1‐4‐15.独 リサーチ・ゲイト(ResearchGate)/オープン・レビュー(Open Review)

【リサーチ・ゲイト(ResearchGate)の要点】

  • 特徴:出版後査読(post publication peer-review)の初期サイトの1つ
  • サイト名:リサーチ・ゲイト(ResearchGate)
  • 言語:英語
  • 創設者:私人。3人。実名活動。若い。医師と情報技術者。
    ①イジャ・マディシュ(Ijad Madisch、米国、マサチューセッツ総合病院・放射線科・医師)
    ②セーレン・ホフマヤー(Sören Hofmayer、ドイツ、ハノーバー医科大学・ウイルス学・医師)
    ③ホルスト・フィッケンシャー(Horst Fickenscher、ドイツ、情報学士)
  • スタッフ数:68人(2014年6月29日)、リサーチ・ゲイト・チーム(The ResearchGate Team)
  • 本部:ベルリン、ドイツ
  • 連絡先:
  • サイト:http://www.researchgate.net/
  • フェイスブック:https://www.facebook.com/ResearchGate
  • 開始:2008年
  • 有力協力者:2013年6月4日、ビル・ゲイツから3500万USドル(≒35億円)融資。取締役に、元Facebook幹部のマット・コーラー(Matt Cohler)、PayPal創設者のLuke Nosekがいる
  • 対象:生命科学系の研究者
  • スタイル:生命科学系の論文・研究情報の交換と共有
  • 会員:大学・研究所のメールアドレス必要。研究者400万人、ノーベル賞受賞者30人
  • 非会員:閲覧不可
  • 対象論文数:
  • 作業期間2008年~現(2014年6月26日)。活動は6年、継続中

★ 3人の創設者:左からホルスト・フィッケンシャー(Horst Fickenscher、ドイツ、情報学士)、イジャ・マディシュ(Ijad Madisch、米国、マサチューセッツ総合病院・放射線科・医師)、セーレン・ホフマヤー(Sören Hofmayer、ドイツ、ハノーバー医科大学・ウイルス学・医師)(写真出典:KoopTech
140628 ResearchGATE-Team[1]

★ メルケル首相が独・ベルリンの「リサーチ・ゲイト(ResearchGate)」オフィスを訪問した(2013年6月14日記事の数日前)。
左:ベンチャーキャピタル・ベンチマーク(Benchmark)のジェネラル・パートナーで、元Facebook幹部のマット・コーラー(Matt Cohler)。中央:メルケル首相。右:創設者の1人・イジャ・マディシュ(Ijad Madisch)。
140628 m-fotografie-de-mis_0321[1]
(写真出典:Bill Gates joins $35M round in ResearchGate to make science more open | VentureBeat | Deals | by Dylan Tweney)。

【概要】

出版後査読(post publication peer-review)サイトの枠に入れたが、出版「後」の論文と限らず、このサイトに未発表論文をアップしてもよく、ある意味、論文を含めた研究情報の総合サイトである。

非会員はサイトを閲覧できない。会員になるには研究者に限られる。このことで、発言の質は良いだろう。

ResearchGate (リサーチゲート)は、科学者・研究者向けのソーシャル・ネットワーク・サービスで、原著論文の共有や質問・回答、協力者の募集などが可能になる。

ResearchGate はFacebook、Twitter、LinkedInなどのサービスにある「プロフィールページ」「コメント」「グループ」「いいね!ボタン」 「フォロー」などの機能を混合したサービスになっている。

登録メンバーは生データや失敗した実験結果なども、それを公開することによって他の研究者が同じ過ちを繰り返さないために、成功した結果と同じように共有することを勧められている。マイクロソフトの共同設立者であるビル・ゲイツは ResearchGate への投資者の一人である。

ResearchGate 社は Ijad Madisch によって2008年に設立された。Madisch は科学者が雑誌にお金を払って研究データを出版するのではなく、自分のサイトで研究結果やデータを出版する将来像を描いている。(出典:ResearchGate – Wikipedia

