2025年12月30日(火)掲載
【長文注意】。2024年1月、英国のネカトハンター(民間人)であるショルト・デイヴィッド(Sholto David)は、米国のダナ・ファーバー癌研究所の多数の研究不正を「For Better Science」で指摘した。3か月後、デイヴィッドは、ダナ・ファーバー癌研究所の多数の研究不正を米国のボストン地裁に虚偽請求法(False Claims Act)のキイタム(クイ・タム、qui tam action)条項(内部告発者条項)で告訴した。研究不正者には、福岡大学出身の日本人・テル・ヒデシマ(秀島 輝)もいた。その20か月後の2025年12月16日、ダナ・ファーバー癌研究所は米国・司法省と和解し、1,500万ドル(現在の為替レートだと約23億円)を米国政府に支払うことに同意した。和解の一環として、デイヴィッドは和解金の17.5%にあたる263万ドル(税引き後の額)(現在の為替レートだと約4億円)を受け取る。この顛末を2025年12月16日の「撤回監視(Retraction Watch)」論文、チャールズ・ピラー記者(Charles Piller)の「Science」論文、などが報じた。それらを基に白楽が解説した。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.日本語の予備解説
2.この事件の報道・解説記事のリスト
3.研究不正告発で英国人のデイヴィッドが4億円ゲット
7.白楽の感想
《1》日本のあなたも、キイタム訴訟でウン億円ゲットしよう
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【注意】
学術論文ではなくウェブ記事なども、本ブログでは統一的な名称にするために、「論文」と書いている。
「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。
記事では、「論文」のポイントのみを紹介し、白楽の色に染め直し、さらに、理解しやすいように白楽が写真・解説を加えるなど、色々と加工している。
研究者レベルの人が本記事に興味を持ち、研究論文で引用するなら、元論文を読んで元論文を引用した方が良いと思います。ただ、白楽が加えた部分を含めて引用するなら、本記事を引用するしかないですね。
●1.【日本語の予備解説】
★Wikipedia:ダナ・ファーバー癌研究所
出典 → ココ
ダナ・ファーバー癌研究所(ダナ・ファーバーがんけんきゅうしょ、英語: Dana-Farber Cancer Institute[1])はアメリカ国立癌研究所に指定されたアメリカ国立癌研究所指定癌センターの一つである。マサチューセッツ州ボストンのLongwood Medical and Academic Areaと呼ばれる地域の一画にあるハーバード大学医学部の主要関連医療機関の一つである。
ダナ・ファーバー癌研究所に勤務する人は3680人以上おり、年間収入は8億ドルにもなる[2]。一年に29万9202人以上の成人癌または小児癌の外来患者が訪れる(700人以上の臨床試験患者を含む)。癌研究において国際的に有名な施設で、2012年現在、USニューズ&ワールド・レポート誌において、アメリカ合衆国で5位に位置づけられた癌治療病院である[3]。
続きは、原典をお読みください。
★2025年12月16日:白楽のX
2025年12月16日、米国司法省 プレスリリースhttps://t.co/U9qJD7Ex6S
2025年12月17日、ロイター記事https://t.co/orPupqAUuC
英国のショルト・デイヴィッド(Sholto David)がネカトハンター活動で262万5000ドル(約4億円)をもらう。…
— 白楽ロックビル (@haklak) December 16, 2025
★2025年3月10日:7-167 ネカト告発で2千万円ゲット(米国) | 白楽の研究者倫理
出典 → ココ
★2023年7月25日:7-123 ネカト告発で34億円ゲット(米) | 白楽の研究者倫理
出典 → ココ
●2.【この事件の報道・解説記事のリスト】
以下に示すようにこの事件の報道・解説記事は10報以上あった。以下の中から●印した論文を主に、次章「3」で読み解いた。
1. ●2025年12月16日の著者名不記載の司法省「プレスリリース」:Office of Public Affairs | Dana-Farber Cancer Institute Agrees to Pay $15M to Settle Fraud Allegations Related to Scientific Research Grants | United States Department of Justice
2. ●2025年12月16日の撤回監視スタッフ(Retraction Watch Staff)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Dana-Farber settles suit alleging image manipulation for $15 million – Retraction Watch
