ローガン・フルフォード(Logan Fulford)(米)

2020年6月20日掲載 

ワンポイント:2020年5月19日(31歳?)、研究公正局は、シンシナティ大学(University Of Cincinnati)・院生だったフルフォードの1報の発表論文、1つの未発表原稿、の画像とデータにねつ造・改ざんがあったと発表した。2020年5月8日から2年間の締め出し処分を科した。記事執筆時点では、撤回論文は1報。国民の損害額(推定)は3億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ローガン・フルフォード(Logan Fulford、ORCID iD:、写真出典)は、シンシナティ大学(University Of Cincinnati、実質的にはシンシナティ小児病院(Cincinnati Children’s Hospital Medical Center))で研究し、2017年に研究博士号(PhD)を取得できる予定だった。2019年4月からアイキューヴィア社(IQVIA)・研究員(senior clinical research associate)になった。専門は細胞分子生物学(がんの基礎研究)である。

ネカト発覚の経緯は不明であるが、フルフォードの指導教員だったロシア出身のターニャ・カリン準教授(Tanya V Kalin、Tatiana Kalin)が告発したと思われる。

発覚時期は2016年(27歳?)下半期と推定される。

シンシナティ大学(University Of Cincinnati)は、ネカト調査を終え、クロと判定し、研究公正局に報告した。

ローガン・フルフォードは、シンシナティ大学・大学院を中退した(退学させられた?)。

2020年5月19日(31歳?)、発覚から4年後(遅いですね)、研究公正局は、シンシナティ大学(University Of Cincinnati)・院生だったフルフォードの1報の発表論文、1つの未発表原稿、の画像とデータにねつ造・改ざんがあったと発表した。

2020年5月8日(31歳?)から2年間の締め出し処分を科した。2年間の締め出し処分は幾分軽い処分である。

シンシナティ小児病院(Cincinnati Children’s Hospital Medical Center)。写真By Warren LeMay from Cincinnati, OH, United States – William Cooper Procter Pavilion, Cincinnati Children’s Hospital, Corryville, Cincinnati, OH, CC0, Link

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:未取得
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1989年1月1日生まれとする。2007年に大学入学した時を18歳とした
  • 現在の年齢:32 歳?
  • 分野:細胞分子生物学
  • 最初の不正論文発表:2016年(27歳?)
  • 不正論文発表:2016-2016年(27歳?)の1年間の2論文
  • 発覚年:2016年(27歳?)
  • 発覚時地位:シンシナティ大学・院生
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はフルフォードの指導教員だったロシア出身のターニャ・カリン準教授(Tanya V Kalin、Tatiana Kalin)と推定
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①シンシナティ大学・調査委員会。②研究公正局
  • 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 研究所の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:1報の発表論文、1つの未発表原稿。撤回論文は1報
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分: NIHから2年間の締め出し処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:(5) Logan Fulford | LinkedIn

  • 生年月日:不明。仮に1989年1月1日生まれとする。2007年に大学入学した時を18歳とした
  • 2007 – 2011年(18 – 22歳?):インディアナ州立大学(Indiana State University)で学士号を取得:細胞分子生物学
  • 2012 – 2017年(23 – 28歳?):シンシナティ大学(University of Cincinnati)・院生。研究博士号(PhD)を取得できず中退:病理生物学と分子医学
  • 2016年下旬(27歳?):ネカトが発覚(推定)
  • 2017年2月(28歳?):メドペース社(Medpace)研究員、不正研究が発覚(推定)
  • 2017年8月(28歳?):エルビーアール・レギュラトリ―社(Lbr Regulatory)研究員
  • 2019年4月(31歳?):アイキューヴィア社(IQVIA)・研究員(senior clinical research associate)
  • 2020年5月19日(31歳?):研究公正局がネカトと発表

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★ネカト

ローガン・フルフォード(Logan Fulford)のネカト発覚の経緯は不明であるが、発表予定の論文原稿のネカトも指摘されている。これは、第三者には感知できない。ネカト告発者は研究室内部の人と思われる。

ローガン・フルフォードの指導教員はロシア出身のターニャ・カリン準教授(Tanya V Kalin、Tatiana Kalin)で、上記動画のように2014年にメンター賞を受賞している。指導は優れている。

撤回されたローガン・フルフォードの「2016年5月のScience Signaling」論文では最後著者になっている。

ターニャ・カリン準教授が告発者と思われる。

最も新しいネカト論文は「2016年5月のScience Signaling」論文なので、ネカト発覚時期は、それ以降の早い時期、つまり2016年(27歳?)下半期と推定される。一応、2016年(27歳?)に発覚とした。

ローガン・フルフォードは、シンシナティ大学医科大学院(University of Cincinnati College of Medicine)で2017年に研究博士号(PhD)を取得できる予定だったが、ネカト発覚で、博士号を取得できず、中退となった。

