バガヴァティ・ナラヤナン(Bhagavathi Narayanan)(米)

2018年4月10日掲載。

ワンポイント: 2018年3月16日(63歳?)、研究公正局はバガヴァティ・ナラヤナンがネカトをしたと発表し、3年間の締め出し期間を科した。インドで生まれ育ち、インドで研究博士号(PhD)を取得した女性で、米国のニューヨーク大学医科大学院 (New York University School of Medicine)の準教授になった。医師ではない。2014年7月(59歳?)、パブピアがデータねつ造を指摘した。電気泳動バンド像のねつ造。10論文疑念。内、4論文撤回。損害額の総額(推定)は7億7100万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

バガヴァティ・ナラヤナン(Bhagavathi A. Narayanan、顔写真見つからない)は、インドで生まれ育ち、インドで研究博士号(PhD)を取得した女性で、米国のニューヨーク大学医科大学院(New York University School of Medicine)の準教授になった。医師ではない。専門は癌の細胞生物学。

バガヴァティ・ナラヤナンと苗字が同じナラヤナン・ナラヤナン(Narayanan K Narayanan、写真出典)は、インドで生まれ育ち、インドで研究博士号(PhD)を取得し、ニューヨーク大学医科大学院・助教授になった。この人はバガヴァティ・ナラヤナンと共著の論文が多く、バガヴァティ・ナラヤナンの夫と思われる。ここでは、夫とする。今のところ、ネカト実行者とも共犯者ともされていない。2015年11月(60歳?)、バガヴァティ・ナラヤナンと同時にニューヨーク大学医科大学院を辞職した。

ネカト発覚の経緯は不明であるが、ここでは、以下の理由で、パブピアの指摘とした。

2014年7月(59歳?)、最初、パブピアがデータねつ造を指摘した。その後、パブピアはさらに9論文のデータ異常を指摘した。パブピアの指摘が発覚要因だと思われる。

2018年3月16日(63歳?)、研究公正局はバガヴァティ・ナラヤナンがネカトをしたと発表した。締め出し期間は標準の3年間を科した。

ニューヨーク大学医科大学院 (New York University School of Medicine)。https://www.pinterest.jp/pin/398076054540056346/

  • 国:米国
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:インドのマドラス大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1955年1月1日生まれとする。1977年にマドラス大学で学士号を取得した。この時を22歳とした
  • 現在の年齢:63 歳?
  • 分野:細胞生物学
  • 最初の不正論文発表:2003年(48歳?)
  • 発覚年:2015年(60歳?)
  • 発覚時地位:ニューヨーク大学医科大学院・準教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は、推定だが、パブピアで指摘した匿名者だろう
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」、「パブピア(PubPeer)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ニューヨーク大学医科大学院・調査委員会。②研究公正局
  • 大学の調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 透明性:研究公正局でクロ判定(〇)。
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:10論文疑念。内、4論文撤回。
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 損害額:総額(推定)は7億7100万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が22年間=4億4千万円。③院生の損害は不明で、②に含めた。④外部研究費の額はNIHから1億8300万円。⑤調査経費(学術誌出版局、ニューヨーク大学医科大学院・調査委員会、研究公正局)が5千万円。⑥裁判経費なし。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。4報撤回されているので=800万円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分: NIHから 3年間の締め出し処分

●2.【経歴と経過】

主な出典:①:Faculty Research | Environmental Medicine、②:Bhagavathi A Narayanan | NYU Langone Medical Center

  • 生年月日:不明。仮に1955年1月1日生まれとする。1977年にマドラス大学で学士号を取得した。この時を22歳とした
  • 1977年(22歳?):マドラス大学(University of Madras)で学士号取得
  • 1979年(24歳?):同・修士号取得
  • 1986年(31歳?):同・研究博士号(PhD)を取得:細胞生物学
  • 1992年(37歳?):バガヴァティ・ナラヤナン(Bhagavathi Narayanan)名の最初の論文を発表している。この少し前にナラヤナン・ナラヤナン(Narayanan K Narayanan)と結婚したと思われる
  • 1993-1995年(38-40歳?):サウスカロライナ大学医科大学院(University of South Carolina)・ポスドク
  • 1995-2015年?(40-60歳?):ニューヨーク大学医科大学院 (New York University School of Medicine)・助教授、後に準教授
  • 2015年(60歳?):ネカトが発覚
  • 2015年11月(60歳?):ニューヨーク大学医科大学院・解雇(辞職?)
  • 2018年3月16日(63歳?):研究公正局がネカトと発表した

