病院:「企業資金不開示」:スローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)(米)

2019年5月9日掲載

ワンポイント:米国のトップクラスの病院であるスローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)の複数の有力医師・研究者が、企業から得た収入を開示しないまま論文を発表していた(利益相反違反)ことが2018年9月に発覚した(Aren’t Disclosing Corporate Financial Ties)。ホセ・バーゼルガ院長(Jose Baselga)、クレイグ・トンプソン総長(Craig B. Thompson)、ジェド・ウォルコック部長(Jedd Wolchok)、ミシェル・ブラッドベリー部長(Michelle Bradbury)などである。「ProPublica」紙のチャールズ・オルンスタイン(Charles Ornstein)記者と「New York Times」紙のケイティ・トーマス(Katie Thomas)記者が追及し記事にした。ブログでは、この事件を解説したポール・タッカー(Paul D Thacker)の「2018年のBMJ」論文も加えた。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。バーゼルガ事件は、「 2018年ネカト世界ランキング」の「5」の「5番目」の事件である。

【追記】
・2020年12月22日記事:スローン・ケタリング記念がんセンターバーゼルガ に解雇金として約1億5千万円払った:Memorial Sloan Kettering Gave Top Doctor $1.5 Million After He Was Forced to Resign Over Conflicts of Interest — ProPublica

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.日本語の解説
3.事件の経過と内容
4.白楽の感想
5.主要情報源
6.コメント
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●1.【概略】

2018年9月、「ProPublica」紙のチャールズ・オルンスタイン(Charles Ornstein)記者と「New York Times」紙のケイティ・トーマス(Katie Thomas)記者が、米国のトップクラスの病院であるスローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)の複数の有力研究者が、企業から得た収入を開示しないまま論文を発表していた(利益相反違反)ことを新聞記事に暴露した。

ホセ・バーゼルガ院長(Jose Baselga)、クレイグ・トンプソン総長(Craig B. Thompson)、ジェド・ウォルコック部長(Jedd Wolchok)、ミシェル・ブラッドベリー部長(Michelle Bradbury)などの医師・研究者である。

事実を隠す行為は、取りようによっては、事実を変える行為なので、改ざんである。

この“改ざん”による死者や傷害者はいないが、国民が被害者である。学術界の腐敗で、医学研究、医師、研究者とスローン・ケタリング記念がんセンターの信用をおとしめた。

バーゼルガ院長は指摘を受け論文を訂正し、スローン・ケタリング記念がんセンターを辞職した。

バーゼルガ事件は、「 2018年ネカト世界ランキング」の「5」の「5番目」の事件である。

スローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)。写真出典

  • 国:米国
  • 集団名:スローン・ケタリング記念がんセンター
  • 集団名(英語):Memorial Sloan-Kettering Cancer Center
  • ウェブサイト(英語):http://www.acerta-pharma.com/
  • 集団の概要:1884年設立の米国のトップクラスの病院・研究所。
  • 事件の首謀者:ホセ・バーゼルガ院長(Jose Baselga)が大きい。他にクレイグ・トンプソン総長(Craig B. Thompson)、ジェド・ウォルコック部長(Jedd Wolchok)、ミシェル・ブラッドベリー部長(Michelle Bradbury)など。
  • 分野:癌研究・治療
  • 不正年:
  • 発覚年:2018年
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は「ProPublica」紙のチャールズ・オルンスタイン(Charles Ornstein)記者と「New York Times」紙のケイティ・トーマス(Katie Thomas)記者
  • ステップ2(メディア):「ニューヨークタイムス」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ): ①スローン・ケタリング記念がんセンター
  • 不正:論文の資金不開示
  • 不正論文数:約10報を訂正
  • 被害(者):死者や傷害者はいない
  • 国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)
  • 結末:

●2.【日本語の解説】

★2018年12月15日:宇野良治:ニューヨークタイムス:医学論文の資金開示不正を追及される有名医師

出典 → ココ、(保存版

The TimesとProPublicaが指摘した問題によって、ニューヨークのスローンケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)の最高医師であったホセ・バーゼルガ(JoséBaselga)博士が、 後に辞任した。彼は何十件ものジャーナル記事で業界との関係を明らかにしていなかった。

