カトリン・メドラー(Kathrin Maedler)(ドイツ)

2015年3月10日掲載

ワンポイント: 疑惑段階ではウェブ上に本人の情報がたくさんある例

【追記】
・2020年1月17日記事:Tired of waiting for a university, a publisher commissions its own investigation — and retracts two papers – Retraction Watch
・2018年4月24日記事: The Kathrin Maedler Dynasty – For Better Science
・2016年12月9日、DFG-ドイツ研究振興協会(German Research Society)は、調査の結果、クロと判定し、ハイゼンベルグ教授職(Heisenberg professorship)をはく奪した。
出典①:Kathrin Maedler loses Heisenberg Professorship, found guilty of misconduct by DFG ? For Better Science
出典②:Diabetes researcher loses prestigious professorship – Retraction Watch at Retraction Watch
・2016年10月25日、ブレーメン大学は、調査の結果、研究ネカトではなく怠惰による「間違い」と発表した(http://www.uni-bremen.de/fileadmin/user_upload/single_sites/referate/referat06/Erklaerung_des_Rektors.pdf)。
出典:Leading diabetes researcher acted negligently, probe concludes – Retraction Watch at Retraction Watch

【概略】
150301 Kathrin Maedler4カトリン・メドラー(Kathrin Maedler、Kathrin Mädler、写真出典)は、ドイツで生まれ、オーストリアのウィーン大学で薬学を修め、スイスのチューリッヒ大学院で博士号を取得した。

米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のポスドク後、ドイツ・ブレーメン大学(University of Bremen)・生体分子相互作用センター(Centre for Biomolecular Interactions)の教授になった。

専門は糖尿病の細胞生物学で、たくさんの賞を受賞し、ドイツの著名な研究者である。写真でわかるように美人である。

2014年(42歳)、データねつ造・改ざんの疑惑が表面化した。

2015年3月1日現在、ブレーメン大学が調査中と思われる。

150301 flaschenbar1ドイツ・ブレーメン大学(University of Bremen)・生体分子相互作用センター(Centre for Biomolecular Interactions)のメドラー研究室のメンバー。メドラーは左から5番目。写真出典

  • 国:ドイツ
  • 150301 kmaedler_mic_400成長国:オーストリア、スイス
  • 研究博士号(PhD)取得:スイスのチューリッヒ大学病院(University Hospital Zurich)
  • 男女:女性 写真出典
  • 生年月日:1971年11月9日
  • 現在の年齢:53歳
  • 分野:糖尿病学
  • 最初の不正疑惑論文発表:2002年(40歳)
  • 疑惑発覚年:2014年(42歳)
  • 発覚時地位:ドイツ・ブレーメン大学・教授
  • 発覚:パブピアでの指摘
  • 調査:①ブレーメン大学・調査委員会(推定)
  • 不正:ねつ造・改ざんの疑惑
  • 不正論文数:疑惑論文は14報
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 結末:事件は疑惑発覚直後なので、辞職などない

150301 Kathrin Maedler12012年のポール・エールリッヒ・ルートウィヒ・ダームステッドラー賞(Paul Ehrlich- und Ludwig Darmstaedter Award)のジュニア賞(Junior)を受賞したカトリン・メドラー(Kathrin Maedler)(右)。左は本賞受賞者のカリフォルニア大学サンフランシスコ校のピーター・ウォルター教授(Prof. Dr. Peter Walter)(左)。出典Kompetenznetz Diabetes News

【経歴と経過】

  • 1971年11月9日:ドイツ・ザクセン州のツヴィッカウで生まれる
  • 1992-1997年(20-25歳):オーストリア・ウィーン大学(Vienna University)薬学部
  • 1996年(24歳):オーストリア・ウィーン大学(Vienna University)薬学部の診断・臨床薬学講座(Prof. Dr. M. Czejka)で学生研究助手
  • 1997年(25歳):オーストリア・ウィーン大学(Vienna University)薬学士。学士論文「In vitro and in vivo investigations with the cytoprotector Amifostine」 (指導教授:Prof. Dr. M. Czejka)
  • 1998年(26歳):薬剤師資格(Licensed Approbation as pharmacist)、ドイツ・ハノーバー
  • 1998-1999年(26-27歳):指導薬剤師(Directive pharmacist)、ドイツ・ハノーバー
  • 1999年(27歳):臨床薬剤師、英国・ロンドン大学薬学部(London School of Pharmacy)とドイツ・チュービンゲン大学(University of Tübingen)
  • 150301 keyimg20080918-9745155-0-data2000-2002年(28-30歳):スイスのチューリッヒ大学病院(University Hospital Zurich)のマーク・ドーナス教授(Marc Donath、内分泌・糖尿病講座、写真出典)の指導で、研究博士号(PhD)取得。博士論文「Lipo-and Glucotoxicity on human pancreatic islets」。
  • 2002-2004年(30-32歳):スイスのチューリッヒ大学病院(University Hospital Zurich)の内分泌・糖尿病講座でプロジェクトリーダー
  • 2005-2008年(33-36歳):米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のラリー・ヒルブロム膵島研究センター(Larry Hillblom Islet Research Center)・助教授
  • 150301 Kathrin Maedler62008年-2015年3月現在(36-43歳):ドイツ・ブレーメン大学(University of Bremen)・生体分子相互作用センター(Centre for Biomolecular Interactions)・教授 写真出典
  • 2015年(43歳):不正研究疑惑が表面化する

