事件に何も触れないで、主犯の人物の推薦状を書く日本人はマレだろう。

ティモシー・ブリッカー医学部小児科長を非難すべきなのか、それとも褒めるべきなのか?

もちろん、高校側も推薦状だけで、エリック・スマートを採用することはないだろう。面接し、「良い」と思ったから採用したのだろうが、性的事件は病的で再犯率が高いという話もある。性的事件を起こした人物だと伝えたら、そのような若い男性を教師として採用するのに、反対や非難が沸き起こったに違いない。

それにしても、ティモシー・ブリッカー医学部小児科長の推薦状は異常である。なお、無責任なことに、推薦状を書いたその2011年、ティモシー・ブリッカーはケンタッキー大学を辞めて、テキサス大学(?)に移籍してしまった。

白楽としては、ネカト者と言えども幸福な人生を送る権利があるし、実際に幸福に暮らして欲しいと思う。

エリック・スマートが高校の化学教師として前向きな人生を送れることを願う。女子高生や女性教職員にセクハラしないことも願う。

2014年11月時点で、バーボン・カウンティー高校(Bourbon County High School )の化学教師の職にあった。

そして、2018年7月26日現在も在職している(Eric Smart – Bourbon County High School)。問題を起こしていないということだ。

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●8.【主要情報源】

① 研究公正局の報告:(1)2012年11月20日:Federal Register, Volume 77 Issue 224 (Tuesday, November 20, 2012)、(2)2012年12月10日:NOT-OD-13-014: Findings of Research Misconduct
② ◎2012 年11月20日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:ORI sanctions former University of Kentucky nutrition researcher for faking dozens of images in 10 papers at Retraction Watch
②‐1 2013 年1月7日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:First retraction for Eric Smart, who faked dozens of images, appears in PNAS ? Retraction Watch
②‐2 2013 年4月16日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Two more Eric Smart retractions appear ? Retraction Watch
③ 2011年11月21日のユージニー・ライヒ(Eugenie Samuel Reich)記者の「Nature News」記事:Nutrition researcher censured over serial misconduct : Nature News Blog
④  2012年11月27日のダン・コシンス(Dan Cossins)記者の「Scientist」記事:A Decade of Misconduct | The Scientist MagazineR
⑤ 2012年11月29日のリンダ・ブラックフォード(Linda B. Blackford)記者の「Lexington Herald-Leader」記事:Former University of Kentucky researcher once disciplined for sexual harassment
⑥ ◎2012年12月9日のリンダ・ブラックフォード(Linda B. Blackford)記者の「Lexington Herald-Leader」記事:Whistle-blower in UK research-fraud case: ‘The system is badly broken’ | Lexington Herald Leader
⑦ 2013年5月23日のリンダ・ブラックフォード(Linda B. Blackford)記者の「Lexington Herald-Leader」記事:Former UK researcher accused of misconduct allowed to keep teaching license | Lexington Herald Leader
⑧ 旧版:2014年12月6日
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント