2015年3月7日掲載、2025年2月25日更新
ワンポイント:マヤ・サーリアは、現在はケベック大学・教授だが、2005年7月 ~2019年9月(34 ~48歳?)、マギル大学(McGill University)の準教授、正教授だった。2012年(41歳?)頃、「2006年4月のネイチャー」論文などでのネカトが指摘され、マギル大学は調査し、2012年12月(41歳?)、調査報告書を非公開のまま、クロと発表した。しかし、2013年5月、ネイチャー誌は論文を撤回せず、訂正で済ませた。2016年、ネイチャー誌は論文結果を再現できないという懸念表明の論文を出版したが、それでも、現在まで論文を撤回していない。大学隠蔽 で学術誌調査不正。マヤ・サーリアは無処分。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
マヤ・サーリア(Maya Saleh、マヤ・サーレハ、マヤ・サレハ、写真出典)は、2005年7月 ~2019年9月(34 ~48歳?)、カナダのマギル大学(McGill University)の医学・生化学科(Department of Medicine and Biochemistry)・準教授、その後、正教授だった。2025年2月24日(54歳?)現在は、ケベック大学/アルマン・フラピエ健康バイオテクノロジーセンター(INRS-Centre Armand-Frappier Sante Biotechnologie)・正教授である。専門は免疫学で、医師免許は持っていない。
なお、マヤ・サーリアのネカト疑惑に対して、2012年にマギル大学がネカト調査した。本記事は、その頃およびそれ以降を中心に記述する。
2015年当時、「Times Higher Education」の大学ランキングでは、マギル大学はカナダ第3位の大学だった(World University Rankings 2014-15: North America – Times Higher Education、リンク切れ)。
2012年(41歳?)頃、匿名の公益通報により、マヤ・サーリアの「2006年4月のネイチャー」論文に図の改ざんがあると指摘された。また、他3論文にも研究不正があると指摘された。
マギル大学は調査し、2012年12月(41歳?)、調査報告書を非公開のまま、クロと発表した。しかし、マギル大学はマヤ・サーリアを懲戒処分しなかった。
また、学術誌も、論文を撤回せずに、4論文の内2論文を訂正した。
他の軽微な問題の2論文は、検討はしたが、訂正しなかった。
2025年2月24日(54歳?)現在、マヤ・サーリアは、ケベック大学/アルマン・フラピエ健康バイオテクノロジーセンター(INRS-Centre Armand-Frappier Sante Biotechnologie)・正教授である。
マギル大学(McGill University)。写真出典。
- 国:カナダ
- 成長国:レバノン、カナダ
- 研究博士号(PhD)取得:カナダのマギル大学
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に、1971年1月1日生まれとする
- 現在の年齢:54 歳?
- 分野:免疫学
- 不正論文発表:2004~2021年(33~50歳?)の18年間の11論文にパブピアでコメントがある
- ネカト行為時の地位:①米国のメルク社・ポスドク → ②米国のラホヤ・アレルギー免疫研究所・ポスドク → ③カナダのマギル大学・準教授、教授 → ④フランスのボルドー大学・科学部長
- 発覚年:2012年(41歳?)頃
- 発覚時地位:マギル大学(McGill University)・準教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は匿名。告発サイトで指摘
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」、「canada.com」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①マギル大学・調査委員会。20xx年x月~2012年12月。②「ネイチャー」誌
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:大学・研究所は調査したが、ウェブ公表なし・隠蔽(Ⅹ)
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:大学は4論文を問題視し、2論文が訂正。「パブピア(PubPeer)」では11論文にコメントあり
- 時期:研究キャリアの初期・中期・後期
- 職:事件後に発覚時の地位を続けた(〇)
- 処分:なし
- 特徴:大学がネカトと結論した論文を学術誌が撤回しない
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は計2億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
- 生年月日:不明。レバノン、ベイルートで生まれた? 仮に、1971年1月1日生まれとする。1993年に大学院入学した時を22歳とした
- 19xx年(xx歳):xx大学を卒業
- 1993~1995年(22~24歳?):レバノン、ベイルートにあるベイルート・アメリカン大学(American University of Beirut)・大学院、遺伝学専攻で、修士号(Master’s degree)を取得。指導教授:Dr. Laila Zahed と Dr. Rabih Talhouk
- 1997~2001年(26~30歳?):カナダ・マギル大学(McGill University)・大学院、生化学専攻。研究博士号(PhD)を取得
