2023年ネカト世界ランキング

2024年1月1日掲載 

ワンポイント:2023年に世界中(含・日本)で起こったネカト関連事件から、特に重要な事件を選んだ(選者が)。ネカトだけでなく、学術界・健康科学界の重要な事件も含まれている。

  • 分野を記載していないのは生命科学。
  • カタカナ名の赤字は本ブログで解説済み。
  • いくつかの事件は近日中に本ブログの記事にする。
  • 本記事は、更新日を示さずに上書きする。

2023年 12月中旬時点で、2023年ランキングの外国の記事はとても少なかった。それで、どうしようと考え、日本のメディアを記載した。

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★1.日本の大手新聞の「2023年の論文不正記事ランキングと週刊誌・インターネットの記事数:2023年12月16日、白楽調べ

白楽が比較的よく見るメディアだけで、日本のメディア全部を網羅していない。

ネカト記事を掲載している他のメディアがあれば、教えて下さい。リストに加えます。

大手新聞の結論:毎日新聞が最も多くネカト記事を掲載している。他紙は記事数が少なく、ネカトを積極的に報道する姿勢はない。米英などと比べると、日本のメディアはネカト事件の報道がとても少ない。国民の税金を億円単位で浪費する犯罪に近い不正なのだから、国民にもっと伝えるべき

大手新聞の検索:読売新聞の検索画面が最も優れている。他は検索を軽視していると思えるほど検索しにくい。「大改善を望む」、「少改善を望む」、「普通」、「とても便利」の4段階で検索を評価した。

★毎日新聞(白楽は講読会員):「検索:少改善を望む」

検索サイトで「論文不正」と記事掲載期間(2023年1月1日~2023年 12月16日)を指定した。ヒット件数は「100件以下」とあるだけで、実数は表示されない。ヒットした記事の中から白楽が選択し、その記事数をカウントし、多い順にならべた。

  1. 古川聡(宇宙航空研究開発機構・宇宙飛行士):データねつ造・改ざん 、10記事
  2. 友田明美(福井大学・教授):査読偽装 、9記事
  3. 中山政義(二松学舎大学・学長):盗用 、7記事
  4. 吉本昌広(京都工芸繊維大学・副学長):自己盗用、5記事

★読売新聞(白楽は非講読会員):「検索:普通」

記事掲載期間(2023年1月1日~2023年 12月16日)を指定した。「論文不正」で25件ヒットした。「研究不正」は106件ヒットした。

以下は「論文不正」の25件から選んだ。

  1. 古川聡(宇宙航空研究開発機構・宇宙飛行士):データねつ造・改ざん 、5記事
  2. 神谷厚範(岡山大学・教授):ねつ造、3記事
  3. 中山政義(二松学舎大学・学長):盗用 、1記事

★朝日新聞(白楽は講読会員):「検索:大改善を望む」

記事掲載期間を指定しできない。
論文不正」と「研究不正」で検索したが、ヒット数が少なく、関心がとても低い印象。それで、ランキング作成をやめた。

★週刊誌・インターネットの記事数 

以下はランキングではなく2023年の記事数

  • ミスコン・プレイ 研究不正・盗用(@plagiarismfraud):数百件~数千件
  • 世界変動展望の「社会」:数十件~百数十件
  • 週刊ポスト(NEWSポストセブン)の「論文不正」の検索結果:7件
  • MyNewsJapan の「論文不正」の検索結果:1件
  • デイリー新潮の「論文不正」の検索結果:0件
  • 週刊文春 電子版「論文不正」の検索結果:0件

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★2.「撤回監視(Retraction Watch)」の「2023年の論文撤回トップ10」:2023年12月27日

出典:The top ten stories at Retraction Watch in 2023 – Retraction Watch保存版

著者は「撤回監視(Retraction Watch)」のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者。

特徴:このランキングでは、以下のような今年最大級のネカト事件をリストしていない。

「撤回監視(Retraction Watch)」は、他の報道機関が大きく注目したネカト事件は他の報道に譲って、彼らが見逃しているネカト事件に焦点を当てた、とのことだ。理由は、限られたリソースを有効に活用したい、ためだそうだ。

