無罪?:「アカハラ」:マージャン・ジャハーンギーリー(Marjan Jahangiri)(英)

2020年8月7日掲載 

ワンポイント:心臓外科教授になった英国の最初の、そして欧州でも最初の女性であるジャハーンギーリー(ロンドン大学のセント・ジョージ病院・教授)が、アカハラ行為(看護師の1人を怒鳴った)で停職処分になった。2018年8月28日(56歳)、裁判所は、ジャハーンギーリー教授の無罪申し立てを認め、停職を解除するよう命じた。アカハラを理由に病院幹部が、ジャハーンギーリーの足を引っ張った事件で、ジャハーンギーリーはむしろアカハラ被害者である。停職中に手術を受けられなかった患者を考慮し、国民の損害額(推定)は5億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

マージャン・ジャハーンギーリー(Marjan Jahangiri、写真出典)は、英国のロンドン大学のセント・ジョージ病院の心臓外科医・教授(Professor of Cardiac Surgery at St. George’s Hospital, University of London)である。心臓外科教授になった英国の最初の、そして欧州でも最初の女性である。

ジャハーンギーリー教授は、「看護師の1人を怒鳴った」とのアカハラ行為が問題視された。

なお、ウェブ上の記事からは、アカハラ被害を申し立てた看護師の名前・身分・性別や、どのような状況で怒鳴られたのかは、わからなかった(記述が見つからなかった)。

申し立てがあったので、ロンドン大学のセント・ジョージ病院は、ジャハーンギーリー教授を停職処分に科した。この処分の時期がはっきりしないが、仮に2018年1月としよう。

ジャハーンギーリー教授は、停職処分は不当だと裁判所に訴えた。この時期もはっきりしないが、仮に2018年5月としよう。

2018年8月28日(56歳)、裁判所は、ジャハーンギーリー教授の申し立てを認め、停職を解除するよう命じた。

学術界では、ネタミ、嫉妬が理由で、優れた教授の足を引っ張る行為が頻繁にみられる。ジャハーンギーリー事件は、足を引っ張る道具に「アカハラ」を利用した事件である。

ロンドン大学のセント・ジョージ病院(St. George’s Hospital, University of London)。写真出典

  • 国:英国
  • 成長国:英国
  • 医師免許取得:ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン
  • 研究博士号(PhD)取得:
  • 男女:女性
  • 生年月日:1962年5月。仮に1962年5月1日生まれとする
  • 現在の年齢:59 歳
  • 分野:心臓外科教授
  • アカハラ行為:2018年(55歳)
  • 最初に訴えられた:2018年(55歳)
  • 社会に公表年:2018年(55歳)
  • 社会に公表時地位:ロンドン大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は被害者の看護師
  • ステップ2(メディア):「Daily Mail」、「Guardian」、「Times」など
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ロンドン大学のセント・ジョージ病院・調査委員会。②裁判所
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学・処分のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:ウェブ公表なし(✖)
  • 不正:アカハラ
  • 被害者数:被害者数は1人
  • 時期:研究キャリアの後期
  • 職:事件後に停職(▽)。裁判で停職解除
  • 処分:停職
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:1962年5月。仮に1962年5月1日生まれとする
  • 19xx年(xx歳):ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)で医師免許取得
  • 19xx年(xx歳):ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)で外科トレーニング
  • 19xx年(xx歳):米国のハーバード大学のグレート・オーモンド・ストリート病院と小児病院(Great Ormond Street Hospital and Children’s Hospital in Boston, Harvard)・医師
  • 19xx年(xx歳):有名なオーケストラ指揮者のジャン・レイサム=ケーニック(Jan Latham-Koenig)と結婚
  • 1998年(36歳):第一子出産
  • 2001年(39歳):ロンドン大学のセント・ジョージ病院(Cardiac Surgery at St. George’s Hospital, University of London)・上級講師、心臓外科医
  • 2007年(45歳):同大学・心臓外科教授(Professor of Cardiac Surgery at St. George’s Hospital, University of London)
  • 2018年(55歳):アカハラで停職処分
  • 2018年8月(56歳):アカハラ裁判で勝訴し、停職解除
  • 2019年8月(57歳):王立外科医師会の専門諮問委員会・委員長(Chair of the Specialty Advisory Committee of the Surgical Royal Colleges)

●3.【動画】

【動画1】
自分で「マージャン・ジャハーンギーリー」と名乗っている。
自己紹介動画:「マージャン・ジャハーンギーリー教授の自己紹介(Introducing Prof Marjan Jahangiri)- YouTube」(英語)0分33秒。
Catherine Cullenが2018/02/12に公開

