国研:「コクハラ」:下水汚泥(sewage sludge):デーヴィッド・ルイス(David Lewis) 対 環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)(米)

2017年5月24日掲載。

ワンポイント:【長文注意】。1990年代以降、米国・環境保護庁は国策として、下水汚泥(ヘドロ、スラッジ)を有機肥料として、農場や公園の土壌に利用することを推進してきた。1993年、下水汚泥利用推進の基本となる連邦規則(CFR)・第503条を制定した。しかし、第503条を書いた環境保護庁の化学者・アラン・ルービンが、下水汚泥の安全性をねつ造したと、2002年、環境保護庁の微生物学・デーヴィッド・ルイスが告発した。2003年、コクハラ(告発に対するハラスメント)で、ルイスは環境保護庁を解雇されたが、2014年に下水汚泥の危険性を指摘する著書『Science for Sale』(売り物の科学、邦訳なし)を出版した。2017年現在、下水汚泥利用の安全性は米国で大きな問題になっている。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.日本語の解説
3.事件の経過と内容
4.白楽の感想
5.主要情報源
6.コメント
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●1.【概略】

「2015年1月のScience」記事によると、今日、米国の下水汚泥(ヘドロ、スラッジ)の約60%は、畑や森林の肥料に利用されている。残りの約40%は、焼却炉で焼却されるか、埋め立て地に投棄されている。

肥料への利用は、1990年代、米国・環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency、写真出典)が音頭をとって、下水汚泥を有機肥料として、公園、遊園地、農場、森林の土壌に利用することを推進してきたからだ。

推進の基本は、1993年、下水汚泥利用の規則である連邦規則(CFR)、第40部、第503条の制定である。

ところが、下水汚泥の肥料利用で、多くの人が健康被害を受け、死者もでていた。

2002年、環境保護庁の微生物学・デーヴィッド・ルイス(David Lewis)は、第503条を書いた環境保護庁の化学者・アラン・ルービンが、下水汚泥の安全性をねつ造したと、告発した。

2003年、コクハラ(告発に対するハラスメント)で、ルイスは環境保護庁を解雇された。

2014年、ルイスは下水汚泥の危険性を指摘する著書『Science for Sale(売り物の科学、邦訳なし)』を出版し、2017年現在も、米国では、下水汚泥利用の安全性が大きな問題になっている。

米国では、官庁と大企業が下水汚泥の肥料利用の推進派で、民間NPO組織や研究者が反対派という、よくある対立構造になっている。

下水汚泥の有効利用と安全性の問題は、現代社会が抱える問題の1つとして、とても興味深い。

しかし、本ブログの対象はネカト問題なので、下水汚泥問題は状況が把握できる程度しか解説しない。その上で、米国・環境保護庁(の担当者)は、データがないのに連邦規則(CFR)・第503条を制定し(ねつ造)、施策を推進した状況に焦点を絞る。

なお、オーガニック野菜など日本では有機農法や有機栽培がもてはやされるが、有機肥料には、本記事で問題視されている下水汚泥が含まれている。

日本では「多くの地方自治体が自治体の下水処理システムから堆肥を生産しているが、それは花壇のみに用いて、食用作物には使わないよう推奨している」(堆肥 – Wikipedia)。食用作物には使わないよう「推奨」ということは、「禁止していない」ということ?

白楽は、自分が食べる食品に関しては気にならない・しない性格・思想で、遺伝子組み換え食品OK、放射線汚染食品OKだが、今回の記事で下水汚泥を調べているうちに、有機野菜の野菜サラダは食べる気がしなくなった。

米国では、「下水汚泥で栽培された」野菜の表示義務はない。米国・農務省(USDA)が認定する有機野菜は、下水汚泥を肥料に使っていない。しかし、街の商店の「オーガニック野菜」という表示は、下水汚泥で栽培されていない保証はない。文と写真出典