白楽は10件の事件の内、ランキング発表前に 3件しか解説していなかった(〇印)。打率3割。〇印なしは、ランキング発表後に解説した。

  1. カサイ・マウチャ(Kahsay Tadesse Mawcha)(エチオピア)| 白楽の研究者倫理 2024年1月5日掲載
  2. MDPI社の学術誌「Research Evaluation」の論文。
    スペインのマリア・デ・ロス・アンヘレス オビエド・ガルシア教授(María de los Ángeles Oviedo García)がMDPI社の学術誌は捕食学術誌だと論文で発表した。この論文内容が気に喰わず、撤回し、差し替えさせえた。 → 2023年5月8日記事:Article that assessed MDPI journals as “predatory” retracted and replaced – Retraction Watch
  3. 化学:ポール・ワイス(Paul Weiss)(米)| 白楽の研究者倫理 2024年2月10日掲載
  4. ワイリー社は8,000報以上の論文を撤回。
    ワイリー社は論文工場製の論文を8,000報以上撤回し、4誌を閉鎖した。推定35~40億円(3,500万~4,000万ドル)の損失 → 2023年12月19日記事:Hindawi reveals process for retracting more than 8,000 paper mill articles – Retraction Watch
  5. エラーバーの T論文。
    グラフにエラーバーとして大文字の T を使った論文が、「Hindawi」学術誌の特別号から撤回された。 この論文は引用論文が異常。内容が異常。連絡著者のビンホン・リウ(Binghong Liu)(韓国)は群山大学(クンサンだいがく、Kunsan National University)所属とあるが、在籍していない。メールアドレスは sunliwei@rzpt.edu.cn で、中国の○○大学のSunli Weiである。いろいろ問題があり、何が起こっているのか白楽はチンプンカンプン。 → 2022年12月5日記事:A paper used capital T’s instead of error bars. But wait, there’s more! – Retraction Watch
  6. 〇アンカ・トゥルク(Anca Turc)(米)。
    7-124 書いていないのに単著論文の著者 | 白楽の研究者倫理  | 白楽の研究者倫理 2023年9月18日掲載
  7. 学術誌「Genetika」:Web of Scienceの索引付けから外された
     → 2023年6月28日記事:“Truly devastating”: Four journals won’t get new Impact Factors this year because of citation shenanigans – Retraction Watch
  8. 歴史学:マウラ・ダイクストラ(Maura Dykstra)(米) | 白楽の研究者倫理 2024年2月25日掲載
  9. ララ・ファ(Lara Hwa)(米) | 白楽の研究者倫理 2023年12月25日掲載
  10. スランギ (スランジ) ・ジャヤワルデナ(Surangi (Suranji) Jayawardena)(米) | 白楽の研究者倫理  2023年11月5日掲載

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★3.RealClearScience誌の「2023年の最大ガラクタ科学」:2023年12月11日

出典:The Biggest Junk Science of 2023 | RealClearScience保存版

ランクした人はロス・ポメロイ(Ross Pomeroy)。ポメロイは動物学者、生物保護学者でブログ「RealClearScience」のライター。学歴・職歴はよくわからない。
→ Ross Pomeroy | Author | RealClearScience

8件の最大ガラクタ科学。白楽は8件の事件の内、ランキング発表前に 0件しか解説していなかった。打率0割。

研究者のネカトというより、世間の関心を引くエセ科学なので、白楽ブログでは、記事としては解説しなかったし、解説しない。デタラメ度はかなり高く、よく報道したなあ~という印象。そういう点では面白い。

  1. 第1位:詐欺師がメキシコ議会に「エイリアン」を提出(メキシコ)
    ハイメ・モーサン(Jaime Maussan)はペルーでエイリアン(上の写真)を発掘しメキシコ議会に提出した。その  標本は明らかに人間と動物の骨を組み合わせたものだった。 →  The origin of the fake unboxed aliens is wilder than actual aliens – Vox

