「レイプ」:執筆学:ジョン・バレット(John Barrett)(米)

2021年5月7日掲載 

ワンポイント:レイプ教員が復職したケース。バレットはブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)の助教授(男性)で、2015年10月(49歳?)、2人の女性学生とセックスし、2017年7月(51歳?)、解雇された。2年後の2019年5月22日(53歳?)、裁判所は解雇無効で大学にバレットの復職を命じた。理由として、女性学生は合意してバレットと性交した。また、大学のセクハラ規則では教員と学生の性的関係を禁止していなかった。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。

ーーーーーーー

Submit your review
1
2
3
4
5
Submit
     
Cancel

Create your own review

白楽の研究者倫理
Average rating:  
 1 reviews
 by 常連の滝

痴情のもつれで訴えられたので


ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
ーーーーーーー

●1.【概略】

ジョン・バレット(John Barrett、写真出典)は、ブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)・助教授で、専門は執筆学である。

レイプ(Rape)は、被害者の同意なしに、身体の部分または物体を被害者の膣または肛門に挿入する行為、また、性器を被害者の口の中に入れる行為(2012年の米国FBIの定義)である。しかし、同意の有無にかかわらず、大学教員が加害者で学生が被害者の場合、上記の行為をレイプとみなす傾向なので、白楽ブログでは、本件を「レイプ」事件とした。

2015年10月(49歳?)、バレットは春学期に講義を受講した女性学生A(氏名は公表されていない。学部生と思われる)の希望で、デートを重ね、性的関係をもつようになった。

8か月後、女性学生Aはバレットとの性的関係を終えた。その数か月後、他の女性学生(氏名報道なし)がバレットと性的関係をもっていると知り、激怒した。

2017年5月(51歳?)、女性学生Aはバレットに性的暴行をされたと大学に訴えた。

2017年7月(51歳?)、大学は教員として不適切な行為だとし、バレットを解雇した。

バレットは不当な解雇だと裁判所に訴えた。

2019年5月22日(53歳?)、裁判所は、バレット助教授の復職をブルームズバーグ大学に命じた。理由として、女性学生Aは合意してバレットと性交しているし、その時、バレットの授業の受講生ではなかった。また、大学のセクハラ規則では教員と学生の性的関係を禁止していなかった、と述べた。

2021年5月6日(55歳?)現在、バレットはブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)・助教授に在職している。 → ブルームズバーグ大学のサイト:Department of Academic Enrichment Directory | intranet.bloomu.edu保存版

ブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 修士号(MS)取得:バージニアコモンウェルス大学
  • 研究博士号(PhD)取得:なし
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1966年1月1日生まれとする。1984年に大学に入学した時を18歳とした
  • 現在の年齢:58歳?
  • 分野:執筆学
  • 性不正疑惑行為:2015-2016 年(49-50歳?)の8か月
  • 最初に訴えられた:2017年(51歳?)
  • 社会に公表年:2019年(53歳?)
  • 社会に公表時地位:ブルームズバーグ大学・助教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は被害者の女性学生(氏名報道なし)で大学に公益通報
  • ステップ2(メディア):「newsweek」紙など多数の大衆メディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ブルームズバーグ大学・調査委員会。②裁判所
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学・処分のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:機関以外が詳細をウェブ公表(⦿)
  • 不正:レイプ
  • 被害者数:2人以上の女性学生
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかったが(Ⅹ)、2年後の裁判で復職(〇)
  • 処分:解雇 → 裁判で勝訴し復職
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:John Barrett | LinkedIn

  • 生年月日:不明。仮に1966年1月1日生まれとする。1984年に大学に入学した時を18歳とした
  • 1984 – 1987年(18 – 21歳?):米国のボストン大学(Boston University)で学士号取得:経営学
  • 1994 – 1995年(28 – 29歳?):米国のホリンズ大学(Hollins University)で修士号(MS)を取得:執筆学
  • 1995 – 1998年(29 – 32歳?):米国のバージニアコモンウェルス大学(Virginia Commonwealth University)で修士号(MS)を取得:創作執筆学
  • 1998年(32歳?)-現在:作家
  • 2004年(38歳?):ブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)・助教授
  • 2015年10月(49歳?):女性学生Aと性的関係
  • 2017年5月(51歳?):女性学生Aが性不正だと大学に通報
  • 2017年7月(51歳?):性不正で大学から解雇
  • 2019年5月22日(53歳?):裁判所は、バレット助教授の復職をブルームズバーグ大学に命じた