●3.【事件の経過と内容】

学術誌に論文を発表する時の要件は学術誌によって少し異なる。しかし、共通の要件の1つに、著者は資金源を開示しなければならない。特に、論文内容に絡む企業と金銭的な関係があれば必須である。国際医学学術誌編集者委員会(ICMJE)(International Committee of Medical Journal Editors)のガイドラインでは、「論文中の研究に関連している可能性があるすべての団体を開示すべき」とある。

資金不開示は意図的に資金源(今回は製薬企業)を隠蔽する行為であり、この行為はねつ造・改ざんに該当する。また、指摘されていないが(証拠を示して指摘するのは難しい)、資金提供者に好意的に論文を書いている可能性が濃厚になる。

スローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)でも、論文に資金源を開示すべき規則があるのに、複数の有力研究者は開示していなかった。

2018年9月、「ProPublica」紙のチャールズ・オルンスタイン(Charles Ornstein)記者と「New York Times」紙のケイティ・トーマス(Katie Thomas)記者が、米国のトップクラスの病院であるスローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)の複数の有力研究者が、企業から得た収入を開示しないまま論文発表をしていたことを新聞記事で暴露した。

複数の有力研究者の内、ホセ・バーゼルガ院長(José Baselga)が特に注目を浴びたので、このブログでも他の研究者よりもバーゼルガを詳しく記述した。

★スローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)

ウィキペディア英語版 → Memorial Sloan Kettering Cancer Center – Wikipedia

日本語の説明は以下のようだ。

スローン・ケタリング記念がんセンターは「ニューヨーク市のマンハッタンのアッパーイーストというところにあります。がん治療・研究に関しては、毎年全米No1 or 2にランキングされる病院・研究施設です」(出典:末原 義之(平成12年卒)|整形外科・スポーツ診療科|順天堂医院)。

メモリアルスローンケタリング癌センターは1884年に設立された歴史のあるがんセンターで、全米で47あるNational Cancer Institute(NCI)の一つとして指定されています。マンハッタンのアッパーイーストに研究所とともに位置しており、通りを介してワイルコーネル大学医学部と隣接し、スタッフはワイルコーネルの肩書も得るなど密接な関係にあります。同じマンハッタンにはコロンビア大学やニューヨーク大学、マウントサイナイ病院など名門病院がひしめいており、当院は最古のがんセンターとして多くの患者を受け入れています。メインホスピタルの他にマンハッタン内に24個の建物を要しており、職員のためのシャトルバスが走り回っています。セントラルパークまでは徒歩15分程度の距離で、治安も極めて安全な場所に位置しています。(出典:2018年6月15日:寄稿:地方からニューヨークへ 米国がんセンタースタッフ就任までの道程(西村誠先生) | 日本消化器内視鏡学会

★ホセ・バーゼルガ(José Baselga)

ホセ・バーゼルガ(José Baselga、写真出典)の経歴は以下の通り。

  • 1959年7月3日:スペインで生まれる
  • 1982年(23歳):スペインのカーンプル大学(Autonomous University of Barcelona)で医師免許(MD)と研究博士号(PhD)を取得
  • 1982年(23歳):米国のスローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)で
  • 1996 ー 2010年(37 ー 51歳):スペインのバルデブロン大学病院(Vall d’Hebron University Hospital)・
  • 2010 ー 2012年(51 ー 53歳):米国のマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)・部長
  • 2012年(53歳):スローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)・病院長(Physician-in-chief)
  • 2013年(54歳):コーネル大学医科大学院(Weill Cornell Medical College)・教授
  • 2018年9月(59歳):ニューヨーク・タイムズ紙が論文の資金不開示を報道した
  • 2018年9月(59歳):スローン・ケタリング記念がんセンターを辞職

