2022年ネカト世界ランキング

2023年1月1日掲載 

ワンポイント:2022年に世界中(含・日本)で起こったネカト関連事件から、特に重要な事件を選んだ(選者が)。ネカトだけでなく、学術界・健康科学界の重要な事件も含まれている。

  • 分野を記載していないのは生命科学。
  • カタカナ名の赤字は本ブログで解説済み。
  • いくつかの事件は近日中に本ブログの記事にする。
  • 本記事は、更新日を示さずに上書きする。

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★1.毎日新聞の「2022年の研究不正記事ランキング:2023年1月2日

記事数の多い順。白楽調べ。

  1. 友田明美(福井大学・教授):査読偽装 、24記事
  2. 古川聡(宇宙航空研究開発機構・宇宙飛行士):データねつ造・改ざん 、8記事
  3. 研究スキル売買 、3記事
  4. シルヴァン・レズネー(Sylvain Lesné)、カレン・アッシュ(Karen Ashe)(米)、2記事

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★2.「The Scientist」誌の「2022年の論文撤回上位」:2022年12月9日

出典:The Top Retractions of 2022 | The Scientist Magazine®保存版

著者は「撤回監視(Retraction Watch)」のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者。

  1. モハメド・サハブ・ウディン(Mohammed Sahab Uddin)(バングラデシュ)
  2. 情報交換欠落(ブラジル): 2 つの専門医グループが同じ患者の症例論文を別々に出版した。ネカト・クログレイなし
  3. グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米)
  4. 論文工場:米・ミシガン州の3人が、ロシアの論文工場 (http://123mi.ru) を突きとめた
  5. ルーベン・ヘルツォーク(Rubén Herzog)(チリ)
  6. サムソン・ジェイコブ(Samson Jacob)(米)
  7. 特殊事件「論争」:ディック・スワーブ(Dick Swaab)(オランダ)
  8. トニ・ブランド(Toni Brand)(米)
  9. 物理学:論文工場:英国のニック・ワイズ(Nick Wise)が論文工場を突きとめ、850論文が撤回
  10. 査読偽装:あちこちで査読偽装が発覚し、数百論文が撤回

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★3.RealClearScience誌の「2022年の最大ガラクタ科学」:2022年12月3日

出典:The Biggest Junk Science of 2022 | RealClearScience 、保存版

ランクした人はロス・ポメロイ(Ross Pomeroy)。ポメロイは動物学者、生物保護学者でブログ「RealClearScience」のライター。学歴・職歴はよくわからない。
→ Ross Pomeroy | Author | RealClearScience

7件の最大ガラクタ科学。
研究者レベルのネカトというより、世間の関心を引くエセ科学なので、全部パス。

  • 第1位:フロリダ州・ジョセフ・ラダポ公衆衛生局長官(Joseph Ladapo)(米)
    ラダポ長官は、COVID-19 ワクチンの安全性と有効性を繰り返し否定した。→ 2022年1月27日記事(写真出典同):The Problem with Ladapo – NeuroLogica Blog
  • 第2位:アトランティスの陰謀が Netflix のドキュメンタリー シリーズで再び登場(Atlantis Conspiracy Resurfaces in Netflix Docuseries)(米)。
    ネス湖の怪物と同様にアトランティスは繰り返し登場するエセ科学物語。 → 2022年11月18日記事:With Netflix’s Ancient Apocalypse, Graham Hancock has declared war on archaeologists
  • 第3位:ドキュメンタリー映画「突然死(Died Suddenly)」 (米)
    「突然死(Died Suddenly)」(画像出典)は、ドキュメンタリーと称している映画だが、内容がいい加減で、登場する専門家はニセ者である。COVID-19 ワクチンは恐ろしい血栓を起こし、世界中で突然死をもたらしていると主張し、ワクチンの意図は地球の人口を減らす陰謀だとほのめかしている。 2022年11月25日、ジョナサン・ジャリー(Jonathan Jarry )が記事で映画を批判している → The Anti-Vaccine Documentary Died Suddenly Wants You to Feel, Not Think | Office for Science and Society – McGill University
  • 第4位:フェンタニルに触れる恐怖(Deathly Afraid of Touching Fentanyl)(米)
    フェンタニルはモルヒネの 50 倍から 100 倍強力で、過剰に摂取すると死に至る。現在、アメリカで流行している。皮膚に触れただけでも危険と言われ、扱いに心理的なパニックを起こしている。経皮パッチ実験では、フェンタニルが皮膚に触れて吸収されるまで 20 分かかるので、皮膚に触れても石鹸と水で素早く洗えばリスクはないので、恐怖は過剰である。 → 2022年7月21日記事:What are the risks of touching fentanyl? | Science-Based Medicine
  • 第5位:電子タバコでビタミンを摂取(Vaping Vitamins)(米)
    電子タバコは身体に害である。悪徳企業が健康的だと強調するため、電子タバコの液体にビタミンを添加している。しかし、それで、健康になるわけではない。身体は気化したビタミンをまったく吸収しない。食品医薬品局は、「ビタミン電子タバコ (vitamin vapes)」の業者を取り締まる方向である。 → 2022年2月3日のスコット・ガヴラ(Scott Gavura)記者の 記事(写真出典同):Vitamins are not for vaping | Science-Based Medicine
  • 第6位:ニューヨークタイムズ(New York Times )の「幽霊と一緒に暮らす方法」(米)
    ニューヨークタイムズ 紙 は、読者に幽霊と一緒に暮らす方法をアドバイスした。 →  2022年10月26日記事:The Dos and Don’ts of Living in a Haunted House – The New York Times
  • 第7位:ミチオ・カク (Michio Kaku)の「UFO は宇宙人」(米)
    カクは理論物理学者。UFO は米国政府が多数の機密を解除し、議会で公聴会を開いたため、最近脚光を浴びているが、「証拠」は曖昧で、人工物、気球、鳥、単に他の航空機などの画像である。カクは「地球外のものではないことを証明せよ」と主張している。