3. ● 2025年12月17日のチャールズ・ピラー記者(Charles Piller)の「Science」記事:Misconduct sleuth wins $2.63 million from major cancer institute in $15 million settlement | Science | AAAS
4. 2025年12月16日のジョナサン・ウォーセン記者(Jonathan Wosen)の「STAT」記事:Dana-Farber settles Justice Department suit over manipulated data | STAT
5. 2025年12月17日のネイト・レイモンド記者(Nate Raymond)の「Reuters」記事:Harvard-affiliated Dana-Farber to pay $15 million to settle US claims over flawed studies | Reuters
6. ●2025年12月16日の著者名不記載のユージェニー・ライヒ法律事務所「プレスリリース」:DFPressRelease-2.pdf
7. tanom

●3.【研究不正告発で英国人のデイヴィッドが4億円ゲット】
★研究不正疑惑
2023年11月、英国のネカトハンターであるショルト・デイヴィッド(Sholto David、写真出典)は、米国のスローン・ケタリング記念がんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)のサム・ユン(Sam Yoon)の研究不正を「For Better Science」の記事に書いた。 → 2023年11月1日:Memorial Sloan Kettering Paper Mill – For Better Science
→ サム・ユン(Sam Yoon)、チャンファン・ユン(Changhwan Yoon)、サンドラ・リョム(Sandra Ryeom)(米) | 白楽の研究者倫理
デイヴィッドは、サム・ユン事件の研究不正論文を探るうちに、芋づる式にダナ・ファーバー癌研究所(Dana-Farber Cancer Institute、写真出典)の複数の不正論文を見つけた。
2024年1月、デイヴィッドはダナ・ファーバー癌研究所の58報の論文に複製画像やデータ操作の兆候があると「For Better Science」で指摘した。 → 2024年1月2日:Dana-Farberications at Harvard University – For Better Science
その中には、ダナ・ファーバー癌研究所・所長のローリー・グリムシャー(Laurie Glimcher)も含まれていた。 → ローリー・グリムシャー(Laurie Glimcher)(米) | 白楽の研究者倫理
デイヴィッドの指摘を受け、ダナ・ファーバー癌研究所は、58報のうち6報の論文撤回を学術誌に要請し、他の数十報の論文では訂正を要請した。
なお、ダナ・ファーバー癌研究所のローリー・グリムシャー以外の3人の研究者(テル・ヒデシマ(Teru Hideshima)、ウィリアム・ハーン(William Hahn)、アイリーン・ゴブリアル(Irene M. Ghobrial))のデータ不正を次項、次々項、次々々項に軽く示す。
デイヴィッドは、それ以外にも、ダナ・ファーバー癌研究所のケネス・アンダーソン(Kenneth C. Anderson)、ニキル・ムンシ(Nikhil C. Munshi)、 コンスタンティン・ミツィアデス(Constantine S. Mitsiades)、ダルミンダー・チャウハン(Dharminder Chauhan)の4人の研究不正も指摘した。
ダナ・ファーバー癌研究所(Dana-Farber Cancer Institute)。写真出典
★テル・ヒデシマ(Teru Hideshima、秀島 輝)
ダナ・ファーバー癌研究所の準教授相当(Principal Associate in Medicine)の地位である日本人のテル・ヒデシマ(Teru Hideshima、秀島 輝、写真出典)は、福岡大学・医学部の出身である。
「KAKEN | 秀島 輝 (00238312)」と上記サイトによると、以下の経歴と思われる。
- 1991~1997年、福岡大学・医学部・第2外科、助手、後に講師
- 1998年、米国のダナ・ファーバー癌研究所のKenneth C Andersonのポスドク。その後、主任研究員(PI)、準教授相当(Principal Associate in Medicine)になる。
パブピア(PubPeer)には、ヒデシマの56論文にコメントがある。とても多い。
以下にその内の1論文でヒデシマが第一著者の「2004年11月のOncogene」論文の画像複製個所を示すが、この論文は2024年9月に懸念表明がついた。なお、第9著者に同姓の「Hiromasa Hideshima」がいるが、テル・ヒデシマとの関係について、白楽は調べていない。
- p38 MAPK inhibition enhances PS-341 (bortezomib)-induced cytotoxicity against multiple myeloma cells.
