サダカ・ヤクケンティー(Sudhakar Yakkanti)(米)

2019年11月23日掲載 

ワンポイント:2019年11月4日(44歳?)、発覚から8年後(遅いですね)、研究公正局は、ボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院(Boys Town National Research Hospital)・部長だったヤクケンティーの9件の研究費申請書(8件は不採択、1件は採択)、2000-2014年(25-39歳?)の15年間の7報の発表論文、2011年に投稿した2報の投稿原稿にねつ造・改ざん画像があったと発表した。2019年8月24日から5年間の締め出し処分を科した。なお、ヤクケンティーはインドに育ち、インドのハイデラバード大学(University of Hyderabad)で研究博士号(PhD)を取得後、米国のハーバード大学医科大学院・ポスドクを経て、ボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院(Boys Town National Research Hospital)・研究員、その後、部長になった。記事執筆時点では、撤回論文はゼロ。国民の損害額(推定)は3億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

サダカ・ヤクケンティー(スダカール・ヤカンティ、Sudhakar Yakkanti、Sudhakar Akul Yakkanti、Akulapalli Sudhakar、ORCID iD:?、写真出典)は、インドに育ち、ハイデラバード大学(University of Hyderabad)で研究博士号(PhD)を取得し、米国のハーバード大学医科大学院・ポスドクを経て、2004年1月(29歳?)、ボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院(Boys Town National Research Hospital)・研究員、その後、部長になった。専門はがんの生化学である。

ネカト発覚の経緯は不明であるが、2011年1月と2011年2月に投稿した原稿のネカトが指摘されている。従って、同じ研究室の上司または同僚と思われるが、白楽は特定できなかった。発覚時期は、2011年(36歳?)と推定される。

ボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院がネカト調査を終え、クロと判定したと思われる2012年9月(37歳?)、ヤクケンティーはボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院を辞職した(させられた?)。

2019年11月4日(44歳?)、発覚から8年後(遅いですね)、研究公正局は、ヤクケンティーの9件の研究費申請書(8件は不採択、1件は採択)、2000-2014年(25-39歳?)の15年間の7報の発表論文、2011年に投稿した2報の投稿原稿にねつ造・改ざん画像があったと発表した。

2019年8月24日(44歳?)から5年間の締め出し処分をヤクケンティーに科した。5年間の締め出し処分はかなり重い処分である。 → 「研究公正局の締め出し年数」ランキング

ボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院(Boys Town National Research Hospital)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ハイデラバード大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1975年1月1日生まれとする。1997年に大学院入学した時を22歳とした
  • 現在の年齢:46 歳?
  • 分野:がんの生化学
  • 最初の不正論文発表:2000年(25歳?)
  • 不正論文発表:2000-2014年(25-39歳?)の15年間
  • 発覚年:2011年(36歳?)
  • 発覚時地位:ボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院・部長
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院・調査委員会。②研究公正局
  • 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 研究所の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:研究公正局は9件の研究費申請書、2000-2014年(25-39歳?)の7報の出版論文、2011年の2報の投稿原稿。出版論文は撤回または訂正するよう指示されたが、2019年11月22日現在、撤回論文はない
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分: NIHから 5年間の締め出し処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Sudhakar Yakkanti | LinkedIn

  • 生年月日:不明。仮に1975年1月1日生まれとする。1997年に大学院入学した時を22歳とした
  • 19xx年(xx歳):インドのxx大学で学士号を取得
  • 1997 – 2000年(22 – 25歳?):インドのハイデラバード大学(University of Hyderabad)で研究博士号(PhD)を取得:分子生物学
  • 2000 – 2003年(25 – 28歳?):ハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)・ポスドク
  • 2004年1月 – 2012年9月(29 – 37歳?):ボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院(Boys Town National Research Hospital)・研究員、部長
  • 2004年8月 – 2012年12月(29 – 37歳?):ネブラスカ大学病院(University of Nebraska Medical Center)・非常勤助教授、非常勤準教授
  • 2011年(36歳?):不正研究が発覚(推定)
  • 2013年4月 – 2015年7月(38 – 40歳?):Stanford Research Institute (SRI) Internationalの上級研究員・副部長
  • 2014年8月 –(39歳?):United Scientific Group(NPO:非営利団体)の上級研究員・副所長(Associate Vice President)
  • 2019年11月4日(44歳?):研究公正局がネカトと発表

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
2014年の講演動画:「Sudhakar Akul Yakkanti | Stanford Research Institute (SRI) International | USA | Metabolomics 2014 – YouTube」(英語)17分12秒。
Dental and Oral Health 2014が2015/08/21に公開

