スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)(スウェーデン)

2018年8月2日掲載。

ワンポイント:インド出身で、スウェーデンのヨーテボリ大学(University of Gothenburg)・教授になった。医師ではない。専門は移植生物学だった。2016年3月(54歳?)、「パブピア(PubPeer)」が複数の論文の画像の異常を指摘した。2017年6月(55歳?)にヨーテボリ大学が、2018年(56歳?)にスウェーデンの中央倫理審査委員会(CEPN: Central Ethical Review Board)が、調査の結果、スミトラン=ホルガーソン教授はネカトを犯したと発表した。ヨーテボリ大学はスミトラン=ホルガーソン教授を解雇した。損害額の総額(推定)は12億7600万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson、写真出典)は、インド出身で、スウェーデンのヨーテボリ大学(University of Gothenburg、イェーテボリ大学、ゴーセンバーグ大学)・サルグレンスカ病院(Sahlgrenska sjukhuset)・教授になった。医師ではない。専門は移植生物学だった。

2016年3月(54歳?)、「パブピア(PubPeer)」が複数の論文の画像の異常を指摘した。

それを受けて、2016年3月(54歳?)、ヨーテボリ大学(University of Gothenburg)はネカト調査を開始した。

2017年6月26日(55歳?)、ヨーテボリ大学のパム・フレッドマン学長は、ネカト者はスミトラン=ホルガーソン教授の1人の行為で、他の教員はシロであると発表した。

スウェーデンの中央倫理審査委員会(CEPN: Central Ethical Review Board)も調査を開始した。

2018年3月15日(56歳?)、スウェーデンの中央倫理審査委員会(CEPN: Central Ethical Review Board)は、調査の結果、スミトラン=ホルガーソン教授の8論文にねつ造・改ざんがあったと発表した。

2018年6月26日(56歳?)、スウェーデンの中央倫理審査委員会(CEPN: Central Ethical Review Board)の調査結果を受けて、ヨーテボリ大学は、意図的にネカトを行なったスミトラン=ホルガーソン教授を解雇した。

ヨーテボリ大学のサルグレンスカ病院(Sahlgrenska sjukhuset)とスチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)。写真出典:http://pahoyden.no/2016/11/ny-stamcelleskandale-i-sverige

  • 国:スウェーデン
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:カロリンスカ医科大学(推定)
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1962年1月1日生まれとする。最初の論文を発表した1987年の時、25歳だったとした
  • 現在の年齢:56 歳?
  • 分野:移植生物学
  • 最初の不正論文発表:2004年(42歳?)
  • 発覚年:2016年(54歳?)
  • 発覚時地位:ヨーテボリ大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は匿名(詳細不明)で「パブピア(PubPeer)」で指摘した
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)の「For Better Science」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②ヨーテボリ大学・調査委員会。③スウェーデンの中央倫理審査委員会(CEPN: Central Ethical Review Board)
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:あり。
    → 2018年6月26日のヘレン・セドストローム(Helén Sedström)記者とウルリカ・ルンディン(Ulrika Lundin)の「University of Gothenburg」記事:A professor at the University of Gothenburg found guilty of research misconduct – University of Gothenburg, Sweden
  • 大学の透明性:上記は匿名発表・隠匿(Ⅹ)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:撤回論文数は2報だが、他の6論文の撤回が要請されている
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 損害額:総額(推定)は12億7600万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が31年間=6億2千万円。③院生の損害が1人1000万円だが、人数は不明で、額は②に含めた。④外部研究費は不明だが、5億円(当てずっぽう)。⑤調査経費(大学と中央倫理審査委員会と学術誌出版局)が5千万円。⑥裁判経費なし。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。8報撤回として=1600万円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:大学から解雇
  • 日本人の弟子・友人:不明