Hideshima T, Podar K, Chauhan D, Ishitsuka K, Mitsiades C, Tai YT, Hamasaki M, Raje N, Hideshima H, Schreiner G, Nguyen AN, Navas T, Munshi NC, Richardson PG, Higgins LS, Anderson KC.
Oncogene. 2004 Nov 18;23(54):8766-76. doi: 10.1038/sj.onc.1208118.PMID: 15480425
画像複製は図6aで、電気泳動バンドが重複使用されていた(図の出典:https://pubpeer.com/publications/ADCF72FE7F5B4C663DC4574A544CB4)。 
★ウィリアム・ハーン(William Hahn)

ショルト・デイヴィッドが不正論文を指摘した中に、グリムシャー所長の代理という偉い立場のウィリアム・ハーン(William Hahn、写真出典)がいた。
パブピア(PubPeer)には、ハーンの47論文にコメントがある。
とても多いが、以下にハーンの問題論文を1本だけ具体的に見ていこう。
「2005年9月のCancer Res.」論文の問題データを示すが、この論文は2024年3月に撤回された。
- Cancer-associated PP2A Aalpha subunits induce functional haploinsufficiency and tumorigenicity.
Chen W, Arroyo JD, Timmons JC, Possemato R, Hahn WC.
Cancer Res. 2005 Sep 15;65(18):8183-92. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-05-1103.
Retraction in: Cancer Res. 2024 Mar 15;84(6):935. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-24-0434.PMID: 16166293
画像複製は図5で、多くの電気泳動バンドが重複使用されていた(図の出典:上記2024年1月のデイヴィッドの論文)。
★アイリーン・ゴブリアル(Irene M. Ghobrial)
実験医学上級担当という偉い立場のアイリーン・ゴブリアル(Irene M. Ghobrial、写真出典)の問題論文も具体的に見ていこう。
パブピア(PubPeer)には、ゴブリアルの24論文にコメントがある。とても多い。
以下にその内の1論文である「2012年1月のClin Cancer Res.」論文の問題データを示すが、この論文は2024年2月16日に懸念表明された。
- Eph–B2/ephrin–B2 interaction plays a major role in the adhesion and proliferation of Waldenstrom‘s macroglobulinemia.
Azab F, Azab AK, Maiso P, Calimeri T, Flores L, Liu Y, Quang P, Roccaro AM, Sacco A, Ngo HT, Zhang Y, Morgan BL, Carrasco RD, Ghobrial IM.
