気象学:「論争」:ジャガディシュ・シュクラ(Jagadish Shukla)(米)

2017年7月17日掲載。

ワンポイント:ネカト事件ではない。シュクラは、インド出身で、米国のジョージ・メイソン大学・教授になり、地球温暖化の世界的権威になった。2007年、「気候変動に関する政府間パネル」がノーベル賞を受賞した時の立役者である。2015年(70歳)、米国連邦RICO法を用いて地球温暖化の懐疑論者を起訴するよう政府に要請した。その要請が大論争になった。裏には、シュクラのカネの動きに不審な点があったこともある。損害額の総額(推定)は0円。シュクラ事件は「全期間ランキング」の「気候警告者の米国史上最大のスキャンダル:2015年10月2日」とされた。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.論争の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

ジャガディシュ・シュクラ(Jagadish Shukla、写真出典)は、インド出身で、米国のジョージ・メイソン大学(George Mason University)・教授になった。専門は気象学である。250報の学術論文を発表し、地球温暖化の世界的権威である。

シュクラ事件は、ネカト事件ではない。

2007年(63歳)、「気候変動に関する政府間パネル」と米国・副大統領・アル・ゴアがノーベル平和賞を受賞した。ジャガディシュ・シュクラは、この受賞の根拠となる「気候変動に関する政府間パネル」第4次評価報告書の主執筆者だった。

2015年(70歳)、米国連邦RICO法を用いて地球温暖化の懐疑論者を起訴するよう政府に要請したRICO手紙を大統領などに送付した。すぐにメディアが問題視し、ラマー・スミス下院議員
も問題視した。裏に、シュクラのカネの動きに不審な点があった。

シュクラ事件は「全期間ランキング」の「気候警告者の米国史上最大のスキャンダル:2015年10月2日」とされた。

ジョージ・メイソン大学(George Mason University)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:インド
  • 研究博士号(PhD)取得:①インドのバナーラス・ヒンドゥー大学。②米国のマサチューセッツ工科大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1944年5月10日
  • 現在の年齢:73 歳
  • 分野:気象学
  • 最初の論争文発表:2015年(70歳)
  • 発覚年:2015年(70歳)
  • 発覚時地位:ジョージ・メイソン大学・教授
  • ステップ1(発覚):メディアが批判
  • ステップ2(メディア): 「Science」を含め多数のメディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①下院・調査委員会
  • 調査報告書のウェブ上での公表:あり
  • 事件:論争
  • 論争文数:1報
  • 時期:研究キャリアの後期
  • 損害額:総額(推定)は0円
  • 結末:ウヤムヤ。処分なし

●2.【経歴と経過】

  • 1944年5月10日:インドで生まれる
  • 1962年(18歳):インドのバナーラス・ヒンドゥー大学(Banaras Hindu University)を卒業。物理・数学・地質学専攻
  • 1971年(27歳):インドのバナーラス・ヒンドゥー大学(Banaras Hindu University)で研究博士号(PhD)を取得。地球物理学
  • 1971 – 1976年(27 – 32歳):米国のマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)でポスドク
  • 1976年(32歳):マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)で理学博士号(Sc.D.)を取得。気象学
  • 1976 – 1977年(32 – 33歳):プリンストン大学(Princeton University)でポスドク
  • 1978 – 1979年(34 – 35歳):マサチューセッツ工科大学・客員教授
  • 1979 – 1983年(35 – 39歳):NASA・ゴダード宇宙飛行センター(NASA/Goddard Space Flight Center)・上級科学者
  • 1984 – 1993年(40 – 49歳):メリーランド大学(University of Maryland)・教授
  • 1984 – 2004年(40 – 60歳):米国海陸大気研究センター(Center for Ocean-Land-Atmosphere Studies)・所長
  • 1991 – 現在(47歳 -):地球環境社会研究所(Institute of Global Environment and Society: IGES)・所長
  • 1994 – 現在(50歳 -):ジョージ・メイソン大学(George Mason University)・教授
  • 2007年(63歳):「気候変動に関する政府間パネル」と米国・副大統領・アル・ゴアがノーベル平和賞を受賞した。ジャガディシュ・シュクラは、この受賞の根拠となる「気候変動に関する政府間パネル」第4次評価報告書の主執筆者だった。
  • 2015年(70歳):RICO手紙を大統領などに送付し、すぐにメディアで問題視される
  • 2016年6月(71歳):追及を逃れた

●3.【動画】

講演の動画がいくつもあったが、事件の動画はなかった。

【動画】
講演。英語字幕付き:「Jagadish Shukla Maniac Lecture, May 2, 2016」(英語)1時間0分23秒
GSFC MANIAC が2016/05/13 に公開
以下のリンクが切れた時 → 保存版

●5.【論争の経緯と内容】

2007年(63歳)、「気候変動に関する政府間パネル」と米国・副大統領・アル・ゴアがノーベル平和賞を受賞した。ジャガディシュ・シュクラは、この受賞の根拠となる「気候変動に関する政府間パネル」第4次評価報告書の主執筆者だった。

★問題視されたRICO手紙

2015年5月29日(71歳)、シェルドン・ホワイトハウス上院議員(Sheldon Whitehouse、D-RI)が、次の意見をワシントン・ポスト紙で述べた。

「連邦検察当局は、喫煙の健康上の影響を隠蔽したたばこ産業を訴えるため、組織犯罪や腐敗組織と戦うために米国連邦RICO法を制定した。この米国連邦RICO法で “炭素汚染による環境被害についてアメリカ人を誤解させる大規模で洗練されたキャンペーンに資金を提供する”と主張した化石燃料会社を調査できる」。
→ 2015年5月29日、シェルドン・ホワイトハウス上院議員の「ワシントン・ポスト」記事:The fossil-fuel industry’s campaign to mislead the American people – The Washington Post

2015年9月1日(71歳)、ジャガディシュ・シュクラと20人の気象科学者は、ホワイトハウス上院議員の手法と同じように、米国連邦RICO法を用いて地球温暖化の懐疑論者を起訴するよう政府に要請する意見を、オバマ大統領、ロレッタ・リンチ司法長官(Loretta Lynch)、ジョン・ホルドレン科学技術政策局長(John Holdren)に提出した。シュクラはこの手紙の筆頭著者だった。

LetterPresidentAG

―――
上記手紙(PDF)の主要点を意訳してみよう。

最近シェルドン・ホワイトハウス上院議員が提案した手法で、気候変動のリスクについて故意にアメリカ人を欺いた企業や組織を米国連邦RICO法で調査してください。

★米国史上最大のスキャンダル:RICO手紙

他のメディアも報道しているが、以下は、ジェームス・デリングポール(James Delingpole、写真出典)の2015年10月2日の記事「気候警告者の米国史上最大のスキャンダル(Climate Alarmist ‘Largest Science Scandal in U.S. History)」による。
→ 出典:Climate Alarmist ‘Largest Science Scandal in U.S. History’、(保存版

地球温暖化に懐疑的な科学者たちを投獄せよと警告したジャガディシュ・シュクラはしっぺい返しを食らっている。今や「米国史上最大の科学捜査」として、下院議会が捜査している。

  • 第1、非営利団体として、法律によって禁止されている「党派政治活動」をした。
  • 第2、地球環境社会研究所(IGES)は2001年以降に6300万ドル(約63億円)を受領したが、ほとんどが何も成果を上げていない。

論文を1つ出版しているだけなのに、ジャガディシュ・シュクラ教授の長年の共同研究者ジェームス・キンター教授(James Kinter、ジョージ・メイソン大学)は科学庁から420万ドル(約4億2000万円)の助成金を得ていた。

ジャガディシュ・シュクラと彼の仲間は、それらの助成金から何十万ドル(何千万円)も個人的な収入を得ていた。 例えば、シュクラと彼の妻(写真出典)は、2013年と2014年に年間80万ドル(約8000万円)を超える収入を得ていた。
→ Shukla’s Gold « Climate Audit

★ラマー・スミス議員

ラマー・スミス議員(Rep. Lamar Smith)(左)。写真出典:【主要情報源】②

下院の宇宙科学技術委員会・委員長のラマー・スミス議員(Rep. Lamar Smith)は、ジャガディシュ・シュクラ教授に、非営利団体長としての活動に関連するすべての関連文書を発表するよう要請し、調査を始めた 。

ただ、スミス委員会が何を調査しているのかははっきりしない。

推定では、研究助成金が政治目的のために悪用された件、地球環境社会研究所(IGES)が非営利団体の政治活動に違反している件だと思われた。しかし、スミス委員会の広報担当者ローラ・クリスト(Laura Crist)に質問しても、クリストは答えなかった。

ただ、「Science」記者の質問に、ジャガディシュ・シュクラ教授は、「私たちは地球の修復という究極の目標を掲げ、市民の義務として手紙に署名しました。攻撃の悪質さに驚いています」と、RICO手紙が引き起こした嵐に驚いていると答えている。

★その後

結局、ジャガディシュ・シュクラ教授は追及から逃れた。

→ 2016年6月1日の記事:Climate spin: Behind-the-scenes emails show profs evading questions | Fox News

→ 2016年7月6日の記事:Uh, oh. Committee Ramps Up Investigation, Threatens Use of Compulsory Process Against Members of #RICO20 | Watts Up With That?

●6.【論文数と撤回論文】

ネカトではないので、調べていない。

●7.【白楽の感想】

《1》誇大なタイトル

無題ジェームス・デリングポール(James Delingpole、写真出典)が2015年10月2日に、「気候警告者の米国史上最大のスキャンダル(Climate Alarmist ‘Largest Science Scandal in U.S. History)」というタイトルの記事を書いたので、今回、記事にした。

しかし、事件を調べてみて、「米国史上最大のスキャンダル」とはとても思えない。

このタイトルこそ、むしろ、過剰で誇大で悪質なタイトルである。科学データになぞらえれば、この「誇張」はねつ造・改ざんである。

マスメディアの「誇張」は社会をゆがめる。読者を間違った方向に導き、不当な金銭的効果をもたらす。

ネカト学者からみると、マスメディアの「誇張」は罰則付きで取り締まるべきだ。

《2》派閥争い?

大きなカネ・権力・メンツが絡むと、研究行為は権力抗争・政治抗争になる。そこでは、学術的な事実・正確さ、研究公正はカヤの外になる。

どこの国でもあるのだろうが、醜い。

改善は、どうすればいいんだろう。ウ~ン、容易に思いつけない。

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ジャガディシュ・シュクラ(左)、マンモハン・シン(インド首相、Manmohan Singh)(右)、2006年2月13日。http://cola.gmu.edu/shukla/photo_gallery.php#kinter

●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Jagadish Shukla – Wikipedia
② 2015年10月5日、ウォーレン・コーンウォール(Warren Cornwall)記者の「Science」記事:Climate scientist requesting federal investigation feels heat from House Republicans | Science | AAAS、(保存版
③ 2015年10月2日、ジェイムス・デリングポール(James Delingpole)記者の「Breitbart」記事::Climate Alarmist ‘Largest Science Scandal in U.S. History’、(保存版
④ 2016年3月5日、ジェイムス・デリングポール(James Delingpole)記者の「Breitbart」記事:Obama/RICO Professor Investigated: You Don’t Need To Be A Crook To Work In Climate Science But…、(保存版
⑤ Jagadish Shukla: Photo Gallery
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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