マニ・パヴルリ(Mani Pavuluri)(米)

2017年2月26日掲載。

ワンポイント:2015年11月(55歳?)、イリノイ大学がねつ造・改ざんがあったと発表したイリノイ大学・精神科・教授で医師のインド系女性。辞職していない。ねつ造・改ざんの中身は不明。

【追記】
・2018年4月28日記事:The ‘Meltdown’ of a $3 Million Research Project – The Wire
・2018年7月3日記事:Documents Raise New Concerns About Lithium Study on… — ProPublica
・2018年7月3日記事:A university went to great lengths to block the release of information about a trial gone wrong. A reporter fought them and revealed the truth. – Retraction Watch
・2019年3月20日記事:University of Illinois at Chicago missed warning signs of research going awry, letters show — ProPublica

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

マニ・パヴルリ(Mani N. Pavuluri、写真出典)は、インド出身でニュージーランドのオタゴ大学で研究博士号(PhD)と医師免許を取得し、米国のイリノイ大学(University of Illinois)・精神科・教授になった医師で、専門は精神病(子供や若者対象)や自殺防止である。

2013年(53歳?)、イリノイ大学はマニ・パブルリのネカト調査を開始した。発覚の経緯は不明である。

2015年11月(55歳?)、イリノイ大学は調査の結果、マニ・パブルリにねつ造・改ざんがあったと発表した。その調査結果は公表されていない。ねつ造・改ざんの具体的内容は不明である。

2017年2月25日現在(56歳?)、パヴルリは辞職していない。

イリノイ大学・医学部・精神病学科(Department of Psychiatry, College of Medicine, University of Illinois at Chicago)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:インド、ニュージーランド
  • 医師免許(MD)取得:ニュージーランドのオタゴ大学
  • 研究博士号(PhD)取得:ニュージーランドのオタゴ大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1960年1月1日生まれとする。1994年1月にメルボルン大学・助教授になった時を34歳としよう
  • 現在の年齢:64 歳?
  • 分野:精神病
  • 最初の不正論文発表:2013年(53歳?)
  • 発覚年:2013年(53歳?)
  • 発覚時地位:イリノイ大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)のイリノイ大学への公益通報
  • ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①イリノイ大学・調査委員会。②研究公正局(推定)
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:3報
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 研究費:総額は少なくとも7百万ドル(約7億円)。主な内訳 → ①NIHの700万ドル
  • 結末:辞職なし

●2.【経歴と経過】

主な出典:①Mani Pavuluri | LinkedIn、(保存版)。②Mani Pavuluri, MD, PhD、保存済

  • 生年月日:不明。仮に1960年1月1日生まれとする。1994年1月にメルボルン大学・助教授になった時を34歳としよう。インドで生まれ、インド南東部のアーンドラ・プラデーシュ州またはテランガーナ州で育つ。
  • 19xx年(xx歳):ニュージーランドのオタゴ大学(Otago University Medical School in New Zealand)を卒業。医師免許:小児精神病
  • 19xx年(xx歳):オーストラリア・ニュージランド精神病カレッジ(Australian and New Zealand College of Psychiatrists)。FRANZCP資格:成人精神病
  • 1994年1月 – 1997年(34-37歳?):オーストラリアのメルボルン大学・ロイヤル子供病院(Royal Children’s Hospital, Melbourne University)・助教授
  • 1997年(37歳?):米国・シカゴのラッシュ大学(Rush University)・付属病院・小児精神病科に勤務。準教授(推定)
  • 2000年7月(40歳?):米国のイリノイ大学(University of Illinois at Chicago)・精神病学・教授
  • 2013年(53歳?):イリノイ大学はマニ・パブルリのネカト調査を開始した
  • 2015年11月(55歳?):イリノイ大学は調査の結果、マニ・パブルリにねつ造・改ざんがあったと発表したが、調査結果を公表していない。

●3.【動画】

【動画1】
2015年、マニ・パブルリがAFSPの助成金を受賞し、「Brain Circuitry and Suicidal Adolescents with Bipolar Disorder presentation」のタイトルで講演した。講演は上手。
「AFSP Illinois Research Connection 2015 – Dr. Mani Pavuluri, MD, PhD – YouTube」(英語)1時間2分47秒。
AFSPIL 2015/11/16 に公開

【動画2】
2015年10月21日のマニ・パブルリの講演。音声とスライド。
「Feeling BETTER: Brain and Environmental Training Towards Emotional Resilience – YouTube」(英語)53分26秒。
International Bipolar Foundationが 2016/11/23 に公開

●4.【日本語の解説】

ネカト事件の解説ではなく、マニ・パブルリの研究内容の紹介です。

★2013年6月20日:活動内容-こころの発達と障害の教育研究コンソーシアムの講演会「小児双極性障害の薬物療法と脳神経基盤」

出典(含・写真) → 活動内容-こころの発達と障害の教育研究コンソーシアム (保存済)

マニ・パブルリ博士より、双極性障害の脳機能画像研究の知見とその知見をどのように個別の治療に活かしていくかについてお話を頂きました。

イリノイ大学医学部児童精神科教授とBRAINセンター長を兼任され、児童精神科の臨床とともに小児の感情障害の研究をされてきたマニ・パブルリ博士ならではのご講演内容でした。博士ご自身のメモなどをご紹介いただきながら、臨床研究で明らかになったことを家族や当事者にどのように伝えているかについて話してくださり、臨床研究と臨床実践について学ぶ有意義な機会が持てました

