7-123 ネカト告発で34億円ゲット(米)

2023年7月25日掲載 

白楽の意図:日本でのネカト告発は危険な無償ボランティアである。告発はマレな上、大学のネカト対処怠慢・ネカト調査不正が横行するので、学術界の研究不正は減らず、研究不正大国の汚名が返上される気配がない。本記事では、米国のデューク大学のネカトとネカト対処怠慢・隠蔽を提訴し、34歳で34億円をゲットした米国のジョセフ・トーマス(Joseph Thomas)を紹介する。このシステムを、是非、日本に導入して欲しい。今回、複数の論文をまとめたが、3つ挙げる。「2019年3月の司法省」論文、アイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)の「2019年3月の撤回監視(Retraction Watch)」論文、エドワード・マーティン(Edward Martin)の「2019年8月のBusiness North Carolina」論文。

ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.日本語の予備解説
2.ネカト告発で34億円ゲット
3.動画
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
ーーーーーーー

【注意】

学術論文ではなくウェブ記事なども、本ブログでは統一的な名称にするために、「論文」と書いている。

「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。

記事では、「論文」のポイントのみを紹介し、白楽の色に染め直し、さらに、理解しやすいように白楽が写真・解説を加えるなど、色々と加工している。

研究者レベルの人が本記事に興味を持ち、研究論文で引用するなら、元論文を読んで元論文を引用した方が良いと思います。ただ、白楽が加えた部分を引用するなら、本記事を引用するしかないですね。

●1.【日本語の予備解説】

★2017年2月5日:エリン・ポッツ=カント(Erin N. Potts-Kant)(米) | 白楽の研究者倫理

2017年2月5日掲載。

ワンポイント:2013年(32歳)に研究費の横領で逮捕され、大学を辞職(解雇?)した若い女性テクニシャンに、同年、データねつ造・改ざんが発覚した。2015年、大学がそのねつ造・改ざんを秘匿していたとして、受領した研究費総額・2億ドル以上(約200億円以上)で、その3倍を政府へ返還せよとの裁判が、大学を被告に起こされ、係争中。2017年2月4日現在、撤回論文数が16報で、世界「撤回論文数」ランキングの第29位である。また、「2016年ランキング」の「The Scientist」誌の2016年「論文撤回」上位10論文:2016年12月21日にリストされた(8番目)。

●2.【ネカト告発で34億円ゲット】

この記事は、エリン・ポッツ=カント事件のネカト遭遇者・告発者であるジョセフ・トーマス(Joseph Thomas)が、34歳で34億円をゲットした話で、「エリン・ポッツ=カント(Erin N. Potts-Kant)(米) | 白楽の研究者倫理」から内容と文章を多量に流用した。

用語統一:混乱を避けるため、英語に対する日本語を以下のように使用する。併記することもある。

  • False Claims Act(31 U.S. Code § 3730)の日本語訳は「不正請求禁止法」を使う。かつてよく使われ、白楽も使っていた「虚偽請求取締法」は使わない
  • qui tam action の日本語訳は「キイタム訴訟」を使う。かつてよく使われ、白楽も使っていた「私人による代理訴訟」は使わない

★ジョセフ・トーマス(Joseph Thomas)

ジョセフ・トーマス(Joseph Thomas、写真出典)は、1984年3月26日生まれだから、現在、40歳である。

2008年8月~2014年9月(24~30歳)、米国のノースカロライナ州ダーラムにある私立大学のデューク大学(Duke University in Durham, North Carolina)にテクニシャンとして勤務した。

トーマスは、ポッツ=カントのネカトに遭遇・告発したネカト第一次追及者である。

2015年11月、トーマス(31歳)は、デューク大学がポッツ=カントのネカトを秘匿していたと、①デューク大学、②ポッツ=カント、③マイケル・フォスター教授、の3者を被告に、不正請求禁止法(False Claims Act) に基づくキイタム訴訟(qui tam action)を起こした。

