1‐5‐9.研究ネカトで自殺者をだすな!

2016年8月22日掲載。

ワンポイント:【長文注意】。研究室仲間、調査委員、メディア、大学・研究機関、発言する有識者は、研究ネカト疑惑者を執拗に攻撃し、自殺に追い込んできた。研究ネカト関係者の自殺率は一般の50倍も高い。一方、研究ネカト疑惑者の味方は家族以外だれもいない。なんか、おかしくないか? 研究ネカトで自殺者をだすな!

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.研究ネカトで自殺:日本
3.研究ネカトで自殺:外国
4.研究者の自殺:他の視点
5.対策
6.白楽の感想
7.主要情報源
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●1.【概略】

1445911915776米国陸軍の自殺予防ポスター「自殺は100%防げる」(U.S. Army suicide prevention poster)。写真出典

研究ネカト者は社会に損害を与えたのだから、それなりの社会的制裁を受けるのは、社会システムとしては当然である。制裁することで、研究ネカトを抑制する効果もある。

しかし、研究ネカト行為あるいは研究ネカト疑惑は、死に値するか?

白楽は、そうは思わない。

それに、制裁を与える権限は、「1‐5‐3.研究ネカト対処の4ステップ説」で記述したように、「当局(オーソリティ)」にしかなく、その制裁では死に値する処分はない。

法律あるいは法律でなくても、社会的にその権威・権限が認められている組織が、研究ネカト事件を「公式」に調査し、シロ・クロを判定する。クロと判定した場合は「ペナルティを科す」。この組織を「当局(オーソリティ)」と呼ぶ。

2006年9月から2016年8月までの10年間に、日本では、概算で137人が研究ネカト(含・疑惑)した(研究者の事件一覧(日本) | 研究倫理)。研究ネカト者1人につき他に2人関係者がいたと仮定すると、137×3人=411人である

この10年間で、4人が自殺している。411人あたり4人、つまり、自殺率は0.97%≒1%だ。

一方、日本の自殺率は10万人あたり20.9人(2014年)である。つまり、0.02%だ(日本の自殺 – Wikipedia)。

研究ネカト関係者の自殺率は一般の50倍も高い。

何らかの対策が必要である。少なくとも、データ収集、調査、分析が必要だ。

推定を加えて言うが、研究ネカト疑惑者の研究室仲間、調査委員、メディア、大学・研究機関、発言する有識者、SNS上の罵倒暴言者が、研究ネカト疑惑者を、強烈にあるいは執拗に攻撃し、自殺に追い込んできた。この行為は、意図的ではないにしろ、結果としては、ある意味、殺人である。

そして、外国でもそうかもしれないが、日本は特に、死を封印し、語らず、分析しない風潮が強い。しかし、そのことで、同じ過ちが繰り返される可能性が高い。

研究ネカト疑惑で自殺した人たちは意外と知られていない。研究ネカト疑惑が表明化する前に自殺したことで封印・隠蔽されたケース、あるいは、自殺理由を別に設定されたケースもあるだろう。数値としての統計値もないが、対策も講じられていない。

この記事で、研究ネカト関係者の自殺を正面から取り上げ、事例をなるべく多く収集し、記録に残し、できれば分析したい。

研究ネカト政策者は研究ネカト関係者の自殺に配慮し、研究ネカト取り扱い手順で注意を喚起してほしい。

そして、警察がSNS上の罵倒暴言者の情報をブロバイダに要求し、個人を特定し、処罰を与えている現実を、もっと伝えた方がいい。

なお、病気に追い込むのは自殺の一歩手前である。記事で扱うのは自殺だが、病気に追い込まないことも同じだ。

ただ、一般論として、自殺の心理・病理は難解で、防止は難しい(気がする)。研究ネカト行為やその疑惑が原因で自殺したのかどうかわからないことが多い。科学者の自殺一般論も少し加えたい。

世界保健機関(WHO)の指針「自殺予防 メディア関係者のための手引き」がある。

 写真や遺書を公開しない
 具体的で詳細な自殺手段を報告しない
 単純化した理由付けをしない
 自殺を美化したり、扇情的に扱わない
 宗教的な固定観念や文化的固定観点を用いない
 悪人探しをしない

このブログ記事はニュース報道ではなく分析を目的とした記事である。しかし、基本的に上記の指針に従う。

つまり、通常は事件を理解するため、なるべく人物写真を掲載するのだが、今回は、1人を例外的に扱う以外、他は人物写真を掲載しない。自殺手段を具体的に記載しない。悪人探しも、システムとして分析するが、個人を特定することはしない。

●2.【研究ネカトで自殺:日本】

新しい方から古い方に10年間、探ってみよう。

★【理化学研究所の笹井芳樹・副センター長の自殺:2014年】

本人が研究ネカトでクロと判定されたわけではない。共同研究者・小保方晴子がクロ(あるいはクロ確実)と判定されていた。

理化学研究所の笹井芳樹・副センター長の笹井芳樹は、精神的に追い詰められ1か月入院していた。その状態の人に、研究室仲間、研究ネカト調査委員、メディア、所属研究機関(理化学研究所)、発言した有識者は、自殺予防の処置・配慮をしたのだろうか? SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上の罵倒暴言を排除できないかったのだろうか?