●5.【アカハラ発覚の経緯と内容】

★マージャン・ジャハーンギーリー(Marjan Jahangiri)の人生

2007年、マージャン・ジャハーンギーリー(Marjan Jahangiri)(45歳)がロンドン大学の心臓外科教授(Professor of Cardiac Surgery at University of London)に就任した。

心臓外科教授になった英国の最初、そして欧州でも最初の女性である。

英国と欧州で最も優れた心臓外科医である。毎年、300件の手術を行ない、死亡率の英国の平均は7%~15%なのに、ジャハーンギーリーが執刀した手術の死亡率は1.2%という驚異的な結果を出している。手塚治虫のブラック・ジャックになぞらえれば、ブラック・ジャックの一枚上のブラック・クイーンというところだ。

国内および国際会議で招待講演を定期的に行ない、150報以上の査読付き論文を発表している。

そして、夫は世界的に有名なオーケストラ指揮者で、日本で指揮したこともあるジャン・レイサム=ケーニック(Jan Latham-Koenig)である。

2011年の記事では、13歳の息子・ダリウス(Darius)がいる、とあった。ということは、1998年(36歳)で息子を生んだことになる。
 → 2011年7月3日記事:How I make it work: Marjan Jahangiri | The Sunday Times

★アカハラ裁判

ジャハーンギーリー教授は、「看護師の1人に怒鳴った」とのアカハラ行為が問題視された。また、国民保健サービス(NHS)を利用している患者よりも民間保険の患者を優先したという申し立てがされた。

本記事は、アカハラ事件ということで記事にしているが、ウェブ上の記事からは、アカハラ被害を申し立てた看護師の名前・身分・性別や、どのような状況で怒鳴られたのかは、わからなかった(記述が見つからなかった)。

申し立てがあったので、ロンドン大学のセント・ジョージ病院は、ジャハーンギーリー教授を停職処分に科した。この処分時期がはっきりしないが、仮に2018年1月としよう。停職になったので、当然、患者の手術はできなくなり、患者は困った。

ジャハーンギーリー教授は、停職処分は不当だと裁判所に訴えた。この時期もはっきりしないが、仮に2018年5月としよう。

2018年8月28日(56歳)、裁判所は、ジャハーンギーリー教授の申し立てを認め、停職を解除するよう命じた。

セント・ジョージ病院の最高責任者であるジャクリーン・トッターデル(Jacqueline Totterdell、写真出典)は、「裁判所の判決には失望したが、判決を尊重します。今回の判決は免罪ということではなく、裁判官は停職は不適切だと述べましたが、調査中の件について何の見解も示しませんでした。私たちは、ジャハーンギーリー教授に提起された深刻な問題の調査を続けます」と述べた。

この「深刻な問題」がハッキリしない。しかし、アカハラ問題ではない、と白楽は思った。というのは、「看護師の1人に怒鳴った」ことが「深刻な問題」とは思えないからだ。

★アカハラ被害者?

ジャハーンギーリー教授の弁護士であるイアン・クアーク(Iain Quirk、写真出典)は、他の教授たちが「魔女狩り」したと、法廷審理で、激しく非難した。ほとんど理由にならないような理由で、ジャハーンギーリー教授は停職処分にされた。ジャハーンギーリー教授はアカハラ加害者というより、むしろ被害者だと主張した。

ジャハーンギーリー教授は欧州で最初に心臓外科の女性教授になったので、同僚が彼女の成功をうらやみ、嫉妬したに違いない。ジャハーンギーリー教授は、毎年、300件の手術を行ない、死亡率の英国の平均は7%~15%なのに、ジャハーンギーリー教授が執刀した手術の死亡率は1.2%という驚異的な結果を出している。そして、夫は世界的に有名なオーケストラ指揮者である。

実は、セント・ジョージ病院はいろいろな問題を抱えていて、政府機関(?)の査察が入ることになった。その時、病院内の職員は査察官に何もしゃべるなとのかん口令が引かれた。そして、ジャハーンギーリー教授が病院の問題点をしゃべったという噂が流れた。そして、国民保健サービス(NHS)元・副医療マイク・ベウィック(Mike Bewick – Wikipedia)が心臓外科医局の「有毒な雰囲気」が患者の死亡の増加につながったとした報告者を発表した。

それで、病院上層部はコクハラ(告発の仕返し)で、イチャモンを付けてジャハーンギーリー教授にアカハラがあったことにして停職処分に科した。この真偽は不明だが、そのような記事があった。