ワシントンDCの米国・環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)。写真出典

  • 国:米国
  • 集団名:環境保護庁
  • 集団名(英語):EPA:Environmental Protection Agency
  • 事件人数:
  • 分野:環境
  • 不正年:1993年
  • 発覚年:2002年
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は環境保護庁・研究員のデーヴィッド・ルイス(David Lewis)で、論文に発表し、裁判で証言した
  • ステップ2(メディア): 新聞、多数のブログ、学術誌「Environ. Sci. Technol.」(2002年)、本『Science for Sale(売り物の科学、邦訳なし)』(2014年)
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):
  • 不正:ねつ造、コクハラ(告発に対するハラスメント)
  • 不正文数:1つ。連邦規則(CFR)、第40部、第503条(Code of Federal Regulations (CFR), Title 40, Part 503)
  • 被害(者):少なくとも1人死亡。死者総数不明。健康被害者は多数と思われる
  • 結末:機関の処分なし。第503条作成者の処分なし

●2.【日本語の解説】

環境保護庁の下水汚泥のネカトに関して、日本語の解説はない。

それはいい。外国のネカト事件を紹介する日本語の記事は、そもそも、本ブログを除くとほとんどない。

下水汚泥を肥料として使用することの是非を論じている記事を以下にあげる。

★2009年10月27日:楽天ブログ:[ 土壌汚染 ] | 安心な生活/安全な食品:「私たちの生活・工場排水の「汚泥」が肥料として使われる量が増えてきています。  (2) 」:抜粋

出典 → ココ保存版

「汚泥」とは、下水処理場で、汚水や雨水、工場排水を分解したときにできる泥のことですから、さまざまな微生物がすんでいるとともに、当然、家庭のお風呂や、水洗トイレから流される汚水や、工場などの下水や排水に含まれるさまざまな化学物質や重金属も、含まれることになります。

「汚泥肥料」は、この汚泥を乾燥させて作られます。

肥料に使うというのが本当に安全なのかどうか。どう思いますか?

問題は、さまざまな都道府県の下水処理場などが、「汚泥肥料」を格安で、ときにはタダで販売しています。

そうです、只より安いものはない!!!

農業肥料、産業廃棄物としての畜産の糞尿は、年間9400万トン(チッソ量にして年間83万トンです)は、地下水や河川の汚染源になります。これは化成肥料より多い量です。その糞尿は破棄され地下水を汚染することもあります。また肥料として畑に持ち込まれ、作物に吸収されることがあります。

以下、引用先をご覧ください。→ ココ

★2015年08月12日:新プランター野菜栽培への誘い「下水汚泥肥料は安全か?」:抜粋

出典 → ココ保存版

アメリカの「食の安全」サイトに「下水汚泥肥料は安全か?」と言う記事が載って居ました。此の話、日本でも事情は全く同じであり、関心が集まって然るべきですが、汚泥肥料をキーワードにしてネット検索しても一般的な反応は見当たらず、先ず目に付いたのが農水省から出されている「汚泥肥料の基礎知識」と題する一般向け情報です。

しかも、一般消費者向けとしてはほとんど流通しておらず、主に農家に直接販売される肥料とあり、そのQ&Aで関心の高い汚泥肥料の放射能汚染に就いていろいろと取り上げて居りますが、汚泥肥料の利用状況を示す、実際にはどの程度農地に投入されたりしているか普及に就いての情報は有りません。

以下、引用先をご覧ください。→ ココ

★2015年08月17日:読売新聞「下水の汚泥を肥料に」:抜粋

出典 → ココ保存版

国土交通省が全国の自治体などと協力し、下水を処理した際に出る汚泥をリサイクルして肥料を作り、農作物を栽培するプロジェクトを進めている

流通している汚泥肥料は全て、肥料取締法に基づく安全基準をクリアしている。同チームが昨年、汚泥肥料で栽培したトマトを分析したところ、化学肥料で作った場合と比べて味が大幅に良くなったとの結果も出た。国交省は「安全もおいしさも、科学的に証明されている」と自負する。

だが、汚泥肥料が普及しているとは言い難い。同省によると、汚泥は現在、6割程度がリサイクルされているが、大半がセメントなどの建設資材に使われ、肥料へのリサイクルは1割程度にとどまる。

以下、引用先をご覧ください。→ ココ

●3.【事件の経過と内容】

★環境保護庁の「研究開発局(ORD)」

本記事の下水汚泥(sewage sludge、ヘドロ、スラッジ)事件は環境保護庁の「研究開発局(ORD)」が当該研究所である。そして、デーヴィッド・ルイス(David Lewis、写真出典)は環境保護庁の「研究開発局(ORD)」の研究員(微生物学が専門)だった。