笹井芳樹の自殺の原因と予防に関する分析的な記述を調べていないが、小保方事件と笹井芳樹の自殺に関する日本語の記事・本・調査報告書はたくさんある。ここでは、以下の文章を引用する。

→ 2014年8月6日のNewsphere編集部の「ニュースフィア」記事笹井氏自殺、世界も衝撃 一連のSTAP論文騒動、日本の科学界への信頼失墜と海外報じる | ニュースフィア保存版

理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の副センター長、笹井芳樹氏が、5日午前、自殺した。

5日午前9時頃、CDBに隣接した先端医療センターの建物内で、首を吊っている笹井氏が発見され、病院に搬送されたが、2時間後に死亡が確認された。事件現場と笹井氏の秘書の机に遺書が残されており、警察は自殺と断定した。

笹井氏は、掲載誌『ネイチャー』から取り下げられたSTAP細胞論文の共著者で、小保方晴子氏の実験を基に、執筆を指導していた。

【事件の概要】
 幹細胞研究、特にES細胞研究に関しては、笹井氏は世界のトップレベルの研究者であり、2012年にはマウスの細胞から目の網膜を生成するなど、再生医療に多大な貢献もあった。
 理研理事長の野依氏は「世界の科学界にとってかけがえのない科学者を失ったことは痛惜の念に堪えません」とコメントしている。菅官房長官は「世界的に大きな功績があった。非常に残念だ」と述べている。

【STAP細胞論文撤回問題と笹井氏の立場】
 騒動の発端となったSTAP細胞に関する研究、論文の執筆において、笹井氏は主たる執筆者である小保方氏を指導する立場にあった。1月にネイチャー誌に発表された論文には程なく疑義が出され、7月頭には撤回された。笹井氏は、論文の撤回には同意しつつもSTAP細胞仮説自体については肯定する意見を表明していた。

この問題について、理研の改革委員会は、笹井氏の「責任は重大」としている。

理研の発表では、笹井氏はストレスによって3月から1ヶ月程入院していた。また、広報室長の加賀屋氏の話では、「疲労困憊」しているようだったとのことだ。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

この事件の情報はたくさんある。白楽は、改善すべき点を分析しません。読者が考えてください。

★【滋賀大学の盗用者の共同研究者である女性教授の自殺:2012年】

滋賀大学教育学部の宮田仁(ミヤタ ヒトシ)・教授が盗用で諭旨解雇された。宮田仁・教授の共同研究者である同じ学部の女性教授が自殺した。

→ 2014年6月4日の京都新聞記事「論文盗用で自殺」滋賀大と元教授提訴 共同研究者の遺族 : 京都新聞

滋賀大の宮田仁元教授=諭旨解雇=が不正論文を発表していた問題で、共同研究者だった女性が自殺したのは、元教授による論文盗用や大学の不公正な調査などが原因だとして、京都市の女性の遺族が4日までに、元教授と滋賀大を相手に計約1億1千万円の損害賠償を求めて京都地裁に提訴した。

 訴状によると、共同研究者だった教授の女性は2011年6月、宮田元教授の不正行為に関して大学側に調査を申し立てた。大学側は12年2月に調査結果を公表し、元教授が女性の論文を盗用したと認定した。女性は調査への協力や不正行為への対応、学内業務などで心労が重なり、同年8月にうつ状態と診断され、9月に自殺した、という。

 女性側は「元教授は(女性の)研究者として生きる道を閉ざし、真相解明を長期間妨害した」とし、大学側について「元教授の調査妨害を軽信して公正さを欠く調査を行った。大学の人事審査の粗雑さが重大な結果をもたらした」と主張している。

以下、年代記で経過を追ってみよう。

2009年ごろ、宮田仁・教授(53歳)は、女性教授の論文を無断で複製して別の論文として発表した。

2011年7月、滋賀大学は、女性教授の申し立てを受けて調査委員会を設置した。

2012年2月10日、滋賀大学は、宮田仁・教授が女性教授の論文を盗用したとする調査結果を発表した。
→ 「教育学部教員の研究活動における不正行為に関する調査結果(概要)」(保存版

調査委員は学内5人、学外1人だが、研究ネカト専門家は誰もいない。法律関係の専門的知識を有する教員が1人(学内)が入っていた。

2012年8月、女性教授はうつ病を発症。

2012年8月、女性教授は自殺した。

なお、世界変動展望によると、宮田仁は相当にヒドイ。以下、文献部分を省いて引用する。太字・赤青字は原文通り。
→ 滋賀大、宮田仁(Hitoshi Miyata)が論文改ざん、盗用等で諭旨解雇! – 世界変動展望保存版

調査報告書(概要)によると、論文11編で調査時期を偽るなどしてデータを流用(改ざん)、論文6編で盗用、論文の重複投稿6編、共著者の同意を得ない投稿も7編あった。かなり大規模でいろいろな研究不正をやった。これだけやれば懲戒解雇が当然だ。しかし、処分は諭旨解雇にとどまった。その理由として

『大学側は諭旨解雇にとどめた理由について「発覚後、論文取り下げなど誠実な対応や謝罪をしているため」とした。』

この不正の原因が宮田の著しい倫理意識の欠如であることは佐和隆光学長も指摘した。

『佐和隆光学長は「研究者倫理の欠如に起因する許しがたい行為で遺憾。今後、研究活動の不正行為防止に全学的な対応を図る」とコメントした。』

業績向上のためには周りにどれだけ迷惑をかけようと構わないというとんでもない考えの持ち主で、そのために改ざんや盗用など多岐にわたる不正を反復して行った。宮田は動機として『忙しかったり、思うような結果が得られなかったりしたので、つい、以前のデータを使ってしまったと出来心で不正をしてしまったかのように供述しているが嘘で、調査委員会が『宮田教授の研究活動における不正行為は、偶発的ではなく、改ざんに見られるように、長期にわたり繰り返し行われている。』と指摘したように明らかな故意犯かつ常習犯で著しい倫理意識の欠如が原因である。論文11編で改ざん、論文6編で盗用、論文の重複投稿6編、共著者の同意を得ない投稿を7編もやって「ついやってしまった」などという言い分けが通用するはずがない。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

では、こういう人物の宮田仁・教授と共同研究をし、研究ネカトを告発した女性教授の自殺をどうすれば防げただろうか?

