7-19.捕食学術誌の餌食にならない方法

2018年11月13日掲載

白楽の意図:捕食出版社(predatory publisher)、捕食学術誌(predatory journal)、捕食学会(predatory academic society)、捕食会議(predatory conference)など研究者を食いものにする捕食学術業(predatory academic business)をまとめて理解したいと考えた。その一環として、捕食学術誌の餌食にならない方法を示した2018年10月のネイチャー・インド誌のリー・ガニョン(Lea Gagnon)のブログ記事を読んだので、紹介しよう。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.論文概要
2.書誌情報と著者
3.論文内容
4.関連情報
5.白楽の感想
6.コメント
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【注意】「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。ポイントのみの紹介で、白楽の色に染め直してあります。

●1.【論文概要】

論文原稿を捕食学術誌(predatory journal)に投稿しない4つのポイントを解説した。その4つのポイントは、学術誌の「評判」「信頼性」「インパクトファクター」「品質」の4点である。まともな学術誌か捕食学術誌かをこの4点で判断されたい。

https://www.acsm.org/blog-detail/acsm-blog/2018/08/16/predatory-publishing-avoid-exploitative-journals

●2.【書誌情報と著者】

★書誌情報

★著者

●3.【論文内容】

【0.序論】

論文出版の世界は競争が激しい。しかし、研究者は自分のオリジナルな研究結果を学術誌に出版する機会は1回しかない。

そして、学術誌から研究者の自尊心をくすぐる投稿招待状が送られてくる。

「優れた医師の先生へ。

先生の価値の高い研究成果を常々尊敬しております。僭越ながら、先生の素晴らしい論文原稿を私どもの学術誌にご投稿くださいますよう、心からお願い申し上げます。先生のご投稿を喜んでご招待したいと存じます」。

繰り返し、このような魅力的な甘い誘惑の電子メールで、投稿を招待されたら、まず、捕食学術誌と疑うこと。論文受理前(before acceptance)に掲載料を得て、その後、約束した仕事をしない捕食学術誌もある。

以下、あなたが捕食学術誌の餌食にならない4つの判定基準を示す。

【1.評判】

最初の指標は、学術誌の評判である。

  • その学術誌は、評価の高い出版社(Springer Nature、Elsevier、Taylor&Francis、Wiley、Sageなど)が出版しているか?
  • あなたとあなたの同僚はその学術誌をよく知っているか?
  • あなたはその学術誌の編集委員を知っているか?

学術誌のサイトにアクセスすると、権威のありそうな学者が肯定的な意見を述べている動画や音声が自動的に流れる学術誌がある。

また、故人または高く評価された学者の名前を同意なしにその学術誌の宣伝に使用している場合もある。

高く評価された研究者がその学術誌にどれほど関与しているのか、同僚と検討することを勧める。また、編集者に個人的に確認しても良い。

【2.信頼性】

2番目の指標は、学術誌の信頼性である。

これは、インターネットで調べることができる。

  • 学術出版社の物理的所在地は人里はるか離れたところで、私書箱しか示していないか?
  • 編集者に簡単に連絡できるか?
  • パブメド(Pubmed / Medline)、ウェブ・オブ・サイエンス(Web of Science)、Scopus、Embase、オープンアクセス学術誌要覧 (Directory of Open Access Journals:DOAJ)など、信頼できるデータベースにその学術誌がリストされているか?
  • その学術誌は出版規範委員会(Committee On Publication Ethics: COPE)の会員誌か?
  • その学術誌は捕食学術誌にリストされているか? または、正当な学術誌にリストされているか?
    なお、ジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)の捕食学術誌リスト(ビール・リスト)は2017年に閉鎖された。その後、キャベル・インタナショナル社(Cabells International)が学術誌のブラックリスト(キャベルのブラックリスト)とホワイトリスト(キャベルのホワイトリスト)の両方を開発した。但し、キャベル・インタナショナル社の情報は有料である。

【3.インパクトファクター】

3番目の指標は、学術誌のインパクトである。

学術誌はインパクトファクター(IF:impact factor)などのいくつかの指標によって評価されている。インパクトファクター(IF)は、クラリベイト・アナリティクス社(Clarivate Analytics)によって毎年発行され、ウェブ・オブ・サイエンス(Web of Science)の自然科学引用索引(Science Citation Index:SCI)で示されている。

クラリベイト・アナリティクス社は、自然科学引用索引(Science Citation Index:SCI)だけでなく、新興分野引用索引(ESCI)、社会科学引用索引(SSCI)、人文科学引用索引(AHCI)、書籍引用索引(BKCI)、学会録引用索引CI(CPCI)も発行している。ただ、自然科学引用索引(Science Citation Index:SCI)と社会科学引用索引(SSCI)だけがインパクトファクター(IF)を示している。

捕食学術誌は、ねつ造・改ざんしたインパクトファクター(IF)をウェブサイトに表示することが多い。例えば、「グローバル・インパクトファクター(Global Impact Factor)」などともっともらしい名称だったりする。表示されたインパクトファクター(IF)が、Journal of Citation Reportsに公表された公式のインパクトファクターと一致するかどうかを確認する方が賢明である。一致しなければ、インパクトファクター(IF)はねつ造・改ざんされた数値である。

【4.品質】

4番目の最後の指標は、学術誌の品質である。

投稿する前に、学術誌の品質を慎重に検討する必要がある。

  • 学術誌のウェブサイトにスペルミスがあるか?
  • どのように査読されているか?(例:シングルブラインド、ダブルブラインド、オープン)
  • 公開された論文は適切か?
  • アーカイブされた全文にアクセスできるか?