2013年の時点で、デューク大学はポッツ=カントのネカトを知っていたのに、それに適切に対処しなかったと、トーマスは訴えた。

そして、3年4か月後の2019年3月25日(34歳最後の日)、裁判で和解が成立し、3,375万ドル(約33億7,500万円≒ 34億円)を手に入れた。

この額は、大学に対する不正請求禁止法違反の和解金としては過去最高だった。

★エリン・ポッツ=カント事件

以下、ポッツ=カント事件の概要を示す。 → 「エリン・ポッツ=カント(Erin N. Potts-Kant)(米) | 白楽の研究者倫理」の修正転用。

エリン・ポッツ=カント(Erin N. Potts-Kant)(米)

エリン・ポッツ=カント(Erin Nicole Potts-Kant、1981年頃生まれ、顔写真は未入手)は女性で、ノースカロライナ大学チャペルヒル校(University of North Carolina at Chapel Hill)の学部を卒業した。

 2006年1月、ポッツ=カント(24歳)は、米国の名門私立大学であるデューク大学(Duke University in Durham, North Carolina)・肺疾患研究グループのマイケル・フォスター教授(William Michael Foster 、顔写真は未入手)の研究室で、テクニシャンになった。

仕事は、ディーゼル燃料に含まれる化学物質などの公害物質をマウスに与え、マウス肺が反応する微小な変化を検出する作業だった。

ポッツ=カントは、ボスの求めに応じて、異常に綺麗なデータをコンスタントに提供した。

それで、フォスター教授に可愛がれ、テクニシャンの身分としては厚遇され、2011~2015年の7報の論文で共著者にしてもらった。 → Potts-Kant EN AND Foster WM – Search Results – PubMed

フォスター教授のNIH研究費を1つ示すと以下のようだ。2007年、1件で167万ドル(約1億6,700万円)も受領してた。

ポッツ=カント事件の詳細を書く記事ではなかった。

事件の経緯を箇条書きにしよう。以下のようだ。

  • 2006年1月、デューク大学がポッツ=カント(24歳)を雇用
  • 2007年、ポッツ=カントがデータねつ造・改ざんを始めた
  • 2011年、健康福祉省がデータ改ざんがあるとデューク大学に指摘した
  • 2013年3月、ポッツ=カントは横領罪でデューク大学を辞職(解雇?)
  • 2013年4月、デューク大学はポッツ=カントの共著者にネカトを告発しないようにとする指針を所属研究者に配布した
  • 2013年6月、デューク大学はNIHに研究報告書(含・ポッツ=カント)を送付
  • 2013年秋、デューク大学はNIHに研究助成金更新書(除・ポッツ=カント)を送付
  • 2015年11月、デューク大学はポッツ=カントのネカトを秘匿していたと、トーマスがキイタム訴訟で提訴した
  • 2015年xx月、マイケル・フォスター教授(60代?)は退職した(retired)

トーマスは、24歳の2008年8月、デューク大学・細胞生物学科にテクニシャン(データ分析者)として勤務した。4年後の2012年(28歳)、肺疾患研究グループに加わった(2014年9月に退職)。

肺疾患研究グループのボスはマイケル・フォスター教授(William Michael Foster)で、トーマスは、ポッツ=カントとペア―を組んで仕事をした。

すぐに、ポッツ=カントの仕事に疑いを抱くようになった。というのは、ポッツ=カントの実験には失敗がなく、常にボスの望むデータを出し、出したデータは異常に綺麗で「出来が良すぎた」。

早い話、ネカトです。

「ポッツ=カントは就職した翌年の2007年(25歳)からデータをねつ造・改ざんしていたと思う」と、2007~2011年に助教授だったジュリー・レッド(Julie Ledford、写真出典)は、後に述べている。

マイケル・フォスター教授は、ねつ造・改ざんデータを承知で、NIHやEPA(Environmental Protection Agency 、米国環境保護庁)の研究費申請書に、ポッツ=カントが出したデータを記載していた。