2012年(53歳)、トンプソン総長(Craig B. Thompson)により、バーゼルガはスローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)の臨床系の最高責任者である病院長(Physician-in-chief)に任命された。

バーゼルガは、2015-16年の米国癌学会(American Association for Cancer Research)の会長を務めた。

「ニューヨークタイムス」紙は、バーゼルガは、2013年以降発表した約180論文の60%で、2017年では論文の87%で、資金源の開示をしていなかった、と指摘した。

実際のところ、バーゼルガは、2014年以来、大手製薬会社のロシュ社(Roche)からだけでも300万ドル(約3億円)という巨額の金を受け取っていた。

癌治療法をテストしている新興企業との関係にも疑惑が向けられ、調査は彼が所属する企業に有利な臨床試験結果をもたらしたと示唆している。

批判を受けて、バーゼルガは、学術誌「New England Journal of Medicine」の2論文、「Clinical Cancer Research」の3論文、「Cancer Discovery」の2論文などのいくつかの論文で利益相反の開示を修正した。

また、アメリカ臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology)でも開示を修正した。というのは、アメリカ臨床腫瘍学会がバーゼルが将来の学会で発表するなら、「彼のスライドは彼の発表の前に審査し、発表中は学会タッフとボランティアが監査する。そして、バーゼルガが再び利益相反を適切に開示しない場合、次の2年間、本学会主催の会議で、いかなる立場(著者、議長、討論者など)でも参加することを禁じる」と伝えたからである。

事件が明るみに出て、バーゼルガは、米国癌学会(American Association for Cancer Research)が発行する学術誌「Cancer Discovery」の編集長を辞任した。

2018年9月13日(59歳)、不開示報道5日後、バーゼルガはスローン・ケタリング記念がんセンターを辞任した。

2019年1月7日(59歳)、不開示報道4か月後、バーゼルガはアストラゼネカ社(AstraZeneca)のがん研究開発部長に就任した。
→ 2019年1月7日記事:Thomas, Katie; Ornstein, Charles: “Top Cancer Doctor, Forced Out Over Ties to Drug Makers, Joins Their Ranks”. The New York Times.

★クレイグ・トンプソン(Craig B. Thompson)

クレイグ・トンプソン(Craig B. Thompson、1953年生まれ、写真出典)はスローン・ケタリング記念がんセンターの総長である。

癌生物学と免疫学が専門で、免疫治療で30件以上の特許を持っている。2007年にバイテク企業のアギオス・ファーマシューティカルズ社(Agios Pharmaceuticals)を設立した。

トンプソン総長は、2017年に製薬会社のメルク社(Merck)から30万ドル(約3,000万円)、研究支援企業のチャールズ・リバー実験所社(Charles River Laboratories)から現金で7万ドル(約700万円)と株式で215,050ドル(約2,150万円)を受け取っていた。なお、スローン・ケタリング記念がんセンターからの年収は670万ドル(約6億7千万円、2016年)だった。

両社の顧問を務めていたことと、アギオス・ファーマシューティカルズ社(Agios Pharmaceuticals)を設立したことを以下の「2018年のJ Clin Invest」論文に記載していなかった。

利益相反を指摘され、2018年9月18日、論文を訂正した。
→ 、2018年9月18日訂正記事:JCI – JAK2/IDH-mutant–driven myeloproliferative neoplasm is sensitive to combined targeted inhibition

2018年10月2日、トンプソン総長は、今回の騒動で、メルク社(2008年就任)とチャールズ・リバー実験所社(2013年就任)の顧問を辞任した。
→ 2018年10月2日記事:Memorial Sloan Kettering’s Chief Executive Resigns From Merck’s Board of Directors – The New York Times

トンプソン総長は声明の中で「2010年にスローン・ケタリング記念がんセンターの院長に就任して以来70報以上の論文を発表しましたが、そのうちの1報が今回のミスでした。それは、副次的著者の総説でしたが、訂正されるべきだと思いました」と述べている。つまり、他の論文・総説ではチャンと開示しているとのことだ。

