パール・シュミット(Pál Schmitt)(ハンガリー)

2017年5月18日掲載。

ワンポイント:1968年(26歳)と1972年(30歳)のオリンピックで金メダルを獲得し、2010年(68歳)にハンガリーの大統領(男性)になった。1992年(50歳)にスポーツ科学の博士号を取得したが、2012年(69歳)に盗博が発覚し、博士号がはく奪され、大統領を辞任した。盗用ページ率は約100%(推定)で、盗用文字率は約95%(推定)である。損害額の総額(推定)は1000億円(当てずっぽう)。「全期間ランキング」に記述した「高等教育界を震撼させた著名人の10大盗用スキャンダル」:2013年1月10日の第5位である。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

パール・シュミット(Pál Schmitt、写真出典)は、1968年(26歳)と1972年(30歳)のオリンピックのフェンシング団体で金メダルを獲得し、2010年8月6日(68歳)、ハンガリーの大統領になった。1992年(50歳)にブダペストの体育大学(現・センメルヴァイス大学)(Semmelweis University)で、スポーツ科学の博士号を取得した。

2012年3-4月(69歳)、盗博が発覚し、博士号がはく奪され、大統領を辞任した。

なお、パール・シュミットの博士号は、正確には、研究博士号(PhD)より一段低い「Dr. univ.」である。「Dr. univ.」は、ハンガリー独特の博士号で、1990年代に廃止され、質的レベルが高い場合は研究博士号(PhD)に置き換えられた。パール・シュミットの「Dr. univ.」は、研究博士号(PhD)に置き換えられていないが、ここでは、区別せず、博士号と記す。

ハンガリーの名前は、姓・名の順に記載するのが正式だが、他の記事と合わせ、名・姓の順に記載した。

この事件の日本語解説は一橋大学の秋山晋吾・教授の記述が、非常に優れている。文章を本文に引用した。

シュミット事件は、「全期間ランキング」に記述した「高等教育界を震撼させた著名人の10大盗用スキャンダル」:2013年1月10日の第5位である。

センメルヴァイス大学(Semmelweis University)。写真出典
。 E patient Dave, a vilag leghirsesebb e-betege elÅ?adása a Nagyvárad téri Elméleti Tömb (NET) épületében Meskó Bertalan kurzusán.
  • 不正:盗博(盗用博士論文)
  • 国:ハンガリー
  • 成長国:ハンガリー
  • 博士号取得年月日:1992年(50歳)
  • 博士号取得大学:センメルヴァイス大学
  • 分野:スポーツ科学
  • 博士論文タイトル:Az újkori olimpiai játékok programjának elemzése (英訳:An analysis of the programme of the modern Olympics)(日本語訳:現代オリンピック・プログラムの分析)
  • 博士論文審査員:委員長はJózsef Tihanyi。他の4人の審査員は、Csaba Istvánfi、故Mihály Nyerges、István Kertész、Ferenc Takács
  • 公開:
  • 裁判:
  • 盗博発覚年月日:2012年1月11 日(69歳)
  • 盗用ページ率:約100%(推定)
  • 盗用文字率:約95%(推定)
  • 博士号はく奪状況:2012年3月29日(69歳)、はく奪
  • 男女:男性
  • 生年月日:1942年5月13日
  • 現在の年齢:75 歳
  • 発覚時地位:ハンガリー大統領
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は詳細不明だが、ハンガリーのニュース週刊誌hvgに情報を持ち込んだ
  • ステップ2(メディア):ハンガリーのニュース週刊誌hvg。多数のメディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①センメルヴァイス大学・調査委員会
  • 損害額:総額(推定)は1000億円。内訳 → ①盗博が調査・糾弾され博士号がはく奪されたが、大統領に選ばれた人が盗博者だったことによる政界の権威・公正さ・信頼が崩壊した。その影響は1000億円(当てずっぽう)。
  • 結末:博士号はく奪、大統領・辞職
https://www.theguardian.com/world/2012/apr/02/hungarian-president-resigns-doctorate-plagiarism

●2.【経歴と経過】

出典:①Pál Schmitt – Wikipedia、②HE Mr Pál SCHMITT – Hungarian Olympic Committee, IOC Member since 1983、③外務省: シュミット・パール ハンガリー大統領略歴