それで、環境保護庁の「研究開発局(ORD)」の概略をつかんでおこう。

環境保護庁(Environmental Protection Agency, EPA)は、市民の健康保護と自然環境の保護を目的とする、アメリカ合衆国連邦政府の行政機関である。大気汚染、水質汚染、土壌汚染などが管理の対象に含まれる。(アメリカ合衆国環境保護庁 – Wikipedia

2016年のデータでは、職員数が15,376人で、予算は81億ドル(約8100億円)だった。

環境保護庁の部局の1つに「研究開発局(ORD)」がある。(About the Office of Research and Development (ORD) | About EPA | US EPA

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環境保護庁の「研究開発局(ORD)」は、

EPAの科学的キャパシティの根幹をなすのは、EPA本部内の三つの部局、二つの国立センター、三つの国立研究所から構成された研究開発局(Office of Research and Development: ORD)である。ORDは1973年に設立された。。(About the Office of Research and Development (ORD) | About EPA | US EPA

ORDのミッション
• 現在および将来の環境問題を特定し、理解し、解決するための研究開発の遂行。
• EPAのミッションに対する適切な専門的支援。
• EPAのパートナー(他の省庁、他の国家、民間セクター組織、学界)の成果の統合。
• 新たに現れてくる環境問題に取り組み、リスク評価・管理のための科学と技術を発展させるリーダーシップを発揮。
→ 京都女子大学・平川秀幸:米国環境規制政策における「専門的インプット」のあり方http://hideyukihirakawa.com/sts_archive/usregsys/usregsys_nonframe.htmlの6章:ココ
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★下水汚泥(ヘドロ):バイオソリッド(biosolids)

廃水処理場の底に動物性脂肪と人間の糞の半固体混合物が下水汚泥(ヘドロ、スラッジ)(sewage sludge)として沈んでいる。この下水汚泥を化学的または生物学的に処理し、臭気および指標病原体(病原体のすべてではない)を減少させたのを「バイオソリッド(biosolids)」と呼び、有機肥料に用いられている(上の漫画出典)。

バイオソリッド。https://green.blogs.nytimes.com/2009/04/16/biosolids-and-human-health/comment-page-2/?_r=0

まあ、ぶっちゃけた話。人々が口にする食品に、「下水汚泥(ヘドロ、スラッジ)を肥料に使いました」では抵抗がある。それで、「バイオソリッド(バイオ固形物)」という新名称で肥料の由来(含・人間の糞)を胡麻化そうという意図である。

1990年代、この施策は米国の国家的大事業で、米国の環境保護庁(EPA)、農務省(USDA)、地方自治体、市町村、シナグロ・テクノロジーズ社(Synagro Technologies)(廃棄物管理会社)、大学、科学アカデミーなど複数機関を調整して進めた。

バイオソリッド。http://www.kingcounty.gov/services/environment/wastewater/resource-recovery/Loop-Biosolids.aspx

1993年、米国・環境保護庁(EPA)は、連邦規則(CFR)、第40部、第503条(Code of Federal Regulations (CFR), Title 40, Part 503)で、「下水汚泥」と「バイオソリッド」を以下のように定義し、この国家的大事業を大きく前進させた。なお、この定義は国際的に使用されている。

「下水汚泥」は、都市排水の処理中に分離された固形分で、「バイオソリッド」は、その下水汚泥を環境保護庁の基準以下に処理した固形分である。環境保護庁の基準は、「汚染物質および病原体を土壌に利用しても安全な量以下にした」、という基準である。

その基準は、バイオソリッドを「規制する」連邦規則(CFR)、第40部、第503条である。

ただ、第503条で規制対象にした「汚染物質および病原体」は、9つの重金属に限定し、有毒な有機物を1つも規制対象にしなかった。

★連邦規則(CFR)、第40部、第503条(Code of Federal Regulations (CFR), Title 40, Part 503)

1993年、米国・環境保護庁(EPA)は、、自治体の廃棄物の無秩序な海洋投棄を止めるために、第503条(Code of Federal Regulations (CFR), Title 40, Part 503)を導入した。第503条は、バイオソリッドの有益な利用のために、地方自治体の排水処理中に生ずるバイオソリッドの管理に関する包括的な要件を規定した。

