2026年3月17日(火)掲載
2026年2月4日(46歳?)、発覚から6年後(推定)(遅いですね)、研究公正局は、オクラホマ大学健康科学センター(University of Oklahoma Health Science Center)・研究助教授だったアンドラーデの2019~2020年(39~40歳?)の2件の研究費申請書の画像に捏造・改ざんがあったと発表した。2026年1月11日から3年間の締め出し処分、および、3年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。3年間の処分は普通の処分である。なお、アンドラーデはペルーに育ち、ペルーの大学・学部を卒業後、米国のユタ大学(University of Utah)で研究博士号(PhD)を取得し、ポスドクを経て、オクラホマ大学健康科学センター(University of Oklahoma Health Science Center)・研究助教授になった。記事執筆時点では、撤回論文はゼロ。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
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●1.【概略】
ダニエル・アンドラーデ(Daniel Andrade、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0002-0242-4785、写真出典)は、ペルーの大学・学部を卒業後、米国のユタ大学(University of Utah)で研究博士号(PhD)を取得し、ポスドクを経て、2018年2月(38歳?)、米国のオクラホマ大学健康科学センター(University of Oklahoma Health Science Center)・産婦人科およびスティーブンソンがんセンター(Stephenson Cancer Center)の研究助教授になった。専門はがん学である。
ネカト発覚の経緯は不明であるが、2件のNIH研究費申請書のネカトが指摘された。発表論文でのネカトは指摘されていない。それで、同じ研究室の上司であるアヌパマ・ムンシ準教授(Anupama Munshi)が見つけて通報したと思われる。発覚時期は、2020年(40歳?)と白楽が推定した。
オクラホマ大学健康科学センターがネカト調査中、あるいは、クロと判定したころ、の2020年8月(40歳?)、アンドラーデは、オクラホマ大学健康科学センターを辞職した(させられた)。
2026年2月4日(46歳?)、発覚から6年後(推定)(遅いですね)、研究公正局(ORIロゴ出典)は、オクラホマ大学健康科学センター(University of Oklahoma Health Science Center)・研究助教授だったアンドラーデの2件の研究費申請書にデータの改ざんまたは捏造があったと発表した。
2026年1月11日から3年間の締め出し処分、および、3年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。3年間の処分は普通の処分である。
オクラホマ大学健康科学センター(University of Oklahoma Health Science Center)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:ペルー
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:米国のユタ大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1980年1月1日生まれとする。2004年にユタ大学の院生になった時を24歳とした
- 現在の年齢:46歳?
- 分野:がん学
- 不正研究費申請書:2019年~2020年(39~40歳?)の1年間
- ネカト行為時の地位:オクラホマ大学健康科学センター・研究助教授
- 発覚年:2020年(40歳?)
- 発覚時地位:オクラホマ大学健康科学センター・研究助教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は上司であるアヌパマ・ムンシ準教授(Anupama Munshi)(推定)
- ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①オクラホマ大学健康科学センター・調査委員会。②研究公正局
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
- 不正:捏造・改ざん
- 不正研究費申請書数:2件の研究費申請書。2026年3月16日現在、撤回論文はない
- 時期:研究キャリアの中期
- 職:事件後に発覚時の地位を続けられなかったが(Ⅹ)、研究職を続けた(◒)
- 処分:NIHから 3年間の締め出し処分
- 対処問題:大学隠蔽
- 特徴:
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:①:Daniel Andrade | LinkedIn(削除された)、②:Daniel Andrade (0000-0002-0242-4785) – ORCID
- 生年月日:不明。仮に1980年1月1日生まれとする。2004年にユタ大学の院生になった時を24歳とした
- xxxx年(xx歳):ペルーのナシオナル・アグラリア・ラ・モリーナ大学(Universidad Nacional Agraria La Molina)で学士号を取得:生物工学
- 2004年8月~2011年3月(24~31歳?):米国のユタ大学(University of Utah)で研究博士号(PhD)を取得:がん学
- 2011年3月~2013年5月(31~33歳?):ハンツマンがん研究所(Huntsman Cancer Institute)・ポスドク
- 2014年7月~2017年5月(34~37歳?):オクラホマ大学(University of Oklahoma)・ポスドク
- 2018年2月~2020年3月または2021年10月(38~40 or 41歳?):オクラホマ大学のスティーブンソンがんセンター(Stephenson Cancer Center)・研究助教授