  • 1942年5月13日:ハンガリーのブタペストで生まれる
  • 1965年(22歳):ハンガリーのブタペスト大学(Budapest University)を卒業。学士号:経済学。日本の外務省では、カール・マルクス経済大学卒業と記載されている
  • 1965-1981年(22-39歳):ハンガロ(Hungaro)ホテルの管理スタッフ
  • 1968年(26歳):メキシコシティー・オリンピックのフェンシングで金メダル
  • 1972年(30歳):ミュンヘン・オリンピックのフェンシング・エペ団体男子で金メダル(どの人がパール・シュミットかわかります?)。写真出典。左端らしい。
  • 1983 – 1989年(41-47歳):ハンガリー・オリンピック委員会(HOC)第一書記
  • 1989年(47歳):ハンガリー・オリンピック委員会(HOC)・会長
  • 1992年(50歳):ハンガリーのセンメルヴァイス大学(Semmelweis University)で博士号を取得
  • 1993–1997年(51-55歳):在スペイン・ハンガリー大使
  • 1994年(52歳):教授資格を取得
  • 1999–2002年(57-60歳):在スイス・ハンガリー大使
  • 2004–2009年(62-67歳):欧州議会議員初当選
  • 2009–2010年(67-67歳):欧州議会議員再選
  • 2010年4月(67歳):国会議員初当選(全国比例)
  • 2010年5月(67歳):国会議長就任
  • 2010年8月6日(68歳):ハンガリーの大統領
  • 2012年1月11 日(69歳):盗博が発覚
  • 2012年3月27日(69歳):センメルヴァイス大学・調査委員会が盗博と断定
  • 2012年3月29日(69歳):センメルヴァイス大学が博士号を剥奪
  • 2012年4月2日(69歳):大統領を辞任

●3.【動画】

【動画1】
大統領の盗博のCNNニュース:「Hungarian president caught plagiarizing」(英語)1分41秒。最初に宣伝が入る。
CNN が2012/03/30 に公開
Hungarian president caught plagiarizing

【動画2】
盗用で大統領辞任のニュース:「Hungarian president resigns over plagiarism scandal – YouTube」(英語)2分47秒。
Press TV が2012/04/04 に公開

●4.【日本語の解説】

★2012年4月2日:Zoltan Simon記者とEdith Balazs記者の「Bloomberg」記事、翻訳者不明:「ハンガリーのシュミット大統領辞任-論文盗用で博士号剥奪後」

出典 → ココ (保存版

ハンガリーのシュミット大統領が2日、辞任した。論文を盗用したとして大学側から先週、スポーツの博士 号を剥奪されていた。

2010年に就任したオルバン首相を支えてきたシュミット大統領は、 辞任を求める圧力に屈した格好となった。当初は辞めることを拒み、3月30日には公共テレビで自身の博士号と大統領職に「関係はない」と語 っていた。

シュミット氏はオリンピックでフェンシングの金メダリストとなっ た経歴を持ち、長期間にわたって国際オリンピック委員会(IOC)の メンバーでもあった。

★2012年4月5日:西須賀正明(相原寛彰):MySouda – 外国語 Blog:「大統領の盗用」

出典 → ココ (保存版
→ 元典:Learning English – Words in the News – Presidential plagiarism

シュミット大統領に対する申し立ては、1月に、主要なハンガリーの週刊誌 HVG が、彼の 1992年のオリンピック競技会の歴史に関する博士論文の大部分が、ブルガリアの著者による論文の一語一句違わない翻訳であることの明らかな証拠であると言うものを出版したときから始まった。

シュミット大統領は、広く尊敬を集めている元スポーツマンであり、ハンガリーのフェンシング・チームで2度オリンピックのメダルを獲得している。彼は、また、与党フィデス党の忠実なメンバーであり、2010年に
任期5年で大統領に当選した。ブダペスト・ゼンメルワイス大学の調査委員会は、その論文の多くがコピーであることを確認したが、十分高い基準を保てなかった元の大学当局を批判した。

今、大学の学長は、大統領から名誉博士号の称号を剥奪する手続きを始めると語っている。シュミット大統領は、彼は辞任するつもりはないと語った。次に何が起こるかは、彼が自らの党から感じている支持の程度によるだろう。

★2012年3月29日:秋山晋吾のブログ:「剽窃・大学・大統領」

出典 → ココ保存版

なお、「秋山 晋吾(あきやま しんご、1971年 – )は、日本の歴史学者、ハンガリー史研究者。一橋大学大学院社会学研究科教授。専門は、東欧、中欧の社会史」(秋山晋吾 – Wikipedia)。