- 2001~2004年(30~33歳?):米国のメルク社でポスドク
- 2004 ~2005年(33 ~34歳?):米国のラホヤ・アレルギー免疫研究所(La Jolla Institute for Allergy and Immunology)でポスドク
- 2004~2021年(33~50歳?):この18年間の11論文にパブピアでコメントがある
- 2005年7月 ~2019年9月(34 ~48歳?):カナダのマギル大学(McGill University)・準教授、その後、正教授
- 2012年(41歳?)頃:論文データの改ざんが指摘され、マギル大学が調査に入る
- 2012年12月(41歳?):マギル大学・調査委員会の調査終了。発表した4論文のデータ改ざん(含・軽微)が指摘される
- 2019年10月 ~2023年9月(48 ~52歳?):フランスのボルドー大学(University of Bordeaux)・科学部長(Scientific Director)
- 2023年9月 ~2025年2月現在(52 ~54歳?):カナダのケベック大学/アルマン・フラピエ健康バイオテクノロジーセンター(INRS-Centre Armand-Frappier Sante Biotechnologie)・正教授
★受賞歴(英語のママでゴメン):2015年3月7日掲載記事のまま
- Chercheur-Boursier Senior Fonds de recherche en sante du Quebec 2013年7月 ?
- Prix Andre Dupont Club de Recherche Clinique du Quebec 2011年9月 ?
- Chercheur-Boursier Junior 2 Fonds de la Recherche en Sante du Quebe 2011年4月 ?
- モード・アボット賞(Maude Abbott Prize McGill University) 2011年6月 ?
- William Dawson Scholar McGill University 2011年4月 ?
- The Maud Menten Prize Canadian Institute for Health Research, Institute of Genetics 2010年11月 ?
- Canadian Society of Immunology New Investigator Canadian Society of Immunology 2010年5月 ?
- Investigator in the Pathogenesis of Infectious Diseases Burroughs Wellcome Fund 2009年5月
マギル大学のリチャード・レビン(Richard Levin)医学部長(左)から2011年モード・アボット賞(Maude Abbott Prize)を受け取るマヤ・サーリア(右)。Photo: Nicolas Morin、写真出典
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
研究説明動画:「Tetes Chercheuses : Portrait du Pr Maya Saleh – YouTube」(フランス語)2分11秒。
Fondation ARC pour la recherche sur le cancer(チャンネル登録者数 2120人) が2020/12/07に公開
【動画2】
「マヤ・サーリア」と自己紹介している。
動画「Meet the Mentor: Maya Saleh – YouTube」、(英語)0分45秒。
【動画3】
リンク切れ。動画「Inflammation ― the fuel of cancer: extinguishing the fire to stop the disease」、(英語)57分3秒。マギル大学が提供しているマヤ・サーリアの学術講演。以下のリンクをクリックし、動画画面をクリックすると開始する。 McGill Podcasts ≫ Inflammation ? the fuel of cancer: extinguishing the fire to stop the disease リンク切れ。
【動画4】
同姓同名の別人の結婚式の動画。4分49秒頃、「Saleh」を「サーリア」と呼んでいる。 → https://www.youtube.com/watch?v=4A9K4I5g4M0&t=324s?
●5.【不正発覚の経緯と内容】
2012年(41歳?)頃、告発サイトが、マヤ・サーリア(写真出典)の発表論文のねつ造・改ざんを指摘し、マギル大学とメディアに公益通報した。
マギル大学が調査委員会を設け調査をした。
2012年12月(41歳?)、マギル大学・調査委員会は、調査を終了し、調査結果を発表した。それを受け、新聞やウェブが記事を掲載した。
但し、マギル大学は調査報告書をウェブで閲覧できる状況にしなかった。その上、マギル大学は記者の質問に一部しか答えなかった。
調査委員会は、マヤ・サーリアの「2006年4月のネイチャー」論文の2つの図は「意図的・計画的に改ざんされた(”were intentionally contrived and falsified”)」と判定した。なお、この論文の研究は、マギル大学に移籍する前のラホヤ・アレルギー免疫研究所・ポスドク時代に行なった研究である。
- Enhanced bacterial clearance and sepsis resistance in caspase-12-deficient mice.