★ジェド・ウォルコック(Jedd Wolchok)

ジェド・ウォルコック(Jedd Wolchok、写真出典)はスローン・ケタリング記念がんセンターのパーカーがん免疫療法研究所(Parker Institute for Cancer Immunotherapy)の部長である。

ウォルコックは免疫療法の専門家として有名で、本庶佑とともに2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞したジェームズ・アリソン(James P. Allison)の研究に基づいて作った医薬品で、がん患者を最初に治療した。

ウォルコックはブリストル・マイヤーズ スクイブ社(Bristol-Myers Squibb)やメルク社(Merck)など大手製薬企業たくさんの企業からコンサルティング料を、またベイジーン社(BeiGene)、アプリシティ社(Apricity)、アダプティブ・バイオテク社(Adaptive Biotech)などの新興企業からストックオプションを受け取っていた。

ウォルコックは、「Cancer Cell」の2論文、「Journal of Clinical Investigation」の1論文を訂正した。

論文の訂正で、ウォルコックの論文の共著者になっていたスローン・ケタリング記念がんセンターの他の研究者たち(Dr. Matthew D. Hellmann、Dr. Taha Merghoub、Dr. Michael A. Postow)も企業との関係を開示した。

「以下の追加の開示は発表した研究結果とは直接関係がないが、著者らは完全な透明性を尊重する精神に基づいて開示した。私たち著者はご不便をおかけして申し訳ありませんでした」と訂正で述べた。

しかし、ウォルコックは、最近の「New England Journal of Medicine」、「JAMA」、「Lancet Oncology」論文で彼の31に及ぶ企業からの金銭授受を開示していない。ウォルコックは、連邦データベースによると、2014年以来、大手製薬会社から9万ドル(約900万円)以上もらっている。なお、連邦データベースは、食品医薬品局(FDA)から承認を受けた製品での支払しか記載されていない。

ウォルコックは、300報を超える総説を発表していて、そのうちのいくつかについて、「十分な注意を払って」開示を更新したと述べた。しかし、「Cancer Discovery」論文などでは、「金銭授受は研究結果とは直接関係がないので開示を拒否しました」という声明を発表した。(白楽の感想:得にならないお金を払う製薬企業はありません)

★ミシェル・ブラッドベリー(Michelle Bradbury)

ミシェル・ブラッドベリー(Michelle Bradbury、写真出典)は、スローン・ケタリング記念がんセンターの放射線部長である。

「2017年のChemistry of Materials」の2論文で資金関係を訂正し、スローン・ケタリング記念がんセンターとコーネル大学(Cornell University)はエルシダ・オンコロジー社(Elucida Oncology)と経済的関係があることを開示すべきだったと述べた。

ブラッドベリーはエルシダ・オンコロジー社の共同創設者で科学顧問になっている。この事は論文の中心テーマである癌の検出と治療におけるナノ粒子の使用と大いに関係している。

もう1人の著者であるコーネル大学のウルリッヒ・ヴィースナー教授(Ulrich Wiesner)も、エルシダ・オンコロジー社の共同創設者で科学顧問になっている。なお、上記したウォルコックもまたエルシダ・オンコロジー社の科学顧問になっていて、論文を訂正した。

ブラッドベリーは、3つ目の訂正として「2017年のApplied Materials&Interfaces」論文を訂正した。

【事件の深堀】

フリーランスのジャーナリストのポール・タッカー(Paul D Thacker、写真出典)がこの事件を解説している。
→  2018年10月5日のポール・タッカー(Paul D Thacker)記者の「BMJ」記事:Paul D Thacker: Time to act on industry influence over medicine and lay zombie arguments to rest – The BMJ、(保存版

ニューヨークタイムズ紙は、スローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)の最高医学責任者で あるホセ・バーゼルガが、製薬会社やヘルスケア会社からの何百万ドル(何億円)もの支払いを開示していなかったと報じました。

