企業:狂犬病ワクチン(rabies vaccines)、長春長生生物科技(Changchun Changsheng Life Sciences Ltd)(中国)

2019年10月6日掲載 

ワンポイント:この事件は、研究者の研究データねつ造・改ざん事件ではない。2018年7月15日、中国の国家医薬品局(国家药品监督管理局)は、抜き打ち検査で長春長生生物科技の狂犬病ワクチン(rabies vaccines)の生産記録にねつ造・改ざんを見つけたと、発表した。健康被害者は報告されていない。2018年10月16日、中国の薬物規制当局は、長春長生生物科技に91億元(約13億ドル、約1,300億円)相当のペナルティを課した。国民の損害額(推定)は1,400億円(大雑把)。

【追記】
・2019年11月11日記事:ワクチン生産記録不正の中国「長春長生」が破産、債務超過で更生・和解の道無く 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.日本語の解説
3.事件の経過と内容
4.白楽の感想
5.主要情報源
6.コメント
ーーーーーーー

●1.【概略】

2018年7月、中国の長春長生生物科技(Changchun Changsheng Life Sciences Ltd)の狂犬病ワクチン(rabies vaccines、写真出典)の生産記録のねつ造・改ざんが発覚した。

警察が捜査を開始した。

中国政府の国家医薬品局は、長春長生生物科技に市場の狂犬病ワクチンの全回収を命じ、生産を禁止した。

健康被害は報告されていない。

狂犬病ワクチン(rabies vaccines)の日付とバッチ番号が対応していなかったこと、製造日をねつ造・改ざんしたという生産記録のねつ造・改ざんだった。

研究上のネカトというより、営業利益上のネカトやズサンさに起因するねつ造・改ざんだった。研究者が研究データをねつ造・改ざんした事件ではなかった。

長春長生生物科技公司(網絡圖片)。写真出典

  • 国:中国
  • 集団名:長春長生生物科技(ちょうしゅんちょうせいせいぶつかぎ)
  • 集団名(中国語):长春长生生物科技有限责任公司
  • 集団名(英語):Changchun Changsheng Life Sciences Ltd.
  • ウェブサイト(中国語):http://www.cs-vaccine.com/
  • 集団の概要:長生生物科技股份有限公司(ちょうせいせいぶつかぎ こふんゆうげんこうし)(Changsheng Bio-technology Co.,Ltd.)が親会社。1992年8月27日に設立された。
  • 事件の首謀者:不明。
  • 分野:医薬品製造
  • 不正年:2018年
  • 発覚年:2018年
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は国家医薬品局(国家药品监督管理局)で、抜き打ち検査で見つけた
  • ステップ2(メディア):中国・日本・英語圏の多くのメディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ): ①国家医薬品局。②警察
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:論文ではなく、ワクチン生産記録
  • 被害(者):問題のある狂犬病ワクチンは全部回収され、健康被害は報告されていない。
  • 国民の損害額:総額(推定)は1,400億円(大雑把)。下記のペナルティに100億円加えた
  • 結末:罰金と違法収入の没収の総計約1,300億円のペナルティ。生産記録改ざん者は無処分?

●2.【日本語の解説】

日本語の解説が多数あり、それらを「修正」引用する。それで、事件の全体が詳細に理解できる。

★2018年7月22日:新華網日本語:長春長生にワクチン生産停止命令 立案調査も 国家薬監局

出典 → ココ、(保存版

【新華社北京7月22日】中国国家薬品監督管理局(国家薬監局)の責任者は22日、長春長生生物科技有限責任公司が法律と規則に違反した狂犬病ワクチンを生産したことについて現在の状況を説明した。

同責任者によると、同局はすでに同社に対し生産停止を命じ、GMP(医薬品適正製造基準)認定を取り消すとともに、吉林省食品薬品監督管理局と合同で立案調査を行っている。

以下略

★2018年7月24日:東洋経済:中国の狂犬病ワクチン会社が製造記録改ざん

出典 → ココ、(保存版

[上海 23日 ロイター] – 中国のワクチンメーカー、長春長生生物科技(チャンション・バイオ・テクノロジー)<002680.SZ>による狂犬病ワクチンの製造を巡る違反で、警察が会長と上級幹部4人に対し捜査を開始した。新華社が23日夜報じた。このワクチンは乳児が接種を受ける。

長春長生は、国内で生後3カ月の乳児が接種を受ける狂犬病ワクチンの製造に関する資料を捏造(ねつぞう)していたことが発覚した。国家食品薬品監督管理局(SFDA)によると、同社は検査記録および製造記録を改ざんし、勝手に工程パラメータや設備を変更することで「重大な法律違反」を犯したと断じた。