同じ大学の共同研究者の告発は慎重に進める必要がある。特に、告発すると、研究仲間はほぼ敵に回る。良くても疎遠になる。味方になってくれる身近な研究仲間はいなくなる。女性教授はこのことに十分な注意をしなかったのかもしれない。

前述の京都新聞記事によれば、以下のようだ。

遺族側は、「宮田仁・教授の不正行為で心理的負荷が発生していると知りながら、滋賀大学が女性教授に適切な対応をしなかった」と主張している。

滋賀大学が適切な対応をしなかったと、遺族は判断している。滋賀大学の不適切な対応とは、具体的には何を指すのだろう? 調査委員の言動が不適切だったということだろうか?

調査委員6人の内、5人が学内者では、学内ヒエラルキーがそのまま効いてしまう。調査が公正ではなかったと疑われても不思議ではない。文部科学省のガイドラインが示すように学外委員を半数以上入れることを徹底させることも必要だろう。

★【鹿児島大学・歯学部付属病院の松山航・助教の自殺:2007年】

発覚の経緯や調査の進行について信頼できる報告がウェブ上に十分残されていない。

→ 2007年11月13日の「asahi. com:」記事:asahi.com:論文データ改ざんした鹿大病院助教が自殺-マイタウン鹿児島

それで、信頼度はイマイチだが以下のサイトから状況を整理した。〔 〕内はスレ番号
→ 【論文捏造疑惑】鹿児島大学 神経内科【大学病院】保存版

以下は原典そのままの文章を流用した部分と要約・改変した部分のミックスである。

  • 2006年3月x日、ニュース記事〔7〕:鹿児島大学・歯学部付属病院の助教・松山航(まつやま わたる)は、米国病理学会誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー」に論文を掲載。
  • 2007年x月x日、ニュース記事〔7〕:掲載後、読者から同じ図表が重複して使われていることや、症例の平均値が似通っていることなど不審点の指摘があり、同誌編集者が松山助教に論文の元データを提出するよう要請した。
  • 2007年x月x日、編集者は、実験データの妥当性に疑惑があるとして鹿児島大学に調査を依頼した。
  • 2007年9月4日、「asahi. com:」記事:鹿児島大学が松山助教から聞き取りをしたところ、データの改ざんを認めた。「思うような結果が得られなかったので改ざんした」などと話した。
  • 2007年10月11日、「asahi. com:」記事:鹿児島大学が松山助教の研究ネカト疑惑を発表し、同日付で調査委員会を立ち上げた。
  • 2007年11月1日、ニュース記事〔267〕:自宅謹慎中だった松山航・助教(当時38歳)が自宅で自殺した。家族が見つけた。大学では外部の委員も入れた調査委員会を設け、他の論文でもデータの信用性に問題がないかなどについて調査していた。調査委員会ではまだ松山航から直接事情を聞いていなかった。
  • 2008年5月16日、ニュース記事〔792〕:鹿児島大学は、松山航が14編の論文でデータのねつ造や改ざんを行っていた。共著者は不正に関与していない。とする調査結果を明らかにした。
  • 2008年12月25日、松山航を戒告の懲戒処分にした。

鹿大病院論文データ改ざん:鹿大、共著者の准教授を戒告処分 (毎日新聞・2008/12/26)

鹿児島大(吉田浩己学長)は、医学部・歯学部付属病院の松山航准教授(当時38歳)=07年11月に自殺=による論文のデータ改ざん問題で、上司で論文の共著者だった同大学院医歯学総合研究科の准教授を25日、戒告の懲戒処分にしたと発表した。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

鹿児島大学の調査委員が本格的な調査をする前、鹿児島大学がデータ改ざんと発表する前に自殺している。

研究室仲間、大学、予備調査に問題があった印象だが、詳細を把握していないので、改善点がわからない。

★【大阪大学・生命機能研究科の男性助手(42歳)の自殺:2006年】

2006年9月1日、大阪大学・生命機能研究科の男性助手(42歳)が研究室で自殺をした。遺書もあった。研究室の上司である杉野明雄・教授の論文ねつ造事件に絡んだ自殺だった。

→ 2006年9月7日 の「stochinai」の記事どこまで続く論文ねつ造事件 【11日にも追記あり】 : 5号館を出て保存版

以下、引用する。

どうやらこれは論文ねつ造事件へと展開していく気配をみせています。

大阪大大学院生命機能研究科(大阪府吹田市)の研究室で自殺したとみられる男性助手(42)が、自分の研究データを改ざんされたうえ論文を米国の科学雑誌に投稿されたとして取り下げを訴えていたことが6日、分かった。論文は異例の取り下げとなった。同大学が論文取り下げの経緯などについて調査を行っている最中に助手は自殺しており、大学は事実解明に乗り出した。

朝日の記事では、自殺した助手以外の共同執筆者からも疑義が出されていたと書かれています。

阪大などによると、論文は責任筆者の教授と自殺した助手ら他の研究者4人が共同執筆した。酵母菌を用いてDNA複製の仕組みの一部を調べた内容で、7月12日に米国の生物化学専門誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」の電子版に掲載された。

しかし、8月2日に筆者側の申し出で論文は取り下げられた。関係者によると、助手を含む複数の共同執筆者が「オリジナルデータと論文のデータとの間に食い違いがある」と指摘。大学は同9日から調査を始めた。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

ブログ主の「stochinai」は、自殺の原因を以下のように類推している。

  • 助手の方の自殺がそうした将来を悲観したことが今回の自殺の原因かどうかはわかりません。
  • 自分の知らない間にデータをねつ造したばかりではなく、論文の共著者にされてしまったことへの抗議だったのかもしれません。
  • 大学がその件について調査をしていたということですので、その過程でデータねつ造を疑われたり、内部告発を非難されたりして、落ち込んでしまったのかもしれません。

●3.【研究ネカトで自殺:外国】

新しい方から古い方に30年間、探ってみよう。

★【韓国の獣医師・パク・サンピョ(45歳)の自殺:2014年】

2014年1月21日、獣医師で「国民の健康のための獣医師連帯」政策局長のパク・サンピョ(45歳)が、ホテルの客室で自殺した。2008年、米国産牛肉の輸入再開に対して、狂牛病の恐怖をあおったとして非難されていた。