この話はそれほど複雑ではありません。記者たちは「Open Payments」データベース(https://openpaymentsdata.cms.gov/)と企業のファイルにアクセスしてバーゼルガへの支払いを調べ、これらの金銭が彼の研究論文に開示されているかどうかを確認し、多くの場合、開示されていなかったことがわかったのです。

新聞報道後、1週間以内に、バーゼルガは辞任しました。その間、ニューヨークタイムズ紙はスローン・ケタリング記念がんセンターで、彼以外の利益相反を発見し続けています。非営利の癌センターの役員や幹部の中に、営利企業と有利な関係にあることが判明したと報告しています。
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これのどれも驚くべきことではありません。私は科学とヘルスケアにおける汚職の調査を目的とした上院財政委員会でチャールズ・グラスリー上院議員(Senator Charles Grassley、チャック・グラスリー、Chuck Grassley、写真出典)のために3年半働きました。この活動で、「サンシャイン法Physician Payments Sunshine Act)」が成立し、「Open Payments」データベースのサイトが作成され、ニューヨーク タイムズ紙の調査が可能になったわけです。

私たちは、金銭的利益相反が、連邦機関、医学誌、大学など、生物医学のあらゆる側面に影響を与えることを知りました。

しかし、私たちのオフィスからこれらのグループの誰かに説明を求める電話をかけたときはいつでも、彼らの返事は決まっていました。「私たちは間違ったことを何もしていません」。問題点を指摘すると、「今は、もう、していません」。

ニューヨークタイムズの記事が発表された時、業界に友好的なウェブサイトでニューヨークタイムズの記事を批判する動きが始まりました。そこでは、利益相反の重要性を軽視しています。

彼らの主張は私たちの調査に対しても批判的でした。批評家たちが最初に科学と医学への企業の影響についての懸念を表明し始めた1980年代初期から言いふらされているフレーズを何度も蒸し返し・繰り返し投げかけてきます。頻繁に使用されるフレーズ なので、関係者はよく知っています。

以下にどのようなフレーズなのか示しましょう。

資金不開示を指摘された時、企業との結びつきを軽視するための一般的な戦略は、「医師が企業と協力するのは間違っていますか?」という質問(フレーズ)を投げかけることです。答えは明らかに「間違っていません」です。サンシャイン法は協力関係を否定する意図はありません。

医師は処方箋を書き、医療機器を人体に植え込み、研究を執筆し、政府の重要な委員会の委員になります。医師は現代医学のさまざまな局面・組織と結びついているため、私たちは企業が医師へ支払っている金銭の開示を求めました。私たちは企業と医師とのやりとりのすべて排除するつもりはありません。私たちは単に金銭的利益に光を当て、悪い行動を抑制したいだけです。

それにもかかわらず、批評家は卑怯な質問をします。「医師が企業と協力するのは間違っていますか?」という質問は、企業と医師との学術交流を含めすべての関係を止めていいのか、と暗示する質問です。この質問は、いまだに一般的な質問をよそおい、企業の擁護者がよく使います。

関連する別バージョンもあります。報告していない企業からの金銭授受は研究内容とは無関係です、と述べることだ。この議論は助成金バイアスが起こることについて、既にたくさんの証拠があることを無視しています。コクランのレビューでは、助成金・金銭授受は研究結果のバイアス要因であることがわかっています。もし、企業からの助成金・金銭授受が隠されていれば、企業の助成金・金銭授受によって生み出された研究バイアスをどのように評価することができますか?

注意をそらすさらに別のやり方として、医師が不開示の企業資金を受け取っているからといって、患者はどのような害を受けているのですか? 害を証明できますかと主張する方法です。これは不合理な証明を要求しています。

もう1つの策は、「イデオロギー的」または「知的な」利益相反の問題を提起することです。私はかつて化学物質の毒性を評価する委員会の委員にこのばかげた例を教えられました。化学物質は安全であると主張した委員の多くが化学会社と金銭的なつながりがあった。ところが、委員の一人は化学物質の安全性に反対した。彼女は母親であり小児科医なので、彼女の子供に味方するという「イデオロギー的」または「知的」なバイアスをかけて反対したのだと、賛成派の委員が批判した。

