ドミトリー・クズネツォフ、Дми́трий Кузнецов(Dmitrii Kuznetsov)(ロシア)

2020年2月9日掲載 

ワンポイント:2019年ネカト世界ランキングの「4」の「第5位」に挙げられたので記事にした。日本や米国では知られていないが、ロシアでは有名な事件のようである。1989年11月(34歳)、クズネツォフは「1989年のInt J Neurosci.」論文を発表した。5年後の1994年(39歳)、スウェーデンのウプサラ大学(Uppsala University)のダン・ラーハンマー・教授(Dan Larhammar)が、論文内容がデタラメだと指摘した。論文出版から30年後、ラーハンマー・教授の指摘から25年後、2019年11月8日(64歳)、論文は撤回された。なお、クズネツォフの撤回論文は1報だが、デタラメ論文を多数発表している。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ドミトリー・クズネツォフ(Dmitrii Kuznetsov、Dmitrii A Kuznetsov、クズネツォフはKouznetsov、 Kouznetsoff、Kuesnetzov、Kznetsov、Kuznetcefとも記載される、ORCID iD:?、写真出典)は、ロシア国立医科大学(ピロゴフ・ロシア国立研究医科大学、Pirogov Russian National Research Medical University)・ナノバイオテクノロジー科・教授で、専門は生化学である。156報の科学論文を出版し、12の国際特許を登録している。

1989年11月(34歳)、クズネツォフは「1989年のInt J Neurosci.」論文を発表した。所属はデルフィソン事業部研究所(DELFISON Division Laboratories, Inc)で、この研究所の研究員だったと思われる。

クズネツォフの「1989年のInt J Neurosci.」論文は、端的に言えば「生物進化と神」の論文である。

1994年(39歳)、論文出版の5年後、スウェーデンのウプサラ大学(Uppsala University)のダン・ラーハンマー・生物学教授(Dan Larhammar)は、クズネツォフの「1989年のInt J Neurosci.」論文は、データや引用文献などあちこちがねつ造だと指摘した。

2019年11月8日(64歳)、論文出版の30年後、学術誌・「Int J Neurosci.」編集部は、ラーハンマー・教授の主張に同意し、「1989年のInt J Neurosci.」論文を撤回した。

30年後の撤回に対して、クリストファー・ワンジェク(Christopher Wanjek)が「撤回して!:2019年の最悪な科学上の撤回」の第5位に挙げた(2019年ネカト世界ランキングの「4」の「第5位」)。

なお、クズネツォフ事件を調べていくと、クズネツォフのデタラメ論文は「1989年のInt J Neurosci.」論文に限らず、他のテーマでもデタラメ論文をたくさん発表していた。つまり、クズネツォフは連続ネカト者(多数ネカト者)と思われる。

ロシア国立医科大学(ピロゴフ・ロシア国立研究医科大学、Pirogov Russian National Research Medical University)。写真出典

ロシア国立医科大学(ピロゴフロシア国立研究医科大学、Pirogov Russian National Research Medical University)。写真出典

  • 国:ロシア
  • 成長国:ロシア
  • 医師免許(MD)取得:モスクワ医科大学
  • 研究博士号(PhD)取得:モスクワ大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1955年。仮に1955年1月1日生まれとする
  • 現在の年齢:69 歳?
  • 分野:生化学
  • 最初の不正論文発表:?
  • 本記事での不正論文発表:1989年(34歳)
  • 発覚年:1994年(39歳)
  • 発覚時地位:デルフィソン事業部研究所(DELFISON Division Laboratories, Inc)・研究員(?)
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はウプサラ大学(Uppsala University)・生物学教授のダン・ラーハンマー(Dan Larhammar)で、学術誌に公益通報
  • ステップ2(メディア):「Scientist」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②所属機関は調査していない
  • 所属機関・調査報告書のウェブ上での公表:なし。所属機関は調査していない
  • 所属機関の事件への透明性:調査していない(✖)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:1報撤回だが、多数ありそう
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Дмитрий Анатольевич Кузнецов (преподаватель РНИМУ им. Пирогова) » СтудИзба