Clin Cancer Res. 2012 Jan 1;18(1):91-104. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-11-0111. Epub 2011 Oct 18.PMID: 22010211
以下の図1Bに重複画像がある。
以下の図1Cにも重複画像がある。
★虚偽請求法(False Claims Act)違反の告訴
2024年4月、デイヴィッドは、「For Better Science」記事発表の3か月後、ユージェニー・ライヒ法律事務所(Eugenie Reich Law LLC)に依頼して、虚偽請求法(False Claims Act)のキイタム(クイ・タム、qui tam action)条項(内部告発者条項)に基づく告訴を米国のボストン地裁にした。
訴状では、ローリー・グリムシャーと、前述したダナ・ファーバー癌研究所のテル・ヒデシマ(秀島 輝)、ウィリアム・ハーン、アイリーン・ゴブリアルの3人と、他の4人の研究者(ケネス・アンダーソン(Kenneth C. Anderson)、ニキル・ムンシ(Nikhil C. Munshi)、 コンスタンティン・ミツィアデス(Constantine S. Mitsiades)、ダルミンダー・チャウハン(Dharminder Chauhan)の4人)、計8人の研究者を対象にした。
彼らの2014~2024年の11年間の95件の研究不正を指摘し、これらの論文のデータに基づいて米国・NIHから受領した複数の助成金のリストも示した。
不正な論文を基に得たNIH助成金の総額は記載されていないが、以下に示すように1件35万ドル(約3500万円)程度である。95件が全部1件35万ドル(約3500万円)だとすると、95×35万=3,325万 、つまり3,325 万ドル(約33億円)になる。
例えばテル・ヒデシマ(Teru Hideshima、秀島 輝)が受領したNIH助成金だと以下のようだ。
ウィリアム・ハーン(William Hahn)が受領したNIH助成金
アイリーン・ゴブリアル(Irene M. Ghobrial)が受領したNIH助成金
以下は「ユージェニー・ライヒ法律事務所」が公表した虚偽請求法(False Claims Act)の告訴文書(2024年4月22日提出)の冒頭部分(出典:同)。全文(46ページ)は → https://eugeniereichlaw.com/wp-content/uploads/2025/12/DFComplaint.pdf
★和解
2024年4月にデイヴィッドは告訴したが、その20か月後の2025年12月16日、ダナ・ファーバー癌研究所と米国・司法省の和解が成立した。
ダナ・ファーバー癌研究所は、同研究所の研究者らがNIHの助成金6件を使用した研究で、データ捏造、虚偽表示、重複画像した14報の論文発表を認めた。
また、ダナ・ファーバー癌研究所は、上記とは別の研究者が、自分たちの論文に虚偽データや重複画像があったことを開示しないで助成金申請書を提出し、NIH助成金を4件受け取ったことも認めた。
和解金として1,500万ドル(約15億円、現在の為替レートだと約23億円)を和解成立の30日以内に米国政府に支払うことに同意した。
以下は米国・司法省が公表した和解文書(2025年12月)の冒頭部分(出典:同)。全文(20ページ)は → https://www.justice.gov/d9/2025-12/usa_v._dana-farber_cancer_institute_-_settlement_agreement.pdf

和解案によると、850万ドル(正確には、857万1428ドル57セント。57セントまで記載してあって、細かいですね)(約8億5千万円、現在の為替レートだと約13億円)以上が「米国への賠償金」で、賠償金の大部分はNIHに返還され、再び、科学研究のために使われる。
ただ、米国政府は和解の一環として、850万ドルのうち、デイヴィッドに和解金1,500万ドルの17.5%にあたる263万ドル(税引き後の額)(約2億6300万円、現在の為替レートだと約4億円)を速やかに支払う。
差額を計算すると、1,500-850=650となる。
えーと、650万ドル(約6億5千万円、現在の為替レートだと約10億円)はどこに行くのだろう?
この約10億円はユージェニー・ライヒ法律事務所に行く? ではない。
和解文書に、ダナ・ファーバー癌研究所は、ユージェニー・ライヒ法律事務所に32万8498ドル53セント(約3285万円、現在の為替レートだと約5千万円)を支払うとある。32万8498ドル53セントは和解金1,500万ドルに含まれるのか、含まれないのか、白楽はわかりません。
白楽は最初、ユージェニー・ライヒ法律事務所はデイヴィッドが受け取った約4億円から、そのウン割をもらうのだと思っていた。別枠なんですね。
なお、和解対象になったNIH助成金は前述したように6件+4件の10件である。以下にそのNIH助成金の番号を具体的に示す。