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★ネカト

サダカ・ヤクケンティー(Sudhakar Yakkanti、写真出典)はインドで生まれ、インドのハイデラバード大学(University of Hyderabad)で分子生物学の研究博士号(PhD)を取得後、米国のハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)でポスドクを3年務め、2004年1月(29歳?)、米国のボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院(Boys Town National Research Hospital)の研究員、その後、部長になった。

ネカト発覚の経緯は不明であるが、2011年1月と2011年2月に投稿した原稿のネカトが指摘されている。従って、同じ研究室の上司または同僚と思われるが、白楽は特定できなかった。発覚時期は、2011年(36歳?)と推定される。

2019年11月4日(44歳?)、発覚から8年後(遅いですね)、研究公正局はヤクケンティーが9件の研究費申請書(8件は不採択、1件は採択)、7報の発表論文、2報の投稿原稿の画像をねつ造・改ざんしていたと発表した。

2019年8月24日から5年間の締め出し処分を科した。5年間の締め出し処分はかなり重い処分である。 → 「研究公正局の締め出し年数」ランキング  

9件の研究費申請書(8件は不採択、1件は採択)は以下の通り。

R01 CA115763-01A2 submitted to NCI, NIH (unfunded)
R21 CA155796-01 submitted to NCI, NIH (unfunded)
R01 CA166195-01 submitted to NCI, NIH (unfunded
R01 CA143128-01 submitted to NCI, NIH (unfunded)
R01 CA143128-04 submitted to NCI, NIH (unfunded)
R01 EY020539-01 submitted to NEI, NIH (unfunded)
R01 EY020539-01A1 submitted to NEI, NIH (unfunded)
R01 EY024967-01 submitted to NEI, NIH (unfunded)
R01 CA143128-01A1 submitted to NCI, NIH (funded)

7報の発表論文は以下の通り。2000-2014年(25-39歳?)の15年間の7論文である。

  1. Biochemistry 2000;39(42):12929-12938 (hereafter referred to as “Biochem 2000”)
  2. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2003;100(8):4766-4771 (hereafter referred to as “PNAS 2003”)
  3. The Journal of Clinical Investigation 2005;115(10):2801-2810 (hereafter referred to as “JCI 2005”)
  4. Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2009;50(10):4567-4575 (hereafter referred to as “IOVS 2009”)
  5. Pharmaceutical Research 2008;25(12):2731-2739 (hereafter referred to as “Pharm Research 2008”)
  6. Scientific Reports 2014;4(4136):1-9 (hereafter referred to as “Sci Reports 2014”)
  7. Current Eye Res. 2010 Jan;35(1):44-55 (hereafter referred to as “CER 2010”)

2報の投稿原稿は以下の通り。2011年1月と2011年2月に投稿した原稿である。

  1. Tumstatin inhibits Choroidal Neovascularization by Inhibiting MMP-2 activation in-vitro and in vivo. Submitted to Molecular Vision on February 7, 2011 (hereafter referred to as “Mol Vis Sub 2011”) (unpublished)
  2. Inhibitory Effect of Tumstatin on Corneal Neovascularization Both In-vitro and In-vivo. Submitted to Journal of Clinical & Experimental Ophthalmology on January 16, 2011 (hereafter referred to as “JCEO Sub 2011”) (unpublished)

【ねつ造・改ざんの具体例】

2019年11月4日(37歳?)、研究公正局の発表がヤクケンティーの研究費申請書・論文のネカト部分を指摘した。

しかし、言葉で説明されてもわかりにくい。仕方がないので、2論文を適当に選んで研究公正局の指摘箇所を以下に見ていこう。

★「2005年のJ Clin Invest」論文

「2005年のJ Clin Invest」論文の書誌情報を以下に示す。2019年11月22日現在、撤回されていない。

研究公正局は、図5A(レーン1〜5)の0、5、10、20、30分のマウス肺内皮細胞(MLECs)のタンパク質Rafバンドがねつ造・改ざんとあったの指摘した(図の出典は原著)。

上図を見ると、下段の10、20、30分のバンドは確かに上段のバンドと同じだ。再使用したと思われる。しかし、0、5分のバンドは、同じではない。研究公正局の間違いでしょうか?

また、2019年11月10日、パブピアでサルソラ・ジゴフィラ(Salsola Zygophylla)が、図1Aは同じ著者の「2003年のPNAS」論文の図1Dを再使用していると指摘した。なお、研究公正局はこのネカトを指摘できていない。(以下の図の出典:https://pubpeer.com/publications/F93350F2B068E83B6801D726533D44#1)

★「2007年のBlood」論文

「研究公正局の指摘箇所を以下に見ていこう」と前述したが、研究公正局が指摘していない「2007年のBlood」論文にもネカトが見つかっている。そちらを見よう。

「2007年のBlood」論文の書誌情報を以下に示す。2019年11月22日現在、撤回されていない。

2018年10月12日、パブピアでコモクラディア・グラブラ(Comocladia Glabra)が、図1のGHIは同じバンドを再使用していると指摘した。なお、再度書くが、研究公正局はこのネカトを指摘できていない。(以下の図の出典:https://pubpeer.com/publications/363F43BCADB2EC5ECDF3FDA528D632#3)