  • 生年月日:1955年。仮に1955年1月1日生まれとする
  • 1978年(23歳):モスクワ医科大学(セチェノフ大学、First Moscow State Medical University、Sechenov University)で学士号取得:医学
  • 1981年(26歳):モスクワ大学(M. V. ロモノーソフ・モスクワ国立総合大学、Moscow State University)で研究博士号(PhD)を取得:生化学
  • 19xx年(xx歳):デルフィソン事業部研究所(DELFISON Division Laboratories, Inc)・研究員(?)
  • 1983年(28歳):レーニン・コムソモール賞(премияЛенинскогокомсомола)を受賞
  • 1988年(33歳):ソ連国家賞を受賞
  • 1989年(34歳):「科学博士」(ドイツの教授資格と同等)取得
  • 1989年(34歳):本記事で問題視している「1989年のInt J Neurosci.」論文を発表
  • 1990-1993年(35-38歳):米国の南カリフォルニア大学・サンディエゴ校・客員教授
  • 1993-1995年(38-40歳):米国のコロラド大学・ボルダー校・教授(?)
  • 1995-1998年(40-43歳):米国のイェール大学・ニューヘブン校・教授(?)
  • 1999年(44歳):ロシアのニコライ・セミョーノフ化学物理学研究所(N. N. Semenov Institute for Chemical Physics in Moscow)・主任研究員
  • 2008年(53歳):ロシア国立医科大学(ピロゴフ・ロシア国立研究医科大学、Pirogov Russian National Research Medical University)・ナノバイオテクノロジー科・教授
  • 2019年(64歳):30年前に出版した「1989年のInt J Neurosci.」論文が撤回された

●5.【不正発覚の経緯と内容】

クズネツォフの1989年の「生物進化と神」の論文(「1989年のInt J Neurosci.」論文)を、クリストファー・ワンジェク(Christopher Wanjek)が「撤回して!:2019年の最悪な科学上の撤回」の第5位に挙げた(2019年ネカト世界ランキングの「4」の「第5位」)。それで、ネカトブログの記事にした。

★評価されていた生化学者

ドミトリー・クズネツォフ(Dmitrii Kuznetsov)はロシアの生化学者で、本記事で問題とする「1989年のInt J Neurosci.」論文を発表した時、所属はデルフィソン事業部研究所(DELFISON Division Laboratories, Inc)だった。ただ、この組織は現在存続していないらしく、白楽は実体をつかめなかった。

2008年(53歳)、ロシア国立医科大学(ピロゴフ・ロシア国立研究医科大学、Pirogov Russian National Research Medical University)・ナノバイオテクノロジー科・教授に就任した。

クズネツォフは、学術誌「British Journal of Medicine and Medical Research」と「International Research Journal of Pure and Applied Chemistry」の編集長だった。両学術誌とも2011年創刊である。

なお、アイルランドのトリニティ・カレッジ (ダブリン大学、Trinity College Dublin)のマイケル・コイー教授(Michael Coey、写真出典)は、ネカト行為の疑いがあったクズネツォフを編集長に任命した出版社を非難している。

クズネツォフは他の研究テーマでもねつ造・改ざん論文を多数発表している。ロシアではそれなりの地位に就いた研究者だが、連続ネカト者(多数ネカト者)と思われる。

★生物進化と神

1989年11月(34歳)、ドミトリー・クズネツォフ(Dmitrii Kuznetsov)は、「1989年のInt J Neurosci.」論文を発表した。

キリスト教の創造論者 の若い地球説(Young Earth creationism)によると、神は6千~1万年前に地球を創造した。創造の6日目に、神は進化理論の欠点を示すようになるリボヌクレオチドで3種類の森林ハタネズミ(timber vole)を創造した。これが生命の起源、ということになっている。

クズネツォフは「1989年のInt J Neurosci.」論文で、これら3つの近縁の森林ハタネズミ(timber vole)が、神が創造したと想定されるリボヌクレオチドを持っていると主張した。この発見は、「異なる生命の起源に関する創造論者の概念」を支持している、と論文に書いた。