動画で、狂牛病ではない牛が座り込むのを狂牛病の牛のように仕立てたねつ造だ、とも非難されていた。

→ 2014年1月27日の金東椿(キム・ドンチュン)の記事[世相を読む] 科学者の自殺/金東椿(キム・ドンチュン) : 社説・コラム : ハンギョレ保存版

崇礼門(スンネムン)復元に使われた材が国内産かを検証する仕事を請け負った木材年輪分野の国内最高権威者パク・某教授の自殺と、2008年当時に狂牛病の危険を知らせた獣医師パク・サンピョの自殺が私たちに衝撃を与えた。 私たちは彼らがなぜ自殺という道を選んだのか、まだよく分からない。 しかし彼らは自身の分野に並みはずれて深い専門的知識と強い所信を持つ人として良く知られていて、パク教授の場合には死ぬ前に2回も警察の捜査まで受けるなど、そのことで強い外部圧力を受けた疑いがある。

私はこの二人とも自然科学者という点に注目する。(・・中略・・)。科学者や技術者は、自身の専門性で生計を立て、その専門性が自身の自尊心と人生の根拠であり生きがいだ。 彼らにとって自身の所信と判断を放棄して、権力の要求に服従しろという言葉は、自身の存在を否定しろということと同じだ。 だからこそ私たちは科学技術者の合理的疑問と判断に耳を傾けなければならず、彼らの所信が権力と資本の論理に屈折されないよう十分な装置を用意すべきであり、彼ら自身もまた金と自尊心を対等交換をしてはならない。

ところで我が国社会は政治社会的にきわめて敏感な事案に対する法学、医学、物理学、各種工学専攻者たちの正当な疑問や判断を傾聴するどころか、むしろ自身の所信に固執しつつ社会に警告を送る専門家たちを組織不適応者に追い立てたり、最近では従北というレッテルまで貼り付けている。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

この事件の詳細を把握していない。把握してから、記述する(かも)。

★【カナダの医薬研究者・ロデリック・マックアイザック(46歳、男性)の自殺:2012年】

2012年、カナダのブリティッシュ・コロンビア州(British Columbia)政府の7人の医薬研究者が「研究上の不正行為」(患者の個人情報の漏洩?)のため解雇された。

2012年12月、7人のうちの1人・ロデリック・マックアイザック(Roderick MacIsaac)が自殺した。

ロデリック・マックアイザックは、カナダのビクトリア大学(University of Victoria)の院生だったが、解雇されたことで、博士課程を修了できなかった。

正式な調査の結果、「研究上の不正行為」はなかったと結論された。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

この事件の詳細を把握していない。把握してから、記述する(かも)。

★【国立台湾大学・助教授のユーリ・リン(38歳、男性)の自殺:2012年】

ユーリ・リン、林育誼(Yu-yi Lin)は、国立台湾大学で医師免許を取得後、米国のジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の大学院に入学し、ジェフ・バエク教授(Jef D. Boeke)の研究室で研究博士号(PhD)を取得した。

2009年台湾に帰国し、国立台湾大学・助教授になり研究室を主宰した。

2012年2月、台湾からバエク教授を共著者に「2012年のNature」論文を発表した(以下)。この論文は、2013年11月に撤回された。

ダニエル・ユアン(Daniel Yuan、男性)は、2011年12月にバエク教授研究室を去った遺伝統計学者である。「2012年のNature」論文のデータ異常に気が付き、ネイチャー編集局に調査するよう依頼した。

ネイチャー編集局がバエク教授とユーリ・リンにユアンの指摘を送付した。

バエク教授は調査に時間がかかると返事をした数日後の2012年8月8日午前11時頃、ユーリ・リンは台湾の自分の研究室で自殺した。妻と3人の娘が残された。

遺書はなかったが、リンが死亡して数時間後、リンの電子メールアドレスからユアンにメールが送付された。「リンは今朝死亡しました。あなたはこれで満足でしょう」

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

死後、ユアンに自動的にメールが送られるようにしていたことから、ユアンの指摘が相当ショックっだったに違いない。

しかし、ユアンが告発した行為自体は非難されるどころか、むしろ、褒められることだ。

ネイチャー編集局がバエク教授とユーリ・リンに送付したメールを公開すると言いながら、ネイチャー編集局は公開していない。

どうもよくわからない。ネイチャー編集局のメール内容が過激だったのだろうか?

この事件の詳細を把握していない。把握してから、記述する(かも)。

【情報源】

★【米国・メイヨー・クリニックのジョセフ・ラストガーテン(48歳)が胃がんで死亡:2011年】

2011年6月30日、メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)・準教授のジョセフ・ラストガーテン(Joseph Lustgarten)が胃がんで亡くなった。

ただ、ラストガーテンが責任者である以下の「2011年のJ Exp Med.」論文が死の直前に研究ネカトの告発を受けていた。

胃がんで亡くなっているので、自殺ではない。ただ、7月号に論文を発表し、直ぐに亡くなっている。死因が改ざんされたということはないだろうね。例えば、保険などの理由で。

死亡後、論文読者が共著者たちに論文の異常を指摘してきた。この告発を受け、メイヨー・クリニックも調査委員会を発足し、調査した。

それはそれでいいけど、ラストガーテンが死亡後に共著者たちに論文の異常を指摘してきたということは、死亡前に、ラストガーテン本人に直接指摘していただろう。それで、自殺したということは、本当に、ないんでしょうね。

【情報源】

★【米国・マウントサイナイ病院の細胞生物学者・マリア・ダイヴァース=パールルイシイ(女性)の自殺:2011年】

マリア・ダイヴァース=パールルイシイ(Maria Diverse-Pierluissi)は米国のマウントサイナイ病院(Mount Sinai Medical Center)の細胞生物学者だった。