第503条は、バイオソリッドを3つのグループに分類した。基準は、汚染物質濃度、処理方法、汚染物質負荷率である。基準を満たすバイオソリッドは土壌に利用されるが、基準を満たさないバイオソリッドは処分または焼却される。

土壌に利用されるバイオソリッドはクラスA とクラスBの2種類である。クラスAは「病原体を含まず、接触しても安全」であり、クラスBは「病原体を含む」ものである。

しかし、第503条は、クラスBの使用を連邦政府として統一的に規制せず、各州に任せた。そのため、規制の厳格さが州ごとに異なってしまった。

批判的グループは、バイオソリッドには、ヒトの糞便細菌だけでなく、 27種の重金属と毒性有機物を含んでいると指摘している。

バイオソリッドの化学物質の多くは、持続的な有機汚染物質であり。持続的な有機汚染物質は、内分泌かく乱物質、農薬、医薬品、プラスチックなどで、人間や動物の体内で分解されず、体内に蓄積する。

実際、サンフランシスコの「バイオソリッドの有機堆肥(organic biosolids compost)」に難燃剤やトリクロサン(triclosan)などの内分泌かく乱物質が見つかった。

バイオソリッド中に、出生異常、癌、免疫機能障害、神経障害(自閉症、ALS、アルツハイマー病、パーキンソン病など)を引き起こす濃度よりも1000倍の高濃度の毒性有機物が含まれていた、との報告もある。

以下の「2001年のCan J Infect Dis.」論文に「下水汚泥」の利用で健康被害が生じるのではないかと、疑問が呈されている。

★シェイン・オコナーの死(1995年)と裁判(2002年)

この節の出典:①Ockham’s Razor、② PDF。3頁に1999年、オコナーの母親が記者クラブで講演した記録がある

1995年10・11月、ニューハンプシャー州の小さな田舎町・グリーンランド(Greenland)で悲劇が起こった。

1995年10月、26歳の男性・シェイン・オコナー(Shayne Conner)とその家族が住む家から90メートルしか離れていない隣の畑に、ウィーラブレーター・テクノロジーズ社(Wheelabrator Technologies、Inc)が、3週間続けて、650トンの下水汚泥を肥料にまいた。

ウィーラブレーター社がまいた下水汚泥は、乾燥するにつれ、悪臭を放った。風に吹かれた悪臭が、オコナーの家を襲った。

オコナーと彼の家族、そして隣人たちは、風に運ばれた悪臭に襲われ、嘔吐し、目、喉、肺が火傷のようになった。鼻血、重度の頭痛、鬱血、発熱、風邪症状、悪心、および呼吸困難におちいった。

1995年11月、下水汚泥がまかれ始めた翌月、26歳のオコナーが死んだ。

2002年1月、オコナーの母親ジョアン・マーシャル(Joanne M. Marshall)は、シェイン・オコナーの死んだ原因はウィーラブレーター・テクノロジーズ社にあると裁判に訴えた。

ところが、ウィーラブレーター社の専門家は、オコナーの死は下水汚泥の散布とは関係ないと主張した。

一方、米国環境保護庁(EPA)の微生物学者・デーヴィッド・ルイスは、原告側の証人に立ち、次の論点を述べ、大いに関係があると主張した。

  • 第503条スラッジ規則では、病原体のリスク評価を実施していなかった。
  • 第503条スラッジ規則は、米国環境保護庁の科学者による広範な審査で不合格になっている。
  • 米国環境保護庁の監査官(EPA’s Inspector General)は、第503条スラッジ規則では下水汚泥を肥料に利用できないと判断した。「米国環境保護庁は、現行の下水汚泥の肥料への利用は人間の健康と環境保護を保証できない」。
  • 国立労働健康安全研究所(National Institute for Occupational Health and Safety)は、第503条スラッジ規則では、下水汚泥を扱う労働者の健康は安全ではないとした。
  • 第503条スラッジ規則は、グリーンランドの土地でスラッジを脱水するためのポリマーのような刺激ガス、北東部のスラッジス散布でのライムダスト、これらを人々が吸引するリスクに対処していない。

グリーンランドの住民の症状は、人々が土壌にまいた下水汚泥から浮遊する汚染物質に曝されたケースの増加と一致していた。これらの症状は、刺激ガスの吸入、病原体に汚染されたスラッジ塵の吸入により呼吸器系や胃腸系の感染や深刻な合併症を引き起こす可能性があるという科学論文に裏付けられている。

