ドン・シャオ(Dong Xiao)(米)

/2015年6月28日掲載、2026年7月28日(火)更新/

シャオは中国出身(推定)で、ピッツバーグ大学・泌尿器学科・研究助教授になった。2015年1月22日(41歳?)、ピッツバーグ大学の調査結果をもとに、研究公正局(ORI)は、シャオの「2014年6月のOncotarget」論文にデータ捏造・改ざんがあったと発表し、3年間の処分を科した。ユニークな点は、「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」の要請で論文が撤回されたことだ。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.導入
2.経歴と経過
5.発覚・調査の経緯
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想(含・AI川柳)
9.主要情報源
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●1.【導入】

dong-xiaoドン・シャオ(Dong Xiao、写真出典)は、米国のピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)・泌尿器学科・研究助教授で、専門は細胞生物学(がん細胞の細胞情報伝達)だった。医師ではない。

ドン・シャオ(Dong Xiao)の「ドン」が名で「シャオ」が姓である。

2015年1月22日(41歳?)、ピッツバーグ大学の内部調査をもとに、研究公正局(ORIロゴ出典)は、ピッツバーグ大学・研究助教授だったドン・シャオ(Dong Xiao)の「2014年6月のOncotarget」論文にデータ捏造・改ざんがあったと発表した。

2014年12月23日から3年間の締め出し処分、および、3年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。3年間の処分は普通の処分である。

University_of_Pittsburgh_tablet2ピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:中国(推定)
  • 研究博士号(PhD)取得:中国の大学(推定)
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に、1974年1月1日とする
  • 現在の年齢:52歳?
  • 分野:細胞生物学
  • 不正論文発表期間:2014年(40歳?)
  • 不正論文発表時地位:ピッツバーグ大学・研究助教授
  • 発覚年:2014年(40歳?)
  • 発覚時地位:ピッツバーグ大学・研究助教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ピッツバーグ大学・調査委員会。②研究公正局。~2015年1月22日
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:捏造・改ざん
  • 不正論文数:1論文が撤回
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 職:件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(推定)(Ⅹ)
  • 処分:解雇
  • 対処問題:
  • 特徴:①事件の状況はほとんど不明。②「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」が要請して論文が撤回された
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

不明点多い

  • 生年月日:不明。仮に、1974年1月1日とする。ほとんど推定。
  • xxxx年(xx歳):中国の大学を卒業(推定)
  • xxxx年(xx歳):中国の大学で研究博士号(PhD)取得(推定)
  • 2002年(28歳?):米国のピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)所属で論文を発表した。この時、ポスドクと思われる。ボスは、インド出身のシヴェンドラ・シン教授(Shivendra Singh)
  • xxxx年(xx歳):米国のピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)・泌尿器学科・研究助教授(Research Assistant Professor)
  • 2014年6月(40歳?):後にネカトとされた「2014年6月のOncotarget」論文を発表
  • 2015年1月22日(41歳?):研究公正局が研究ネカトと発表
  • 2015年(41歳?):米国・ピッツバーグ大学を解雇
  • 2015年10月6日(41歳?):「2014年6月のOncotarget」論文は撤回された
  • 2026年7月27日(52歳?)現在:同姓同名が複数人いるので、研究職を続けているのか、研究界にいないのか、不明

●5.【発覚・調査の経緯】

★研究人生

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ドン・シャオ(Dong Xiao、写真出典不明)は、中国で育ったと思われるが経歴は不明である。中国の大学で研究博士号(PhD)を取得し、2001年(27歳?)、米国のピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)のポスドクになったと推察した。事件を起こしたときは、ピッツバーグ大学・泌尿器学科・研究助教授だった。

ドン・シャオ(Dong Xiao)の「ドン」が名で「シャオ」が姓である。

ボスは、インド出身のシヴェンドラ・シン教授(Shivendra Singh、写真出典)で、2002~2012年を含む約10年以上、シヴェンドラ・シン教授と密接な師弟および研究協力関係にあった。