2011年5月7日、マリア・ダイヴァース=パールルイシイ(Maria Diverse-Pierluissi)は自殺した。

マウントサイナイ病院の調査委員会によると、ダイヴァース=パールルイシイは4報の論文でデータねつ造・改ざんをしていた。

2011年6月17日、学術誌「Journal of Cell Biology」はダイヴァース=パールルイシイの4報の論文を撤回した。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

情報が少な過ぎて、この事件の詳細を把握できない。自殺予防法を推察できない。

【情報源】

★【ブラジルの神経外科医・ジュリオ・クルズ(52歳、男性)が自殺:2005年】

ジュリオ・クルズ(Julio Cruz)は、1995年3月(42歳)まで米国のペンシルヴァニア大学で神経外科医として活躍し、ブラジルのサンパウロ連邦大学(Federal University of São Paulo)・教授に帰国した著名な神経外科医である。

2001年~2004年の論文で、クルズは頭部外傷を高マンニトールで治療すると治療後の死亡率・障害率が劇的に改善されるという臨床結果を3報発表した。

  • Cruz J, Minoja G, Okuchi K.
    Improving clinical outcomes from acute subdural hematomas with emergency preoperative administration of high doses of mannitol: a randomized trial.
    Neurosurgery 2001;49(4):864-71.
  • Cruz J, Minoja G, Okuchi K.
    Major clinical and physiological benefits of early high doses of mannitol for intraparenchymal temporal lobe hemorrhages with abnormal pupilary widening.
    Neurosurgery 2002;51(3):628-38.
  • Cruz J, Minoja G, Okuchi K, Facco E.
    Successful use of the new high-dose mannitol treatment in patients with Glasgow Coma Scores of 3 and bilateral abnormal pupillary widening: a randomized trial.
    Journal of Neurosurgery 2004;100(3):376-83.

2005年5月12日(52歳)、理由は不明だが、ジュリオ・クルズは自殺した。

2006年5月、ところが、ある研究者が学会(Latin American Brain Injury Consortium in Brazil)で、ブラジルの医師から奇妙なことを告げられた。クルズはブラジルでは患者を治療していなかったと、告げられたのだ。

それで、論文データにねつ造嫌疑がかかり、学術誌編集局が調査を開始した。クルズ本人が亡くなっているので、論文共著者に確認することになった。

共著者の1人「Okuchi K」は奈良県立医科大学で救急医学・脳神経外科学を専門とする奥地一夫・教授(Okuchi Kazuo)だった。

奥地教授は、論文結果を保証するデータを持っていないと伝えた。他の共著者も似た返事だった。

つまり、論文はデータねつ造が濃厚であるが、クルズが死亡しているので、確証は得られない。

2006年10月、サンパウロ連邦大学(Federal University of São Paulo)に確認すると、サンパウロ連邦大学はジュリオ・クルズを雇用したことはないと述べたのだ。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

この事件そのものが、よくわからない。自殺予防法もわからない。

【情報源】

★【カナダのマギル大学のジャスティン・サージェント準教授(44歳、女性)の自殺:1993年】

ジャスティン・サージェント(Justine Sergent、女性)は、1950年3月31日、レバノンに生まれた。カナダのマギル大学(McGill University)で学士号、修士号、博士号を取得し、神経科学の準教授になった。当時、この分野ではカナダの第一人者だった。

サージェントだけ、このブログ記事で例外的に人物写真を掲載した。というのは、日本の読者は中東の国・レバノンで生まれ育った女性をどうイメージするのかわからないが、白楽のイメージと、写真の人物像は大きく異なった。それで、事件が誤解されないように、人物写真(出典)を掲載する。

3-justine-sergent1992年7月、サージェントは、ピアニストの脳機能の研究を学内倫理委員会にはかったところ、承認が得られなかった。

サージェントは、最悪の技術的誤りを犯した、と後に、述べている。彼女の実験対象である人に危険はなかったし、インフォームド・コンセントもとった。彼女の類似の研究プロジェクトに、倫理委員会は、以前は承認していた。だから、彼女は今回も十分承認が得られると思っていた。

1992年7月、サージェントは、倫理違反を非難する匿名の手紙を受け取った。

匿名者はマギル大学にも告発していた。

1993年1月、マギル大学のデイヴィット・ジョンストン学長(David Johnston)は、サージェントを研究ネカトを理由に懲戒処分した。

サージェントは調停に訴えた。

匿名者は、調停の会議が開催される少し前、モントリオール・ガゼット紙にサージェントが研究ネカトをしているという手紙を発送した。

1993年4月9日、モントリオール・ガゼット紙は「規則を破った研究者をマギル大学が処分」という見出しの記事を書いた。

翌日(1993年4月10日、44歳)、サージェントは長い遺書を残して、夫とともに自宅の車庫で自殺した。そこには、2年間のいじめと悪夢のことがつづられていた。

遺書の一部には、「新聞で暴露され、心の均衡、自信、私の仕事、私のキャリアが吹き飛ばされ、私は耐えられません」とあった。

デイヴィット・ジョンストン学長は自殺の報を受け、それでも研究ネカト嫌疑の調査をすすめ、終われば調査報告書を公表すると述べた。

3年後の1997年3月20日、調査報告書は公表されていないが、マギル大学は調査をやめていた。研究ネカトの証拠は見つかっていない。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

遺書は明らかにモントリオール・ガゼット紙の記事にショックを受けたことを示している。記事はガセネタをもとにした誤報だったのか、誤報でないが論調が過激だったのかどうか、白楽は把握していない。

しかし、公益性がある「事実」を新聞記事にすることは、社会ルールに反していない。もちろん、社会ルールに反していなければ、正義なら、人が死んでもいい、というわけではない。

サージェントは、それまで2年間、大学から不当な扱いを受けていたと感じていた。これが根底にあるところに、新聞記事がキッカケになったのだろう。

では、どこをどうすれば自殺を防げたか?