★下水汚泥(ヘドロ):賛成派

下水汚泥(ヘドロ)利用賛成派は、下水汚泥ではなく「バイオソリッド」という用語を使用する。

環境保護庁のウェブサイトでは、「連邦および州の規則で最も厳しい基準を満たすバイオソリッドのみが肥料として承認されている」と書いてある。

十分に処理された下水汚泥は、十分に安全で、化学肥料の安価で持続可能な代替物とみなされる。水質専門家を代表する非営利団体である水環境連盟(WEF:Water Environment Federation)もまた、バイオソリッドの使用とリサイクルを支持している。

★下水汚泥(ヘドロ):反対派

米国の全農地の1%未満が下水汚泥を使用している。環境保護庁の規則は下水汚泥の使用を義務付けていない。農家は通常、下水汚泥を無料で支給してもらえる。それにもかかわらず、下水汚泥の使用に反対するいくつかの団体がある。

非営利団体・ユナイテッド・スラッジ・フリー・アライアンス(United Sludge Free Alliance)(2017年5月23日現在、usludgefree.org/ サイトが開かない。facebookは開く)は、下水汚泥が公衆衛生に有害だと環境保護庁は認識しているにもかかわらず、下水汚泥の使用を促進している、と非難している。このグループは、下水汚泥肥料の禁止を目標としている。

Sludgevictims.com(2017年5月23日現在、http://sludgevictims.com/ は閉鎖?)は、有毒な下水汚泥の何百もの犠牲者の証言を集めた。証言では、下水汚泥を使用した土地の隣に住む住民は、頭痛、灼熱感、咽頭痛、鼻出血、咳、および説明できない肺疾患を抱えているとある。数多くの不快な臭いの強い苦情がある。

このウェブサイトには、懸念されている市民から上院議員や地方政府関係者に送られた手紙や、1995年までのニュース記事も含まれている。

下水汚泥対策ネットワーク(Sewage Sludge Action Network  http://sewagesludgeactionnetwork.com/)、Sludgefacts.org(http://www.sludgefacts.org/)、も反対組織である。

★デーヴィッド・ルイス

デーヴィッド・ルイス(David Lewis) https://www.focusforhealth.org/davidlewis/

デーヴィッド・ルイス(David Lewis)は、ジョージア大学(University of Georgia)で微生物学の研究博士号(PhD)を取得し(1970年に院生)、米国・環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)の研究開発局(ORD:Office of Research and Development)の研究員になった。

解雇される少し前から下水汚泥(ヘドロ)の問題を扱ったが、その時の地位は、環境保護庁の上級研究員(GS-15)だった。

GSは公務員の給与体系の等級で、GS-15は最高ランクである。ルイスの地位は高い(大学なら教授クラス?)( General Schedule (US civil service pay scale) – Wikipedia)。

2000年にLexington Leadership Award を受賞していて、ルイスは優秀な科学者と思われる。

1990年代から(推定)、下水汚泥(ヘドロ)の農業用地への利用を促進する環境保護庁プログラムに関連した疾病や死亡の調査をはじめた。

2002年、デーヴィッド・ルイスは、下水汚泥を使用した場合の潜在的な健康影響について、論文を数報、発表した。環境保護庁は下水汚泥を土地利用する時の病原体リスク調査を適切な行なっておらず、規則第503条は杜撰(ねつ造)だと主張した。彼はまた、クラスBの汚泥は農業用に最も一般的に使用され、病気の原因となる病原体がいくつも含まれていると主張した。

  • Pathogen Risks From Applying Sewage Sludge to Land
    Despite complaints of related illnesses, little is known about the dangers of spreading biosolids on land.
    David L. Lewis and David K. Gattie
    Environ. Sci. Technol., 2002, 36 (13), pp 286A–293A
    DOI: 10.1021/es0223426
    Publication Date (Web): July 1, 2002
    PDF | PDF w/ Links
es0223426