- 2019年11月~2020年8月(39~40歳?):この1年間の2件のNIH研究費申請書でネカトをした
- 2020年(40歳?):ネカトが発覚(推定)
- 2021年9月~現(41~46歳?):サイトバンス・バイオロジクス社(Cytovance Biologics)・研究員
- 2026年2月4日(46歳?):研究公正局がネカトと発表
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究人生
ダニエル・アンドラーデ(Daniel Andrade、写真出典)はペルーで生まれ(推定)、ペルーのナシオナル・アグラリア・ラ・モリーナ大学(Universidad Nacional Agraria La Molina)で学士号を取得、米国のユタ大学(University of Utah)で研究博士号(PhD)(がん学)を2011年3月(31歳?)に取得した。
院生の時の指導教授は、マイケル・エンゲル教授(Michael E Engel、左写真出典)と思われる。
ポスドクを経て、2018年2月(38歳?)、米国のオクラホマ大学のスティーブンソンがんセンター(Stephenson Cancer Center)・研究助教授になった。ボスはインド出身のアヌパマ・ムンシ準教授(Anupama Munshi、右写真出典)だった。
ところが、オクラホマ大学・研究助教授の時、2019年11月~2020年8月(39~40歳?)に提出した2件のNIH研究費申請書に、研究不正があったことが、2020年(推定)に発覚した。
2021年10月(41歳?)、オクラホマ大学を辞職し(解雇され?)、米国のサイトバンス・バイオロジクス社(Cytovance Biologics)・研究員に移籍した。
ネカト発覚の経緯は不明だが、出版論文でのネカトではなく、NIH研究費申請書での虚偽データである。その虚偽データは、第三者がみても虚偽データだとわからない(推定)。それで、申請書の責任者であるボスのムンシ準教授が不正を見つけたと、白楽は推定した。
★獲得研究費
ダニエル・アンドラーデ(Daniel Andrade)はNIHから研究費を獲得していない。 → RePORT ⟩ Daniel Andrade
★研究公正局
2026年2月4日(46歳?)、発覚から6年後(推定)(遅いですね)、研究公正局はアンドラーデが2019年11月~2020年8月(39~40歳?)に提出した2件の研究費申請書にデータの改ざんまたは捏造があったと発表した。
なお、2件の研究費申請書の研究代表者は別人で、研究公正局の発表していないが、研究代表者はボスのムンシ準教授と思われる。
2026年1月11日から3年間の締め出し処分、および、3年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。3年間の処分は普通の処分である。
2件の研究費申請書(2件とも不採択)は以下の通り。
- DP2 OD030789-01:2020年8月20日に、NIHのODに提出 → 不採択:RePORT ⟩ RePORTER
- R21 CA253956-01:2019年11月18日に、NIHのNCIに提出 → 不採択:RePORT ⟩ RePORTER
●【捏造・改ざんの具体例】
2026年2月4日(46歳?)の研究公正局の発表で、各研究費申請書のネカト部分を記載している。
しかし、言葉で説明されてもわかりにくい。
発表論文でのネカトは指摘されていない。
仕方ないが、以下、言葉で説明する。
なお、捏造・改ざんは、第三者がみてもわからないと思われる。
★DP2 OD030789-01 申請書
DP2 OD030789-01の情報を以下に示す。
“Exosomes as Liquid Biopsies: Biomarkers for Tumor Heterogeneity and Subclonal Evolution,” submitted to OD, NIH, on August 20, 2020
研究公正局は以下のように指摘した。
エクソソームナノ粒子追跡分析(NTA)データで、細胞株から得られたデータをがん患者由来のデータとして再ラベルし、研究責任者(PI)に報告した。研究責任者はそれを助成金申請書DP2 OD030789-01の図2Dに使用した。
異なる細胞株で行なった無関係なブロット画像をつなぎ合わせて、ウェスタンブロットの合成画像を作成し、その合成画像を主催研究者(PI)に報告した。主催研究者(PI)はそれを助成金申請書DP2 OD030789-01の図2Eに使用した。
★R21 CA253956-01 申請書
R21 CA253956-01の情報を以下に示す。
“miRNA signatures that predict chemoradiation response and resistance in cervical cancer using patient-derived organoids and their exosomes,” submitted to the NCI, NIH, on November 18, 2019
研究公正局は以下のように指摘した。
助成金申請書R21 CA253956-01の図3Bの透過型電子顕微鏡(TEM)の画像データは患者の血清から得た試料を使用したとあるが、別の透過型電子顕微鏡(TEM)の画像を使用していた。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
データベースに直接リンクしているので、記事閲覧時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。
★パブメド(PubMed)
2026年3月16日現在、パブメド(PubMed)で、ダニエル・アンドラーデ(Daniel Andrade)の論文を「Daniel Andrade [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2005~2026年の22年間の176論文がヒットした。
ほとんどは、同名別人の論文だと思われる。