以下、引用文です。

事の発端は今年1月に、ハンガリーのニュース週刊誌hvgで報道された疑惑。

記事には、シュミット大統領が1992年にブダペシュトの体育大学(現在ゼンメルヴァイス医科大学に吸収)に提出した学位論文の大半が、1987年にフランス語で発表されたブルガリア人学者の研究をほぼそのまま翻訳したものだと書かれていた。http://hvg.hu/itthon/20120111_Schmitt_doktori_disszertacio_plagium
その後、さらにドイツ人学者の英語文献からのコピーも見つかった。

シュミット氏は疑惑を否定した。

おととい(3月27日)、大学の調査委員会の報告書が発表された。http://mediasarok.sote.hu/15877/kozlemeny-2012-03-27/

ぎょっとした。

報告書は、論文の内容について、

  • シュミット氏の学位論文は、(全215ページのうち)17ページがドイツ人研究者の著作の完全な翻訳コピー、180ページ分がブルガリア人研究者の著作の部分的なコピー、文中の7つの表もコピー。
  • 論文には参考文献一覧は付されているが、文中に引用注がいっさいつけられておらず、引用符もない。また、ドイツ人研究者の著作は、文献一覧にも挙げられていない。

ということを確認する。

つまり、この論文は剽窃であるとしか読めないのだが、報告書の結論は違った。

曰く、
「本論文に散見される非学術的な資料の用い方、学術的な引用注・参照注の欠如は、指導教員あるいは論文審査員が、論文作成時あるいは予備審査時に指摘すべきことであり、それゆえ、形式上の誤りではあるが、違反行為ではない。」

ゆえに、
「当該の学位論文は、上述のような手続き上のミスは見られるが、形式上は当時の体育大学の慣例に照らして適切である。・・・・体育大学が〔論文上の〕文章の一致を適切に発見することを怠ったため、論文筆者〔シュミット氏〕はこの論文が審査基準に合致するものと信ずるにいたったのである。」

学位請求者も腐っていれば、大学も腐っている。

注も付けられていない論文を提出する者も、それを受理して学位を授与する20年前の大学も、それを適切だったと結論する20年後の大学も。

大学は1992年と2012年と2回にもわたって醜態をさらしているのだ。

この報告書を受けて、シュミット氏も、シュミット氏を大統領に推した与党フィデスも、KDNPも、これでみそぎが済んだと発言している。

呆れはてるとはこのことだ。

秋山晋吾・教授は、その後、秀逸な2つの記事をブログに書いている。全部引用するのは気が引けるので、読者がアクセスされるのをおススメする。
→ 2012年3月31日:秋山晋吾のブログ:「剽窃・大学・大統領―その2」:剽窃・大学・大統領―その2 ハンガリー史・秋山晋吾のブログ
→ 2012年4月3日:秋山晋吾のブログ:「剽窃・大学・大統領―その3」:剽窃・大学・大統領―その3:ハンガリー史・秋山晋吾のブログ

http://index.hu/tech/2012/03/27/schmitt_pal_a_kiapadhatatlan_viccforras/

●5.【不正発覚の経緯と内容】

1992年(50歳)、パール・シュミットは、センメルヴァイス大学でスポーツ科学の博士号を取得した。博士論文のタイトルは「Az újkori olimpiai játékok programjának elemzése (英語訳:An analysis of the programme of the modern Olympics)(日本語訳:現代オリンピック・プログラムの分析)」だった。

2010年8月6日(68歳)、パール・シュミットは、ハンガリーの大統領に就任した。

2012年1月11 日(69歳)、ハンガリーのニュース週刊誌hvgが、パール・シュミットの博士論文は、ブルガリア人のスポーツ科学者・ニコライ・ゲオルギエフ(Nikolay Georgiev)の1987年の文章を盗用していると指摘した。

2012年1月25 日(69歳)、センメルヴァイス大学は・調査委員会を発足した。委員は以下の5人である。

  • Miklós Tóth: dean of the Faculty of Sport Sciences, Semmelweis University
  • Ákos Fluck: lawyer
  • János Gombocz: Department of Physical Education Theory and Pedagogy, Semmelweis University
  • Etele Kovács: Department of Athletics, Semmelweis University
  • Károly Rácz: President of the Doctoral Council, School of Doctoral Studies, Semmelweis University

2012年3月27日(69歳)、センメルヴァイス大学・調査委員会が盗博と断定し、2日後の2012年3月29日に博士号を剥奪した。

2012年4月1日(69歳)、シュミットの博士号を剥奪したセンメルヴァイス大学のティヴァダル・トゥラシャイ学長(Tivadar Tulassay、写真出典)が辞任した。