●3.【動画】

【動画1】
セクハラ事件の動画ではない。2014年3月18-19日の動画:「John Barrett Social Media Interview Bloomsburg University- YouTube」(英語)1分37秒。
Dayshon Ponderが2015/11/14に公開

●5.【不正発覚の経緯と内容】

レイプ(Rape)は、被害者の同意なしに、身体の部分または物体を被害者の膣または肛門に挿入する行為、また、性器を被害者の口の中に入れる行為(2012年の米国FBIの定義)である。

しかし、同意の有無にかかわらず、大学教員が加害者でと学生が被害者の場合、上記の行為をレイプとみなす傾向なので、白楽ブログでも、その傾向に従った。

★ジョン・バレット(John Barrett)の人生

ジョン・バレット(John Barrett、写真出典)はブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)・助教授である。

バレット助教授の結婚・離婚、さらに、子供の情報は見つからなかった。

ただ、レイプ事件を起こした時、自宅で女性学生と性的関係をもったので、独身だったと思う。

★性的暴行事件

2015年の春(49歳?)、女性学生A(氏名報道なし、学部生と思われる)は、バレットの講義を受講し、その秋、バレットとコーヒーを飲む仲になり、10月にバレットの家で性的関係を持った。性的関係は両者の合意のもとでの行為だった。

ただ、時々、目を覚ました時、性器をいじられていて、それは了承していないし、不快だった。

2016年6月(50歳?)、女性学生Aはバレットと8か月間の性的関係を終えたが、2016年 10月までは友人関係にあった。

2016年12月(50歳?)、女性学生Aは、バレットが別の女性学生(氏名報道なし)と性的関係を持っていたことを知り、激怒した。

2017年5月(51歳?)、女性学生Aは、同意していないのに寝ている間に性器をもてあそばれたのは性的暴行だと、ブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)に通報した。それで、大学は調査を始めた。

2017年7月(51歳?)、ブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)は教員として不適切という理由で、バレット助教授を解雇した。

なお、ブルームズバーグ大学の規則では、学生と教員の性的関係を禁じていなかった。

バレットは解雇は不当だと裁判所に訴えた。

2019年5月22日(53歳?)、裁判所は、ブルームズバーグ大学にバレット助教授を復職させるよう命じた。

ケビン・ブロブソン裁判官(P. Kevin Brobson、写真出典)の見解は次のようだ。

女性学生Aは合意してバレットと性交している。その時、バレットの授業を受けていないので、成績セックス(Sex-For-Grade)ではなく、自由恋愛である。大学のセクハラ規則では教員と学生の性的関係を禁止していなかった。

また、ブロブソン裁判官は、同意なしに性器をいじられたのは、合意した性的関係下での想定範囲内の愛撫なので性的暴行には当たらないとした。.

以下は裁判記録の冒頭部分(出典:同)。全文(ページ)は13頁 → http://www.pacourts.us/assets/opinions/Commonwealth/out/914CD18_5-16-19.pdf?cb=1、または、http://www.pacourts.us/assets/opinions/Commonwealth/out/914cd18_5-16-19.pdf#search=%22bloomsburg%20%27Commonwealth%2bCourt%27%22

2016年10月19日、しかし、ブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)の教員はレイプ教員が大学に復職するのに大反対だった。大学本部前でバレットの復職に反対するデモを行なった(写真出典)。

なおこのデモは、バレットの復職に反対するデモではないという記事が多い。他の13のペンシルバニア州立大学がペンシルバニア州立高等教育システム(PASSHE)から新しい契約が得られたのに、ブルームズバーグ大学は、得られなかったことに対する抗議デモだともある。こちらの方が正しそうだ。 → 2016年10月21日記事:Bloomsburg University Faculty APSCUF Strike Day 1 Photos-10-19-2016 – BUnow – Bloomsburg

2021年5月6日(55歳?)現在、バレットはブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)・助教授に在職している。 → ブルームズバーグ大学のサイト:Department of Academic Enrichment Directory | intranet.bloomu.edu、保存版

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

省略

●7.【白楽の感想】

《1》法律と感情

ジョン・バレット(John Barrett,写真出典)の事件をどう受け止めるといいのだろう?