 ResearchGateは、

研究者自らが論文やデータセットの登録・共有をしたり、他の研究者論文に質問、自分への質問について回答ができるようなサービスを提供しております。 さらに自身の研究分野を登録することでResearchGateに登録している同分野の論文をすぐに検索・閲覧することができ、興味がある場合はその研究者をフォローできるような仕組みも提供しております。 そのほかにも「共同研究者の募集」や、「研究者データの詳細閲覧(プロフィールページの閲覧数、自身の論文の閲覧状況)」、「研究者の評判に関する指標(RG Score)」も利用できます。

ReseachGateへの登録方法
ReseachGateで新規登録する際は名前だけでなく、所属や、メールアドレスの入力が必要です。ResearchGateはその入力された情報から登録者が研究者なのかを判断して新規登録することができます。個人の研究者は簡単な履歴などを新規登録時にResearchGateに伝えることで、新規登録すること可能になります。(出典:ResearchGate |レタープレス株式会社

★ 《動画》英語 「ResearchGate Social Network for Scientists – The Cloud Show (CS&A Series) – YouTube」、6分23秒
2012/08/27にThe Cloud Showさんがアップロード(2014年6月27日閲覧)

★ 《動画》英語 「ResearchGate CEO: Let’s Build Something That’ll Change The World – YouTube」、2分40秒
2014/01/20にLufthansaさんがアップロード(2014年6月27日閲覧)

【オープン・レビュー(Open Review)】

2014年3月13日、「リサーチ・ゲイト(ResearchGate)」の一つとして「オープン・レビュー(Open Review)」を開設した(Introducing Open Review – a new way to evaluate research – ResearchGate News)。

意図は、

小保方論文の議論に触れ、イジャ・マディシュ(Ijad Madisch)は「こういうことが夢だった(“This is what I was dreaming of,”) 」と述べている。研究規範に違反する論文の議論も推奨し始めた。

イジャ・マディシュは「オープンで、リアルタイムで、透明性を保ち、著者もコメントできる」と述べている。「著者は、質問されると、やむを得ずより多くのデータを提供することになるが、それは、単に不正研究の追及するためだけではない。私たちは研究成果の肯定的な部分も強調したいのです。」(2014年3月14日、David Meyer、「Academic social network ResearchGate aids debunking of stem cell study — Tech News and Analysis」)

実態は以下のようだ。

「オープン・レビュー(Open Review)」は、学術的なソーシャル・ネットワーク「リサーチ・ゲイト(ResearchGate)」が誇大に宣伝しているツールです。コメントは、「パブピア(PubPeer)」や「パブメド・コモンズ(PubMed Commons)」よりも幾分フォーマルにする必要がある。コメントは、自分の「リサーチ・ゲイト(ResearchGate)」・アカウントと自分の論文に関連付けられる。(出典:Post publication peer-review: Everything changes, and everything stays the same | Information Culture, Scientific American Blog Network

【白楽の感想】

《1》

メルケル首相、ビル・ゲイツ、元Facebook幹部のマット・コーラー、PayPal創設者のLuke Nosekが関与するほどの重要な事業だ、ということがイマイチピンとこない。

出版後査読(post publication peer-review)としての機能は、どれほど研究者間に浸透しているのだろうか?

《2》

外国の出版後査読(post publication peer-review)を調べていくと、日本はかなり後進国になっていることに愕然とする。

ネックは、
①英語の世界である点が1つ。
②自己主張し、かつ丁寧に説明することが必要。
③国際感覚と国際社会のマナーが必要。
この3点は日本人に(ゴメン、「日本人」と一般化してはいけない。白楽に)欠如している。

《3》

一般大衆レベルの科学情報広報プロジェクトも日本では貧弱だ。このようなウィキペディア英語版サイト(List of citizen science projects – Wikipedia, the free encyclopedia)もなかなか日本語化されない。日本の大衆向けサイエンスライターは、大衆向けの活動が足りない(方向が間違っている)のではないだろうか?

文部科学省の推進する科学技術理解増進の御用サイエンスライターは、職業として貧弱で、これは、大学教員が職務として果たすべきものだ。自分の研究成果を自国民に伝えないなら、税金を使った研究をする資格なし。