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1962年1月1日生まれとする。最初の論文を発表した1987年に25歳とした。インドで生まれる
  • 19xx年(xx歳):インドのxx大学で学士号取得(推定)
  • 19xx年(xx歳):スウェーデンのカロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)のフッディンゲ病院(Huddinge University Hospital)・研究員(推定)
  • 1987年(25歳?):最初の論文をカロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)のフッディンゲ病院(Huddinge University Hospital)所属で出版した
  • 19xx年(xx歳):スウェーデンのカロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)で研究博士号(PhD)を取得(推定)
  • 1999年頃(37歳?):結婚
  • xxxx年(xx歳):スウェーデンのカロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)・準教授(推定)
  • 2008年(46歳?):1回目のネカト疑惑が発生
  • 2008年(46歳?):スウェーデンのヨーテボリ大学(University of Gothenburg)・教授
  • 2012年10月(50歳?): 1回目のネカト疑惑をクリア:スウェーデン研究評議会がシロと結論
  • 2016年(54歳?):2回目のネカト疑惑として、「パブピア(PubPeer)」が論文画像の異常を指摘
  • 2017年6月26日(55歳?):ヨーテボリ大学がねつ造・改ざんがあったと発表
  • 2018年3月15日(56歳?):スウェーデンの中央倫理審査委員会(CEPN: Central Ethical Review Board)もネカトがあったと発表
  • 2018年6月26日(56歳?):ヨーテボリ大学から解雇された

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
自己紹介の動画:「スチトラ・スミトラン博士(Dr. Suchitra Sumitran) – YouTube」(英語)1分57秒。
Clyto Conferences が2016/08/15 に公開

【動画2】
講演の動画:「人間の器官の再設計とリサイクル:TEDxGöteborgでスチトラ・スミトラン=ホルガーソンが講演 (Re-designing and recycling human organs: Suchitra Sumatran-Holgersson at TEDxGöteborg) – YouTube」(英語)19分33秒。
TEDx Talksが2012/11/02 に公開

●4.【日本語の解説】

以下は事件の解説ではない。

★2012年06月18日:ASKSiddhi:インド出身科学者グループ、血管を幹細胞から再生に成功

出典 → ココ、(保存版

インド出身の科学者を含む研究グループが、10歳の少女の骨髄から摘出した幹細胞から増殖させた静脈によって大血管を移殖する実験に、世界で初めて成功していたことが分かった。
6月15日付ナブバーラト紙が報じた。

スチトラ・スミトラン・ホルゲション(Suchitra Sumitran-Holgersson)氏が率いるスウェーデンのヨーテボリ大学(University of Gothenburg)の研究チームが行い、医学誌ランセットに発表された今回の移殖術は、体内の臓器を実験室で増殖させるという、これまでの医学的常識を超えた可能性に大きな一歩を切り拓くものとなり、透析やバイパス形成手術に耐え得る血管が不足していた患者に大きな希望をもたらすことになる。

この実験では研究チームが、ドナーの遺体から血管を摘出し、その細胞を除去した後、移殖対象者となる少女の幹細胞に浸したことによって血管の再形成を試みた。

少女は移殖術の後、活動範囲が広がり、生活の質が大きく向上したという。

★2013年03月01日:特許申請:バイオエンジニアリングによって作製された同種異系血管

出典 → ココ

【課題】同種異系血管およびそれらを作製するための方法を提供すること。
【解決手段】血管を再細胞化する(recellularize)方法であって、脱細胞化(decellularize)した血管に細胞の集団を導入する工程と、前記細胞の集団を脱細胞化した血管上で培養し、それにより、血管を再細胞化する工程とを含む方法により、上記課題を解決する。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★インドからスウェーデンへ

スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)は、インドで生まれた(https://www.facebook.com/aamirkhan.com/posts/10151412075802799)。

しかし、インド時代の経歴は不明である。

ヤン・ホルガーソン(Jan Holgersson、左)、スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson、右)http://www.akademiliv.se/2013/03/10295/

1987年(25歳?)、スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)は、人生で最初の論文をスウェーデンのカロリンスカ医科大学・フッディンゲ病院(Huddinge University Hospital)所属で出版している。2報目はその9年後の1996年(34歳?)、3報目はさらに3年後の1999年(37歳?)である。すべて、カロリンスカ医科大学のフッディンゲ病院に所属していた。