2012年4月2日(69歳)、パール・シュミットは、大統領を辞任した。

●6.【盗用解析】

パール・シュミットの博士論文のタイトルは 「Az újkori olimpiai játékok programjának elemzése (英語訳:An analysis of the programme of the modern Olympics)(日本語訳:現代オリンピック・プログラムの分析)」である。

博士論文の盗用分析図を以下に示す。5つの色で5つの被盗用文献を示した。

出典:By Swa-LuOwn work, CC0, Link

博士論文は215ページで、盗用ページ率は記載されていない。全ページが着色しているので印象として100%である。

赤色が圧倒的に多い。

「シュミット氏の学位論文は、(全215ページのうち)17ページがドイツ人研究者の著作の完全な翻訳コピー、180ページ分がブルガリア人研究者の著作の部分的なコピー、文中の7つの表もコピー。論文には参考文献一覧は付されているが、文中に引用注がいっさいつけられておらず、引用符もない。また、ドイツ人研究者の著作は、文献一覧にも挙げられていない」(秋山晋吾・教授の解説

約180ページ分(つまり約84%)はブルガリア人のスポーツ科学者・ニコライ・ゲオルギエフ(Nikolay Georgiev)の1987年の文章から引用なしで転載(つまり、盗用)したのである。盗用分析図の赤色で示した部分である。単一の文書から180ページも流用するとは、スゴイ。

ニコライ・ゲオルギエフの被盗用文は、465頁のフランス語の文章『Analyse du programme olympique (des Jeux d’Olympiade)』で、パール・シュミットは、該当部分をほぼ逐語訳した。

博士論文の本文は215頁ある。分析対象ページ数(表題、目次、表、図、文献、付録などを除いた部分)を9割の194ページとすると、盗用ページは17+180で197ページである。盗用ページ率は197/194=1・015で100%となる。盗用文字率は約95%(推定)である。

★各ページの盗用分析

1例として、以下に12ページのPDFで盗用比較図が示す。
→ 2012年1月11日の「Heti Világgazdaság」記事(ハンガリー語):http://static.hvgrt.hu/document/SchmittPal.pdf

左側がニコライ・ゲオルギエフ(Nikolay Georgiev)の被盗用文章(フランス語)で、右がパール・シュミットの盗用論文(ハンガリー語)である。フランス語 → ハンガリー語、なので、逐語訳の盗用と判定されたが、単語を併記しても、両方の言語を理解できないと判りにくい。
SchmittPal

★審査員の利益相反

パール・シュミットの博士号は、盗博だけでなく、博士論文審査員も不正に選出されていた。

ハンガリーの博士号審査基準では、博士候補者と利害関係のある者は審査員になれない。

ところが、5人の博士論文審査員の内2人、István KertészとFerenc Takácsは、パール・シュミットが会長を務めるハンガリー・オリンピック委員会(HOC)の委員だったのである。
→ 2012年1月18日の「Népszabadság」記事(ハンガリー語):Belföld: Schmitt doktorijánál az akkor érvényes szabályokat is megsértették – NOL.hu

●7.【白楽の感想】

《1》秋山晋吾・教授の指摘に共感

一橋大学の秋山晋吾・教授の日本語の事件解説を本文に引用したが、秋山晋吾・教授は、センメルヴァイス大学の対応の悪さに言及している。深く共感した。

出典 → 2012年3月31日:秋山晋吾のブログ:「剽窃・大学・大統領―その2」:剽窃・大学・大統領―その2 ハンガリー史・秋山晋吾のブログ/ウェブリブログ
出典 → 2012年4月3日:秋山晋吾のブログ:「剽窃・大学・大統領―その3」:剽窃・大学・大統領―その3:ハンガリー史・秋山晋吾のブログ

  • そもそも、引用注・参照注が付されていないような文章を学位請求論文として受理したこと。今回のように外国語かつ入手が容易でない文献からの論文剽窃を見抜くことは困難であるとしても、形式上あきらかに論文の体をなしていないと思われる。
  • こうした論文を受理し、さらにこれをもとに学位を授与するという決定が、学位請求者のステータス(オリンピック金メダリストで、ハンガリー・オリンピック委員会会長)の影響を受けていたと思われる(思われかねない)こと。
  • 調査委員会の報告書を、大学自ら検討するまえに教育相に判断を仰ぐために送付したこと(結局、未開封のまま送り返されてきたのだが)。大学の自治、学術の自立性の自己否定だ。
  • シュミット氏に理事会の前で反論する機会を与えることなく、学位剥奪を決定したこと。