現段階で被害に関する報道は出ていないが、当局は同社に対し製造中止と製品回収を命じた。

★2018年8月3日:北村 豊の日経ビジネス記事:中国を揺るがした欠陥ワクチン事件の全貌

出典 → ココ、(保存版

事件の発端は、7月15日に“国家薬品監督管理局”が出した通告だった。それには次のように書かれていた。すなわち、吉林省“長春市”を本拠とするワクチンメーカー“長春長生生物科技有限責任公司”(以下「長春長生」)は、フリーズドライの“人用狂犬病疫苗(人用狂犬病ワクチン)”生産過程に記録改ざんなどの“薬品生産質量管理規範(薬品生産品質管理基準)”に対する厳重な違反行為が存在し、長春生物に対して狂犬病ワクチンの生産停止を命じた。

★2018年12月13日:AFPBB News:ワクチン不正製造の中国・長春長生、深セン証券取引所で上場廃止へ

出典 → ココ、(保存版

【12月11日 CNS】不正にワクチンを製造したとして、中国の製薬会社の長春長生生物科技(Changchun Changsheng Biotechnology)が深セン証券取引所(Shenzhen Stock Exchange)で上場廃止されることがわかった。同社が11日に明らかにした。

★2019年2月5日:東方新報:ワクチン不正製造の長春長生関係者を厳格処分 中国国家監察委など

出典 → ココ、(保存済)

★2019年4月22日:Bloomberg News:中国、不正ワクチン製造業者への罰金引き上げ

出典 → ココ、(保存版

中国は効果のないワクチンを製造する業者の取り締まりで当初案より高い罰金や厳格な罰則を導入する。

不正ワクチンを製造または販売した企業には対象製品の価値の15-30倍の罰金が科される。中国新聞網がワクチン管理法の第2次草案を引用して報じた。昨年11月に提出された第1次草案では罰金額は製品価値の5-10倍とされていた。

中国政府は国内製薬業界に対する消費者の信頼回復を目指している。昨年夏には長春長生生物科技などが不正ワクチンを販売していたことが判明し、消費者の間でパニックや抗議活動が広がった。長春長生生物科技は粗悪な乳児向けワクチンを製造・販売し、狂犬病ワクチンの製造・検査データの捏造(ねつぞう)も行っていたことが発覚した。

●3.【事件の経過と内容】

「2.【日本語の解説】」で事件の全貌を把握して下さい。以下は、補足である。

2018年7月15日、中国の国家医薬品局(国家药品监督管理局)は、抜き打ち検査を行なった結果、長春長生生物科技(Changchun Changsheng Life Sciences Ltd.)の狂犬病ワクチン(rabies vaccines)の生産記録にねつ造・改ざんを見つけたと、発表した。
 → 2018年7月16日の「FiercePharma」記事:Top Chinese rabies vaccine maker ordered to stop production over forged data | FiercePharma

長春長生生物科技は狂犬病ワクチン製造では中国国内第2位で、中国市場の約4分の1を占めていた。

今回の摘発の8か月前に、長春長生生物科技は、有害ではないが効果がない品質不良の三種混合ワクチンを販売し、22万人の児童に接種したスキャンダルが発覚していた。ワクチン接種後に死亡者が出ているが、欠陥ワクチンとの因果関係は不明である。

長春長生生物科技は、狂犬病ワクチンや三種混合ワクチン以外にも、インフルエンザワクチンに加えて、水痘、A型肝炎、ACYW髄膜炎菌に対するワクチンの製造販売も行なっていた。一部は、インド、カンボジア、エジプト、ベラルーシなどに輸出していた。狂犬病ワクチンを中国以外に輸出しているかどうか不明である。いずれの製品も、日本に輸出していなかった。

2018年7月22日、国家食品医薬品局は長春長生ワクチン事件を発表し、狂犬病ワクチンの生産の中止を命じ、市場の狂犬病ワクチンの回収を命じた。

2018年7月23日、長春長生生物科技は従業員の休日とし、すべての生産ラインを停止した。

Wu Zhen 、(图源:VCG).http://news.dwnews.com/china/news/2018-08-17/60078464.html

2018年8月16日、李克強首相は中国共産党中央紀律検査委員会と国家監察委員会を召集し、長春長生ワクチン事件の問題を討議し、元国家食品薬品監督管理総局のウー・ジェン副局長(呉湞、Wu Zhen (politician) – Wikipedia)を党籍剥奪の処分とした。ウーは2019年2月2日に共産党から追放された。

