2025年12月2日(火)掲載
現在、ウィッテンはインディアナ大学・学長だが、1996年(33歳?)、カンザス大学で研究博士号(PhD)を取得した。29年後の2025年1月22日(62歳?)、「Chronicle of Higher Education」紙がウィッテンの博士論文は盗用だと報道した。別のメディアは100箇所以上に盗用があり、85単語連続の逐語盗用もあった、と報道した。ところが、インディアナ大学は2024年8月に法律事務所が調査し盗博を否定したと述べたが、その調査報告書を公開せず、隠蔽している。公文書開示請求に対しても拒否した。博士論文を審査したカンザス大学は何も対応していない。ウィッテンは辞任していない。不明朗なままウヤムヤになりそうな盗博事件である。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
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●1.【概略】

パメラ・ウィッテン(Pamela Whitten、ORCID iD:?、写真出典)は、米国のインディアナ大学(Indiana University)・学長で医師免許は持っていない。専門はコミュニケーション学だった。
ウィッテンのコミュニケーション学を人文・社会学の枠で扱おうと思ったが、医学でのコミュニケーション学も研究し、多数のパブメド(PubMed)論文もあるので、白楽ブログでは生命科学の枠で扱った。
1996年(33歳?)、ウィッテンは174ページの博士論文をカンザス大学(University of Kansas)に提出し、研究博士号(PhD)を取得した。
それから29年後。
2025年1月22日(62歳?)、ウィッテンの博士論文に盗用があると「Chronicle of Higher Education」紙が報道した。
インディアナ大学は、盗博疑惑は2024年8月に独立した法律事務所が調査し、無罪と結論していたと述べた。
インディアナ公共メディア(Indiana Public Media、WFIU/WTIU)は、その調査報告書の開示を求めたが、2025年2月下旬、大学は開示を拒否した。
それで、2024年8月の調査報告書を見た人は誰もいない。
なお、ウィッテンの博士論文には、盗用箇所が100箇所以上もあり、1箇所は85単語連続の逐語盗用だった、と報道されている。
2025年2月22日(62歳?)、盗博が指摘されてから丁度1か月後、インディアナ大学理事会(Indiana University Board of Trustees)は、突然、ウィッテンの年収を大幅に上げ(70万ドルを90万ドルに、つまり、約7千万円を9千万円に)、学長在職を2031年まで延長すると決定した。
つまり、インディアナ大学理事会はウィッテンを強力に守っている。
インディアナ大学は州立大学で、インディアナ州知事のマイク・ブラウン(Mike Braun)がインディアナ大学の理事 9人を任命している。
2025年8月13日のオーブリー・ライト(Aubrey Wright)記者の「WFYI」記事には、インディアナ州知事のマイク・ブラウンは、ウィッテン学長が盗博をしたと判明した場合、インディアナ大学理事会が迅速に行動することを望む、と述べている。
博士論文を審査したカンザス大学は何も対応していない。
盗用研究の専門家であるジョナサン・ベイリー(Jonathan Bailey)は、「透明性の欠如は、非常に憂慮すべき」ことで、盗用疑惑を受けたら「率直に話すのが最善」だと批判している。
メディアと国民が追及すれば、ウィッテンは辞任するだろうが、追及しなければ、ウヤムヤになるだろう。
2025年12月1日現在、ウヤムヤの方向のようだ。
インディアナ大学(Indiana University)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:米国
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:カンザス大学
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に1963年1月1日生まれとする。1985年に学士号を取得した時を22歳とした
- 現在の年齢:62歳?
- 分野:コミュニケーション学
- 不正論文発表:1996年(33歳?)
- ネカト行為時の地位:カンザス大学・院生
- 発覚年:2025年(62歳?)