2002年、シェイン・オコナーの死亡での裁判では、原告側の証人に立ち、1993年に環境保護庁が制定した規則第503条は杜撰(ねつ造)だと主張した。

すると、環境保護庁は、コクハラ(告発に対するハラスメント)で、ルイスの研究を停止させた。

https://www.focusforhealth.org/davidlewis/

2003年、環境保護庁はさらに強いコクハラで、ルイスを解雇した。解雇し、虐待し、逆にネカトだと裁判に訴えた。

ルイスは、環境保護庁から研究を中止させられ、解雇されたが、この事件でコトが表面化し、逆に、米国連邦機関の疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)は下水汚泥の危険性を認識した。そして、下水汚泥の処理をする労働者を保護するガイドラインを制定した。

ルイスは、解雇は不当だと労働省に訴状を提出した。彼の論文は公平にレビューされておらず、環境保護庁は過小評価していると主張した。 しかし、労働省はルイスの訴えを却下した。

2014年6月、ルイスは、著書『Science for Sale(売り物の科学、邦訳なし)』(出典:アマゾン)を出版した。

この本で、下水汚泥に関して、環境保護庁の中で何が起こってきたのか、下水汚泥問題を的確に批判した。

ルイスは、環境保護庁の科学者として米国国民の健康を守ろうと誠実に行動した時、解雇され、虐待され、訴えられたのである。

ルイスは、著書の出版後2017年5月23日現在まで、各地での講演に呼ばれ、多くのメディアに取り上げられている。

【動画】
インタビュー:「Interview with Dr. David Lewis」(英語)1時間6分25秒
GMO Free News が 2015/09/25 にライブ配信

【動画】
インタビュー:「Dr. Mercola Discusses Biosolids with Dr. Lewis 」(英語)33分31秒
Mercolaが 2015/10/27 に公開

★ねつ造、杜撰

ルイスの主張では、規則第503条は下水汚泥が科学的に安全であると誤解するように意図的に記述されている。「最悪の化学物質」を含む下水汚泥なのに、それを安全とする環境保護庁の「科学的」説明は、非科学的である。つまり、ネカト(ねつ造)である、と。

ルイスがそのことを指摘すると、環境保護庁は、ネカトの証拠を隠すために、コクハラ(告発に対するハラスメント)し、逆に、ルイスの論文にネカトがあると、ルイスを2003年に解雇した。

第503条の条文を書いたと思われている環境保護庁の化学者・アラン・ルービン(Alan Rubin、写真出典)がこの事件の元凶と思われる。しかし、法律(第503条)は、論文と異なり、1人の研究者が自分の判断で制定できない。環境保護庁が組織的に行なったネカト(ねつ造)である。

1993年の宣誓供述書で、ルービンは、バイオスラッジ(下水汚泥のこと)の毒性が魔法のように除かれると説明している。「魔法のように」という言葉が示すように、このインチキ科学的な現象を、彼は “スラッジ・マジック(sludge magic)”と呼んでいるのだ。

「スラッジ・マジック」は、下水汚泥に有機物と金属を隔離する独特の性質があるという意味だそうだ。 隔離されることで、有機汚染物質は下水汚泥から環境にほとんど出なくなる。その過程の一部は解明されているが、解明されていない部分もあるので、スラッグの魔法、つまり、「スラッジ・マジック」という言葉を作った。

2014年6月9日の記事(【主要情報源】③)では以下のようだ。

記者がルービンに質問した。「有機汚染物質は下水汚泥から環境にでなくなるという「スラッジ・マジック」説の研究結果はどこかに発表されているのですか?」

ルービン:「発表していません」

ルービンは、続けて、「エート、実際、この現象が起こる根拠はチェニー氏(Chaney)がすべてです。チェニーは歩く百科事典ですから」と答えた。

つまり、「スラッジ・マジック」は想像の産物だった。データねつ造である。インチキ科学である。

ルービンは、環境保護庁の下水汚泥プログラムで30年以上働き、規則第503条の主要執筆者なのに、下水汚泥の有害物質がどうして植物、動物、人間に吸収されないのか、説明できない。

なお、1999年、ルービンは、下水汚泥の利用に反対する科学者や市民を“違法”に脅迫したとして、「1999年9月27日のタイム誌」記事(以下)になっている。インチキの上に恫喝とは、なんたることだ。

【動画】
インタビュー:「BIOSLUDGED trailer – new film from the Health Ranger / Natural News 」(英語)3分7秒
TheHealthRanger が 2017/02/03 に公開

●4.【白楽の感想】

《1》国家プロジェクトの間違い

一般的に、自分の所属組織のプロジェクトに深刻な問題点が見つかった時、どう批判できるのだろうか?