大学の対応や調査委員にも改善点がありそうだが、基本はメディアである。

その点を明確にするには、事件そのものとメディアの対応、記事の詳細、新聞社の報道指針の詳細をもっと知る必要がある。

【情報源】

★【スイスのチューリヒ大学のウイルス学者・イシドラ・バラット(Isidro Ballart)の自殺:1992年】

スイスのチューリヒ大学のウイルス学者イシドラ・バラット(Isidro Ballart)が研究ネカトで1992年に自殺している。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

情報が少な過ぎて、この事件の詳細を把握できていない。自殺予防法を推察できない。

【情報源】

★【米国・NIHの研究ネカト者のボスであるハワード・アイゼン室長(40代?、男性)の自殺:1987年】

ハワード・アイゼン(Howard Eisen)は米国・NIHのNICHHDの発生薬学研究室の室長だった。

1986年夏、上司である研究部長のダニエル・ネバート(Daniel W. Nebert)がアローク・バンダイオパディヤイ(Alok Bandyopadhyay)を客員研究員として雇用し、アイゼン研究室に配置した。

1986年10月頃、ネバート部長はバンダイオパディヤイの出したデータで、バンダイオパディヤイを第一著者とする論文を書いて、学術誌PNASに投稿しようとしていた。

アイゼン室長は、ネバート部長から投稿前の原稿をチェックするようにと、原稿を渡された。そして、チェックするうちに、投稿前の論文原稿にデータの異常があると気が付いた。登校前ではなく、投稿後、査読者がデータの異常を指摘した、という記述もある。

アイゼン室長は、論文データの異常を調べた。原稿に記載されたデータと実験データが合わないのだ。そして、その説明を、バンダイオパディヤイに求めると、バンダイオパディヤイは適切に答えられなかった。つまり、バンダイオパディヤイは実験がうまくいかなかったので、データをでっち上げたのである。

アイゼン室長は、バンダイオパディヤイの過去を調べた。すると、履歴書の前職や業績リストの出版論文にねつ造が見つかった。

1986年11月、ネバート部長はバンダイオパディヤイを解雇した。

1987年1月28日、アイゼン室長は、第一回目のNIH・研究ネカト調査委員会に出頭した。この時、バンダイオパディヤイも召喚されていたが、雲隠れして会議に来なかった。3人の調査委員に対し、アイゼン室長は、1人で回答した。

その後、バンダイオパディヤイに何度連絡しても返事がない。米国にいるようだが、親戚はバンダイオパディヤイの居場所を黙秘している。

10日後(1987年2月7日)、アイゼン室長は自殺した。

アイゼン室長の妻・ローラは、第一回目のNIH・研究ネカト調査委員会が決定的で、その日、帰宅した夫はパニック状態だったと述べている。自分(アイゼン室長)も不正をしたのではないかと疑われていると感じたそうだ。

ハワード・アイゼン(Howard Eisen)の妻・ローラも研究者である。メリーランド州にある陸軍医科大学・ユニフォームド・サービシズ・ユニバーシティ・オブ・ザ・ヘルス・サイエンシズ(Uniformed Services University of the Health Sciences)の化学者である。

息子のマイケル・アイゼン(Michael Eisen)は、父親が自殺した時、19歳の大学生だったが、2016年8月21日現在は、カリフォルニア大学バークレー校の著名な生物学者である。息子のマイケル・アイゼンは父親の自殺について何回か文章にしている。

アイゼン室長の研究者仲間は、「アイゼン室長は事件のことで動転していた。バンダイオパディヤイが将来、政府研究費の助成を受けられないように処置したいと望んでいた」と述べている。

妻・ローラは、「夫・アイゼンはとてもまじめな人で、夫は事件のことで非常に悩んでいた」と述べている。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

研究ネカト者ではなく、その告発者で上司の自殺である。このケースは、理化学研究所の笹井芳樹、滋賀大学の盗用者の共同研究者である女性教授のケースと似ている。

研究ネカトを調査する場合、最終的に1人が研究ネカトをしたという結論に至る時でも、途中、その行為者を特定するまでの調査に、論文共著者を全部チェックすることになる。それも、疑いの目で調査する。

そして、最初から不正をするつもりがない人は、自分の嫌疑を晴らす準備などしていない。嫌疑を晴らすのは容易ではない。不安が高まり、ストレスが高くなる。

この事件では、調査委員の言動に問題があったと考えられる。調査委員の言動の調査がされていない。詳細を分析し、自殺を引き起こした言動を特定し、その部分を改善すべきだろう。

160813 Alok Bandyopadhyay出典:Research Misconduct: Issues, Implications, and Strategies – Ellen Altman, Peter Hernon – Google ブックス

【情報源】

★【米国の著名大学・教授・ヘンリー(仮名)の自殺:1980年代?】

ヘンリー(仮名)は素晴らしい研究成果を上げて、著名な大学の正教授に移籍した。ところが、残された彼の院生は、ヘンリーの論文を再現できない。院生は、何度もヘンリーに連絡し、研究室で、実験を指導してくれないかと要望した。

ヘンリーは仕方なしに、元の研究室に戻り、実験をするが、自分でも再現できなかった。

そして、ヘンリーは自殺した。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

この話は、ヘンリー(当時、ポスドク)と同時期に同じ研究室で院生として過ごした著者の話である。

この事件そのものが、よくわからない。自殺予防法もわからない。

【情報源】

★【オーストリアの生物学者パウル・カンメラー(46歳)の自殺:1926年】

科学史に残る研究者の自殺といえば1926年にオーストリアの生物学者パウル・カンメラー(Paul Kammerer)がピストル自殺した事件がある。サンバガエルの遺伝研究でカエルの手に黒インクを注入するデータねつ造が発覚し、46歳でピストル自殺した。
→ パウル・カンメラー(Paul Kammerer)(オーストリア)