- 発覚時地位:インディアナ大学・学長
- ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)は匿名で「Chronicle of Higher Education」に情報を伝えた
- ステップ2(メディア):「Chronicle of Higher Education」記事、数紙のメディアが報道
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①インディアナ大学・調査委員会が調査した。調査はウソかもしれない
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:隠蔽(✖)
- 不正:盗博
- 不正論文数:1報
- 盗用ページ率:?%
- 盗用文字率:?%。盗用箇所は100箇所以上あり、85単語連続の逐語盗用もあった
- 時期:研究キャリアの初期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:なし
- 対処問題:大学隠蔽、大学調査不正
- 特徴:学長の29年前の盗博で、ウヤムヤ化しそう
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:PAMELA S. WHITTEN
- 生年月日:不明。仮に1963年1月1日生まれとする。1985年に学士号を取得した時を22歳とした
- 1985年(22歳?):チューレーン大学(Tulane University School of Business)で学士号取得:経営学
- 1986年(23歳?):ケンタッキー大学(University of Kentucky)で修士号取得:組織コミュニケーション学
- 1996年(33歳?):カンザス大学(University of Kansas)で研究博士号(PhD)を取得:コミュニケーション学
- 1998~2001年(35~38歳?):ミシガン州立大学(Michigan State University)・助教授
- 2001~2005年(38~42歳?):同・準教授
- 2005~2014年(42~51歳?):同・正教授
- 2014~2018年(51~55歳?):ジョージア大学(University of Georgia)・provost
- 2018~2021年(55~58歳?):ケネソー州立大学(Kennesaw State University)・学長
- 2021年7月~現(58歳?~):インディアナ大学(Indiana University)・学長
- 2025年1月22日(62歳?):盗博が発覚
- 2025年12月1日(62歳?)現在:従来職を維持
●3.【動画】
【動画1】
動画:「IU President Whitten accused of plagiarized dissertation, IU says there’s ‘no merit’- YouTube」(英語)4分27秒。
WFIU & WTIU News(チャンネル登録者数 1,850人) が2025/01/25 に公開
【動画2】
動画:「Whitten Plagiarism Investigation, Terre Haute Modified Hiring Freeze, Monroe County Jail Funding- YouTube」(英語)2分00秒。
WFIU & WTIU News(チャンネル登録者数 1,850人) が2025/08/14 に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究人生と親イスラエル

1996年(33歳?)、パメラ・ウィッテン(Pamela Whitten、写真出典)はカンザス大学(University of Kansas)に博士論文「Transcending the technology of telemedicine: A case study of telemedicine in North Carolina」を提出し、博士号を取得した。
ウィッテンは、1998~2014年(35~51歳?)の16年間、ミシガン州立大学(Michigan State University)で助教授、準教授、正教授を務めた後、大学管理者の方向に進んだ。
2021年7月(58歳?)、インディアナ大学(Indiana University)の学長に就任した。
トランプの2回目の大統領時代に、イスラエルの非道なパレスチナ攻撃に対し、コロンビア大学やハーバード大学などで学生がイスラエルに対して抗議活動をした。
トランプ大統領はハーバード大学の学長だったクローディン・ゲイ(Claudine Gay)が反ユダヤ主義に寛容だったと非難した。米国のメディアは大騒ぎした。
その最中の2023年10月、ニューヨーク・ポスト紙がクローディン・ゲイの論文盗用を指摘した。2023年12月12日、ハーバード・コーポレーションは、外部委員会の調査の結果、ゲイの学術文書に盗用はないとした。
しかし、その後、ゲイの博士論文を含め論文の49箇所に盗用があると報じられ、2024年1月2日、ゲイは53歳でハーバード大学・学長を辞任した。 → 政治学:クローディン・ゲイ(Claudine Gay)(米) | 白楽の研究者倫理
ウィッテンが学長を務めるインディアナ大学でも、似たような動きがあった。「似たよう」と書いたが、大学の対応は真逆だった。
ウィッテンは親イスラエルなのである。
インディアナ大学・学長のウィッテンは親パレスチナ派の人に対して強硬な排除姿勢を示し、全米の注目を集めた。
ウィッテン学長は学生の抗議者に対し警察の出動、親パレスチナ派のイベントに不当に部屋を予約した教授を解雇、パレスチナ人アーティストによる美術館展の中止など、様々な対処をした。