白楽は、最初の助成金「P01CA078378」だけを調べたが、受領額は2,900万ドル(約29億円、現在の為替レートだと約46億円)と巨額だった。
他の助成金の額は調べていないが、最初の1件だけでダナ・ファーバー癌研究所が和解金として払う1,500万ドルを大幅に超えていた。
和解対象になったNIH助成金は10件だった。
面倒なので、白楽は和解対象になった10件 のNIH助成金の正確な額を調べていませんが、 1件約46億円を単純に10倍すると、約460億円と、莫大な額である。
しかし、デイヴィッドの訴状はダナ・ファーバー癌研究所のもっと多くの研究者と論文の不正を指摘していた。
不正受給した研究費の総額は和解金の数倍・数十倍だったと推察する。
訴状での要求全部が認定されないのは仕方ないだろうが、この不正認定の根拠やプロセスはどうなっているのか、興味がわいた。
★ショルト・デイヴィッド(Sholto David)
ショルト・デイヴィッド(Sholto David、写真出典)は、英国ウェールズのバイオテクノロジー企業に勤務する若い分子生物学者で、強力なネカトハンターでもある。
「パブピア(PubPeer)」に、実名または様々なペンネームで6000報以上の研究論文にコメントしてきた。
デイヴィッドは虚偽請求法に基づく訴訟で、今回、263万ドル(税引き後の額)(約2億6300万円、現在の為替レートだと約4億円)を受け取ることになる。
しかし、突然の大きな収入に浮かれている様子はない。
「昨夜はお祝いに1.10ポンド(約230円)の冷凍ピザを食べたんだ」と述べ、今のところは昼間の仕事を続けるつもりだそうだ。
なお、虚偽請求法訴訟に関わるのは、デイヴィッドにとって今回が初めてだそうだ
★特徴
今回の訴訟の特徴をあげておこう。
1つ目は、ダナ・ファーバー癌研究所の訴訟は和解が成立したスピードが速かったということだ。
ティッコ・アンド・ザヴァリー法律事務所(Tycko & Zavareei LLP)の内部告発弁護士で、元司法省医療詐欺担当上級顧問(former DOJ senior counsel for healthcare fraud)のエヴァ・グナセケラ(Eva Gunasekera、写真出典)は、「虚偽請求法(False Claims Act)の訴訟は通常、提起から解決まで少なくとも3年、通常はそれよりずっと長くかかるのに、今回は、訴訟は2024年に提起され、20か月で解決した。異例の速さでした」と指摘した。
2つ目は、訴訟を担当したユージェニー・ライヒ弁護士(Eugenie Reich、写真出典)が述べているように、この事件の特徴は、事件に関するすべての情報が公に利用可能だったことだ。
「研究不正の証拠のほとんどは公開されており、ショルト・デイヴィッド博士が、粘り強く追跡調査を行ない、すべてをまとめ上げた努力は誰の目にも明らかでした。ネカトハンターは往々にして、モグラ叩きのように、質の低い論文の不正個所を叩いているが、必ずしも不正全体構造を探知できているわけではありません。その背後にある莫大な研究費の無駄を、必ずしも把握できていません」と指摘した。
「ショルト・デイヴィッド博士は、法執行に適切な形に、全体像が見えるようにまとめ上げました」。
●7.【白楽の感想】
《1》日本のあなたも、キイタム訴訟でウン億円ゲットしよう
米国の虚偽請求法(False Claims Act)のキイタム(クイ・タム、qui tam action)条項(内部告発者条項)は、民間人が政府を代表して訴訟を起こすことを認めている。
過去10年間にコロンビア大学、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、デューク大学などの訴訟で、原告が勝訴している。 → デューク大学の例:7-123 ネカト告発で34億円ゲット(米) | 白楽の研究者倫理
今回は、英国人が米国のボストン地裁に訴えて、勝訴した。
ということは、日本人のあなたも、日本から米国の裁判所に訴え、ウン億円を得ることができる。
簡単ではないだろうけど、ショルト・デイヴィッド流にやればいい。
まず、ココが肝心だけど、米国の超有力な生物医学系・研究者の研究不正を見つける。
その研究不正の顛末を「For Better Science」に詳細に書く。ついでに、その不正論文で受領したNIH研究費を探る。
一方、ジョン・トーマス弁護士(John Thomas)のキイタム入門3部作(パート1 、パート2 、パート3)を読む。
次いで、ユージェニー・ライヒ法律事務所の「助成金詐欺と虚偽請求法」を読む: Grant Fraud & The False Claims Act – Eugenie Reich Law, LLC
そして、ユージェニー・ライヒ法律事務所(Eugenie Reich Law LLC)に依頼する。 → Whistleblower law firm specializing in science, technology, healthcare and the pharmaceutical industry.