文部科学省に統合される前、日本の科学技術庁の官僚と話したことがある。「科学技術庁の官僚は原子力開発に否定的な意見を言うことができないんです。というか、そういう調査や検討することさえできません。だから、原子力の問題点を冷静に考えることはできないんです」。

一般に、組織に致命的なマイナスになるかもしれないことを組織内で検討することは難しい。

科学者自身がそうである。

すべてのことに「初めがあり、終わりがある」。栄枯盛衰は世の習い。それで、何人かの科学者に「あなたの分野の研究はいつ衰退方向に向かいますか? その兆候は何だと思いますか?」と聞いたことがある。

ほぼすべての科学者(英国で研究主宰者になった日本人の1人を除く)は、まず、イヤな顔をして、「私の研究分野は衰退しません」と答えた。要するに、自分の研究分野が衰退することを考えたことがないのだ。

環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)が進めている下水汚泥の肥料は、農務省(USDA)、地方自治体、市町村、シナグロ・テクノロジーズ社(Synagro Technologies)(廃棄物管理会社)、大学、科学アカデミーなど複数機関を調整して進めている米国の国家事業である。間違いではないかもしれないが、デーヴィッド・ルイス(David Lewis)が指摘するように、間違いかもしれない。

しかし、国策として進めているプロジェクトを批判、イヤイヤ、調査や検討することでさえ、コクハラを受け、難癖をつけられて解雇されてしまう。

白楽は、批判は改善への有益な道だと考える。批判を受けて、改善すればいいと思うのだが、世の大半は批判者を排除してしまう。

なお、本ブログは、ネカトが対象なので、環境保護庁の規則第503条のねつ造を、データもなく安全とした点に絞って、幾分、悪者扱い気味に記載した。

しかし、下水汚泥の肥料利用が間違いか・正しいかは、本当のところ、白楽自身は判断していない(本記事でも、公平に分析していない)。

《2》科学的実証

環境保護庁の化学者・アラン・ルービン(Alan Rubin)が第503条の条文を書いた時、環境保護庁の他の研究者は、”スラッジ・マジック(sludge magic)”の科学的実証をどうして求めなかったのだろうか?

すでに、批判や検討ができない状況だったのだろうか?

多分、批判や検討ができない状況だったから、ルービンは科学的証拠なしに、想像をベースに第503条を作ってしまうことができたのだろう。

政治的に、既に国家的事業になっていたので、科学者は批判しにくかった。

もしそうなら、常に、自由に批判できる状況が確保されないと科学は機能不全になる。

《3》逆のナルホド発想

下水汚泥に金属が含まれ、肥料に利用するには害毒が多い。

逆に考えると、下水汚泥の金属を集めて、金属を利用できないだろうか?

数百万ドル(数億円)の金属(メタル)があるという記事がある。逆のナルホド発想だ。
→ 2015年1月の「Science」記事:Sewage sludge could contain millions of dollars worth of gold | Science | AAAS

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●5.【主要情報源】

① ウィキブックス英語版:Professionalism/David Lewis and EPA – Wikibooks, open books for an open world
② 2016 年2月18日のリディア・エップ(Lidia Epp)の「MOTHER EARTH NEWS」記事:Biosolids: More Harm than Good, Part 1 – Nature and Environment – MOTHER EARTH NEWS保存版
③ 2014 年6月9日の「Independent Science News」記事:How EPA Faked the Entire Science of Sewage Sludge Safety: A Whistleblower’s Story保存版
④ 2014年3月のシュナイダー(C. Snyder)の「Bioscience Resource Project」記事:Sewage Sludge (Biosolids) — land application, health risks, and regulatory failure保存版
⑤ 2017年2月24日のデーヴッド・グティエレス(David Gutierrez)の「EPA News」記事:Disgusting “environmental crimes” against America covered up with EPA quack science保存版
⑥ 2017年3月10日のダニエル・バーカー(Daniel Barker)の「Natural News」記事:EPA faked biosludge safety data just like it faked global warming temperature data … Shocking truths unveiled in upcoming documentary “Biosludged”保存版
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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