というには、パブメド(PubMed)検索でヒットした全43論文の内、2002~2012年の37論文は、シヴェンドラ・シン教授(Shivendra Singh)と共著だったからである。

2014年6月(40歳?)、後にネカトとされた「2014年6月のOncotarget」論文を発表した。

研究公正局が研究ネカトと発表したのは、2015年1月22日(41歳?)なので、上記論文が出版されるとすぐにネカトが指摘され、数か月でピッツバーグ大学が調査を終え、数か月で研究公正局がネカト認定をしたと想像される。とても早い。

なお、不正発覚の経緯は不明であるが、シヴェンドラ・シン教授(Shivendra Singh)が見つけて告発したと思われる。

★獲得研究費

ドン・シャオ(Dong Xiao)は、NIHから2009~2013年の5年間に4件、計963,746ドル(約9600万円)の研究費を得ていた。 → RePORT ⟩ Dong Xiao UNIVERSITY OF PITTSBURGH AT PITTSBURGH

以下にその4件を示す(出典は上記)

★研究公正局の発表

2015年1月22日(41歳?)、研究公正局は、ピッツバーグ大学・研究助教授だったドン・シャオ(Dong Xiao)の「2014年6月のOncotarget」論文にデータ捏造・改ざんがあったと発表した。

不正個所の詳細も発表した。次節で説明する。

2014年12月23日から3年間の締め出し処分、および、3年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。3年間の処分は普通の処分である。

★PETAの要請で論文撤回

2015年10月6日(41歳?)、シャオの「2014年6月のOncotarget」論文は撤回された。

その過程はユニークである。

以下は、2015年10月19日の「撤回監視(Retraction Watch)」記事による。

動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」の研究者が、同団体および当時の300 万人以上の会員・支援者を代表して、学術誌「Oncotarget」に連絡を取り、論文の即時撤回を要求した。

学術誌「Oncotarget」はそれに対応した。

PETAが論文撤回の役割を果たしたのは初めてではない。

PETAの実験室調査部門のジャスティン・グッドマン副部長(Justin Goodman)は、2011 年に次のように述べている。

私たちが望んでいるのは、動物を実験室から解放することです。そのために、規則を破る人々に適切な処罰を与えることが必要です。その処罰には、論文の撤回や資金提供の停止などが含まれます。だからこそ、私たちはこうした問題に断固として対処していくのです。

【研究不正の具体例】

2015年1月22日(41歳?)、研究公正局の発表で、ドン・シャオ(Dong Xiao)の「2014年6月のOncotarget」論文(以下)にデータ捏造・改ざんがあったと発表した。

研究公正局はデータ捏造・改ざんの内容を言葉で説明している。

  • 改ざん
    図1A・1Bは腫瘍の大きさと重さを示している。論文では、1グループあたり10匹のマウスを使用したと記述しているが、実際は4匹のマウスしか使用していなかった。
  • 改ざん
    図1Dのウェスタンブロット像を改変し、腫瘍マウスをZ-Gugで処理するとC-capase 3活性が増加し、Aktリン酸化活性が阻害されると記述しているが、実際はどちらの活性にも顕著な影響を与えなかった。
  • 捏造・改ざん
    詳細は省くが、図4C、4D、5C、5D、S2B、S3Bも捏造・改ざんされていた。
  • 捏造
    以下の図6Gと6Hのウェスタンブロット像のバンドは捏造されたものだった。ドン・シャオも捏造を認めている。図6Aから6Fのデータは図6Gと6Hと対応している。図6Gと6Hのデータが捏造されていたということは、図6Aから6Fのデータも信頼できない。無題

 

2015年10月6日に「2014年6月のOncotarget」論文は撤回されたが、撤回公告では、 図1,4,5,S2 ,S3 に虚偽があったと述べている。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

データベースに直接リンクしているので、記事閲覧時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。

★パブメド(PubMed)

2026年7月27日現在、パブメド(PubMed)で、ドン・シャオ(Dong Xiao)の論文を「Dong Xiao[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2026年までの25年間の1,004論文がヒットした。同姓同名の他人の論文が多数含まれていると思われる。