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★4.サイメックス(Scimex):「オーストラリア科学メディアセンターが選んだ2022年の上位10大科学話」:2022年12月7日

出典:The AusSMC’s Top 10 Science Stories 2022、(保存版)。

オーストラリア科学メディアセンター(AusSMC)が選んだとあるが、選んだ人の名前は不記載。上位10位とあるが、ランキングではない。

真面目な科学の話題が主で、ネカト・クログレイ絡みは8番目の1件だけだった。以下に示す。

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★5.「より良い科学のために(For Better Science)」で2022年に最も読まれた上位11記事:2022年12月30日

出典:Most Read of 2022 – For Better Science、(保存版

ランクした人は「より良い科学のために(For Better Science)」ブログ執筆者でネカトハンターのレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)(ドイツ)。フリーランス。細胞生物学者、ジャーナリスト。2007年に研究博士号(PhD):細胞生物学。写真出典

「より良い科学のために(For Better Science)」ブログの上位11記事だが、該当する白楽の記事があれば、それを優先的に示した。

  1. 「レイプ」:デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)(米) 2021年11月6日掲載・・・レイプ事件ではなくネカト事件として
  2. ロバート・マローン(Robert Malone)(米)
    おかしなワクチン反対論を展開した。胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療薬であるファモチジン(famotidine)が新型コロナの治療の有効だとか、食品医薬品局(FDA)はファイザー社のワクチンを承認していないなど、マローンは、新型コロナに関する間違った情報を拡散した。
     →  2021年10月4日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:How Dr Robert Malone invented Antivaxxery – For Better Science
     → 2022年1月4日のティモシー・ベラ(Timothy Bella)記者の「Washington Post」記事:How Robert Malone, vaccine scientist spreading misinformation, was embraced by Joe Rogan, anti-vaxxers – The Washington Post
  3. クラウディオ・ヘッツ(Claudio Hetz)(チリ) 2021年11月24日掲載
  4. 企業:学術業(academic business):フロンティアーズ社(Frontiers)(スイス) 2019年1月15日掲載
  5. シルヴァン・レズネー(Sylvain Lesné)、カレン・アッシュ(Karen Ashe)(米)2022年7月28日掲載
  6. 「レイプ」:デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)(米) 2021年11月6日掲載・・・「1位」と同じ人の別の記事
  7. グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米)2021年7月18日掲載
  8. ホァウヤン・ワン(Hoau-Yan Wang)、リンゼイ・バーンズ(Lindsay Burns)、キャッサバ・サイエンシズ社(Cassava Sciences, Inc.)(米)2021年11月27日掲載
  9. エルゼビア社(Elsevier) → 2022年4月20日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Elsevier pandemic profiteering, again – For Better Science
  10. リチャード・ヴィエストラ(Richard Vierstra)(米)
  11. 心理学:ロレンザ・コルザト(Lorenza Colzato)(オランダ)2021年3月20日掲載

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★6. 2022 年の最もスキャンダラスな詐欺事件5件:2023年1~2月

出典:5 most scandalous fraud cases of 2022、(保存版

毎年、日本公認不正検査士(ACFE)は諮問委員会からの情報をもとに、その年の最もスキャンダラスな詐欺事件を 5 つ選んでいる。

2022年は、5つの内、研究界と関連しているの2番目の1件だけだった。以下に示す。

  • 第2位:バイオジェン社(Biogen)(米)
    2022年7月、バイオジェン社は、同社の多発性硬化症(MS)治療薬タイサブリ®(一般名:ナタリズマブnatalizumab)を宣伝する医師にリベートを与えた件で米国政府と9億ドル(約900憶円)で和解した。 → 2022年9月26日の「米国司法省」記事:Biogen Inc. Agrees to Pay $900 Million to Settle Allegations Related to Improper Physician Payments | OPA | Department of Justice

    2012年、バイオジェン社の元従業員であるマイケル・バウドニアック(Michael Bawduniak)は、米国虚偽請求法(U.S. False Claims Act)に基づいて、偽のコンサルティング契約、講演の依頼、豪華なディナーで医師を誘惑して、患者にバイオジェンの多発性硬化症薬を処方させたとして、バイオジェン社を告発した。
    多発性硬化症の治療薬は高価であり、中枢神経系に影響を与える自己免疫疾患の治療薬として承認されている薬はごくわずか。
    マイケル・バウドニアック(Michael Bawduniak)。出典:https://www.taf.org/2022-whistleblower-of-the-year-recipient/

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日本の人口は、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になる。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。
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