女性学生は同意して男性大学教員と性的関係をもった。この性的関係は良い成績と引き換えにセックスをする成績セックス(Sex-For-Grade)ではなかった。

ハッキリ記載していないが女性学生と男性大学教員は独身である。

当時、ブルームズバーグ大学(Bloomsburg University)の規則は、教員と学生の性的関係を禁止していなかった。

大学は、教員として不適切として、バレットを解雇したが、裁判所は復職を命じ、現在、復職し、助教授として授業を受け持っている。

裁判所の判断は、法的には正しいと思うが、このような事件を起こした教員の授業を受ける学生は不快な感情をもたないのだろうか?

不快すぎて、授業に身が入らない、大学に登校できない、ということはないのだろうか?

なお、日本ではセクハラ教員、アカハラ教員はほぼ匿名でしか報道されない。そして、停職が明ければ復職し、平気な顔して大学で講義する。解雇されても、別の大学で採用される。だから、学生は誰がセクハラ教員・アカハラ教員だかわからないまま講義を受け、場合によると、研究指導まで受ける。そして、場合によると、再犯の被害を受ける。

《2》教員と学生の性的関係

米国では、教員と学生の性的関係を禁止する大学が増えている。

日本はどうなんだろう?

日本の大学は教員と学生の性的関係を禁止していない。

若い独身男性教員が女性学生の中からめぼしい人を選んで、結婚した例はいくつも知られている。女性学生の方も、中には、それを期待して若い独身男性教員に近づく。

ただ、恋愛関係がこじれると、最近は、セクハラと訴えられるので、教え子の女性学生に手を出す男性教員は命がけ(クビを覚悟?)だろう。

では、独身ではない教員が教え子の学生と性的関係をもつのはどうだろう。いわば不倫だが、この場合、女性教員が女性学生・男性学生、男性教員が女性学生・男性学生といくつかのパターンが可能である。

この場合も不倫関係がバレたり、こじれると、修羅場になったり、セクハラと訴えられる。成績セックス(Sex-For-Grade)だと、ほぼアウトだろう。

日本の高等教育界は教員と学生との恋愛そして性的関係に指針や規範を示すべきだと思う。

なお、驚いたことに、小中高校の話だが、わいせつ教員は今でも教員免許を再取得できる。2021年の現在、それを禁止する法律制定でモタモタしている。

児童生徒へのわいせつ行為で懲戒免職処分を受けた教員が免許状を再取得できないようにする法改正を検討していた文部科学省は、来年1月の通常国会への法案提出を見送ることを決めた。萩生田光一文科相が25日の閣議後記者会見で明らかにした。

現行の教育職員免許法では、懲戒免職処分を受けても最短3年で免許状を再取得できる。文科省は再取得できない期間を無期限とすることで、学校現場に戻れなくする方向で検討していた。だが社会復帰や更生の観点から、刑の執行後、原則10年で刑が消滅するなどと定めた刑法との整合性が取れないと判断した。(2020年12月25日記事:わいせつ教員、免許再取得不可の法改正は見送り 文科省:朝日新聞デジタル

日本、ヒドクないですか?

小中高校生は安心して学校にいけないし、親も心配だ。

で、小中高校がこのザマだと、高等教育界はいつになるやら。

ーーーーーーー

Submit your review
1
2
3
4
5
Submit
     
Cancel

Create your own review

白楽の研究者倫理
Average rating:  
 1 reviews
 by 常連の滝

痴情のもつれで訴えられたので


ーーーーーーー
日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓

ーーーーーー

●8.【主要情報源】

① 2019年5月19日のイェンニ・フィンク(Jenni Fink)記者の「newsweek」記事:Bloomsburg Professor Fired for Having Sexual Relationships With Two Students Must Be Reinstated, Court Rules
② 2019年5月20日のマット・ミラー(Matt Miller)記者の「pennlive.com」記事:University professor fired for having sex with 2 female students must be reinstated, Pa. court rules – pennlive.com
③ 2019年5月22日のアーデン・ディア(Arden Dier)記者の「newser」記事:Court: Bloomsburg University Professor John Barrett Can’t Be Fired for Sex With Students
④ 2019年5月22日のザック・ニードルズ(Zack Needles)記者の「Legal Intelligencer」記事:Court OKs Reinstatement of Bloomsburg Professor Fired for Sex With Students | The Legal Intelligencer
⑤ ジョン・バレット(John Barrett)本人のサイト:John Barrett – Bloomsburg Professor and Author with Advanced Degrees、ジョン・バレット(John Barrett)本人のブログ:John Barrett on Blogger
⑥ 多数報道された。以下一例。★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント

注意:お名前は記載されたまま表示されます。誹謗中傷的なコメントは削除します

Subscribe
更新通知を受け取る »
guest
0 コメント
Inline Feedbacks
View all comments