以下の動画は、インディアナ大学・学生のイスラエルに対する抗議活動と大学側の規制である。
2024年4月(61歳?)、投票権を持つインディアナ大学・教員の93.1%がウィッテン学長に不信任を表明した。
しかし、理事会はウィッテン学長を支持する声明を発表し、ウィッテンが「今後数年間」学長を務めると述べた。
→ 2024年5月9日記事:The Past Month Has Seen a Flurry of No-Confidence Votes in College Presidents
そのような背景の中、ハーバード大学・学長と同じように、学長の論文盗用(盗博)が暴露されたのである。
★発覚の経緯
2025年1月22日(62歳?)、匿名者の情報を基に、「Chronicle of Higher Education」紙はパメラ・ウィッテン(Pamela Whitten)の盗博を報道した。
1996年のウィッテンの博士論文(174ページ)はココで閲覧できる。 → Transcending the technology of telemedicine: A case study of telemedicine in North Carolina – ProQuest
この博士論文は、他の学術研究から引用符を使わずに言葉を流用した箇所が30箇所以上あると指摘された。
以下の盗用比較図(9ページ)では、左側が被盗用文章で右側がウィッテンの盗用文章。同じ単語が太字になっている。出典:https://s3.documentcloud.org/documents/25501786/whitten-vs.pdf
whitten-vs
この事件は当初メディアの注目をかなり集めたが、他の多くのネカト事件と同じように、時ととも(数か月ほどで)に関心が薄れていった。
★大学の対処
2025年1月(62歳?)、「Chronicle of Higher Education」記事がパメラ・ウィッテン(Pamela Whitten)の盗博を報道した。
インディアナ大学は直ちにこれを非難した。
インディアナ大学・広報担当者は、盗博疑惑はその5か月前の2024年8月に、法律事務所がこの疑惑を独立調査し、疑惑には根拠がないと結論していたと述べた。
しかし、2024年8月の調査報告書を見た人は誰もいない。調査報告書があるなら、誰が調査したのか、ネカト専門家なのか、調査結果はどうだったのか、どのようにしてその結論に至ったのか? 全くわからない。
インディアナ公共メディア(Indiana Public Media、WFIU/WTIU)は追及を続け、ウィッテンを無罪としたインディアナ大学の調査報告書の開示を請求した。
2025年2月下旬(62歳?)、しかし、大学は「弁護士・依頼者間の秘匿特権と作業成果秘匿特権によって保護されている」として、請求を却下した。
高等教育の透明性向上が求められる中、インディアナ大学はメディアに情報を伝えず、隠蔽という真逆の対処をしたのだ。
そして、国民とインディアナ州民が盗博に疑惑を抱いている最中、国民と州民を馬鹿にするような以下の対処をした。
2025年2月22日(62歳?)、盗博が指摘されてから丁度1か月後、インディアナ大学理事会(Indiana University Board of Trustees)は、突然、ウィッテンの年収を大幅に上げ(70万ドルを90万ドルに、つまり、約7千万円を9千万円に)、学長在職を2031年まで延長すると決定した。
インディアナ大学理事会(Indiana University Board of Trustees)の動きが異常に思えるが、9人の理事は当然ながら、顔と名前が公表されている。見てみようと思うならココを→ Current Trustees: The Trustees: Board of Trustees: Indiana University
★カンザス大学
ウィッテンが1996年(33歳?)に博士論文を提出したカンザス大学(University of Kansas)は疑惑に対して一切反応していない。
なお、カンザス大学の規則では、研究不正の告発に6年の時効を設けている。
過去の行為を調査するのは困難なので、告発日から6年以上前の研究不正行為の告発は、いくつかの例外を除き、調査対象としない、という規則である。 → University Senate Rules and Regulations (USRR)の「9.1.7 Statute of Limitation」
ウィッテンの博士論文は29年前の1996年に審査された。カンザス大学は何も発表していないが、時効6年の規則を盾に、調査対象外としたのだろう。
しかし、盗博行為は29年前でも、発覚は2025年で1年も経過していない。
カンザス大学の時効6年の規則は、「告発された不正行為が行為後6年間に合理的に発見できなかった」場合は除外されるので、今回は、対応すべき事案だと白楽は思うが、カンザス大学は疑惑に対して一切反応していない。
★インディアナ州知事
インディアナ大学はインディアナ州の州立大学である。
インディアナ州知事のマイク・ブラウン(Mike Braun、写真By United States Senate Photographic Studio – https://www.help.senate.gov/about/members, Public Domain, 出典)は、ウィッテン学長が盗博をしたことが判明した場合、インディアナ大学理事会が迅速に行動することを望む、と述べた。 → 2025年8月13日のオーブリー・ライト(Aubrey Wright)記者の「WFYI」記事:Governor to IU trustees: investigate plagiarism claims against Whitten
