企業:環境試験(environmental test)、インターテック社(Intertek)(米)

2021年6月21日掲載 

ワンポイント:20世紀最大の企業ネカト事件の1つ。全米の59,000か所を超える環境汚染か所から送られてきた25万サンプルの化学物質の測定(発がん物質など)を米国・テキサス州のインターテック試験サービス環境実験室社(Intertek Testing Services Environmental Laboratories Inc.)が請け負っていた。その1994~1997年のデータがねつ造・改ざんだったことが1997年に発覚した。米国・環境保護庁(EPA)や米国・陸軍工兵司令部(U.S. Army Corps of Engineers)などが顧客だった。その4年間の受注額は3570万ドル(約36億円)。2001年、裁判で13人の従業員の内5人は有罪で、企業は900万ドル(約9億円)の罰金を払った。8人の従業員は無罪となった。企業はこのネカトによる健康被害なし、環境被害なしと発表したが、実際は不明。国民の損害額(推定)は41億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.日本語の解説
3.事件の経過と内容
4.白楽の感想
5.主要情報源
6.コメント
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●1.【概略】

このインターテック事件、日本では全く報道されなかったようだ。2021年6月、日本語で検索してもウェブでは何もヒットしなかった。

インターテック社(Intertek)は英国・ロンドンに本社がある世界規模の大きな試験企業である。

米国・テキサス州・リチャードソンにある子会社のインターテック試験サービス環境実験室社(Intertek Testing Services Environmental Laboratories Inc.)は、環境汚染箇所から送られて大気、液体、土壌の環境化学物質、神経ガス、発がん物質などの測定を行なう試験企業で、米国・環境保護庁(EPA)や米国・陸軍工兵司令部(U.S. Army Corps of Engineers)などが顧客だった。

1997年、経緯は不明だが、1994年1月~ 1997年12月の4年間に全米の59,000か所を超える環境汚染か所から送られてきた25万サンプル環境試験データがねつ造・改ざんだったことが社内で発覚した。

1998年1月、環境保護庁(EPA)に報告した。

1998年、テキサス州・リチャードソン(Richardson)の会社は閉鎖した。

4年間の不正期間にインターテック実験室が受注した額は3570万ドル(約36億円)と巨額である。

2001年、裁判で13人の従業員の内5人は有罪で、企業は900万ドル(約9億円)の罰金を払った。8人の従業員は無罪となった。

このデータねつ造・改ざんで、企業は健康被害なし、環境被害なしと発表したが、実際は不明である。

事件を起こしたのはテキサス州・リチャードソン(Richardson)のインターテック社だが、1998年に閉鎖された。写真は、代わり掲載したテキサス州・ヒューストンのインターテック社(Intertek USA Inc, 16025 Jacintoport Blvd # B, Houston, TX 77015, United States)。グーグルマップで白楽が作成:グーグル

  • 国:親会社は英国の世界企業だが、子会社の米国の事業所が問題を起こしたので、米国とした
  • 親集団名:インターテック社
  • 親集団名(英語):Intertek
  • 親ウェブサイト(英語):https://www.intertek.com/
  • 日本法人:インターテック ジャパン株式会社:https://intertekjp.com/
  • 該当集団名:子会社・インターテック試験サービス社(Intertek Testing Services:ITS)の支所の1つインターテック試験サービス環境実験室社(Intertek Testing Services Environmental Laboratories Inc.)
  • 該当集団名(英語):Intertek Testing Services Environmental Laboratories Inc.
  • 集団の概要:不正をしたテキサス州・リチャードソン(Richardson)のインターテック試験サービス環境実験室社は従業員が13人だった。その時、親会社のインターテック社(Intertek)は、既に世界的な大企業だった。2021年6月現在の企業のウェブサイトには、世界100か国以上、1,000か所の事業所、43,800人の社員がいる、とある
  • 事件の首謀者:従業員13人が起訴され、5人有罪、8人無罪。最高幹部は、マーティン・デール・ジェフス(Martin Dale Jeffus)(52歳)で、子会社のインターテック試験サービス社(Intertek Testing Services:ITS)の北米事業担当副社長だった。ジェフスは無罪になった。
  • 分野:環境化学物質の測定
  • 不正年:1994~1997年
  • 発覚年:1997年
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明。社内と思われる
  • ステップ2(メディア):多数の一般メディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ): ①米国の裁判所
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正数:59,000を超えるプロジェクトと250,000を超える個別のテスト(GCおよびGC / MS)
  • 被害(者):受注額が3570万ドル(約36億円)なのでその額+もろもろの費用。企業は健康被害なし、環境被害なしと発表したが、実際は不明
  • 国民の損害額:総額(推定)は約41億円(受注額にプラス5億円)
  • 結末:5人有罪、900万ドル(約9億円)の罰金。8人無罪