★受賞歴(英語のママでゴメン)

  • Servier Research Award in Endocrinology, 2001.
  • Prize for best oral presentation at 1st Day of Clinical Research in USZ, Zurich, Switzerland, 2002.
  • JDRF fellowship award 2004.
  • Fellowship Award by the German Diabetes Society sponsored by Bayer, 2004
  • Junior Faculty Award of the Department of Medicine Research day, UCLA, 2006
  • American Diabetes Association Junior Faculty Award
  • Ellison Award for Aging Research 2007
  • Outstanding Poster Award at the Presidential Poster Session, American Geriatrics Society Meeting 2008
  • Emmy Noether Award of DFG, 2008
  • European Research Council (ERC) Award 2010
  • Ferdinand Bertram Award 2011
  • ポール・エールリッヒ・ルートウィヒ・ダームステッドラー賞(Paul Ehrlich- und Ludwig Darmstaedter Award)のジュニア賞(Junior) 2012

150301 Kathrin Maedler2カトリン・メドラー(Kathrin Maedler)。2012年(40歳)、出典

【不正疑惑の内容】

2015年2月28日現在、撤回論文はゼロだが、2002~2014年の14論文の図にねつ造・改ざん、再発表(盗用の一種)が指摘されている(【主要情報源】①)。

【具体例 その1】
以下の図のオレンジに囲ったバンドが酷似している。
左がメドラーの2009年の「PLoS One」論文の図1。
右がメドラーが共著者になっている2006年の「Diabetes」論文の図3

150301 Screen-Shot-2015-01-08-at-8_06_02-AM

メドラーの話(2015年1月12日)だと、2009年の「PLoS One」論文は間違えた。訂正記事は間もなく掲載される予定である。

【具体例 その2】
2011年の「Hum. Mol. Genet」論文では、以下の図の背景が黄矢印のところで不連続である。バンドを切り貼りした可能性があると指摘された。下図ではわかりにくいがhttp://i.imgur.com/M5g1aiA.jpgの拡大図を見ると納得する。出典:パブピアで指摘者は「Peer 1: ( September 23rd, 2014 1:49pm UTC )」

150301 M5g1aiA

問題視されている図を載せた論文に関して、メドラーは、論文の結論は正しいことを確認したと述べている。問題視されている図の訂正は、「2008年以来2回研究室を移動したので、少し時間がかかる」そうだ。

この、「研究室を移動したので、少し時間がかかる」という言い訳に、パブピアの投稿者は、「移動と訂正は関係ないだろう」と憤慨している。

【論文数と撤回論文】

パブメドhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedで、カトリン・メドラー(Kathrin Maedler)の論文を「Maedler Kathrin[Author]」で検索すると、2002年~2014年の13年間の39論文がヒットした。

2015年2月28日現在、撤回論文はゼロである。

【白楽の感想】

《1》 疑惑段階では経歴と顔写真が豊富

150301 Kathrin Maedler5現在、メドラー(写真出典)は言い訳や図の訂正をしているが、多分、研究ネカトと結論されるだろう。

しかし、調査でクロと判定されるまで、疑惑段階である。

疑惑を否定したいだろう。

自分のウェブサイトの情報を削除すると、調査委員に悪い心証を与えかねない。それで、現状では、自分の経歴と顔写真を含め情報がシッカリ載っている。

下の2つの写真も載っている。若い女性の服装はラフですね。

150301 ucla_400[1]米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の熊の像前で。右がメドラー(出典)。

150301 maedler-lab_400[1]米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のラリー・ヒルブロム膵島研究センター(Larry Hillblom Islet Research Center)前で。左がメドラー(出典)。

研究ネカトは、多分、2002年(30歳)の最初の論文から始まっている公算が高い。

《2》 美貌と研究ネカトで名声を得た女性研究者リスト

メドラーは賞もたくさん受賞している。美貌と研究ネカトで名声・地位・研究費を得たと世間から思われる女性研究者の1人である。以下はそのリスト。なお、美人と思うかどうかは、人それぞれです。

美貌と研究ネカト以外の共通点は、研究初期から不正をしていることと、庇護者(地位の高い男性や夫など)がいることだ。

150301 Kathrin Maedler3出典

【主要情報源】
① 2015年1月12日のリトラクチョン・ウオッチ(Retraction Watch)の記事:Leading diabetes researcher corrects paper as more than a dozen studies are questioned on PubPeer – Retraction Watch at Retraction Watch
② ウィキペディアのドイツ語版:Kathrin Mädler – Wikipedia

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