★問題ありの査読者・審査員

「撤回監視(Retraction Watch)」記事(【主要情報源】②)によると、ヤクケンティー事件に詳しい人物が以下のように述べている。

ヤクケンティーは、長年、出版した論文のほとんどで、何度も何度も画像を再利用しています。時々、画像を切り取りや回転をしていますが、ほとんどは単純な再利用です。不正画像を見つけるためのネカト解析はほとんど必要ありません。

この人物は、学術誌の論文査読者、特に研究助成機関の研究費審査員が、ヤクケンティーのネカト行為をずっと前に発見できたはずだと指摘している。また、実際に発見すべきだったと批判している。

申請されたすべての研究費申請書を見ると、ほとんどの申請書は他の研究者の論文を引用し、その論文中の画像を使用しています(ねつ造)。その使用(ねつ造)はあまりにも露骨でした。だから、ネカトだと指摘するのは簡単だったと思います。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2019年11月22日現在、パブメド(PubMed)で、サダカ・ヤクケンティー(Sudhakar Yakkanti)の論文を「Sudhakar Yakkanti [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2011~2014年の4年間の8論文がヒットした。

「Sudhakar YA[Author]」で検索すると、同じ2011~2014年の4年間の8論文がヒットした。

サダカ・ヤクケンティー(Sudhakar Yakkanti)の論文を「Akulapalli Sudhakar [Author] 」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2010年の9年間の23論文がヒットした。

「Sudhakar A[Author]」で検索すると、同じ1992~2019年の28年間の66論文がヒットした。

2019年11月22日現在、「Sudhakar YA[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。「Sudhakar A[Author] AND Retracted」でも0論文が撤回されていた。

★撤回論文データベース

2019年11月22日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでサダカ・ヤクケンティー(Sudhakar Yakkanti)を「Sudhakar Yakkanti」で検索すると、0論文がヒットし、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2019年11月22日現在、「パブピア(PubPeer)」では、サダカ・ヤクケンティー(Sudhakar Yakkanti)の論文のコメントを「Sudhakar Yakkanti」で検索すると0論文に、「Akulapalli Sudhakar」で検索すると5論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》問題ありのネカト調査員

論文の査読者、研究費申請書の審査員がヤクケンティーの単純なネカトを見逃している。まー、ミスと言えばミスである。だが、査読者も審査員もネカトを探すつもりで原稿・申請書を読んでいるわけではない。

だから、許せるかというと、そうもイカのナンとか。許せん!

しかし、研究公正局も、パブピアが指摘しているヤクケンティーの単純なネカトを見逃している。

こうなると、「プロのネカト調査員がネカト調査したのに、なにをしとるか!」と、「許せん!」どころではなく、叱咤したくなる。研究公正局の調査結果の信頼性を疑う気持ちになる。

研究公正局は過酷な労働環境らしいが、それでも、ズサンな調査報告書はマズいでしょう。多分、元資料のボーイズ・タウン・ナショナル・リサーチ病院の調査報告書がズサンだったのでしょうが、その言い訳は通用しない。

いっそのこと、研究公正局はパブピアに資金提供して、パブピアの調査能力を取り込んだ方がいいと思う。それともエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)を雇います? あははは、これは無理か? でも何か考えた方がいい。

日本はこのあたり、何か学べますね。

エリザベス・ビック(Elisabeth Bik):ミン=ジーン・イン(Min-Jean Yin)(米) 改訂 | 研究者倫理の「7.【白楽の感想】」

《2》遅い

研究公正局の調査の遅いことは随分前から問題視されている。研究公正局は過酷な労働環境らしいが、調査の遅さは一向に改善されない。

ネカトは、調査が遅いと多くの弊害が生じる。

ヤクケンティー事件は発覚から8年も経って研究公正局がクロと発表した。遅くなった理由は一切説明されていない。

なんとかした方がいいと思うけど。

素晴らしいことに、日本のネカト調査でこんな長年月かかった例はない(と思う)。

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●9.【主要情報源】

①  研究公正局の報告:(1)2019年11月4日:Case Summary: Yakkanti, Sudhakar | ORI – The Office of Research Integrity(2024年8月にリンク切れる)。(2)2019年11月14日の連邦官報:2019-24689.pdf 。(3)2019年11月14日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2019年11月27日:NOT-OD-20-028: Findings of Research Misconduct
② 2019年11月7日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:‘Reused over and over again:’ Image recycling leads to 5-year funding ban for cancer researcher – Retraction Watch

★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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