1報目と2報目の間が9年間と長い。2報目と3報目も3年間と長い。この間、コンスタントに研究していないことになる。

共著論文、所属などから推察するに、1999年頃(37歳?)、独身だったスチトラ・スミトラン(Suchitra Sumitran)は、カロリンスカ医科大学・教授(準教授?)で医師のヤン・ホルガーソン(Jan Holgersson)と結婚し、スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)と改名した。

★1回目のネカト発覚:2008年

この部分は2016年3月23日のダルミート・チャウラ(Dalmeet Singh Chawla)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事による:Biologist’s research under investigation in Sweden after being questioned on PubPeer – Retraction Watch

スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)はカロリンスカ医科大学・フッディンゲ病院(Huddinge University Hospital)の準教授に就任していた(推定)。

2005年(43歳?)、以下に示すように、2011年に撤回される「2005年のBlood」論文を出版した。

2008年8月(46歳?)、ネカト疑惑を誰が通報したのか不明だが、カロリンスカ医科大学はスチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)のネカト疑惑を調査し始めた。

調査を始めて間もなく、スミトラン=ホルガーソンはカロリンスカ医科大学からヨーテボリ大学(University of Gothenburg)・教授に移籍した。

2008年12月2日(46歳?)、カロリンスカ医科大学はデータの改ざんの疑いが濃いと結論し、ヨーテボリ大学(University of Gothenburg)と共に、スウェーデンの研究助成機関であるスウェーデン研究評議会(Swedish Research Council (VR))にネカト調査を依頼した。

2010年9月(48歳?)、カロリンスカ医科大学の報告書にはスミトラン=ホルガーソンが次の偽装工作をしていたとある。

スミトラン=ホルガーソンは、「2005年のBlood」論文でねつ造データを発表したが、自分の博士院生の論文原稿にねつ造データを加えていた。また、別の博士院生の博士論文にもねつ造データを加えた。さらに別の博士院生のレポートにもねつ造データを加えた。このような工作で、調査委員会に、データねつ造は自分の行為ではなく、博士院生の行為だと思わせ、間違った方向に誘導しようとした。

2011年2月15日(49歳?)、カロリンスカ医科大学は、しかし、偽装工作に惑わされることなく、スミトラン=ホルガーソンがネカトを犯したと結論し、調査結果を法律事務所に渡した。

2011年9月(49歳?)、ところが、スウェーデン研究評議会(Swedish Research Council (VR))は、カロリンスカ医科大学・調査委員会が調査を適切に運営していなかったという理由で、カロリンスカ医科大学の結論を無効としたのである。

2011年12月(49歳?)、そして、スウェーデン研究評議会は調査を再開しないことと、今後、スミトラン=ホルガーソン事件について、大学の調査を支援しないことを決定した。

2012年10月(50歳?)、スウェーデン研究評議会はスミトラン=ホルガーソンはネカトを犯していないと結論し、また、カロリンスカ医科大学にスミトラン=ホルガーソンがネカトを犯したという2011年2月15日の結論を撤回するよう要請した。

カロリンスカ医科大学はこの要請に反発した。

カロリンスカ医科大学は、カロリンスカ医科大学の2011年2月15日の決定を変更するには、新しい事実が必要であると主張した。新しい事実はネカト行為を適切に判断するための十分な根拠になる。しかし、その後、そのような新しい事実や事情が追加されていない。従って、カロリンスカ医科大学は更なる調査、そして、現在の結論を変える理由がない。本件はこれで終了とした。

白楽は、カロリンスカ医科大学の反発はもっともだと思う。むしろ、スウェーデン研究評議会がどうして手のひらを返したようにクロからシロへと態度を豹変したのか、理解できない。

勝手に推察すると、米国のネカト事件で何度か見てきたような政治的解決だろうか? つまり、スミトラン=ホルガーソンはインド人である。ネカト追及という正義を被った人種差別だと、スミトラン=ホルガーソンがスウェーデン研究評議会を脅したのだろうか?