ジャハーンギーリー教授に頭のない人形と動物の死体が送られてきたとの記事もあった。

★その後

2018年末、セント・ジョージ病院の外科病棟に査察が入り、リーダーシップが弱いこと、イジメの文化、および「部族主義」があったと報告した。このことでセント・ジョージ病院は激しい批判を浴びた。

セント・ジョージ病院の外科医の間で、敵対的な対立がますます激しくなり、結局、経験豊富な心臓外科医でサウサンプトン大学病院(University Hospital Southampton)のスティーブン・リバシー(Steven Liversey、写真出典)を心臓外科の責任者になってもらい、問題を解決する方向になった。

2020年8月6日現在、セント・ジョージ病院・心臓外科医局(Cardiac Surgery at St. George’s Hospital)のスタッフは以下の通りである。ジャハーンギーリー教授は在籍し、リバシー医師が心臓外科の責任者である。 → Cardiac Surgery – St George’s University Hospitals NHS Foundation Trust、(2020年8月6日保存版

Mr Steve Livesey (Clinical Director)
Mr V. Chandrasekaran
Professor Marjan Jahangiri
Mr Robin Kanagasabay
Mr Aziz Momin
Mr Justin Nowell
Mr Mazin Sarsam
Mr Paul Govewalla (locum)

リバシー医師とジャハーンギーリー教授の関係は仲良しなのか、険悪なのか、白楽はよくわかりませんが、アカハラ問題とは話が別なので、ここで終わり。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2020年8月6日現在、パブメド( PubMed ))で、マージャン・ジャハーンギーリー(Marjan Jahangiri)の論文を「Marjan Jahangiri[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2003~2020年の18年間の144論文がヒットした。

「Jahangiri M[Author]」で検索すると、1990~2020年の31年間の242論文がヒットした。

★撤回監視データベース

省略

★パブピア(PubPeer)

省略

●7.【白楽の感想】

《1》裏事情

マージャン・ジャハーンギーリー教授(Marjan Jahangiri)のアカハラは、公式には「看護師の1人を怒鳴った」というアカハラ行為である。

しかし、セント・ジョージ病院はジャハーンギーリー教授を停職処分にした。その処分の不当さをジャハーンギーリー教授が裁判に訴えた。裁判所は停職処分を無効とした。

そして、セント・ジョージ病院の最高責任者であるジャクリーン・トッターデル(Jacqueline Totterdell)が「裁判所の判決には失望」と述べるなど、一連の出来事は、ジャハーンギーリー事件は単純なアカハラ事件ではない面を示している。

とはいえ、白楽は、この事件の裏に何があるのか、読みとれない。大規模な経理不正や医療不正などの病院経営上のスキャンダルがあるのではないかと思うが、裏事情は表に出てきていない。

それにしても、ジャハーンギーリー教授は大変である。本文中の文章を以下に再掲する

ジャハーンギーリー教授は欧州で最初に心臓外科の女性教授になったので、同僚が彼女の成功をうらやみ、嫉妬したに違いない。ジャハーンギーリー教授は、毎年、300件の手術を行ない、死亡率の英国の平均は7%~15%なのに、ジャハーンギーリー教授が執刀した手術の死亡率は1.2%という驚異的な結果を出している。そして、夫は世界的に有名なオーケストラ指揮者である

ジャハーンギーリー教授のように、超優秀で著名な人は攻撃の的になりやすい。

記事にはないが「マージャン・ジャハーンギーリー(Marjan Jahangiri)」という名前はフィンランド語である。ジャハーンギーリー教授は、多分、フィンランドからの移民2世・3世なのだろう。英国は階級社会なので、人種差別・出身国差別はかなり根強い。その差別が根底にあるのかもしれない。

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●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Marjan Jahangiri – WikipediaMarjan Jahangiri
② 2018年8月28日の「エド・ライリー(Ed Riley)」記者の「Daily Mail」記事:Leading heart surgeon wins fight to work again after she was suspended by trust | Daily Mail Online
③ 2018年8月28日の「Guardian」記事:Judge overturns south London hospital’s ban on heart surgeon | UK news | The Guardian
④ 2018年9月10日の「Luxury Medical」記事:‘Bully Doctor’ Marjan Jahangiri Wins Court Battle | Luxury Medical
⑤ 2018年8月29日のクリス・スミス(Chris Smyth)記者の「Times」記事(無料部分のみ閲覧):PressReader.com 世界の新聞
⑥ 2019年5月24日の「National Health Executive」記事:Trust apologises for heart surgeon’s exclusion amidst a ‘toxic’ row inside a ‘feuding’ cardiac unit
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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