Saleh M, Mathison JC, Wolinski MK, Bensinger SJ, Fitzgerald P, Droin N, Ulevitch RJ, Green DR, Nicholson DW.
Nature. 2006 Apr 20;440(7087):1064-8.
doi: 10.1038/nature04656.
また、「2008年3月のProc Natl Acad Sci U S A」論文では「誤った(faulty)」情報が発表されていると判定した。なお、この論文でのマヤ・サーリアの所属はマギル大学だが、第一著者や連絡著者の所属は米国のメルク社である。
- Confinement of caspase-12 proteolytic activity to autoprocessing.
Roy S, Sharom JR, Houde C, Loisel TP, Vaillancourt JP, Shao W, Saleh M, Nicholson DW.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Mar 18;105(11):4133-8.
doi: 10.1073/pnas.0706658105. Epub 2008 Mar 10.
一部を具体的にみてみよう。
問題の図はウェスタンブロット像である。「2006年4月のネイチャー」論文の図4cを示す。
上の図の左側3列が、「2008年3月のProc Natl Acad Sci U S A」論文の図6(下)右側3列と酷似している。
2006年と2008年の2論文の最終著者は、メルク社副社長のドナルド・ニコルソン(Donald Nicholson、写真出典同)と共著である。ニコルソンは社会的地位が高く、この分野の権威の1人である。
マヤ・サーリアは、2001~2004年(30~33歳?)、米国のメルク社でポスドクをしていた。ニコルソンはその時の上司だと思われる。2004~2005年の共著論文もある。
調査報告書では、誰が不正を行なったのか不明だとある。
マヤ・サーリアがネカト実行者だと特定できないが、「2006年4月のネイチャー」論文ではマヤ・サーリアが第一著者なので、マヤ・サーリアに責任があるとされた。
調査報告書では、別の2008年論文と2009年論文の図にも小さな操作があったと指摘した。ねつ造とは言えないが、許容できないデータ操作だと述べている。しかし、論文の結論・論旨に重大な欠陥はないとした。
マヤ・サーリアは、マギル大学から何も処分を受けていない。
★「2006年4月のネイチャー」論文のその後
上記したように、マギル大学・調査委員会は、マヤ・サーリアの「2006年4月のネイチャー」論文の2つの図は「意図的・計画的に改ざんされた(”were intentionally contrived and falsified”)」と判定した。
翌年の2013年5月、「2006年4月のネイチャー」論文は訂正された → Correction: Corrigendum: Enhanced bacterial clearance and sepsis resistance in caspase-12-deficient mice | Nature
しかし、3年後の2016年6月1日(45歳?)、ベルギーのモハメド・ラムカンフィ(Mohamed Lamkanfi)は、「Brief Communications Arising」を付けた「2016年6月のネイチャー」論文でマヤ・サーリアの「2006年4月のネイチャー」論文の結果を追試できないと発表した(以下)。
- Does caspase-12 suppress inflammasome activation?
Vande Walle L, Jimenez Fernandez D, Demon D, Van Laethem N, Van Hauwermeiren F, Van Gorp H, Van Opdenbosch N, Kayagaki N, Lamkanfi M.
Nature. 2016 Jun 2;534(7605):E1-4. doi: 10.1038/nature17649.
論文の結論の中心部分に異議を唱え、追試できなかったとした。
なお、ネイチャー誌の「Brief Communications Arising」は「懸念表明」と同等である。
それでも、マヤ・サーリアは「異なる実験なので、結果が異なっても不思議ではない」と弁解し、自分たちの「2006年4月のネイチャー」論文は正しいと主張した。
[白楽注:追試できない場合、「結果が正しい」はないでしょう]
それにしても、マギル大学・調査委員会がネカト論文だと結論しているのに、どうして、ネイチャー誌は論文を撤回しないで、訂正で済ませたのか?