1994年(39歳)、論文出版の5年後、スウェーデンのウプサラ大学(Uppsala University)・生物学教授のダン・ラーハンマー(Dan Larhammar、写真出典)は、クズネツォフ論文はねつ造だと学術誌に発表した。なお、ラーハンマーは2018年にスウェーデン王立科学アカデミーの会長になった人物なので信用度は高い。
 → 1994年3月25日のダン・ラーハンマー(Dan Larhammar)の指摘(以下は一部):Lack of Experimental Support for Kuznetsov’s Criticism of Biological Evolution: International Journal of Neuroscience: Vol 77, No 3-4

 

ラーハンマーは次のように書いている。

要約すると、クズネツォフの実験的概念はあいまいで、彼のアプローチは科学的手法に反し、結果は実証できません。クズネツォフが実験手法として引用した論文が、メドライン(Medline)などに掲載されていません。他の多くの参考文献にも問題があります。また、論文に引用された科学者に連絡しても、著者に連絡ができないことが多数ありました。これらのことから、クズネツォフの論文「生物進化の現代分子遺伝学的の概念」の内容には、科学的根拠がまったくありません。

ラーハンマーの指摘を受け、学術誌「Int J Neurosci.」は、でクズネツォフを編集員から解任した。しかし、論文は撤回しなかった。

どうして撤回しなかったのか?

不明である。

2019年11月8日(64歳)、論文出版の30年後、学術誌・「Int J Neurosci.」編集部は、ラーハンマーの主張に同意し、「1989年のInt J Neurosci.」論文を撤回した。 → 2019年11月8日の撤回公告:RETRACTED ARTICLE: In Vitro Studies of Interactions Between Frequent and Unique Mrnas and Cytoplasmic Factors from Brain Tissue of Several Species of Wild Timber Voles of Northern Eurasia, Clethrionomys Glareolus, Clethrionomys Frater and Clethrionomys Gapperi: a New Criticism to a Modern Molecular-Genetic Concept of Biological Evolution: International Journal of Neuroscience: Vol 49, No 1-2

どうして撤回したのか?

こちらも不明である。

というわけではない。

2018年、「1989年のInt J Neurosci.」論文が撤回されていないことにラーハンマー教授は気が付いて、驚いた。この時、スウェーデン科学評議会のネカト調査委員会(Swedish Research Council’s Committee for Investigation of Misconduct in Science)の委員になっていたラーハンマー教授 は、許せない。

2018年10月、学術誌「Int J Neurosci.」 と8回もメールのやり取りをし、ようやく撤回させたのである。

クズネツォフの「生物進化と神」論文の撤回を、クリストファー・ワンジェク(Christopher Wanjek)が「撤回して!:2019年の最悪な科学上の撤回」の第5位に挙げた(2019年ネカト世界ランキングの「4」の「第5位」)。

白楽は、それで、本記事を書いた。

なお、クズネツォフは、以下の論文のネカト者としても知られている。

★「トリノの聖骸布」(Shroud of Turin)

クズネツォフは、「トリノの聖骸布」(Shroud of Turin)の分析でも複数のネカト論文を出版していた。「トリノの聖骸布」(Shroud of Turin)は、学術界では中世のものだとされているが、クズネツォフは2,000年前のイエスの死の布だと主張していた。

この問題では、イタリアの教師・ジャン・マルコ・リナルディ(Gian Marco Rinaldi、写真出典)がクズネツォフのネカトを詳細に検証し、報告している(【主要情報源】④)。

1996年の「BSTS Newsletter 44 (1996)」でイアン・ウィルソン(Ian Wilson)もクズネツォフのことを言及している: British Society for the Turin Shroud – Issue #44

「トリノの聖骸布」(Shroud of Turin)とはどういう問題か?