ねつ造・改ざんデータは、8千万ドル(約80億円)以上の研究費をデューク大学にもたらした。

さらに、デューク大学に所属していない研究者の研究費申請書にもそのねつ造・改ざんデータが使用され、約1億2千万ドル(約120億円)もの研究費が受領されていた。

★司法省

2015年11月にトーマスが訴えた3年4か月後の2019年3月25日(34歳最後の日)、裁判が決着した。

デューク大学は米国政府と和解し、不正に受給した研究費の3倍、1億1250万ドル(約112億5000万円)を政府に返還するという妥協をした。 → 2019年3月25日の司法省発表 :Office of Public Affairs | Duke University Agrees to Pay U.S. $112.5 Million to Settle False Claims Act Allegations Related to Scientific Research Misconduct | United States Department of Justice

和解の条件は、米国政府は詐欺行為に対してデューク大学を刑事告発しない。その代わりにデューク大学は金銭的な償還と罰金を払うこと、だった。膨大な裁判にもかかわらず、デューク大学は法的な有罪を認めなかった。

司法省の発表(プレスリリース)には「Mr. Thomas will receive $33,750,000 from the settlement.」とある。つまり、この和解で、原告者のジョセフ・トーマスは返還額の30%、3,375万ドル(約33億7500万円≒ 34億円)を手に入れることになったのだ。

なお、デューク大学は毎年、NIH と EPA(米国環境保護庁) から数百件の助成金として数百万ドル(数億円)を受領していた。

デューク大学の2019年の運営予算は約 27 億ドル(約2700億円)で、2018年、NIHの助成金受領額は全米第8位で、800件以上、総額4億7,500万ドル(約475億円)を獲得していた。

従って、返還金の1億1250万ドル(約112億5000万円)は、その年の大学運営年間予算の約4%、その前年に獲得したNIHの助成金受領額の24%に相当する。デューク大学にとっては大きな痛手である。

健康福祉省(HHS)・監査総監室(Office of Inspector General)・特別捜査官(Special Agent in Charge)のモーリーン・ディクソン(Maureen R. Dixon)は「デューク大学は2006~2018年の13年間、ねつ造・改ざんデータが記載された30件の研究費申請書を提出し、助成金を不正に受給していた」「デューク大学は不正を承知で、NIHに数百万ドル(数億円)の補助金を申請していた」と主張した。

環境保護庁・第4地域長官代理(EPA Acting Region 4 Administrator)のメアリー・ウォーカー(Mary S. Walker、写真出典)は、「今回の和解は、研究助成金の獲得過程で詐欺や不正を許さないという強いメッセージを送ることになります」「補助金を適正に配分する健全なシステムを確保するため、引き続き適切な法的措置を講じていきます」と述べた。

不正請求禁止法(False Claims Act)とキイタム訴訟

消費者庁の資料によると、不正請求禁止法(False Claims Act)は以下のようだ。

連邦政府に対する不正請求等を知った者が、当該情報を元に連邦政府のために、不正請求等を行っている者に対して、民事訴訟(キイタム訴訟)を提起し、これにより政府が得た収益の最大 30%を報償金として得ることができるとするものである(31 U.S.C§3730(d)(2))。また、訴訟を提起された被用者等が労働者等に対し不利益取扱いをすることを禁止し、不利益取扱いを受けた者は、同等の地位での復職や遡及賃金の倍額の請求等が可能である(31 U.S.C§3730(h))(出典:立法後の米国及び欧州における公益通報者保護制度の状況の2ページ目)。

「キイタム訴訟(私人による代理訴訟、qui tam action)」は、「goo国語辞書」によると、以下のようだ。

《qui tam action》米国の訴訟制度の一つで、政府との契約の相手方である企業や個人の不正を発見した者は、その相手方を被告として賠償を求める民事訴訟を提起できる、というもの。

[補説]キイタム(qui tam)は、「国王および自分自身のために訴える者」(qui tam pro domino rege quam pro se ipso in hac parte sequitur)というラテン語の冒頭の2語。

キイタム訴訟の来歴を調べると、Katherine Eban著(丹澤和比古、寺町朋子・翻訳)・『ジェネリック医薬品の不都合な真実』(翔泳社, 2021/08/26)に次のようにある(出典)。

★成功率

不正請求禁止法(False Claims Act)で大学を被告にネカト裁判を起こすケースは、米国で何件あってその成功率はどの程度だろう?