●5.【不正発覚の経緯と内容】

ネカト発覚の経緯は不明であるが、ここでは、以下の理由で、パブピアの指摘とした。

2014年7月(59歳?)、最初、パブピアがデータねつ造を指摘した。その後、パブピアはさらに9論文のデータ異常を指摘した。パブピアの指摘が発覚要因だと思われる。

バガヴァティ・ナラヤナン(Bhagavathi A. Narayanan )は、以下の表に示すように、NIHの研究費を2004年から2009年までコンスタントに受給していた。集計すると総額は183万ドル(約1億8300万円)になる。表をクリックすると表は大きくなります。2段階です。

【ねつ造・改ざんの具体例】

研究公正局は3報の論文と7つのNIH研究費申請書にねつ造・改ざんがあったと発表した。

★7つのNIH研究費申請書
•R01 CA163381-01
•R01 CA138741-01A1
•R01 CA106296-06A1
•R01 CA106296-06A2
•R03 CA158253-01A1
•R21 CA170314-01
•R01 ES024139-01

7つもNIH研究費申請書を提出するなんて、ずいぶん、活発だ。

研究費申請書のねつ造・改ざんなので、白楽は具体的なねつ造・改ざんデータにアクセスできない。

★3報の論文

研究公正局は、「2003年のClin. Cancer Res」論文、「2011年のAnticancer Res」論文、「2012年のInt. J. Oncol」論文にねつ造・改ざんがあったと発表した。

  1. Clin. Cancer Res. 9:3503-3513, 2003 (hereafter referred to as “Clin. Cancer Res. 2003”)
  2. Anticancer Res. 31(12):4347-4358, 2011 (hereafter referred to as “Anticancer Res. 2011”)
  3. Int. J. Oncol. 40:13-20, 2012 (hereafter referred to as “Int. J. Oncol. 2012”)

2003年から2011年と随分離れていて、なんか違和感がある。

研究公正局は各論文の以下の図にねつ造・改ざんがあったと指摘した。

「2003年のClin. Cancer Res」論文の図 5C, 6C, 7C
「2011年のAnticancer Res」論文の図 2A, 2B, 5D
「2012年のInt. J. Oncol」論文の図2c, 4b, 6a, and 6b

★「2003年のClin. Cancer Res」論文

研究公正局は図 5C, 6C, 7Cがねつ造・改ざんだと指摘した。

どの部分がどのように不正だったのか、パブピアで見てみよう。

2014年7月16日、図 5Cの電気泳動バンドがおかしいと、指摘された「Peer 1: (commented July 16th, 2014 5:12 PM and accepted July 16th, 2014 5:12 PM)」。.

以下のパブピアの図のRbの2番目と3番目がpRbの3番目と4番目と同じである。四角枠の下に、ずらして並べてあるのを比較した方がわかりやすい。
また、pRbの1番目と2番目が同じである。
出典:https://pubpeer.com/publications/0C83E86548BE5811A466CFFBDE4ABC#2

★「2011年のAnticancer Res」論文

研究公正局は図 2A, 2B, 5Dがねつ造・改ざんだと指摘した。

どの部分がどのように不正だったのか、パブピアで見てみよう。

2015年3月1日、図 2Bの電気泳動バンドがおかしいと、指摘された「#2 Peer 2 (commented March 1st, 2015 9:52 AM and accepted March 1st, 2015 9:52 AM)」。.

以下のパブピアの図Bのβ-Actinの左端と右端のバンドが同じである。下に、ずらして並べてあるのを比較した方がわかりやすい(青矢印)。
出典:https://pubpeer.com/publications/A85F29030DC2C021157DFC9180D073#2

2016年1月6日、図 5D の電気泳動バンドがおかしいと、指摘された「#3 Peer 2 (commented January 6th, 2016 12:42 AM and accepted January 6th, 2016 12:42 AM)」。.