とにかく、スミトラン=ホルガーソンはカロリンスカ医科大学からヨーテボリ大学・教授に移籍してしまっていた。そして、この事件で、移籍先のヨーテボリ大学を解雇されなかったのである。

http://www.lundbergsstiftelsen.se/2014/3d-printning-kan-revolutionera-transplantationskirurgin/

★2回目のネカト発覚:2016年

スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)は移植生物学が専門で、幹細胞を利用した移植生物学の研究をしていた。

幹細胞を利用した移植生物学となると、スウェーデンで有名なパウロ・マッキャリーニ(Paolo Macchiarini)がいる。

2012年、パウロ・マッキャリーニは研究ネカトのスキャンダルにまみれだした。
→ パウロ・マッキャリーニ(Paolo Macchiarini)(スウェーデン) | 研究倫理(ネカト)

それで、再び、スミトラン=ホルガーソン教授のデータに疑惑の目が向けられだした。

2016年3月(54歳?)、「パブピア(PubPeer)」が、スミトラン=ホルガーソン教授の「2014年のTissue Eng Part A」論文の図がネカトではないかと指摘した。

2016年3月(54歳?)、「パブピア(PubPeer)」の指摘を受け、ヨーテボリ大学(University of Gothenburg)・サルグレンスカ学部(Sahlgrenska Academy)のオレ・ラルキャ学部長(Olle Larkö、写真出典)は、調査委員会(Special Council for Investigations of Suspected Research Misconduct)を設置した。

スミトラン=ホルガーソン教授のネカト調査が始まったことで、スウェーデンの民間団体である心肺財団(Hjärt-Lungfondens、英語でHeart-Lung-Foundation)はスミトラン=ホルガーソン教授に毎年50万クローネ(約630万円)の研究費を支給すると決めていた研究費の助成を凍結した。

民間団体「IngaBritt and Arne Lundbergs Research Foundation」も250万クローネ(約3,200万円)の助成金の支給を停止した。

2016年5月(54歳?)、結局、「2014年のTissue Eng Part A」論文は撤回された。

Göteborgs universitets rektor Pam Fredman och Christer Mattsson
パム・フレッドマン学長(Pam Fredman)

2017年3月24日(55歳?)、ヨーテボリ大学のパム・フレッドマン学長(Pam Fredman、写真出典)は、ネカト行為があったと判断した。

実は、この時点では、ヨーテボリ大学の4人の教員にネカト疑惑が浮上していた。

2017年6月26日(55歳?)、パム・フレッドマン学長は、ネカトはスミトラン=ホルガーソン教授が1人で行なったとし、他の教員をシロとした。これが最終的は調査結果だと発表した。

2018年3月15日(56歳?)、スウェーデンの中央倫理審査委員会(CEPN: Central Ethical Review Board)は、調査の結果、スミトラン=ホルガーソン教授の8論文にねつ造・改ざんがあったと発表した。
→ 2018年3月21日の「Scientist」記事:Investigation Finds Signs of Misconduct in Swedish Researcher’s Papers | The Scientist Magazine®

以下の中央倫理審査委員会・報告書(の一部)をクリックすると、全文のPDFファイル(4.59 MB、7ページ、スウェーデン語)が別窓で開く。

2018年6月26日(56歳?)、ヨーテボリ大学(University of Gothenburg)は、調査の結果、10論文中の7論文で画像をねつ造・改ざんが見つかったと発表した。7論文の撤回を要請した。スミトラン=ホルガーソン教授は意図的にネカトを行ない、他の共著者全員を無罪とした。そして、スミトラン=ホルガーソン教授を解雇した。
→  2018年6月26日のヘレン・セドストローム(Helén Sedström)記者とウルリカ・ルンディン(Ulrika Lundin)の「University of Gothenburg」記事:A professor at the University of Gothenburg found guilty of research misconduct – University of Gothenburg, Sweden

スミトラン=ホルガーソン教授は意図的なネカトを否定している。「不運にも間違えてしまっただけだ」と主張している。

【ねつ造・改ざんの具体例】

どの論文の何がどのようにねつ造・改ざんされたのか、パブピアで探った。

★「2014年のTissue Eng Part A」論文

「2014年のTissue Eng Part A」論文の書誌情報を以下に示す。2016年5月に撤回された。

どの部分がどのように不正だったのか、パブピアで見てみよう。

【図2F】2016年3月4日に、図2Fの細胞の写真は他の2論文でも再使用されていると、指摘された「Peer 1: (commented March 4th, 2016 10:29 AM and accepted March 4th, 2016 10:29 AM )」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/F751766FCE1F3B45E78DD0AB7363BD#3