2016年9月1日時点では、4件が表になっている(本件は2019年なので、もちろん、入っていない)。4件の内、原告側は2件で勝訴、2件で敗訴している(以下の表、英語のママでスミマセン)。 → 2016年9月1日のアリソン・マクック(Alison McCook)の「Science」記事:Whistleblower sues Duke, claims doctored data helped win $200 million in grants | Science | AAAS

勝訴した2例+1例。全部、コーネル大学の事件である。

2009年、告発したタリン・レズニック(Taryn Resnick)はコーネル大学のロレーン・グダス教授(Lorraine Gudas)のネカト事件で、260万ドル(約2億6千万円)の30%である78万ドル(約7,800万円)を得た。 → 2009年3月24日記事:C.U. Will Pay $2.6M in Fraud Case

2012年、告発したダニエル・フェルドマン(Daniel Feldman)はコーネル大学のネカト事件で、74万ドル(約7,400万円)を得た。 → 2012年10月21日記事: After Court Says Weill Cornell Medical College Defrauded Government, University Pays $1.6 Million | The Cornell Daily Sun

2005年、告発したキリアキ・サラフォグルー(Kyriakie Sarafoglou)は、コーネル大学が440万ドル(約4億4千万円)の示談金を払っているので、最大30%の132万ドル(約1億3,200万円)を得たと思われる。 → 2009年3月24日記事:C.U. Will Pay $2.6M in Fraud Case

なお、白楽は、米国では、ネカト関係で何件の不正請求禁止法の訴訟があり、何件勝訴し、告発者が獲得した平均額がいくらだったか、という調査を十分にしていない(その内、徹底的に調べたいと思っているが、ネカト事件は山のようにあるし、時間と体力が・・・。どなかた、調べて教えてくれませんかね?)。

司法省の発表では、ネカトを含めた全分野の不正請求禁止法の訴訟は、米国全体で、 2022年度、20 億ドル(約2,000億円)だというから、相当な額である。 → 2023年2月7日記事: Office of Public Affairs | False Claims Act Settlements and Judgments Exceed $2 Billion in Fiscal Year 2022 | United States Department of Justice

全くラフな計算で30%に相当する約600億円が告発者に支払われば、告発はかなり活発になるだろう。ウフフ・・・。

以下の示談の統計表「fy2022_statistics_0.pdf」を見ると、2022年、キイタム訴訟は全体で新規に652件起こっていて、内、健康福祉省関連が最多で 371件だった。

法律事務所も成功したリストを公表している。そのリストをどう解読するか、白楽、思案中。例えば → フィリップス&コーエン法律事務所:Whistleblower Cases – Examples & Lawsuits | Phillips & Cohen

★補遺

  1. 本件の法廷記録は「トーマス対デューク大学・他、事件番号 1:17-cv-276 (MDNC)」(Thomas v. Duke University, et al., Case No. 1:17-cv-276 (M.D.N.C.))」である。 → United States ex rel. Thomas v. Duke Univ., 1:17-CV-276 | Casetext Search + Citator
  2. ジョセフ・トーマス(Joseph Thomas)の弁護団には、実弟のジョン・トーマス(John Thomas、写真出典)が加わっていた。実弟のジョン・トーマスは、バージニア州ロアノークのホワイトカラー犯罪弁護士で、科学法の専門家、海兵隊予備役弁護士でもある。

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
告発は重要という講演動画:「How whistle-blowers shape history | Kelly Richmond Pope – YouTube」(英語)12分1秒。
TED (チャンネル登録者数 2310万人) が2018/11/03 に公開

●7.【白楽の感想】

《1》日本に導入 

今回のことを日本に当てはめると、どーなるか?