所属をピッツバーグ大学に限定した「(Dong Xiao[Author]) AND “university of pittsburgh”[Affiliation]」で検索すると、2002~2014年の13年間の 43論文がヒットした。

43論文の内、2002~2012年の37論文は、シヴェンドラ・シン教授(Shivendra Singh)と共著だった。

2026年7月27日現在、撤回論文は「2014年6月のOncotarget」論文・1論文だけである。

★撤回監視データベース

2026年7月27日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでドン・シャオ(Dong Xiao)を「Xiao, Dong」で検索すると、 10論文がヒットし、8論文が撤回されていた。なお、同じurlで132論文がヒットすることもあり、検索機能またはデータベースが不安定である。

ただ、本記事のドン・シャオ(Dong Xiao)の撤回論文は、「2014年6月のOncotarget」論文の撤回だけだと思われる。

★パブピア(PubPeer)

2026年7月27日現在、「パブピア(PubPeer)」で、ドン・シャオ(Dong Xiao)の論文のコメントを「authors:”Dong Xiao”」で検索すると、25論文にコメントがあった。同姓同名などの他人の論文が多数含まれていると思われる。

●7.【白楽の感想】

《1》不明点多し、研究習慣病

シャオ事件は、情報が少なく、ネカトの動機や状況、それに背景も見えてこない。

dong-xiaoドン・シャオ(Dong Xiao、写真出典)は中国で育ったと思うが、実際は、中国なのか米国なのかも不明である。

シャオ事件を参考に研究公正の改善点を見つけるのは困難だ。

なお、2014年論文のデータ改ざんは論文のほとんどの図に及んでいる。この広範な改ざんから推察すると、改ざん作業はシステマティックで徹底している。とても初犯とは思えない。改ざんはドン・シャオの研究習慣病で常習化していたと思われる。

ドン・シャオは、2002~2014年の13年間にピッツバーグ大学から 43論文を出版している。この中の複数の論文(連絡著者や第一著者の論文)はクロだと思うが、ピッツバーグ大学は調査しなかったのだろうか?

《2》研究不正を防ぐ方法

ドン・シャオ(Dong Xiao)の研究不正を防ぐには、どうすればよかったか?

また、今後、同じような研究不正を起こさせないためにはどうすべきか?

研究公正局が2026年にクロと発表したチェン・イェ・“ジョージ”・クー(Chen-Yeh “George” Ke)の事件でも書いたが、研究公正局の発表内容からは、研究不正を防ぐヒントは何も得られない。 → チェン・イェ・“ジョージ”・クー(Chen-Yeh “George” Ke、柯振業)(米) | 白楽の研究者倫理

そもそも、研究公正局は、研究不正を防ぐヒントを与えるような事実や解析結果を発表しない。研究公正局はそのような解析をしていないのだと思うが、折角、事件を調査したのだから、研究不正を防ぐ観点の記述もあった方が良いと思う。

《3》AI川柳

  • 4匹を ネズミ算で 10匹に
    (論文では1グループ10匹としながら、実際は4匹しか使っていなかった改ざん)
  • 捏造と 見栄が止まらぬ 習慣病
    (広範な図の不正加工から、不正が「習慣化」していたと思われる)
  • 防ぎ方 書いてくれない 報告書
    (ORIの発表内容は、不正の事実に終始し、再発防止のヒントが乏しい)

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●9.【主要情報源】

① 研究公正局の報告:(1) 2015年1月22日:Case Summary: Xiao, Dong | ORI – The Office of Research Integrity。(2)2015年1月27日の連邦官報PDF版:2015-01427.pdff。(3)2015年1月27日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2015年1月29日 :NOT-OD-15-061: Findings of Research Misconduct
② 2015年1月23日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Former Pitt cancer researcher admits to faking findings – Retraction Watch at Retraction Watch
③ 2015年10月19日のシャノン・パラス(Shannon Palus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Prostate cancer paper flagged by ORI is retracted following PETA prompt – Retraction Watch
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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