●2.【日本語の解説】

日本語の解説はない。

●3.【事件の経過と内容】

★業務

英国に本社のある多国籍企業・インターテック社は子会社・インターテック試験サービス社(Intertek Testing Services:ITS)を抱えていた。

その支所の1つが米国・テキサス州・リチャードソン(Richardson)のインターテック試験サービス環境実験室社(Intertek Testing Services Environmental Laboratories Inc.、ここでは、インターテック実験室と略す)で、従業員は13人だった。

インターテック実験室は、大気、液体、土壌の環境化学物質、神経ガス、発がん物質などの化学物質の測定を行なう試験企業で、請け負っていた測定数は膨大だった。

何千もの有害廃棄物サイトの浄化に伴って、浄化できたかを環境化学物質の測定で判定する。例えば、有害廃棄物サイトの大気、液体、土壌、そして、周辺の井戸水および地下水のモニタリングをしていた。また、地下貯蔵タンクの浄化、さまざまな農薬プログラムの環境物質の測定もしていた。

インターテック実験室が不正測定をしていた1994年1月~ 1997年12月の4年間の環境試験は、全米の59,000か所を超える環境汚染か所から送られてきた25万サンプルをガスクロマトグラフィー (GC:gas chromatography)やガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で測定していた。その測定値をねつ造・改ざんしたのである。

その期間のインターテック実験室の受注額は3570万ドル(約36億円)だった。最大の顧客は米国・陸軍工兵司令部(U.S. Army Corps of Engineers)で約200万ドル(約2億円)だった。米国の環境基準の監督庁である米国環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)も顧客だった。

つまり、連邦政府の環境モニタリング測定値はインターテック実験室が提供したものだったのだ。

13人の従業員で4年間に3570万ドル(約36億円)の仕事をしたということは、1人当たり1年に約7千万円の仕事をしていることになる。なかなか、スゴイ? そんなもん?

★発覚

1997年、経緯は不明だが、1994~1997年の環境試験データがねつ造・改ざんだったことがインターテック実験室の社内で発覚した。

1998年1月、環境保護庁(EPA)に報告した。

1998年、米国環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)の調査官はインターテック実験室の文書とコンピューターを没収した。

生データをさらに検討すると、機器のキャリブレーション(測定目盛り)を意図的に大幅に操作していたことが明らかになった。この操作は、通称ジューイング(“juicing”)とかシェービング(“shaving”)と呼ばれる意図的改ざん法である。

1998年、リチャードソンのインターテック実験室は閉鎖した。

インターテック社は、このネカトによる健康被害と環境被害はないと声明を発表した。

インターテック実験室が測定した全米の59,000か所を超える環境汚染か所は再度、測定しなおすことになった。測定時の請求額は3570万ドル(約36億円)だったので、再測定の費用はほぼ同額と思われる。

★裁判・処罰

2000年9月、検察は、インターテック実験室の13人の従業員が会社の時間とお金を節約するために測定結果を改ざんした、と起訴した。

13人は、北米事業担当副社長、実際に実験室で測定した測定従事者、事務員まで多岐にわたった。

最高幹部は、マーティン・デール・ジェフス(Martin Dale Jeffus、写真出典)(52歳)で、子会社のインターテック試験サービス社(Intertek Testing Services:ITS)の北米事業担当副社長だった。

起訴状のすべてで有罪になると、ジェフスの刑は最大155年の懲役と750万ドル(約7億5千万円)の罰金が科される可能性があった。

2001年10月、インターテック実験室の5人の従業員が、有罪の宣告を受けた。インターテック実験室は米国連邦政府に合計900万ドル(約9億円)の罰金を支払うことになった。白楽はこの5人の職位・氏名を掴めなかった。

一方、元副社長のマーティン・デール・ジェフス(Martin Dale Jeffus)を含めた他の8人の従業員の名前はウェブ上に記載されている。英語のママ、以下に並べた(姓のABC順)。

Chukwujekwun Anozie
Michelle Georgina Delgado-Brown
Gesheng Dai
Martin Dale Jeffus
Michael Lynn Ludwick
Dale Thomas McQueen
Sheila Ann Petty
William S. Wingert.