ーーー

例えば、A大学のB研究者が、日本政府の研究助成機関である日本学術振興会から3年間で2,000万円の研究費をもらった、としよう。

研究を終えた1年後、B研究者が発表した論文のほとんどにデータねつ造があると、ネカトハンターのC氏が告発した。

A大学が調査したところ、C氏の告発は正しかった。

A大学はB研究者を懲戒解雇し、データねつ造に基づいた研究論文の撤回を要請したが、その論文に使用した研究費2,000万円を日本学術振興会に返還せざるを得なかった。

米国方式だと罰金が加算され、返還金は3倍の6,000万円になる。

ここで、この告発をしたC氏は6,000万円の30%、つまり、1,800万円をもらえる。

簡単に言えばこのようなルールだ。

ーーー

もっと、現実的な事件で考えよう。

日本学術振興会の発表によると、麻布大学・獣医学部・元准教授の和久井 信は、18論文でねつ造・改ざんをした。日本学術振興会は、この18論文の研究に支給した以下の研究費を返還するよう命じた。 → 2023年04月14日記事:科学研究費助成事業に係る研究活動の不正行為について_2023-2

平成30年度~令和4年度 4,290千円
平成25年度~平成29年度 5,460千円
平成21年度~平成24年度 5,070千円
平成15年度~平成17年度 3,800千円
平成12年度~平成14年度 4,000千円
平成9年度~平成11年度 3,400千円

総額2,602万円を返還するように命じられた。

これを米国モデルに当てはめると以下にようになる。

大学にネカトだと告発した人が、自動的に2,602万円の30%である780万円6千円をもらえる。

米国方式だと罰金が加算され、返還金は3倍の7,806万円になる。告発した人はその30%である 2,341万8千円をもらえる。

なお、和久井事件のネカト調査書では、大学に告発した人は外部の人で、氏名は記載されていない。

ーーー

和久井事件の損得計算。

国(つまり、日本学術振興会、最終的には国民)は無駄に使用された研究費を回収できてハッピー。

告発した人は、リスクを負って正義を通した代償が もらえてハッピー。

打撃を受けたのは大学である。不正に得た研究費(の3倍)を返還する麻布大学はアン・ハッピー。

脇道]:日本の現行ルールでは、不正と結論されても、不正で得た研究費と同額を返還すれば良いので、不正を奨励している印象を受ける。つまり、見つかれば受領した金額を返せばいいので、マイナスがない。見つからなければもらい得になる。不正の処罰にはマイナス処罰が必要で、米国のように、罰金込みで返還金を3倍にすべきだ。

ーーー

本道に戻る。

このシステムの良い点は、

  1. ネカトハンターが大いに活躍できる。その結果、日本のネカトが激減する。
  2. 大学が研究公正に熱心に取り組むようになる。いい加減だと、大学は大きな損害を被るからである。 → 結果的に、日本の学術界の研究公正が良くなり、研究不正大国の汚名返上になる。

このシステムの問題点は、

  1. 大学はますますネカト調査不正をし、クロをシロと結論する。ますます隠蔽する。

問題点を克服するには、

  1. ネカト調査不正をした大学の調査委員を罰する規則を導入する。
  2. 大学のネカト調査(予備調査と本調査)報告書のウェブ公表を義務化し、かつ、監視する外部の常設公的組織を設立する → 公正取引委員会のようなネカト監視委員会を設立する
  3. いずれ、大学がネカト調査するのではなく、政府のネカト調査機関を設立する。 → 白楽は、捜査権を持つネカト取締部がネカト調査すべきだと考えている。粗い提案だが、麻薬取締部のような組織である。

とにかく、「キイタム訴訟」で返還金は不正額の3倍、返還金の30%を告発者に支払うシステム、日本に導入しませんかね。

《2》日本は科学技術

デューク大学のネカト調査不正を提訴し、34歳で34億円をゲットした米国のジョセフ・トーマス(Joseph Thomas)のことを書いたが、日本では、大学のネカト調査不正が横行している。

