エリック・ラム(Eric Lam)(英)

2021年8月5日掲載 

ワンポイント:2018年、ネカトハンターのクレア・フランシス(Clare Francis)がインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のラム教授(61歳?)のネカト論文を指摘した。結局、インペリアル・カレッジ・ロンドンがネカト調査し、「2018年12月のCell Death Dis」論文をネカトと結論し、2021年1月、ラムを解雇した。1999~2019年(42~62歳?)の21年間の32論文がパブピアで問題視されているが、撤回論文は1報。国民の損害額(推定)は3億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

エリック・ラム(Eric Lam、Eric W-F Lam、Eric W.F. Lam、 ORCID iD:?、写真出典)は、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)・教授で、医師免許は持っていない。専門は分子腫瘍学(乳がん)である。

2018年(61歳?)、ネカトハンターのクレア・フランシス(Clare Francis)が「2003年12月のJ Biol Chem」論文の画像の異常を見つけ、パブピアで指摘した。

インペリアル・カレッジ・ロンドンがネカト調査し、「2018年12月のCell Death Dis」論文をネカトと結論し、2021年1月、ラムを解雇した。

2021年8月4日現在、1999~2019年(42~62歳?)の21年間の32論文がパブピアで問題視されているが、ラムの撤回論文は1報しかない。

なお、インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College of London)は、「Times Higher Education」の大学ランキングで世界第11位の超名門大学である。 → World University Rankings 2021 | Times Higher Education (THE)

インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College of London)。上の写真出典、下の写真出典

  • 国:英国
  • 成長国:英国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:リバプール大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1957年1月1日生まれとする。経営学修士号(MBA)を取得後、1981年に英国のリバプール大学の学部に入学したので、この時を24歳とした。中国または英国で生まれた?
  • 現在の年齢:64 歳?
  • 分野:分子腫瘍学
  • 不正論文発表:1999~2019年(42~62歳?)の21年間
  • 発覚年:2018年(61歳?)
  •  発覚時地位:インペリアル・カレッジ・ロンドン・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はネカトハンターのクレア・フランシス(Clare Francis)で、「パブピア(PubPeer)」に公表
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①インペリアル・カレッジ・ロンドン・調査委員会
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:1999~2019年(42~62歳?)の21年間の32論文が疑惑で、1論文が撤回
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 職:事件後に移籍し研究職を続けた(◒)
  • 処分:解雇
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Eric Lam | LinkedIn

  • 生年月日:不明。仮に1957年1月1日生まれとする。経営学修士号(MBA)を取得後、1981年に英国のリバプール大学の学部に入学したので、この時を24歳とした。中国または英国で生まれた?
  • 19xx年(xx歳):英国のキングストン大学(Kingston University)で経営学修士号(MBA)取得
  • 1981年 – 1988年(24 – 31歳?):英国のリバプール大学(University of Liverpool)で学士号・研究博士号(PhD)を取得:生化学/細胞生物学および癌
  • 2004年10月(47歳?):インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)・教授
  • 2018年(61歳?):不正研究が発覚
  • 2018年11月(61歳?):レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)が、第一次追及者はネカトハンターのクレア・フランシス(Clare Francis)と記載し、ネカトを指摘
  • 2021年1月(64歳?):中国の中山(ちゅうざん)大学(Sun Yat-Sen University, in China)・非常勤教授(客員教授)

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★発覚の経緯

2018年(61歳?)、ネカトハンターのクレア・フランシス(Clare Francis)が「2003年12月のJ Biol Chem」論文の画像の異常を見つけ、パブピアで指摘した。 → PubPeer

指摘画像を以下に示す。見てお分かりのように、左側の青矢印3か所はかなり微妙である。右側最下段のバンドが同じだとの指摘も、微妙である。

上記論文とは別の「2018年12月のCell Death Dis」論文が2021年5月25日に撤回された。

それに関して、インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)は「撤回監視(Retraction Watch)」に、次のように述べている。

エリック・ラム博士に対する研究不正行為の申し立てを受け、独立した調査をネカト調査委員会に依頼しました。 その結果、研究不正行為の明らかな事例が見つかり、ラム博士を解雇しました。 また、私たちは学術誌「Cell Death Dis」にこの論文を撤回するよう連絡しました。さらに、ラム士の資金提供者に私たちの決定を知らせました。

ネカト調査委員会は、ラム博士の複数の論文のネカト告発を検討しましたが、「2018年12月のCell Death Dis」論文にネカトの証拠を見つけただけ、という結果になりました。

インペリアル・カレッジ・ロンドンはクレア・フランシスが最初に指摘した「2003年12月のJ Biol Chem」論文の画像については、ネカトと断定しなかった。この辺の事情は、調査報告書が公表されていないので、詳細は不明である。