2018年10月16日、中国の薬物規制当局は、長春長生生物科技に91億元(約13億ドル、約1,300億円)相当のペナルティを課した。このペナルティ額は、罰金と違法収入の没収の総計である。また、長春長生生物科技の14人の幹部に医薬品ビジネスに従事することを禁止した。
 → 2018年10月16日の北京監視デスク・執筆をエドモンド・ブレア(Edmund Blair)が編集した「ロイター」記事:Chinese drug regulator fines Changsheng Bio-Tech unit over vaccine scandal – Business Insider

【ねつ造・改ざんの具体例】

本ブログでは、長春長生ワクチン事件の全貌というより、ネカトに焦点を絞って事実を理解したい。つまり、どのような状況で誰が、何を、どのように、ねつ造・改ざんしたのかを理解したい。その理解と分析で、ねつ造・改ざんを防止する方法を探りたい。

長春長生ワクチン事件は長春長生生物科技という企業が起こしたねつ造・改ざん事件である。ねつ造・改ざんしたのは、企業の中の生身の人間である。その人間が見えてこなければ事件は把握できない。

いろいろ資料を探ると、以下の記述・報道があった。

医療業界のコンサルタント会社、北京鼎臣(Beijing Dingchen)の史立臣(Shi Lichen)氏は、「記録の不正といっても範囲は広く、温度や数量、人数などさまざまだが、だいたいコスト削減のために行っているケースが多い」と分析する。(出典:2018年7月19日 「東方新報/AFPBB News」記事:中国の製薬会社、狂犬病ワクチンをリコール 生産記録不正で

狂犬病ワクチン(rabies vaccines)の日付とバッチ番号が対応していなかったこと、製造日をねつ造・改ざんしたという生産記録のねつ造・改ざんをしたのだが、研究上のネカトというより、営業利益上のネカトやズサンさに起因するねつ造・改ざんだった。

研究者が研究データをねつ造・改ざんした事件ではなかった。

誰がねつ造・改ざんしたのかは報道されていない。

【動画】

【動画1】
2018年 7月 24日放映のロイター・ニュース「China police probe vaccine maker: Xinhua」(英語)42秒。以下のサイトで動画をクリック
https://jp.reuters.com/video/2018/07/23/china-police-probe-vaccine-maker-xinhua?videoId=448211457

【動画2】
「时事大家谈:人民信心坍塌,厉害了我的疫苗 – YouTube」(中国語)44分5秒。
美国之音中文网が2018/07/24 に公開

●4.【白楽の感想】

《1》ネカトした方が得

長春長生ワクチン事件は、研究者が研究データをねつ造・改ざんした事件ではなかった。研究上のネカトではなく、営業利益上のねつ造・改ざんだった。

結局、長春長生生物科技のねつ造・改ざんが発覚し、約1,300億円相当のペナルティが課された。

しかし、発覚しなければ、ズルする方が儲けは大きい。欧米の製薬企業の場合、発覚しても、金銭的なプラス・マイナスでは、プラスの場合が多い印象だ。

だから、悪いと知りつつ、儲け優先でネカトをする。食品の産地偽装もそうだが、医薬品の製造・検査で十分なチェックシステムが機能していない。

世界的に、この不正行為を長いこと阻止できていない。

どうすればいいか?

方法を、白楽は何度も書いてきた。しかし、当局が実施しない。実施しなければ、モチロン、改善しない。

ーーーーーー
日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓

ーーーーーー

●5.【主要情報源】

①  ウィキペディア日本語版:長生生物科技 – Wikipedia
② 百度百科(中国語):长春长生生物科技有限责任公司_百度百科
③  2018年10月16日「Reuters」記事:< China’s Changsheng Bio-technology hit by heavy penalties in vaccine scandal – Reuters
④  2018年10月23日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:As China cracks down on faked drug trial data, US FDA abandons disclosure rule – Retraction Watch
⑤  2018年10月16日の北京監視デスク・執筆をエドモンド・ブレア(Edmund Blair)が編集した「ロイター」記事:Chinese drug regulator fines Changsheng Bio-Tech unit over vaccine scandal – Business Insider
⑥  2018年7月27日のジーンテクノサイエンス社のお知らせ:長春長生生物科技有限責任公司とのアダリムマブバイオ後続品の共同事業化の提携解消方針のお知らせ.pdf
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメントは承認待ちです。表示されるまでしばらく時間がかかるかもしれません。