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】

時代が古いので、白楽は分析放棄。

●4.【研究者の自殺:他の視点】

【研究ネカト以外の研究者の自殺事例】

研究ネカトとは別の理由で自殺する研究者の例を少し上げる。つまり、当たり前だが、研究者の自殺は研究ネカト疑惑だけではない。ということも理解して欲しいからだ。

最初の例は事件とは無関係で、研究者の自殺としては一般的だ。2例目と3例目は研究ネカトではないが事件の首謀者とされた例である。大きな事件の首謀者として非難されれば、生きるのは大変になる。

★【英国・マンチェスター大学の化学者・イソベル・マックスウェル=キャメロン(25歳、女性)の自殺:2014年】

2013年10月、イソベル・マックスウェル=キャメロン(Isobel Maxwell-Cameron)は、ニュージーランドのオタゴ大学(University of Otago)で有機化学の研究博士号(PhD)を取得した。その後、英国のマンチェスター大学(University of Manchester)の化学科に研究職を得た。

2013年11月、祖父が亡くなる。

2013年12月、クリスマスを1人で過ごす。

2014年1月 5日、実験がうまくいかず、孤独とホームシックで自殺未遂をした。ニュージーランドにいる母親にそのことを電話している。

その後、精神科に行き、薬を処方してもらった。ヘルスケア支援者とも話し合った。

仕事も続けたが、友達に自殺未遂のことを告げていない。ただ、ニュージーランドにいる母親にニュージーランドに帰りたいと頻繁に電話している。

2014年1月 11日、死体が発見された。25歳だった。渡英してわずか3か月余りだ。

ある意味、研究者の自殺の典型例だろう。大きく変化した新しい環境で、仕事に行き詰まり、研究に向いていないと思い込んだ。友達もできない。失敗が多いので別の仕事を打診され、将来に夢が持てず、自分の能力の低さに自責の念に駆られた。

24歳で研究博士号(PhD)を取得したのだから、相当優秀で飛び級と思う人もいるかもしれないが、ニュージーランドの高等教育制度は英国と同じで、ストレートに進むと24歳で研究博士号(PhD)が取得できる。

ドイツの研究所を訪問した時、この英国の制度への批判の声を聴いた。英国の博士は、実験研究の実力がないというのだ。そりゃそうだろう、他国で博士号を取得するならストレートでも27歳、つまり、5年間の院生時代が必要だ。それなのに英国では21歳で学士号で、その3年後に博士号では、専門教育が6~7割ほどしかない。

だから、マックスウェル=キャメロンも世界標準で言えば、博士レベルの実力がなかったのだろう。ウン、まてよ、就職先は英国の大学だから、ここは英国標準で考えればよいということだ。ゴメン。

【情報源】

★【米国の陸軍感染症医学研究所・微生物学者・ブルース・イビンズ(62歳、男性)の自殺:2008年】

研究ネカトではないが事件の実行者とされた例。

同時多発テロ事件の1週間後の2001年9月18日、米国のテレビ局、出版社、上院議員に炭疽菌が送られ、5人が肺炭疽で死亡し、17名が負傷したアメリカ炭疽菌事件がある。

この事件の単独実行犯として、陸軍感染症医学研究所の研究者・ブルース・イビンズ(Bruce Edwards Ivins)が、FBIから犯人だと目をつけられていた。

2008年7月29日、FBIから逮捕が近いことを知らされて、イビンズは自殺した。62歳だった。

2008年8月6日、FBIは、アメリカ炭疽菌事件はイビンズの単独犯行だと発表した。

2011年2月に発行された米国科学アカデミーの報告書には、科学的手法を用いて独自に調査した結果、イビンズの犯行と断定した米司法省の報告書には疑問が残ると記されている。

【情報源】(以下を文章を上記でそのまま使用している部分もある)

★【英国の生物兵器科学者・デイヴィット・ケリー(59歳、男性)の自殺:2003年】

研究ネカトではないが事件の実行者とされた例。

英国の生物兵器科学者・デイヴィット・ケリー(David Kelly)が自殺した。

この事件は、BBCギリガン記者が匿名の取材源から得た情報として、イギリス政府が2002年9月に発表したイラク大量破壊兵器の情報は、事実を誇張していると、2003 年5月29日 ラジオ放送で暴露したことから事件は始まった。

2週間後、国防総省は情報源はケリー博士だとマスコミにリークし、7/9 ケリー博士は外交委員会で喚問を受けた。

2003 年7月18日そしてケリー博士は死んだ。警察当局は自殺だとした。(ケリー博士の不審死について | ハムレットの水車小屋

殺人だという指摘もあるが、闇の中です。

【情報源】

【研究者の自殺一般論】

★【米国の職業別自殺率ランキング:2014年】

米国の職業別自殺率ランキングがある。研究者や医療関係者がランキングに入っている。

→ 2014年11月03日のkonohazuku(翻訳者)の「カラパイア」記事アメリカで自殺率の高い10の職業 : カラパイア保存版
→ 原文:2014年10月24日の「Richest」記事The 10 Professions With the Highest Suicide Rates – TheRichest保存版

第10位:科学者
科学者の自殺率は、一般の人の1.28倍。年間およそ、45人の男性科学者、5人の女性科学者が自ら命を絶っている。中でも化学者はもっとも自殺しやすく、研究助成金を断られた、ある女性化学者がシアン化合物を飲んで自殺した例がある。

第9位:薬剤師
薬剤師も度重なる仕事のストレスから逃れられない運命にある。彼らは薬を処方して患者の健康に責任をもつ仕事だが、薬代を支払う余裕がなかったり、保険でまかなえなかったりする患者を相手にする場合は、その患者の怒りの矢面にたたなくてはならないことがよくある。