政府も産業界も学術研究者も、本気で不正を防止しようとしない。言葉だけである。

白楽が自分で2件の「大学のネカト調査不正」事件を経験した。

最近では、武蔵大学が大内裕和・教授の盗用を「故意によらない誤り」としてシロと結論した。とてもオドロイタ。

少数の見識のある人は問題視しているが、責任ある立場の人は誰も「大学のネカト調査不正」を止めようとしない。

以下のように事件・事故が頻発している日本の科学技術の質の急速な低下は、貧困な研究公正文化と関連していると思う。

以下、2023年4月13日~2023年7月24日の3か月余りの新聞記事の見出しを適当に選んだ。網羅的ではない。

  • ジェネリック医薬品、メーカー再編促し安定供給を強化 → つまり、安定供給できていない
  • JR山手線、全線で運転見合わせ…再開は正午頃までかかる見通し
  • ディスプレーの国産復権遠く…中韓に後れ、再編も不発
  • 医療専業オリンパス、米FDA査察にデータ提出せず、3回も警告書
  • 神戸徳洲会病院でカテーテル手術後に複数の患者が死亡
  • 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の能代ロケット実験場内で爆発
  • 静岡市のバイパス工事で橋桁の落下
  • JR東日本でモバイルSuicaなどの障害
  • 原子力機構、茨城で今年3件目の火災
  • HAKUTO-Rの月着陸船、月面に衝突
  • 自動車のEV市場を中国が席巻 苦境の日本
  • 日暮里・舎人ライナーの運転見合わせは3日連続
  • 北朝鮮の弾道ミサイルにJアラートが発令直後に訂正

上記のように、日本は科学技術の現場で隠蔽できない重大な問題が頻繁に発生している。惨憺たる実情である。科学技術国はウソで、科学技術国である。

その根本原因を、政府も産業界も学術研究者のほぼ誰も追及しない。その内、もっと悲惨な事件・事故が発生するに違いない。

多分、隠蔽した「現場での重大な問題」は何倍も発生している。

隠蔽した「現場ではない場所での重大な問題」は何倍も、発生している。

国土交通省のサイトに、奈良時代の昔から日本は、治水工事をしてきたことが書いてある。治水は古来、国の重要な政策だった。

それなのに、現代は、雨が降れば河川が氾濫する。「50年に一度」の大雨などというが、「毎年」である。毎年、被害があるのがわかっている。それなのに対策しない・できない。

国民に早く非難しろというばかりで、国民の財産と命を守れない国土交通省を非難する声はほとんど聞こえない。

日本の科学技術(者)はダメになってしまったのか? 回復不能なのか?

●9.【主要情報源】
① 2016年9月1日のアリソン・マクック(Alison McCook)の「Science」記事:Whistleblower sues Duke, claims doctored data helped win $200 million in grants | Science | AAAS 保存済
② 〇2019年3月25日の著者名不記載の「司法省」記事: :Office of Public Affairs | Duke University Agrees to Pay U.S. $112.5 Million to Settle False Claims Act Allegations Related to Scientific Research Misconduct | United States Department of Justice
③  2019年3月25日のビル・チャペル(Bill Chappell)記者の「NPR」記事:Duke Pays Whistleblower Millions In Research Fraud Case : NPR
④ 2019年3月25日のシーラ・カプラン(Sheila Kaplan)記者の「New York Times」記事:Duke University to Pay $112.5 Million to Settle Claims of Research Misconduct – The New York Times
⑤ 〇2019年3月26日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Joseph Thomas just earned $33.8 million in a $112.5 million settlement with Duke. Here’s his story. – Retraction Watch
⑥ 2019年3月26日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「medscape」記事:Meet the Whistleblower Who Just Cost Duke $112.5 Million
⑦  2019年3月26日のジョナサン・ステンペル(Jonathan Stempel)記者の「Reuters」記事:Duke University pays $112.5 million in fake research case sparked by whistleblower | Reuters
⑧ 〇2019年8月1日のエドワード・マーティン(Edward Martin)記者の「Business North Carolina」記事:Deceit at Duke: How fraud at a university research lab prompted a $112M fine – Business North Carolina

ーーーーーーー
日本の人口は、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。
ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓

ーーーーーー
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●10.【コメント】

注意:お名前は記載されたまま表示されます。誹謗中傷的なコメントは削除します

Subscribe
更新通知を受け取る »
guest
0 コメント
Inline Feedbacks
View all comments