ほとんどの捕食学術誌は、査読していると主張するが、査読はまれである。論文は受理(accept)されるまで、正当な学術誌では査読プロセスがあるので数週間かかる。一方、捕食学術誌では査読プロセスがないので瞬時に(例えば数時間)または数日内に受理(accept)される。

投稿しようとする学術誌に掲載されている論文の数編をチェックした方がいい。以下の「スター・ウォーズを茶化したミトコンドリア」論文のようなトンデモナイ論文が掲載されているかもしれない。
→ Mitochondria: Structure, Function and Clinical Relevance | Mitochondrion | Glycolysis

学術誌がまともかどうか判断するために、イクウェイター・ネットワーク(Equator Network)は、研究のどの側面かを示す貴重なチェックリスト(例えば、「臨床試験報告に関する統合基準(CONSORT :Consolidated Standards of Reporting Trials)」)を開発した。ほとんどの捕食学術誌は、このチェックリストに従っていない。例えば、捕食学術誌に掲載された1907報のヒトおよび動物研究のわずか40%しか生命倫理委員会からの承認を得ていない(Stop this waste of people, animals and money : Nature News & Comment)。まともな学術誌は、そのような非倫理的な研究論文なら、編集者が即刻、不採択にしてしまう。

【5.考察】

リー・ガニョン(Lea Gagnon)。https://people.bayt.com/lea-gagnon-38702622/

投稿する学術誌を選ぶときに気をつける点は、まず、その学術誌の論文を数編読んで、そのインパクトファクター(IF)をクロスチェックすることだ。次いで、この便利な「考え → チェック → 投稿(think-check-submit):Check | thinkchecksubmit」のチェックリストに従う。

ほとんどのオープンアクセス・ジャーナル(経済ジャーナルを除く)は論文受理後(after acceptance)に掲載料を請求する。だから、論文受理前(before acceptance)に掲載料を要求されたら、捕食学術誌と疑う。

もし、あなたが間違って捕食学術誌に投稿してしまった場合、著作権移転契約書に決して署名しないこと。また、対処のアドバイスを参照する → Guest Post: When Authors Get Caught in the Predatory (Illegitimate Publishing) Net – The Scholarly Kitchen

●4.【関連情報】

① 2013年11月12日の「科学技術情報プラットフォーム」記事:OASPA、会員3社を処分 - Science誌報道のおとり捜査を受け  | 科学技術情報プラットフォーム

オープンアクセス学術出版社協会(OASPA)(小欄当初紹介記事)はこのたび、論文査読の実態を明らかにしたScience誌記事”Who’s Afraind of Peer Review” のおとり捜査を受けて検証した結果、編集プロセスに厳格さを欠くとして、会員2社(ブルガリアHikariと米英Dove Medical Press)を1年間以上の除名、1社(米SAGE)を6か月間の謹慎に処した。

同協会の11月11日付発表はこちら:OASPA’s second statement following the article in Science entitled “Who’s Afraid of Peer Review?”

[ニュースソース]

Open-Access Group Sanctions Three Publishers After Science ‘Sting’ – Science 2013/11/11

[小欄関連記事]

2013年10月9日(水曜日) オンラインジャーナルの査読は信用できる? Science誌による”おとり捜査”(記事紹介)

② 2018年10月10日:著者への注意喚起:偽のジャーナルや学会の罠を避けるには | Editage Insights

③ 2018年9月3日:ハゲタカジャーナル論文掲載 不名誉な大学ランキング【悲報】東大、阪大などの研究者も投稿していたことが発覚  (≧▽≦ ) | 日本の科学と技術

毎日新聞の報道によれば、Predatory Journalsに最も多く投稿している大学の上位は、以下の通りです。
1. 九州大学 147報
2. 東京大学 132報
3. 大阪大学 107報
4. 新潟大学 102報
5. 名古屋大学 99報
6. 日本大学 87報
7. 東北大学 82報
8. 北海道大学 74報
9. 広島大学 73報
10. 京都大学 66報
11. 神戸大学 63報
12. 筑波大学 60報
13. 慶應義塾大学 56報
14. 千葉大学 55報
15. 金沢大学 54報
16. 熊本大学 48報
17. 順天堂大学 46報
18. 東京工業大学 44報
19. 岡山大学 43報
20. 岐阜大学 40報
21. 島根大学 40報
22. 同志社大学 40報
23. 近畿大学 40報
*2003~2018年5月末に「粗悪」学術誌327誌に掲載された日本が関与する5076報の解析
(参考:粗悪学術誌 ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 毎日新聞 2018年10月10日 07時00分 最終更新 10月10日 10時25分)

④ 栗山正光、情報管理、2015 年 58 巻 2 号 p. 92-99:ハゲタカオープンアクセス出版社への警戒

●5.【白楽の感想】

《1》捕食学術誌を取り締る

捕食学術誌を適切に指定し、捕食学術誌への投稿を正式に禁止するルールを日本国内で制定すべきだ。

そして、捕食学術誌を監視し、投稿する違反研究者に警告する。

とはいえ、こういう視点でバイオ政治学活動をする組織が日本にはない。文部科学省や日本学術会議ではフットワークが重い。フットワークが軽い組織で、専門的な知識・調査力・活動を行使でき、かつ、研究者が納得する権威のある組織が必要だ。

どうする?

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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●6.【コメント】

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