これで、あなたも、20か月後に、ウン億円で、酒池肉林。イヤイヤ、お祝いは、500円の牛丼。
《2》和解で不正認定なし?
このような和解をすると、研究公正局は、ダナ・ファーバー癌研究所の研究者が研究不正をしたという認定をしない。
つまり、「カネをくれたから不正を見逃す」。
和解内容に上記のことが記載されている、と白楽は思っていたが、実際はそうでもないようだ。
司法省のプレスリリースで、米国の研究公正局の上位機関と思える健康福祉省・監査総監室(DHHS-OIG)のクリスチャン・シュランク(Christian J. Schrank)調査担当副監察総監は次のコメントしている。
「研究データの捏造・改ざんと連邦資金の不正使用は、国民の信頼を著しく損い、科学の信頼を脅かす。連邦助成金交付規則に違反した者は、法的措置のリスクを負うだけでなく、税金管理にも悪影響を及ぼします」。
和解文書に、米国政府は、ダナ・ファーバー癌研究所に対してさらなる金銭請求権はないが、「連邦機関の資格停止および資格剥奪の権利」「個人の責任」は免責しない、とある。
これは、研究公正局がクロと判定し、NIH研究費申請の資格を停止できる、と読めるが、ど~なんだろう?
数年経過しないと結果はわからないが、研究公正局は、多分、ダナ・ファーバー癌研究所の研究者をクロと認定しないだろう。つまり、「カネをくれたから不正を見逃した」。
コレって、いいんだろうか?
日本も、不祥事等を起こした際、「〇か月報酬〇〇%減」などと、「カネを払うから不正を見逃してください」あるいは「処分を軽くしてください」が起こる。
国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は3日、大津欣也理事長が部下にパワハラをしたと第三者の調査機関が認定した問題で、理事長が役員報酬の10%を3カ月間自主返納すると発表した。(2024年12月3日記事:国循理事長が役員報酬返納、第三者調査機関がパワハラ認定 ハラスメント研修受講の意向も – 産経ニュース)
コレって、賄賂じゃないの? 日本社会は問題視しないけど、「カネを払うから処分を見逃して」、「処分を軽くして」は不正だと思う。
《3》日本に虚偽請求法を
日本に虚偽請求法を導入して欲しい。
研究不正の告発で、国は支給した研究助成金を返還させる。
その告発作業をしたネカトハンターに返還金の15~30%をあげてもいいと思う。というか、あげるのが妥当だと思う。
だって、国は自分では不正を見つけないのに、ネカトハンターの高度な作業のお陰で不正を見つけ、ネカトハンターの危険が告発で、お金を得ている。
15~30%をあげてもよくない?
日本の法律事情を知らないが、日本に虚偽請求法を導入して欲しい。
ユージェニー・ライヒ弁護士(Eugenie Reich)は、内部告発者のリスクを政府が保障(補償?)すべきだと主張している。 → 2024年2月5日記事: Whistleblowers should have their risks federally covered
関連情報も再掲しておく。以下は、「7-167 ネカト告発で2千万円ゲット(米国) | 白楽の研究者倫理」からの改変流用である。
ーーーここから流用
日本では、告発者は建前では保護されるけど、現実は攻撃される。ろくな目に合わない。
米国でも、「内部告発者は追放され、解雇され、訴えられ、不正行為で告発され、友人を失い、家族を失う」。 → 7-162 カール・エリオット:不正者を守り告発者を罰する現実 | 白楽の研究者倫理
でも、告発者ネットワークがある。 → You searched for Research Misconduct – Whistleblower Network News
キイタム訴訟(qui tam lawsuit)のアーカイブがある。 → False Claims-Qui Tam Archives – Whistleblower Network News
そして、7月30日は「告発者感謝の日」だそうだ。 → National Whistleblower Appreciation Day – Wikipedia
7月30日の「告発者感謝の日」を、日本の祝日に!
ーーーここまで流用
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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