なお、前々項で述べたインディアナ大学理事会(Indiana University Board of Trustees)の9人の理事はブラウン知事が任命している。
●【盗用の具体例】
ウィッテンは1996年の博士論文「Transcending the technology of telemedicine: A case study of telemedicine in North Carolina – ProQuest」は、174ページと長い。
盗用箇所は100箇所以上あり、85単語連続の逐語盗用もあった。 → LETTER: Brainstorming possible outcomes for Plagiarism Pam – Indiana Daily Student
―――――実例―――――
以下の盗用比較図の出典:Is copied language in Whitten’s dissertation plagiarism? Experts weigh in – Indiana Daily Student
インディアナ大学の規則では、引用符なしで7語以上連続して流用した場合、「逐語盗用」とするとある。
以下は、「引用符なしで7語以上連続して流用した」箇所を示している。
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既に記載した盗用比較図(9ページもある)も以下に再掲した。
左側が被盗用文章で右側がウィッテンの盗用文章。同じ単語が太字になっている。出典:https://s3.documentcloud.org/documents/25501786/whitten-vs.pdf
whitten-vs
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
データベースに直接リンクしているので、記事閲覧時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。
★パブメド(PubMed)
2025年12月1日現在、パブメド(PubMed)で、パメラ・ウィッテン(Pamela Whitten)の論文を「Pamela Whitten[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2016年の15年間の46論文がヒットした。
2025年10月1日現在、パブメドのフィルターに従来あった「Retracted Publication」のフィルターが削除されていた。
秘策の手として、urlの最後に「&filter=pubt.retractedpublication」を加えると、「Retracted Publication」のフィルターで検索した結果が得られる。
2025年12月1日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
2025年12月1日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでパメラ・ウィッテン(Pamela Whitten)を「Whitten」で検索すると、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2025年12月1日現在、「パブピア(PubPeer)」では、パメラ・ウィッテン(Pamela Whitten)の論文のコメントを「Pamela Whitten」で検索すると、0論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》学長の不祥事
日本もそうだけど、米国も大学・学長(副学長)の不祥事をまともに調査・判定できない・しない傾向がある。理由は簡単で、調査の権限が大学にあるからだ。
大学以外の組織で、大学より上位機関が不祥事(含・研究不正)の調査すべきなのだ。
日本の最近の3つの事例(出典省略)。
- 中山政義:二松学舎大学・学長 → 辞任
- 吉本昌広 :京都工芸繊維大学・副学長→ 辞任せず、学長に昇任
- 来住(きし)尚彦:名古屋芸術大学・学長 → 辞任せず
米国の最近の3つの事例も以下に示す。
- メリーランド大学のハイディ・アンダーソン 学長 (Heidi Anderson)が盗博と糾弾されている。 → 辞任せず
- アンドレア・ミラー(Andrea Lewis Miller)(米) | 白楽の研究者倫理:レモイン=オーウェン大学(LeMoyne-Owen College)・学長 → 辞任
- マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)(米) | 白楽の研究者倫理:スタンフォード大学(Stanford University)・学長 → 辞任
《2》日米の報道の違い
米国のメディアは何も書かないが、日本ではほぼあり得ない事実がある。
ウィッテンの盗博は、匿名者の情報を基に、「Chronicle of Higher Education」紙が 報道した。
「Chronicle of Higher Education」紙が報道すると、報道の5か月前の2024年8月に法律事務所がこの疑惑を調査し、ウィッテンはシロと結論したと、大学は発表した。
つまり、報道の5か月以上前に匿名者がウィッテンの盗博を大学に告発した。その告発と調査を大学は隠蔽し握りつぶした。
それで、匿名者が盗用比較図(9ページもある)をウェブで発表すると同時に「Chronicle of Higher Education」紙に盗博を通報した。「Chronicle of Higher Education」紙はそれを記事にした。
日米の違いはどこか?