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●5.【不正発覚の経緯と内容】

2003年(43歳?)、マニ・パブルリは、認知行動療法(Cognitive behavioral therapy:CBT) が双極性障害(Bipolar disorder)の治療に有効であると学会(American Academy of Child and Adolescent Psychiatry)で発表した。白楽はよくわかりませんが、この治療法は画期的だそうです。
→ 2003年10月20日のロウリー・バークレイ(Laurie Barclay)記者の「Medscape Medical News」記事:Cognitive Behavioral Therapy Useful for Bipolar Disorder in Children

上記のように目立つ研究成果を上げてきたマニ・パブルリが、2013年に、患者が絡みの事件に巻き込まれる。

2013年1月25日(53歳?)、マニ・パブルリの患者が何らかの問題を起こした(白楽は問題点が把握できていません)。イリノイ大学の研究対象保護部長からクリスチーナ・ボーア法令遵守部長(Kristina C. Borror)に以下の手紙が送付された。unanticipated-event

2013年(53歳?)、上記のPDFの内容と関係があるのかどうか白楽は把握できていないが、イリノイ大学はマニ・パブルリのネカト調査を開始した。同時に、研究公正局にも通知した。

2014年12月1日(54歳?)、クリスチーナ・ボーア法令遵守部長(Kristina C. Borror)は、「ヒト研究材料保護(Human Research Subject Protections Under Federalwide Assurance FWA-83)」問題で、イリノイ大学のMitra Dutta研究担当副学長に手紙を送付したが、マニ・パブルリが送付先(CC)に入っている。
→ December 1, 2014 – University of Illinois at Chicago | HHS.gov

2015年11月(55歳?)、イリノイ大学は調査の結果、マニ・パブルリにねつ造・改ざんがあったと発表した。その調査結果は公表されていない。

「2013年のJ Psychiatry Neurosci.」論文はイリノイ大学の要請で撤回された。撤回理由として、「ねつ造・改ざんの証拠があった」としているが、「2013年のJ Psychiatry Neurosci.」論文のどのデータなのか記載はない(http://jpn.ca/wp-content/uploads/2015/10/40-6-411.pdf)。

2017年2月25日現在、研究公正局は何も発表していない。

「パブピア(PubPeer)」にも、指摘がない。

2017年2月25日現在、どのデータがねつ造・改ざんなのか、ハッキリしない。

2010 Klerman/Freedman Award winners
出典:https://bbrfoundation.wordpress.com/category/narsad-klermanfreedman-awards/

2017年2月25日現在、マニ・パブルリは辞職していない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2017年2月25日現在、パブメド(PubMed)で、マニ・パヴルリ(Mani N. Pavuluri)の論文を「Mani N. Pavuluri [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2016年の15年間の71論文がヒットした。

「Pavuluri MN [Author]」で検索すると1995~2016年の22年間の79論文がヒットしたが、2016年の2論文は撤回監公告の論文で、普通の論文は2015年までだった。

2017年2月25日現在、パブメドの論文リストでは3論文が撤回されている。

  1. Altered affective, executive and sensorimotor resting state networks in patients with pediatric mania.
    Wu M, Lu LH, Passarotti AM, Wegbreit E, Fitzgerald J, Pavuluri MN.
    J Psychiatry Neurosci. 2013 Jul;38(4):232-40. doi: 10.1503/jpn.120073.
    Retraction in:
    J Psychiatry Neurosci. 2015 Nov;40(6):411.
    PMID:23735583
  2. Where, when, how high, and how long? The hemodynamics of emotional response in psychotropic-naïve patients with adolescent bipolar disorder.
    Wegbreit E, Passarotti AM, Ellis JA, Wu M, Witowski N, Fitzgerald JM, Stevens MC, Pavuluri MN.
    J Affect Disord. 2013 May;147(1-3):304-11. doi: 10.1016/j.jad.2012.11.025.
    Retraction in:
    J Affect Disord. 2016 Nov 15;205:406.
    PMID:23261134
  3. Deficits in emotion recognition in pediatric bipolar disorder: the mediating effects of irritability.
    Shankman SA, Katz AC, Passarotti AM, Pavuluri MN.
    J Affect Disord. 2013 Jan 10;144(1-2):134-40. doi: 10.1016/j.jad.2012.06.021.
    Retraction in:
    J Affect Disord. 2016 Nov 15;205:407.
    PMID:22963899

2017年2月25日現在、「パブピア(PubPeer)」ではマニ・パヴルリ(Mani N. Pavuluri)の論文へのコメントはなかった:PubPeer – Results for Mani N. Pavuluri

●7.【白楽の感想】

《1》闇の中

パヴルリ事件は、イリノイ大学が調査し、マニ・パブルリにねつ造・改ざんがあったと発表したが、調査結果を公表していない。研究公正局は何も発表していない。しかし、論文は3報撤回されている。

何がどうねつ造・改ざんなのか、2017年2月25日現在、闇の中である。

今後、明らかになるのかもしれないが、不思議な事件だ。

University Scholars 2013
Nagamani (Mani) Pavulari
Director, Pediatric Mood Disorders Clinic
Department of Psychiatry

●8.【主要情報源】

① 2015 年11月4日のシャノン・パラス(Shannon Palus)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事とその後:You searched for Mani Pavuluri – Retraction Watch at Retraction Watch
② 2017年2月25日現在、「パブピア(PubPeer)」ではマニ・パヴルリ(Mani N. Pavuluri)の論文へのコメントはなかった:PubPeer – Results for Mani N. Pavuluri
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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