訂正で済ませたのに、その後さらに、「Brief Communications Arising」をつけて、結果を再現できないと発表している。自己矛盾である。
論文を撤回しないネイチャー誌に、白楽はあきれた。
★ダグラス・グリーン(Douglas R. Green)
「2006年4月のネイチャー」論文にはもう1つヤヤコシイ事情が絡んでいる。
以下、「ジェニファー・マルティネス(Jennifer Martinez)(米) | 白楽の研究者倫理」の文章を修正再掲し、加筆した。
ネカト事件を起こしたジェニファー・マルティネス(Jennifer Martinez)は米国のセント・ジュード小児研究病院(St. Jude Children’s Research Hospital)・ポスドクだった。
上司はダグラス・グリーン教授(Douglas R. Green、写真出典)だが、このグリーン教授はネカト疑惑満載の教授である。
パブピアではグリーン教授の27論文にコメントがある。
撤回監視データベースで検索すると、5論文が訂正、2論文が撤回されている。
このグリーン教授がマヤ・サーリアの「2006年4月のネイチャー」論文の共著者だったのだ(後から2番目)。
- Enhanced bacterial clearance and sepsis resistance in caspase-12-deficient mice.
Saleh M, Mathison JC, Wolinski MK, Bensinger SJ, Fitzgerald P, Droin N, Ulevitch RJ, Green DR, Nicholson DW.
Nature. 2006 Apr 20;440(7087):1064-8. doi: 10.1038/nature04656.
こういう研究公正上に問題がある人物に、マヤ・サーリアは感化されたのだろう。
●【ねつ造・改ざんの具体例】
上記したので省略。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★疑惑論文:2015年3月7日掲載記事のまま
以下の4論文に疑念がもたれた。
- Caspase-12 modulates NOD signaling and regulates antimicrobial peptide production and mucosal immunity, published in Cell Host & Microbe in 2008 and cited 49 times, according to Thomson Scientific’s Web of Knowledge
- Cellular inhibitors of apoptosis cIAP1 and cIAP2 are required for innate immunity signaling by the pattern recognition receptors NOD1 and NOD2, published in Immunity in 2009 and cited 87 times
- “Confinement of caspase-12 proteolytic activity to autoprocessing,” published in PNAS in 2008 and cited 23 times
- “Enhanced bacterial clearance and sepsis resistance in caspase-12-deficient mice,” published in Nature in 2006 and cited 147 times
4論文の内、以下の2論文は、2013~2014年に訂正された。
- Confinement of caspase-12 proteolytic activity to autoprocessing.
Roy S, Sharom JR, Houde C, Loisel TP, Vaillancourt JP, Shao W, Saleh M, Nicholson DW.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Mar 18;105(11):4133-8. doi: 10.1073/pnas.0706658105. Epub 2008 Mar 10.
Erratum in: Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Mar 19;110(12):4852. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Feb 4;111(5):2047. - Enhanced bacterial clearance and sepsis resistance in caspase-12-deficient mice.
Saleh M, Mathison JC, Wolinski MK, Bensinger SJ, Fitzgerald P, Droin N, Ulevitch RJ, Green DR, Nicholson DW.
Nature. 2006 Apr 20;440(7087):1064-8.
Erratum in: Nature. 2014 Apr 10;508(7495):274.
★パブメド(PubMed)
2025年2月24日現在、パブメド(PubMed)で、マヤ・サーリア(Maya Saleh)の論文を「Maya Saleh [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2004~2024年の21年間の70論文がヒットした。
2025年2月24日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
2025年2月24日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでマヤ・サーリア(Maya Saleh)を「Piero Anversa」で検索すると、2006年と2012年に出版された2論文が、2012~2013 年に訂正されていた。
★パブピア(PubPeer)
2025年2月24日現在、「パブピア(PubPeer)」では、マヤ・サーリア(Maya Saleh)の論文のコメントを「”Maya Saleh”」で検索すると、2004~2021年(33~50歳?)の18年間に出版された11論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》 美貌とネカト体質で渡世?