【図1S】2016年3月10日に、図1Sの組織切片像はサイクルごとに毎回異なるハズなのに、サイクル11とサイクル12の組織切片像は同じである、と指摘された「Peer 3: (commented March 10th, 2016 11:29 AM and accepted March 10th, 2016 11:29 AM)」。

どちらかがねつ造だ。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/F751766FCE1F3B45E78DD0AB7363BD#5

★「2013年のStem Cells Transl Med」論文

「2013年のStem Cells Transl Med」論文の書誌情報を以下に示す。2018年8月1日現在、撤回されていない。

どの部分がどのように不正だったのか、パブピアで見てみよう。

【図1A】2016年3月1日に、図1Aの細胞の写真は2008年の論文の図1の再使用だと指摘された「Peer 2: (commented March 1st, 2016 10:55 PM and accepted March 1st, 2016 10:55 PM)」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/D4D480B3FC85FF68A139A4004A2C01#1

【図3】2016年3月3日に、図3の細胞の写真は2015年の論文の図S1と同じだと指摘された「Peer3: (commented March 3rd, 2016 10:05 PM and accepted March 3rd, 2016 10:05 PM)」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/D4D480B3FC85FF68A139A4004A2C01#5

【図3】2016年3月5日に、上記とは別の図3の細胞の写真は2012年の論文の図1(重複使用もあり)と同じだと指摘された「Peer3: (commented March 5th, 2016 6:58 PM and accepted March 5th, 2016 6:58 PM)」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/D4D480B3FC85FF68A139A4004A2C01#7

細胞画像の再使用ばかりです。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年8月1日現在、パブメド(PubMed)で、スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)の論文を「Suchitra Sumitran-Holgersson [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2017年の16年間の41論文がヒットした。

スチトラ・スミトラン=ホルガーソンは結婚する前の名前は「Suchitra Sumitran」だったと思われる。念のため、「Suchitra Sumitran[Author]」で検索した。0論文がヒットした。ところが、「Sumitran S[Author]」で検索すると、1987~2002年の16年間の8論文がヒットした。

「Sumitran-Holgersson S[Author]」で検索すると、2001~2017年の17年間の50論文がヒットした。

2018年8月1日現在、「Sumitran-Holgersson S[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、2論文が撤回されていた。

  1. Replacement of a tracheal stenosis with a tissue-engineered human trachea using autologous stem cells: a case report.
    Berg M, Ejnell H, Kovács A, Nayakawde N, Patil PB, Joshi M, Aziz L, Rådberg G, Hajizadeh S, Olausson M, Sumitran-Holgersson S.
    Tissue Eng Part A. 2014 Jan;20(1-2):389-97. doi: 10.1089/ten.TEA.2012.0514. Epub 2013 Oct 12.
    Retraction in: Tissue Eng Part A. 2016 May;22(9-10):829.
  2. Only a specific subset of human peripheral-blood monocytes has endothelial-like functional capacity.
    Elsheikh E, Uzunel M, He Z, Holgersson J, Nowak G, Sumitran-Holgersson S.
    Blood. 2005 Oct 1;106(7):2347-55. Epub 2005 Jun 28.
    Retraction in: Blood. 2011 Jun 16;117(24):6740.

2018年6月26日(56歳?)、ヨーテボリ大学(University of Gothenburg)が撤回を要請した7論文は以下の通りである。既に撤回された上記の「2014年のTissue Eng Part A」論文も含まれるが(以下では2013年と間違えている。下線論文)、「2005年のBlood」論文は含まれていない。
→  2018年6月26日のヘレン・セドストローム(Helén Sedström,)記者とウルリカ・ルンディン(Ulrika Lundin)の「University of Gothenburg」記事:A professor at the University of Gothenburg found guilty of research misconduct – University of Gothenburg, Sweden