このような「知的」バイアスが科学を歪めるという理論は、2009年に全米アカデミーズ(National Academies)の利益相反に関する報告書で否定され、他の査読付き論文によっても否定されています。それでも、研究スキャンダルがメディアで報道されると、ソーシャルメディアを通してゾンビのように「イデオロギー的な利益相反」発言が飛び出し、ゾンビが墓から戻って動き回っているのがわかります。

私たちは何十年にもわたり利益相反に関する査読付き研究を行なっています。しかし、研究者や記者は、心血管疾患や脳外科手術の治療について自分がほとんどまともに研究してこなかったので、意見を述べるのは不適格だと思うのに、自分がほとんどまともに研究してこなかった利益相反については、驚くことに、不見識な意見を堂々と述べるのです。

★3つの解決策

私の上院の同僚と私は、サンシャイン法は医学のすべての問題を解決しないことを認識していました。問題はあまりにも根付きすぎていました。それでも今後、金銭的影響を伴う継続的な問題を解決するための3つの解決策があります。

第一に、利益相反に関する方針は、大学・研究機関・病院、学術誌、専門職業団体によって異なります。これにより、どの金銭関係を開示する必要があるのか、そしてどのくらい過去または未来を対象とするのかについて、混乱が生じています。金銭的利益相反の専門家は、大学・研究機関・病院は1種類の定型の開示書類を作成するよう提案しています。現在のやり方は単に混乱し過ぎなのです。

第二に、現在、金銭的なつながりの不開示が指摘されても、彼らはめったに懲戒処分を受けません。利益相反についての一流の専門家は、資金不開示は一種の研究上の不正行為として扱うのに十分であると述べています。研究上の不正行為は、現在、ねつ造、改ざん、盗用と定義されています。政府機関は、この定義に金銭関係不開示を追加することを検討すべきです。

最後の第三ですが、金銭的な結びつきを開示するだけでは不十分かもしれません。多くのインタビューの中で、グラスリー上院議員は、金銭的な結びつきが医療行為に害を及ぼしているという証拠が蓄積された場合、透明性を確保するだけは十分ではないと述べています。現在、証拠が蓄積し続けています。そろそろ、私達は医者と企業の関係に何らかの制限を設けるべきかどうかを考える必要があるでしょう。

これらすべての考えを検討する価値があります。

なお、最初に私達はこの問題のまわりで気を散らすゾンビの議論を止めさせるべきです。そして、今こそ3つの解決策に取り組み始めるべきです。

●4.【白楽の感想】

《1》ポール・タッカー(Paul D Thacker)

ポール・タッカー(Paul D Thacker)の活動に心を打たれた。エライ!

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●5.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:José Baselga – Wikipedia
② チャールズ・オルンスタイン(Charles Ornstein)記者(ProPublica)とケイティ・トーマス(Katie Thomas)記者(New York Times)の「New York Times」記事:(1)2018年9月8日:Top Cancer Researcher Fails to Disclose Corporate Financial Ties in Major Research Journals – The New York Times、(保存版)、(2)2018年10月12日:Sloan Kettering Researchers Correct the Record by Revealing Company Ties – The New York Times、(保存版
③ 2018年9月13日のチャールズ・オルンスタイン(Charles Ornstein)記者(ProPublica)とケイティ・トーマス(Katie Thomas)記者(New York Times)の「ProPublica」記事:Top Official at Memorial Sloan Kettering Resigns After… — ProPublica、(保存版)
④ アイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:(1)2018年10月10日:In wake of media scrutiny, Sloan Kettering author adds financial disclosures – Retraction Watch、(2)2018年10月12日:More than a dozen papers by Sloan Kettering researchers have now been updated with financial disclosures – Retraction Watch
⑤ 2018年10月5日のポール・タッカー(Paul D Thacker)記者の「BMJ」記事:Paul D Thacker: Time to act on industry influence over medicine and lay zombie arguments to rest – The BMJ、(保存版
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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