マヤ・サーリア(Maya Saleh)はマギル大学で自分の研究室を構えたのが2005年である。翌・2006年、「2006年4月のネイチャー」論文でネカト論文を発表している。時系列では、研究室を主宰した頃の超一流学術誌の論文である。
と言っても、研究そのものは、マギル大学で研究室を構える前のラホヤ・アレルギー免疫研究所で過ごしたポスドク時代の研究成果である。
つまり、ポスドクが研究職を得るために、不正を承知で「意図的・計画的に改ざん」して超一流学術誌「ネイチャー」論文を作ったのだ、と白楽は推察した。
ネカト体質の研究者は、研究スタイルや人生観の中にネカトを許容しているので、必要に応じてネカトをする。それで、長年、マヤ・サーリアは怪しげなことをし続けたのだろう。2004~2021年(33~50歳?)の18年間の11論文にパブピアでコメントがある。
また、美人で受賞も多いことから、偉い人に取り入るのが上手な人だと思われる。多分、不正体質を持ちつつ、美貌を武器に研究界を生きてきた女性だと思われる。
なお、美貌を武器に人生を切り開く事は、不正でも悪いことでもない。マヤ・サーリア(Maya Saleh、写真出典)
《2》発展途上国出身者の研究ネカト?
マヤ・サーリアは、遺伝学の修士号を、レバノン、ベイルートにあるベイルート・アメリカン大学(American University of Beirut)で取得している。レバノンで生まれ育ったレバノン人だと推察した。
そうなると、中東から欧米(含・カナダ)に留学し、研究者になってから研究ネカト問題を起こすという典型的なネカト・コースの研究人生を歩んできたとも解釈できる。
《3》対処が甘い
カナダの研究ネカト頻度は、研究者数を考慮すれば、米国並みに多いと思われる。しかし、米国に比べ処分が甘い。
マヤ・サーリアが行なった図の再使用は、データねつ造であり、論文は訂正ではなく撤回が妥当である
ところが、どういうわけか、ネイチャー誌は異常な対処をした。その後、ネイチャー誌は「懸念表明」と同等の「Brief Communications Arising」をつけたが、それも異常である。
マギル大学は、どういうわけか、明白なネカト者なのに無処分という異常な対処をした。通常、諭旨解雇や辞職にする・させると思う。
また、マギル大学は調査の透明性に欠ける。調査報告書をウェブ上で誰もが閲覧できる状況にすべきだ。
《4》2015年3月7日掲載記事の写真
10年前の2015年3月7日掲載記事では、マヤ・サーリア(Maya Saleh)研究室の状況を知るために、以下の3つの写真も掲載した。2025年2月24日現在の状況とは大きく異なるけど、削除すると消えてしまうので、残した。
マヤ・サーリア研究室。
出典、削除されたかリンク切れ。
サーリア研究室。サーリアは左から2人目。
出典、削除されたかリンク切れ。
サーリア研究室(2014年12月)。サーリアは右後列の右から2人目。
出典、削除されたかリンク切れ。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。日本は、科学技術は衰退し、国・社会を動かす人間の質が劣化した。方向は、科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任を徹底すべきである。
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●9.【主要情報源】
① 2013年1月25日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者のリトラクチョン・ウオッチ(Retraction Watch)の記事:McGill committee says Nature figures were “intentionally contrived and falsified” – Retraction Watch at Retraction Watch
②◎2013年1月29日のマーガレット・マンロ(Margaret Munro)の「canada.com」記事:McGill University finds scientists published ‘falsified’ images | canada.com
③ 写真集サイト:Maya Saleh Photos | Complex Traits Group – McGill University 削除された。別サイト:yandex Maya Saleh?
④ 2013年2月25日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者のリトラクチョン・ウオッチ(Retraction Watch)の記事:Musical figures: PNAS paper corrected with version of “intentionally contrived and falsified” Nature figure ? Retraction Watch?
⑤ 2013年5月31日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者のリトラクチョン・ウオッチ(Retraction Watch)の記事:Nature corrects figures McGill committee found had been “intentionally contrived and falsified” ? Retraction Watch
⑥ 2017年3月21日のキャット・ファーガソン(Cat Ferguson)記者のリトラクチョン・ウオッチ(Retraction Watch)の記事: Nature paper adds non-reproducibility to its list of woes ? Retraction Watch?
⑦ 2022年9月9日のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者のリトラクチョン・ウオッチ(Retraction Watch)の記事:Exclusive: NIH researcher resigned amid retractions, including Nature paper ? Retraction Watch
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。