日本では、盗用の情報を新聞社に伝えても、新聞社は記事にしない(白楽の複数回の経験)。どうやら新聞記者は伝えられた研究不正の内容を検証・判断できない(しない?)ようだ。だから、大学が盗用と発表しないと記事にしない。大学の判断を鵜呑みにするだけのようだ。
結局、米国(欧州も、例:スペイン)の新聞がネカト関係で大学を批判することは珍しくないが、日本では滅多に起こらない。
《3》処罰
本記事は、米国の学長であるパメラ・ウィッテン(Pamela Whitten)の29年前の博士論文の盗用事件である。
それを参考に、日本の学長が29年前の博士論文で研究不正をしたことがバレた時、どのような処罰が望ましいか、考えてみた。
研究不正したのに無処分はマズイので何らかの処分をする。
- 学長は高等教育の要で、学生・教職員の尊敬の対象でもある。学長に留まることはあり得ない。辞任させる。
- 能力と経験を活かすには学術界・研究界が最適だが、研究論文の出版を許可しない。管理職から除外する。学部生・院生の教育・指導をしない役職にする。
- そして、実質的な罰として、財産を没収する。
日本の刑法第19条に以下がある。
次に掲げる物は、没収することができる。
3.犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
4.前号に掲げる物の対価として得た物
本人の努力や能力はもちろん大きいだろうが、研究不正をしたことで、他人より優位になり、教員職を得、学長になれた面もある。その分を現在の財産の10~50%と見込み、没収する。
《4》研究不正を防ぐ方法
本事件の研究不正を防ぐには、どうすればよかったか?
また、今後、同じような研究不正を起こさせないためにはどうすべきか?
研究不正を防ぐ基本は「ネカト許さない文化」の構築で、具体策は、①家庭での道徳教育と小中高大院での(学術)規範教育の徹底、②規範意識の高い人だけを研究者に採用・昇進するシステム作り、③ネカト監視・通報の徹底(通報者保護)、④ネカトを刑事犯化へと法改正、⑤学術システムの改革、であるが、根本的解決の1つは、⑥現行の大学が調査をやめ、麻薬取締部などの捜査権を持つ格上機関がネカト調査をすべきだと思う。
パメラ・ウィッテン(Pamela Whitten)の29年前の盗博を防ぐには「①(学術)規範教育の徹底」だ。
しかし、盗博を29年間も見つけられなかったことも大きな問題である。③が機能していなかったのである。③はウィッテンの盗博の防止策にはならなかったかもしれないが、今後、同じような研究不正を起こさせないための策としては有効だろう。
パメラ・ウィッテン(Pamela Whitten)。https://www.youtube.com/watch?v=-DQZnG1YWYU
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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●9.【主要情報源】
① ウィキペディア英語版:Pamela Whitten – Wikipedia
② 2025年1月22日のケイト・ヒダルゴ・ベローズ(Kate Hidalgo Bellows)記者の「Chronicle of Higher Education」記事:This President’s Dissertation Contains Copied Language. Her University Says She Was Cleared.
③ 2025年1月28日のジャック・フォレスト(Jack Forrest)記者の「Indiana Daily Student」記事:Is copied language in Whitten’s dissertation plagiarism? Experts weigh in – Indiana Daily Student
④ 2025年2月26日のジョナサン・ベイリー(Jonathan Bailey)記者の「Plagiarism Today」記事:Plagiarism, Transparency and the Case of Pamela Whitten – Plagiarism Today
⑤ 2025年8月7日のブライアン・ローゼンツワイグ(Brian Rosenzweig)記者の「Indianapolis Star」記事:Plagiarism experts say IU President Whitten copied sentences verbatim
⑥ 2025年8月12日のケイティ・ワイズマン(Katie Wiseman)記者の「Indianapolis Star」記事:What are the consequences of plagiarizing at Indiana University?
⑦ 2025年8月13日のオーブリー・ライト(Aubrey Wright)記者の「WFYI」記事:Governor to IU trustees: investigate plagiarism claims against Whitten
⑧ 2025年9月25日のマイケル・ジョネリス(Michael Jonelis)記者の「Indiana Daily Student」記事:LETTER: Brainstorming possible outcomes for Plagiarism Pam – Indiana Daily Student
⑨ 2025年10月30日のブリアナ・チャップマン(Brianna Chapman)記者の「College Fix」記事:‘Deeply worrying’: Indiana U. refuses to release plagiarism investigation into president | The College Fix