以下、「アルベルト・カルピンテーリ(Alberto Carpinteri)」の記事から修正引用する。
 → 物理学:「錯誤」:アルベルト・カルピンテーリ(Alberto Carpinteri) (イタリア) | 研究者倫理

―――引用始め

「トリノの聖骸布」は、キリスト教では重要なものだ。

聖骸布(せいがいふ、Holy Shroud)は、キリスト教でいう聖遺物の一つで、イエス・キリストが磔にされて死んだ後、その遺体を包んだとされる布。イエス・キリストの風貌を写したという布には、聖ヴェロニカの聖骸布、自印聖像など、複数あったといわれるが、トリノの聖ヨハネ大聖堂に保管されている「トリノの聖骸布」(Shroud of Turin) だけが現存している。(聖骸布 – Wikipedia

放射性炭素での年代測定では、「トリノの聖骸布」は1260~1390年のものとされている。以下、引用しよう。

考古学でもっとも信頼をもって受け止められているこの炭素の放射性同位体(炭素14)の崩壊率による年代測定法。聖骸布の上部左端数センチを切り取り、オックスフォード(英国)、チューリッヒ(スイス)、トゥーソン(アリゾナ、米国)にて測定が行われた。

結果は、「1260~1390年のもの」。

しかし、これには疑問を唱える学者も多い。閉ざされた空間にある遺跡にある遺物の鑑定とは異なり、常に移動し、一定の保存状態にあったわけではない聖骸布は、たとえば火災にあった際に一時的に炭素の多い状態に置かれたわけで、それが結果に影響したのではないか。

また、布の半分以上に現在も生存し続けているバクテリアが生成したバイオプラスティック様被膜が結果に誤差をもたらした、など結果の信憑性を疑う批判がされている。いずれにせよ、聖骸布の真偽については依然として議論と研究がつづいている。(キリスト教最大の謎・聖骸布博物館を訪れる | アーモイタリア旅行ガイド保存版

カルピンテーリの撤回論文は次のように述べている(RETRACTED ARTICLE: Is the Shroud of Turin in relation to the Old Jerusalem historical earthquake? – Springer)。

キリストが死亡した西暦33年にマグニチュード8.3以上の大地震が起こった。ピエゾ核融合理論によると、この地震で地球の地殻から中性子線が生成した。この時、聖骸布にも炭素14の同位体が増えたので、放射性炭素を測定することで、聖骸布の存在年を決定できると述べている(Shroud of Turin: Could Ancient Earthquake Explain Face of Jesus?保存版)。

―――引用終わり

★磁場がATP生成に影響?

2006年(51歳)ごろから、クズネツォフはモスクワ大学(Moscow University)・化学科のアナトリー・ブチャチェンコ教授(Anatoly L. Buchachenko、写真出典も)とともに、ATPの生成が磁場または磁気マグネシウム同位体の影響を受けるという論文を多数発表している。例、以下の「2006年のMol Biol (Mosk)」論文。

トリニティ・カレッジのマイケル・コイー教授(Michael Coey、写真出典、前出)は、クズネツォフの実験結果を再現できなかった。他の研究室もクズネツォフの実験結果を再現できなかった。再現できない原因は、論文データの人為的エラーではなく、データのねつ造・改ざんだと、述べている。

クズネツォフの実験結果を再現できなかったというコイー教授の「2012年のProc Natl Acad Sci U S A」論文の書誌情報:

まとめると、ドミトリー・クズネツォフ(Dmitrii Kuznetsov)は複数の研究テーマで、ねつ造・改ざん論文を多数発表してきた連続ネカト者(多数ネカト者)と思われる。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

クズネツォフは、1977年以来、156の科学論文を出版し、12の国際特許を登録した、と紹介されている。

2020年2月8日現在、ところが、パブメド(PubMed)で、ドミトリー・クズネツォフ(Dmitrii Kuznetsov)の論文を「Dmitrii Kuznetsov [Author]」で検索してもヒットした論文数は、0論文だった。

クズネツォフはいくつも論文を書いているのにパブメドではヒットしなかった。どうなっているのだろう? パブメドに登録されいない学術誌にだけ論文を出版したのだろうか? そうではなさそうだ。

なお、「Kuznetsov D[Author]」で検索すると、1962~2020年の59年間の217論文がヒットした。ただし、全部が本記事で問題にしているドミトリー・クズネツォフ(Dmitrii Kuznetsov)の論文なのかどうか、調べていない。