所属をユタ大学(University of Utah)と限定した「(University of Oklahoma Health Science Center[Affiliation]) AND (Daniel Andrade[Author])」 で検索すると、2011年と2016年の2論文がヒットした。
所属をハンツマンがん研究所(Huntsman Cancer Institute)と限定した「(Huntsman Cancer Institute[Affiliation]) AND (Daniel Andrade[Author])」検索すると、上記と同じ2011年と2016年の2論文がヒットした。
所属をオクラホマ大学健康科学センター(University of Oklahoma Health Science Center)と限定した「(University of Oklahoma Health Science Center[Affiliation]) AND (Daniel Andrade[Author])」で検索すると、2016~2019年の4年間の4論文がヒットした。
合計すると、2011~2019年の9年間に6論文を出版したことになる。
★撤回監視データベース
2026年3月16日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでダニエル・アンドラーデ(Daniel Andrade)を「Andrade, Daniel」で検索すると、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2026年3月16日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ダニエル・アンドラーデ(Daniel Andrade)の論文のコメントを「”Daniel Andrade”」で検索すると、1論文にコメントがあった。
しかし、本記事で扱っているダニエル・アンドラーデとは別人と思われる。
●7.【白楽の感想】
《1》研究公正局
研究公正局がクロと発表したダニエル・アンドラーデ(Daniel Andrade、写真出典)のネカト発表は、2026年の1件目である。
研究公正局は、ネカト事件を毎年10件程度発表していたが、昨年・2025年は2件しか発表しなかった。
研究公正局は過酷な労働環境らしい。それなのに、トランプ政権は局員を大幅に減らしたそうだ。
2026年2月7日、アンドリュー(Andrew)が「研究公正局は瀕死の状態です。予算は1500万ドル(約15億円)、常勤職員は23人」と書いている。 →
ネカト調査は当該大学・研究所が行なって、研究公正局はネカト認定の審査をするだけなので、常勤職員が23人もいれば、年に40~50件の研究不正を発表できそうに思うが、そうはいかないのか?
と思う人は多いだろう。
ところで、米国の生物医学系では捏造・改ざんが多く盗用は少ない、という日本人の記事を、時々、見る。これは誤解です。
「研究公正局の事件発表」に関しては事実だが、生物医学系全体では、間違いだ。
研究公正局は、長年、盗用をほぼ事件化していない。そして、ここ数年は、出版された論文のデータ捏造・改ざんの事件化数も少ない。
第三者が介入できないNIH研究費の申請に絡む研究不正を優先的に事件化している。
研究公正局は説明していないが、白楽が思うに、調査パワーに余裕がないので、最も重要かつ研究公正局しか調査しにくい研究費申請関連のネカトを優先的に処理していると思われる。
つまり、ネカト認定の審査では、トリアージ方式をとっているためだと思う。
研究公正局は、実際は、表に出てこない仕事もかなりしている。以下の43件の内容は不明だが、この中に盗用やデータ捏造・改ざんがかなりあると、白楽は推察する。
・43件は審査却下・・・大学・研究所は調査し、被調査者に何らかの措置をした。この措置で十分と判断し、研究公正局は別途、ネカト認定の審査をしなかったケース(https://x.com/haklak/status/2011936436094922796)
2026年は、2月4日という早い時期に1件目を発表した。3月10日に2件目を発表した。このペースでいけば、例年通りの10件程度を発表すると、「瀕死の状態」でも、期待してしまう。
《2》研究不正を防ぐ方法
ダニエル・アンドラーデ(Daniel Andrade)の研究不正を防ぐには、どうすればよかったか?
また、今後、同じような研究不正を起こさせないためにはどうすべきか?
研究費申請書の虚偽データなので、具体的なネカト行為がつかめない。公表されている事件の記載からは、不正に至った状況は不明で、何のヒントも得られない。
研究公正局のこのような発表内容だと、本件での研究不正を防ぐ方法はわからない。研究公正局は何のためにネカト事件を発表しているのか? 発表姿勢の改善が必要だと思う。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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●9.【主要情報源】
① 研究公正局の報告:(1)2026年2月4日:Case Summary: Andrade, Daniel | ORI – The Office of Research Integrity。(2)2026年2月9日の連邦官報PDF版:2026-02505.pdf。(3)2026年2月9日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2026年2月xx日:NOT-OD-: Findings of Research Misconduct
② 研究公正局の2026年3月11日現在の処分者リスト:PHS Administrative Action Report
③ 2026年2月6日のアリシア・ガレゴス(Alicia Gallegos)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:U.S. ORI’s first finding of 2026: Researcher faked data in grant apps – Retraction Watch