以下のパブピアの右の図5Dのβ-Actinは左の図 2Bのβ-Actinのバンドを使いまわしている(ねつ造)。出典:https://pubpeer.com/publications/A85F29030DC2C021157DFC9180D073#3

★「2012年のInt. J. Oncol」論文

研究公正局は図2c, 4b, 6a, and 6bがねつ造・改ざんだと指摘した。

似たようなねつ造・改ざんなので省略。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年4月9日現在、パブメド(PubMed)で、バガヴァティ・ナラヤナン(Bhagavathi Narayanan)の論文を「Bhagavathi Narayanan[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002- 2017年の16年間の25論文がヒットした。

「Narayanan BA[Author]」で検索すると、1992- 2014年の23年間の27論文がヒットした。

夫のナラヤナン・ナラヤナン(Narayanan K Narayanan)との共著論文を「Narayanan BA[Author] AND Narayanan NK[Author]」で検索すると、2001- 2014年の19論文がヒットした。つまり、27論文中19論文が夫と共著である。

2018年4月9日現在、「Narayanan BA[Author] AND retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、2016年1月と5月に2論文が撤回されていた。夫のナラヤナン・ナラヤナン(Narayanan K Narayanan)との共著論文だった。

「撤回監視(Retraction Watch)」は3論文(上記の2論文と「2012年のInt. J. Oncol」論文)が撤回されたと述べている。

研究公正局がネカトと指摘した「2003年のClin. Cancer Res」論文は上記のパブメドの論文撤回リストに示されているが、2018年4月9日現在、「2011年のAnticancer Res」論文、「2012年のInt. J. Oncol」論文はまだ撤回されていなかった。

★パブピア(PubPeer)

2018年4月9日現在、「パブピア(PubPeer)」はバガヴァティ・ナラヤナン(Bhagavathi Narayanan)の10論文にコメントがあった。:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》詳細は不明

この事件の詳細は不明です。

バガヴァティ・ナラヤナン(Bhagavathi Narayanan)がどうしてネカトをする状況になったのか不明である。

ネカト防止策は、この事件からは学べない。

《2》研究公正局はズサン?

研究公正局は、「2003年のClin. Cancer Res」論文、「2011年のAnticancer Res」論文、「2012年のInt. J. Oncol」論文にねつ造・改ざんがあったと発表した。

しかし、「2006年のInt. J. Oncol」論文は研究公正局がネカトだと指摘していないのに、撤回されている。以下に示すようにウェスターン・ブロット像のねつ造は明白である。

パブピアが、図 4のウェスターン・ブロット像がねつ造だと指摘している。
以下の出典:https://pubpeer.com/publications/774642804EA97C2E2621FEDE2A7BFC#2

「2006年のInt. J. Oncol」論文は夫のナラヤナン・ナラヤナン(Narayanan K Narayanan)が第一著者である。

夫のナラヤナン・ナラヤナンがネカト実行者なので、バガヴァティ・ナラヤナン(Bhagavathi Narayanan)のネカト行為からはずしたのか? それなら、妻のネカト発表(2018年3月16日)と同時に夫のネカトも発表するか、遅くとも1週間以内に発表すべきだろう。3週間以上経過した2018年4月9日現在、夫のネカトは発表されていない。

それとも、ヒョットして、研究公正局が見落としたのか?

他の論文でも、今回、研究公正局がネカトだと指摘しなかったが、パブピアでデータ異常が指摘されている論文がいくつもある。

夫のナラヤナン・ナラヤナンがネカト実行者なのか? それとも、研究公正局が見落としたのか?

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●8.【主要情報源】

① 研究公正局の報告:(1)2018年3月16日:Case Summary: Narayanan, Bhagavathi | ORI – The Office of Research Integrity、(2)2018年3月29日:NOT-OD-18-159: Findings of Research Misconduct
② 2016年1月7日以降の「撤回監視(Retraction Watch)」記事群:Search Results for “Bhagavathi Narayanan” – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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