2020年2月8日現在、「Kuznetsov D[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、本記事で問題にした「1989年のInt J Neurosci.」論文を含め2論文が撤回されていた。

★撤回論文データベース

2020年2月8日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでドミトリー・クズネツォフ(Dmitrii Kuznetsov)を「Kuznetsov, Dmitrii A」で検索すると、本記事で問題にした「1989年のInt J Neurosci.」論文・1論文がヒットし、1論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2020年2月8日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ドミトリー・クズネツォフ(Dmitrii Kuznetsov)の論文のコメントを「Kuznetsov」で検索すると、本記事で問題にした「1989年のInt J Neurosci.」論文・1論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》連続ネカト者の別の事件 

ドミトリー・クズネツォフ(Dmitrii Kuznetsov)は複数の研究テーマで、ねつ造・改ざん論文を発表してきた連続ネカト者(多数ネカト者)である。

学術界以外でもクズネツォフは事件を起こしている。

1997年12月(42歳)、クズネツォフは米国で偽造小切手を使用したことで逮捕された。この時、10万ドル(約1千万円)で保釈されたが、6か月の保釈中に米国からモスクワに逃亡した。 → British Society for the Turin Shroud – Issue #47の記事「From Connecticut, USA Russian Scientist Dr. Dmitri Kouznetsov arrested」。

さらに、2001年1月(46歳)、アメリカの24歳の学生ジョン・トービン(John Tobin)がロシアのヴォロネジ市で麻薬所持により逮捕された事件にも関与していた。トービンは実は米国の国防言語研究所(U.S. Defense Language Institute)で学び、ロシアに送り込まれた米国のスパイだった。ジョージ・ブッシュ大統領とプーチン大統領の政治的決着で釈放されるのだが、このスパイ事件に、クズネツォフも関与していた。
 → 2001年8月7日記事:Tobin Gets an Early Release From Prison | The St. Petersburg Times | The leading English-language newspaper in St. Petersburg

なお、ドミトリー・クズネツォフは経歴詐称している。

1987年から88年にモスクワの「Laserinvest」会社の生化学研究所長と名乗っていた。しかし、「Laserinvest」会社・生化学研究所は架空の研究所で、存在が確認されていない。

本記事で問題視した「1989年のInt J Neurosci.」論文を出版した時、モスクワのデルフィソン事業部研究所(DELFISON Division Laboratories, I nc)所属と記載している。デルフィソン事業部研究所も架空の研究所で、存在が確認されていない。

1993年、モスクワの「物理化学的研究法研究室」の所長と称していたが、ここも架空の研究所で、存在が確認されていない。

他にも架空の研究機関を使用している。

それでも、ロシアの学術界で、それなりに評価されてきた生化学者である。なかなか不思議な人物である。イヤ、不思議なのは、人物というより、それを許容しているロシアの学術界かもしれない。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

① 2019年12月31日のクリストファー・ワンジェク(Christopher Wanjek)記者の「Live Science」記事:Take That Back: The Top Scientific Retractions of 2019 | Live Science
② ウィキペディア・ドイツ語版:Dmitri Anatoljewitsch Kusnezow – Wikipedia
③ 2019年11月11日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Thirty years after publication, a paper cited by creationists is retracted – Retraction Watch
④ 2013年7月のジャン・マルコ・リナルディ(Gian Marco Rinaldi)記者の記事:(1):(PDF) The Kuznetsov dossier 1: Dmitry Kuznetsov, the imaginary scientist (2013 updated translation) | Gian Marco Rinaldi – Academia.edu、(2):(PDF) The Kuznetsov dossier 2: fraud in experimental reports (2013 updated translation) | Gian Marco Rinaldi – Academia.edu、(3)2002年8月24日:Dossier Kouznetsov
⑤ 2013年7月2日のケリー・グレンズ(Kerry Grens)記者の「Scientist」記事:Accused “Fraudster” Heads Two Journals | The Scientist Magazine®
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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