  2. 第2位:ドーパミン デトックス(Dopamine Detox)(米)

    ドーパミンは、脳内の特定の受容体に結合すると、報酬の感情を引き起こす神経伝達物質なので、達成感やヤル気を起こす。ただ、 ただ、現代人は、ドラッグや社交メディアなどに熱中し、ドーパミン過剰でやりがいのある行動を強迫的に追求している。 →  2023年4月12日記事:What Is Dopamine Detox? | Science-Based Medicine
    それで、ドーパミンが放出される行動を一定期間避けることが勧められた。ドーパミンから脳をデトックスしよう。しかし、その考えはナンセンスだとイェール大学の神経内科医スティーブン・ノベラ(Steven Novella)が指摘した。 ドーパミンには本質的にやりがいや快感はなく、たまたま報酬回路に関与する神経伝達物質というだけ。強迫的な行動を管理する良い方法は、セラピストの認知行動療法がおススメ。 

  3. 第3位:ラスベガスの民家の裏庭にUFOが降り立った (米)
    内容省略 → 2023年9月15日記事:Las Vegas family release bizarre drawings of UFOs they claim landed in backyard | The Independent

  4. 第4位:トコジラミでパニック(フランス)
    電車、映画館、家の中にトコジラミがいるとフランスで大騒ぎ。しかし、実際はトコジラミの個体数が少し増えただけだった。フランスを悩ませた本当の問題は、メディアに煽られて大規模な社会的パニックになったことだ。

    AP
    Exterminators search for bed bugs in Franch. (AP)

     

  5. 第5位:奇跡の治療法として漂白剤を販売(Vaping Vitamins)(米)
    サフラックス社(Safrax)は自閉症の治療法として漂白剤を含む錠剤をの摂取を巧妙に宣伝した。ただし、代表者らはそんなつもりはないと否定している。 → 2023年9月18日記事:This Rapping Preacher Is Selling Bleach to Parents Trying to ‘Treat’ Autism in Kids

  6. 第6位:新型コロナ・ワクチンが「ターボがん」を引き起こすと医師たちが主張(米)
    今年、多くの医師が社交メディアで、新型コロナウイルス・ワクチンが恐ろしいほど多くの「ターボがん(turbo cancers)」患者を増やしていると主張した。 ウェイン州立大学の癌生物学プログラムのデイヴィッド・ゴルスキー教授(David Gorski)は、この主張を裏付けるデータはないと反論した。ワクチンががんを引き起こす生物学的メカニズムも考えられないと指摘。デタラメな反ワクチン神話である。 →  2023年10月9日記事:Dr. William Makis: Promoting the nonsense that is “turbo cancer” – RESPECTFUL INSOLENCE 

  7. 第7位:薬局チェーンのCVSはホメオパシー薬を売る(米)

    2023年、食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は、2007年以来の臨床試験を認め、鼻詰まり除去剤のフェニレフリンは効果がないとした。この薬は、スダフェド、ムシネックス、ナイキル、ベナドリルなどの人気の医薬品に含まれており、これらを合わせると数十億ドル(数千億円)の売上を占める。薬局チェーンのCVSは棚からこれらの医薬品を撤去した。 それは賞賛に値する。
    しかし同時に、CVSはホメオパシーを棚に残した。 これらは、水で薄めると病気と戦う能力が高まるという空想的な役に立たない薬である。 →  2023年9月25日記事:Homeopathy: An Ongoing Public Health Failure | RealClearScience

  8. 第8位:テニスのスーパースター、ノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic)のスキンパッチは「彼のキャリア上の最大の秘密兵器」
    テニスのスーパースターであるジョコビッチは胸にスキンパッチを付けている。 それについて尋ねられると、「キャリア上の最大の秘密兵器です」と答えた。