【ねつ造・改ざんの具体例】

★「2018年12月のCell Death Dis」論文

「2018年12月のCell Death Dis」論文の書誌情報を以下に示す。2021年5月25日に撤回された。

撤回告知によると、インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のから論文撤回の依頼が来たので編集長の権限で論文を撤回したとある。

著者の2人は撤回に同意したが、ラムを含め著者の8人は撤回に同意していない。残り4人の著者からは返事がない。

撤回告知によると、インペリアル・カレッジ・ロンドンの調査結果は以下である。

以下の図2Bは図の説明に実験を3回行なったと書いてあるが、最期の測定を3回行なっただけで、実験そのものを3回行なっていない。

以下の図4AのKKU-D131の2番目と3番目のパネルは、他の結果に一致するよう修正しているが、そのような修正を行なったと論文には書いていない。つまり「改ざん」である。 さらに、E2F1mRNAとTYMSmRNAパネルの5番目と6番目の棒グラフの数値も同じような改ざんがあった。

以下の図7Bの元データが改ざんされていた。

さらに、上記した図4と図7では、ウエスタンブロットとmRNAの測定は、同時期の実験の結果を示していると普通は読み取るが、実際は、1年以上離れたさまざまな実験結果の寄せ集めだった。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2021年8月4日現在、パブメド(PubMed)で、エリック・ラム(Eric Lam、Eric W-F Lam、Eric W.F. Lam)の論文を「Eric Lam [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2021年の20年間の 322論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者以外の論文が多数含まれていると思われる。

所属を「インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)」に限定し「(Eric Lam [Author]) AND (Imperial College London[Affiliation])」で検索すると、2003~2021年の19年間の 144論文がヒットした。

2番目の名前を加えた「Eric W-F Lam [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2021年の20年間の 192論文がヒットした。

「Lam EW」で検索すると、1986~2021年の36年間の 339論文がヒットした。いろいろ検索したが、どうもこれが妥当な論文リストのようだ。

2021年8月4日現在、上記に「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、「2018年12月のCell Death Dis」論文・1論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2021年8月4日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでエリック・ラム(Eric Lam、Eric W-F Lam、Eric W.F. Lam)を「Eric W-F Lam」で検索すると、「2018年12月のCell Death Dis」論文・1論文が2021年5月25日に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2021年8月4日現在、「パブピア(PubPeer)」では、エリック・ラム(Eric Lam)の論文のコメントを「Eric W-F Lam」で検索すると、1999~2019年(42~62歳?)の21年間の32論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》不明 

エリック・ラム(Eric Lam、写真出典)事件では、ラムがネカト犯なのか研究室員がネカト犯なのか、ハッキリとはわからない。

インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)は調査結果の一部を「撤回監視(Retraction Watch)」に伝えた。そして、学術誌編集部にも伝え、撤回要請した。しかし、調査結果をウェブ上に発表していない。詳細がわからない。それで、上記のように、ネカト犯が誰なのか、白楽は、ハッキリつかめなかった。

ただ、ラムは解雇されている。だから、ラムはネカト犯だと思う。

しかし、

32論文も疑惑論文があるのに、どうして1論文だけがネカトと判定されたのか?

ネカトの法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」

1論文だけがネカトということは、ほとんどあり得ない。

32疑惑論文の1つをランダムに拾って、そのデータをみると、以下のように、データねつ造がある(「2010年のMolecular cancer research 」論文(画像出典))。

ネカト調査委員会はボンクラだったとしか思えない。

そして、最初の疑惑論文は1999(42歳?)に出版されている。

それから、21年間も疑惑論文が出版されていた。どうして、21年間も、同僚、インペリアル・カレッジ・ロンドン、そして、学術界はラム論文のネカトに気がつかなかったのか?

また、ラムが「どのような状況で、どうして」ネカトをしたのか、見えてこない。

エリック・ラム事件は不可解な点が多い。

ラムは2021年1月にインペリアル・カレッジ・ロンドンを解雇され、中国の中山(ちゅうざん)大学(Sun Yat-Sen University, in China)・非常勤教授(客員教授)になった。

なお、ラムは英国で生まれ育ったのか、中国で生まれ育ったのかどうか、白楽はわからなかった。

ただ、ラムは香港大学(University of Hong Kong)と英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンとの連携大学院の構築に貢献したらしい。

2014年、その連携大学院から最初の卒業生が出た。以下の写真(出典保存版)は卒業祝いだが、教員として写っているのはラムだけのようだ(左から4人目)。ラムは、香港大学出身なのかもしれない。


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●9.【主要情報源】

① 2018年11月22日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Eric Lam: shady research at Imperial to cure breast cancer – For Better Science
② 2021年5月28日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Imperial College London researcher fired for research misconduct – Retraction Watch
③ 2021年6月1日のジャック・グローブ(Jack Grove)記者の「 Times Higher Education」記事:Imperial professor dismissed for research misconduct | Times Higher Education (THE)
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