2020年5月19日(31歳?)、発覚から4年後(遅いですね)、研究公正局はフルフォードが1報の発表論文、1つの未発表原稿、の画像とデータをねつ造・改ざんしていたと発表した。以下のように、この研究はNIHから助成された研究だった。

  1. National Cancer Institute (NCI), grant R01 CA142724.
  2. National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI), grant R01 HL084151

研究公正局は 2020年5月8日から2年間の締め出し処分を科した。2年間の締め出し処分は若干弱い処分である。

1報の発表論文、1つの未発表原稿は以下の通り(研究公正局の発表をそのまま流用)。

  1. The transcription factor FOXF1 promotes prostate cancer by stimulating the mitogen-activated protein kinase ERK5.
    Fulford L, Milewski D, Ustiyan V, Ravishankar N, Cai Y, Le T, Masineni S, Kasper S, Aronow B, Kalinichenko VV, Kalin TV.
    Sci Signal. 2016 May 10;9(427):ra48. doi: 10.1126/scisignal.aad5582.
  2. Foxf1 Deficient Cancer-Associated Fibroblasts Promote Prostate Cancer Progression via Paracrine Wnt11 Signaling. Unpublished manuscript (未発表原稿).

【ねつ造・改ざんの具体例】

2020年5月19日(31歳?)の研究公正局の発表に、発表論文と未発表原稿のネカト部分が指摘されている。

ローガン・フルフォード(Logan Fulford)は、免疫化学画像とウエスタンブロット画像をねつ造・改ざんした。

しかし、言葉で説明してもわかりにく。撤回された1論文を選んで研究公正局の指摘箇所の一部を以下で詳しく見よう。

★「2016年のScience Signaling」論文

「2016年のScience Signaling」論文の書誌情報を以下に示す。2018年7月31日に撤回された。

研究公正局の指摘箇所を以下に詳しく見よう(図の出典は原著、加工は白楽)。以下は、指摘の全部ではない。

【図2C】
以下の図2Cの免疫化学画像の最下段「Cle casp-3」は同じ画像を使用している(ねつ造)。緑色枠内の2つの画像が同じ。青色枠内の2つの画像が同じ。

【図4E】
以下の図4Eのブロット画像は露出強度やサイズを変えた画像がある。白楽は、コレコレと示すのが面倒なので、示しません。ゴメン。それにしてもよく似たブロット画像ですね。

【図7C】
以下の図7Cのブロット画像は露出強度やサイズを変え、回転させた画像がある。この画像も、不正箇所を示すのが面倒なので、示しません。ゴメン。それにしてもよく似たブロット画像ですね。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2020年6月19日現在、パブメド(PubMed)で、ローガン・フルフォード(Logan Fulford)の論文を「Logan Fulford [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2010~2017年の8年間の7論文がヒットした。

「Retracted Publication」のフィルターをかけると、 0論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2020年6月19日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでローガン・フルフォード(Logan Fulford)を「Fulford, Logan」で検索すると、2論文がヒットし、本記事で問題にした「2016年のScience Signaling」論文・1論文が2018年7月31日に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2020年6月19日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ローガン・フルフォード(Logan Fulford)の論文のコメントを「”Logan Fulford”」で検索すると、本記事で問題にした「2016年のScience Signaling」論文・1論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》不明 

ローガン・フルフォード事件は「どのような状況で、どうしてネカトをしたのか」、まったく不明である。

この部分を解明しないと、ネカト防止策を立てられない。

なお、「2016年のScience Signaling」論文以外の論文にもネカトがあると予想される。全論文をチェックすべきだ。

《2》幼稚な画像加工 

ねつ造・改ざんされた画像を見ると、加工が幼稚である。2000年頃ならまだしも、2016年にこんな加工をしたら、すぐにバレる。すぐバレと思わないでねつ造・改ざんする感覚が信じられない。

大学院生なのだからそれなりに優秀なハズだ。もう少しで研究博士号(PhD)を取得できる、その直前にネカトで大学院中退となった。もったいない。

多分、博士号取得がおぼつかなくてネカトしたと思われる。7報の論文を発表しているが、ネカトと指摘された「2016年のScience Signaling」論文は人生で初めての第一著者論文である。

また、ウェディングドレスの女性と抱擁している写真がウェブにあるので、恋愛・結婚で忙しく、研究がおろそかになったのかもしれない(サイト → Learning To Love Myself – Coming Out保存版)。

なお、ローガン・フルフォードは、そのサイトで、自分は同性愛者だと告白し、子供のころからイジメられたこと、大学ではうつ病になったことなどを書いている。このようなことは、ネカトと関係ないと思うが、関係あるだろうか?

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●9.【主要情報源】

①  研究公正局の報告:(1)2020年5月19日:Case Summary: Fulford, Logan | ORI – The Office of Research Integrity(2022年5月にリンク切れる)。(2)2020年5月26日の連邦官報:FRN 2020-11158 Fulford.pdf 。(3)2020年5月26日の連邦官報:Findings of Research Misconduct
② 2020年5月21日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Former grad student faked cancer research data, says federal watchdog – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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