    そのスキンパッチは TaoPatch で、メーカーは「鍼治療の原理を低レベルレーザー治療に応用した」「カーボンナノチューブルと量子ドットに基づくナノテクノロジーデバイス」 で、着用すると「姿勢、動き、パフォーマンスが向上する」と宣伝している。もちろん、効果の科学的データはない。数百ドル~数千ドル(数万~数十万円)で販売し、信じる人々を食い物にしている。 → 2023年7月20日記事:Novak Djokovic credits the TaoPatch for his success: What does the science say? | Science-Based Medicine

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★4.サイメックス(Scimex):「オーストラリア科学メディアセンターが選んだ2023年の上位10大科学話」:2023年12月6日

出典:The AusSMC’s Top 10 Science Stories 2023

なお「奇妙版(WEIRD)」もある。
出典: The AusSMC’s Top 10 WEIRD Science Stories 2023 – Scimex

オーストラリア科学メディアセンター(AusSMC)が選んだとあるが、選んだ人の名前は不記載。上位10位とあるが、ランキングではない。

2023年は、真面目な科学、面白い科学、注目を浴びた科学、「奇妙版(WEIRD)」は奇妙な科学、の話題だけで、ネカト・クログレイ絡みは1件もなかった。

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★5.「より良い科学のために(For Better Science)」で2023年に最も読まれた上位11記事:2023年12月29日

出典:Schneider Shorts 29.12.2023 – Happy New Year! – For Better Science

ランクした人は「より良い科学のために(For Better Science)」ブログ執筆者でネカトハンターのレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)(ドイツ)。フリーランス。細胞生物学者、ジャーナリスト。2007年に研究博士号(PhD):細胞生物学。写真出典

「より良い科学のために(For Better Science)」ブログの上位10記事+おまけ1記事だが、該当する白楽の記事があれば、それを優先的に示した。

白楽は10件の事件の内、ランキング発表前に2件しか解説していなかった(〇印)。打率2割。しかも「1」は古い解説だった。打率1割が正解かも。
〇印なしは、ランキング発表後に解説した。

  1. パウロ・マッキャリーニ(Paolo Macchiarini)(スウェーデン) | 白楽の研究者倫理 2015年7月4日掲載
  2. 犯罪「論文工場・引用工場」:材料工学:モハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand)(カナダ) | 白楽の研究者倫理 2024年1月25日掲載
  3. 化学:サビーネ・スズネリッツ(Sabine Szunerits)、ラバ・ブケルブ(Rabah Boukherroub)(フランス) | 白楽の研究者倫理 2024年2月25日掲載
  4. フリオ・セザール・バティスタ・フェレイラ(Julio Cesar Batista Ferreira)(ブラジル)、ダリア・モクリー=ローゼン(Daria Mochly-Rosen)(米) | 白楽の研究者倫理 2024年2月29日掲載
  5. エルサ・フローレス(Elsa Flores)、タイラー・ジャックス(Tyler Jacks)(米) | 白楽の研究者倫理 2024年3月10日掲載
  6. 〇物理学:ランガ・ディアス(Ranga Dias)(米) | 白楽の研究者倫理  2023年6月30日掲載
  7. フランチェスコ・スクアドリート(Francesco Squadrito)(イタリア)
     → 2023年6月12日記事:Uni Messina, money for nothing & brothers in arms – For Better Science
  8. クリス・ティーマーマン(Chris Thiemermann)(英)
     → 2023年7月25日記事:Queen Mary and John Vane’s Cowboys – For Better Science
  9. ヴァレリー・ウィーバー(Valerie Weaver)、アシャニ・ウィーララトナ( Ashani Weeraratna)(米)
     → 2023年3月15日記事:Pound of Flesh, or Is Cancer Fraud Inevitable? – For Better Science
  10. ニール・ヴィッカーズ(Neil Vickers)(英)
     → 2023年7月31日記事:The Vickers Curse: secret revealed! – For Better Science
  11. おまけ:アレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)とニック・ワイズ(Nick Wise)が解明した論文工場
     → 2022年10月19日記事:The incredible collaborations of Renaissance men and women – For Better Science

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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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