そして、

  • センメルヴァイスのトゥラシャイ・ティヴァダル学長が辞任したことには納得がいかない。
  • トゥラシャイ氏は辞任せず、大学の自立性を徹底して擁護すべきだった。

《2》博士号はアクセサリー

パール・シュミットの経歴を探ると、大学・学部で経済学で学士号を取得している。その後、ホテルの管理スタッフの職に就いているので、博士論文の分野であるスポーツ科学の学術的な知識・経験はないと思われる。オリンピックで金メダルを取ることと、スポーツ科学の学術的な知識・経験とは全く別である。

研究の世界についての知識・経験はない。

論文を書く力量はない。

そういう人に、50歳になって、博士号を取らせた。

どうして、博士号を取ろうと思ったのか? 誰が、取らせようと思ったのか? 盗博すればいいと誰が教唆したのか?

50歳で博士号を取得してすぐ後の51歳で、在スペイン・ハンガリー大使になっている。大使になるのに博士号をアクセサリーと考えたようだ。

《3》盗博の教唆

誰かが、パール・シュミットに盗博すればいいと教唆したに違いない。多分、博士論文の指導教授だろう。いい加減な教授は、実は、かなりいる。

白楽の経験だが、学部からストレートに修士・博士と進学してくる院生でも、博士論文(日本語)を書くのは四苦八苦している。だから大学院教育が重要なのだが、修士論文(日本語)で練習させ、学術誌に日本語総説を書かせ練習させておく。そして、白楽が博士論文のサンプルを示し、書き方を教え、執筆過程を具体的に示す。ほとんどの院生は、そのヤリトリを数回行なうと、論文の書き方を習得し、自力で完成する。

ただ、少数だが、自力で完成できない院生もいる。そうなると、指導・指導・指導と指導が大きくなり、気が付くと、博士論文の半分くらいは白楽が書いていたということになる。

それなら、最初から、指導教授が書いて、院生本人に確認を取る方が、楽だし早い。しかし、コレではマズイ。院生を育てることにならない。

白楽は、現職の参議院議員、現職の弁理士、現職の高校教員などの社会人を大学院博士課程に入学させ、研究指導したことがある。彼女たちの何人かは、研究とは何か、そして、学術論文の書き方を、全く把握できていない。そういう人に博士号レベルの実力をつけさせようと指導しても、ついてこれず、挫折した。

希望した社会人を全部引き受けたわけではない。企業の女性社長から、博士号を取得したいと打診されたこともあるが、軟弱な印象を受け、断った。

今回の事件のパール・シュミットはオリンピックで金メダルを2回も受賞したハンガリーの国民的スターである。40代後半にハンガリー・オリンピック委員会(HOC)・会長という要職に就いていた。その国民的スターが、博士号を取得したいと考えた。

その状況なら、ほとんどの大学教授は断れない。そして、パール・シュミットが自力で博士論文を書けないと分かった時、ほとんどの大学教授は、パール・シュミットに「何とか穏便」に博士論文を提出させ、ソッと博士号を授与したいと考える。

博士号レベルの実力をつけさせようと厳しく指導する白楽のような人は、ごくわずかである。となれば、誰が教唆したかわからないが、パール・シュミットの指導教授かその周辺の誰かが、「何とか穏便」=盗博、を教唆したに違いない。

《4》日本の主要メディア

ハンガリー語のメディア、英語のメディアにたくさんのシュミット事件の記事がある。また、大統領だったから、当然、ネット上に、たくさんの写真がある。

しかし、日本の主要新聞はシュミット事件を記事にしていない(白楽の知る限り)。日本の主要メディアって、情報発信が偏っている、あるいは貧弱な気がする。

「大統領が盗博で辞任」は大した事件ではない? 記事にすると、日本の政治家の卒論や文章の盗用が詮索されるとマズイと感じてる?

イエイエ、発信が貧弱ではなく、それ以前の情報収集と分析が貧弱なのだろう。

原因が何であれ、かなり、マズいと感じている。
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●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Pál Schmitt – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:Pál Schmitt academic misconduct controversy – Wikipedia
③ 2012年4月2日のパルコ・カラスズ(Palko Karasz)の「New York Times」記事:Hungarian President Resigns Amid Plagiarism Scandal – The New York Times (保存版
④ここにリストしませんが、ハンガリー語のメディア、英語のメディアにたくさんの記事がある。大統領だったから、当然、ネット上に、たくさんの写真がある。
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

http://3.bp.blogspot.com/-jiGrLimEoaI/T3n0t5YcvgI/AAAAAAAAAI0/7cqNmNFwkkA/s1600/120330Schmitt03.jpg

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