  1. Fetal liver-derived mesenchymal stromal cells augment engraftment of transplanted hepatocytes. Cytotherapy (2012) 14:657-669.
  2. Recellularization of acellular human small intestine using bone marrow stem cells. Stem Cells Trans. Med. (2013) 2:307-315.
  3. Phenotypic and in vivo functional characterization of immortalized human fetal liver cells. Scand. J. Gastroenterol. (2014) 49:705-714.
  4. Replacement of a Tracheal Stenosis with a Tissue-Engineered Human Trachea Using Autologous Stem Cells: A Case Report. Tissue Eng. Part A (2013) 20:389-397.
  5. Isolation and characterization of human primary enterocytes from small intestine using a novel method. Scand. J. Gastroenterol. (2012) 47:1334-1343.
  6. CD271 identifies functional human hepatic stellate cells, which localize in peri-sinusoidal and portal areas in liver after partial hepatectomy. Cytotherapy (2014) 16:990-999.
  7. Successful tissue engineering of competent allogeneic venous valves. J. Vascular Surgery: Venous and Lymphatic Disorders (2015) 3:421-430.

結局、最終的に8論文が撤回されることになる。

★パブピア(PubPeer)

2018年8月1日現在、「パブピア(PubPeer)」はスチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)の13論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》細胞像の再使用

http://es.pseudociencia.wikia.com/wiki/Archivo:Suchitra_Sumitran.jpg

スチトラ・スミトラン=ホルガーソンのネカトは細胞像の再使用である。それも反転するなど工夫もなくほぼそのまま再使用している。細胞像は電気泳動バンドの画像より特徴があるので、工夫せずに再使用すると、一見しただけで、再使用とわかる。

どうして、こんな単純なデータねつ造・改ざんをしたのだろう。

《2》インド人

スチトラ・スミトラン=ホルガーソンはインド出身でスウェーデンのヨーテボリ大学(University of Gothenburg)・教授になった。

折角、立派な地位を築いたのに、もったいない。

しかし待てよ、「パブピア(PubPeer)」が指摘した最古の論文は2004年出版で、この時42歳と推定される。一般論として、42歳で初めてネカトを行なうとは信じがたい。もっと前の論文にもネカトがあるに違いない。

インド人研究者の研究処世術の1つにネカトが染みついている気もする。
→ 1‐3‐7.インドの研究ネカト問題

《3》再犯

2008年8月(46歳?)、ネカト疑惑を誰が通報したのか不明だが、スチトラ・スミトラン=ホルガーソンのデータねつ造が指摘された。

2011年2月15日(49歳?)、カロリンスカ医科大学はスミトラン=ホルガーソンがネカトを犯したと結論した。

それなのに、2011年9月、スウェーデン研究評議会(Swedish Research Council (VR))は、カロリンスカ医科大学・調査委員会が調査を適切に運営していなかったという理由で、カロリンスカ医科大学の結論を無効としたのである。

この時、ネカト有罪としておけば、移籍して既に3年経つが、移籍前のネカト行為を理由に、ヨーテボリ大学はスミトラン=ホルガーソンを解雇できたに違いない。

スウェーデン研究評議会がアホだったから、既に撤回された「2014年のTissue Eng Part A」論文を含め、スミトラン=ホルガーソンは2012年以降、移籍先のヨーテボリ大学でねつ造データ論文を計7報も発表したのである。

7報のねつ造データ論文のコストである研究費・研究協力者・研究界の損害は大きい。スウェーデン研究評議会も責任をとるべきだろう。

法則:「ネカトでは早期発見・適切処分が重要である」

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●8.【主要情報源】

① 2018年3月15日、スウェーデンの中央倫理審査委員会(CEPN: Central Ethical Review Board)・調査報告書(スウェーデン語): https://retractionwatch.com/wp-content/uploads/2018/03/Holgersson-CEPN-pdf.pdf
② 「撤回監視(Retraction Watch)」のスチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)記事集:Search Results for “Sumitran-Holgersson ” – Retraction Watch
③ レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のスチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)ブログ記事集:Search Results for “Sumitran-Holgersson” – For Better Science、(保存版)
④ 2018年6月26日のヘレン・セドストローム(Helén Sedström,)記者とウルリカ・ルンディン(Ulrika Lundin)の「University of Gothenburg」記事:A professor at the University of Gothenburg found guilty of research misconduct – University of Gothenburg, Sweden
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