第2位:歯科医
歯科医の自殺率は通常の1.67倍。どの職業にも高いストレスはつきものだが、その中でも歯科医はもっともストレスのたまる職業だと考えられている。
 身入りが良く、やりがいのある職業だが、長時間労働、モンスター患者とまではいかないまでも、協力的でない患者、成功や安定の保証は一切ない不安がつきまとう。こういったことが原因で、歯科医は精神疾患になりやすいと言われているが、さらにこうした精神疾患の治療を受けたがらないことも、高い自殺率の原因だとされている。

第1位:医者
医者の自殺率は通常の1.87倍。アメリカの一般人口の死亡数の約2%を占めるという。医者の死亡数の4%は自殺によるもの。職業柄、ストレスフルで、医者の場合、鬱や精神疾患に苦しんでいても治療しようとしないケースが多い。
 精神疾患治療のために同業者の力をかりなければならないことが公になると、自分のキャリアに差しさわりがあるのではと恐れるのかもしれない。さらに、医学の知識のある医者は、自殺するのにどの薬を使えばいいかなど、詳しく知っているからという説もある。

ちなみに国別の自殺者数で見ると、アメリカは人口10万人あたりの自殺者数は12.35人、一方日本は21.4人と日本の方が倍近く高い。また、警視庁が発表した職業別自殺者数(2013年)http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2740-2.htmlによると、無職、失業者、主婦、学生、年金雇用保険生活者を除くと、1)自営業、2)事務員、3)農林漁業、4)販売員、5)運送業、6)土木建設、7)建設、8)医療従事者、9)セールスマン、10)会社役員となっている。

最後の節は日本の自殺者を比較して述べた形で、ここに科学者が入っていないことで安心してはいけない。日本の数値は自殺者数であって、自殺率ではない。比較にならないのを並置している。

●5.【対策】

★大学・研究機関の改善点

  1. 大学・研究機関に研究倫理官(≒研究倫理教育責任者)を1人置く。
    大学・研究機関の研究ネカト調査委員に、この研究倫理官(研究ネカト専門家)を加えなければならない。研究倫理官は研究ネカト疑惑者の精神面を配慮することも業務の1つとする(調査手順に組み込み、スキルを身につけさせる)。
    → 文部科学省の2014年版ガイドライン(p11)に「研究機関は、「研究倫理教育責任者」の設置などの必要な体制整備を図り」とある。http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf
  2. 調査委員の半数以上を学外者にすることを徹底させる(文部科学省の2014年版ガイドライン(p15))。
  3. 研究ネカトの調査手順に、疑惑を受けた研究者の自殺懸念を記述する。具体的な注意点も記述する。調査で、自殺に追い込むような言動を禁止する。また、調査の透明化を図る。つまり、研究ネカト調査委員会会議をビデオ録画する。録画ビデオは大学・研究機関外に保管する。
  4. 大学・研究機関の研究ネカト調査委員に、精神的ケアができる臨床心理士(のような人)を1人加える。

★大学・研究機関の検討点

  1. 大学・研究機関の調査委員は研究ネカト調査の適格性・能力スキル・公正性に問題が生じやすい。国家組織(創設する)から研究ネカト専門家を派遣し、その指導下に調査を行なわせる。
  2.  研究者の自尊心を傷つけられたこと、将来を悲観したことが自殺に理由として大きいと思う。この部分のケアをする。例えば、研究ネカトが確定しても、医師免許ははく奪されないので、医師なら臨床医として生きる道を、関係者が示す。大学・研究機関は、所属職員を非難するだけでなく、面倒を見る姿勢があるべきだ。
  3. 【どこをどうすれば自殺を防げたか?】を、各大学・研究機関は調査する。
  4.  箝口令は、「日本国憲法第21条 第1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 第2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」に違反する。箝口令をしいた学長・副学長などを懲戒処分する。
    → マイクロソフト、米司法省を提訴 顧客情報捜査で「かん口令」:日本経済新聞

●6.【白楽の感想】

《1》お詫び

本記事では、研究ネカト疑惑者の自殺を正面から取り上げ、事例をなるべく多く収集し、記録に残し、できれば分析しようとした。

ところがどっこい、分析は非常に難しい。事件の全体像を理解するのも難しいし、事件をある程度理解しても、自殺の分析はとてもむつかしい。事実ではなく推論になってしまう。

それで、【どこをどうすれば自殺を防げたか?】の答えを記述できないケースが大半になってしまった。

各事件の詳細を分析してから、記事を修正する形で、再度、アップするかもしれないが、分析できないかもしれない。

《2》自殺の調査

「当局」である大学・研究機関は研究ネカトを公式に調査し、調査内容を公表する。ところが、研究ネカト疑惑者の自殺に関しては、日本の大学・研究機関は公式に調査しない。もちろん、調査しないのだから、どういう理由で・どういう過程で自殺したかわからない。

だから、予防策の工夫も提言もない。

研究ネカトと自殺と比べれば、事の重大さに比べられないほど、自殺の方が大きいことは多くの人が同意するだろう。

自殺に関しては、日本の大学・研究機関は公式に調査しないのはおかしくないか? 本人のせいであって、大学・研究機関はなんら悪い点がない? 調査しなくてもそうだと結論できるの? 小中高でのイジメによる自殺と同じでしょう。

【どこをどうすれば自殺を防げたか?】を、各大学は調査してほしい。

《3》日本の隠蔽体質

研究ネカト疑惑者の自殺で、日本と外国を比べると、日本は匿名、顔写真なし。大学は箝口令をしく。一方、外国は、箝口令はよくわからないが、実名報道で、顔写真がある。

日本は隠蔽体質が強い。この隠蔽体質を変えるべきだ。

白楽は、正確な事実に基づいて、自殺を分析しようとした。一方、自殺のあちこちを隠蔽しようとしている人たちがたくさんいる。「不都合な真実」だから、隠蔽される。

これでは、集めた事実は偏り、全体的視点からの正確さを欠く。【どこをどうすれば自殺を防げたか?】の答えは得にくい。自殺の予防策を進歩させられない。
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●7.【主要情報源】

本文中に示した。
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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