なお、ジェフス元副社長は、昨年・2020年7月5日、亡くなっている。享年72歳: Martin Dale “Marty” Jeffus (1948-2020)

被告側弁護士は、「インターテック実験室の不正行為は浄化事業の法律に違反していない。検察はデータねつ造・改ざんを裏付ける証拠を示していない」と主張した。

6日間に裁判で、被告側弁護士はたった1人しか証人を呼ばず、その証人に事件の些末なことについて約15分間証言させただけだった。

被告側弁護士のミック・ミケルソン(Mick Mickelson)は、「これは巨大な事件で、調査は困難である。この調査は政府にとって災難としか言いようがない」と述べた。

2001年11月21日、裁判所の陪審員は8人の被告を無罪とした。 → 2001年11月21日のトッド・ベンズマン(Todd Bensman)記者の「8 Acquitted In Lab Fraud Case」記事:Environmental Lab Fraud Case | Richardson, TX

https://tmcriminallaw.com/verdicts

検察チームを率いたジョン・ブラッドフォード連邦検事補(John Bradford)は、「判決に失望した。しかし、陪審員の決定である」と述べた。

環境保護庁の担当者は、「陪審員は事件の技術的な複雑さを理解していない。今後、全米の59,000か所を超える環境汚染か所だった所からサンプルを集め、再び測定し、過去のインターテック実験室が示したのと同じくらいクリーンであることを確認する作業が延々と続く。それには、膨大な費用がかかる。そしてその原資は税金です」と述べた。

【ねつ造・改ざんの具体例】

環境汚染箇所から送られて大気、液体、土壌の環境化学物質、神経ガス、発がん物質などの測定環境化学物質の測定データのねつ造・改ざんで、ガスクロマトグラフィー(GC:gas chromatography)やガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)のキャリブレーション(測定目盛り)を意図的に大幅に操作していた。

環境汚染箇所の場所、化学物質名、数値の改ざん程度などの情報を白楽は掴めていない。

●4.【白楽の感想】

《1》不明

企業が組織的に測定データのねつ造・改ざんを行なった事件である。

インターテック実験室には13人が働いていた。

  • 13人が一度にねつ造・改ざんを始めることはあり得ない。最初、どのような端緒で誰がねつ造・改ざんを始めたのか? その段階で止めるにはどういう仕組みや方策があるのか?
  • ネカトの切っ掛けは? 会社として多忙を極めていたためか、測定作業者にいいかげんな人を採用したためか、副社長の指示で組織的にネカトをするようになったのか?
  • 誰がどういう過程でネカトを見つけ、公表するまでの過程はどだったのか?

このような情報はウェブ上に見つからなかった。

インターテック事件は20世紀最大の企業ネカト事件と言われたが、政府・業界などはこの事件から何をどう学んだのか、白楽は、つかめなかった。

《2》類似事件

米国・テキサス州・リチャードソンにある子会社のインターテック試験サービス環境実験室社(Intertek Testing Services Environmental Laboratories Inc.)が、環境汚染箇所(写真は当事件のではない。クリエイティブ・コモンズ画像出典)から送られて大気、液体、土壌の環境化学物質、神経ガス、発がん物質などの測定を行なっていた。

その環境試験(environmental test)データの改ざん事件を解説した。

2000年、しかし、ニュージャージー州リンデンのインターテック社の子会社・米国カレブ・ブレット社(Intertek’s Caleb Brett USA Inc)でも、測定値のねつ造・改ざんをしていた。

米国カレブ・ブレット社は、改質ガソリン(RFG)の環境化学物質がガソリン環境基準に準拠しているように改ざんしていた。 2000年9月26日のピーター・ウォルドマン(Peter Waldman)記者の「WSJ」記事:Intertek Testing Unit, Three Managers Admit Conspiracy to Mislead EPA – WSJ

《3》日本の環境データ

日本の各所で放射性能や発がん化学物質を測定していると思う。

白楽も知人に依頼されて、白楽の住んでいる部屋の外の大気汚染サンプルを集め提供している。環境化学物質を測定しているらしい。

一般的に、そのような数値の正確さ・真正さはどのように担保されているのだろうか?

環境化学物質のデータ改ざんに直面している人の話を以前、この白楽ブログで書いた気がするのだが、思い出せない。もう一度、書いておこう。

白楽がお茶の水女子大学の現役教員だった頃、知人の紹介で、大学院修士に入学したいという若い女性が研究室に来た。

旧帝大の理学部を出て、某県の環境研究所の研究員になっていた若い女性である。そこを辞めて大学院に入学したいとの事だった。

大学院に入学し、修士号・博士号を取得しても、公立研究所の研究員になるのは簡単ではないよ。今の研究職を辞めるのはもったいない。なんなら社会人大学院生で入学したら、と話した。

しばらく、黙っていたが、意を決するかのように、話し始めた。

私の毎日の業務はその県の各所から送られてくる環境化学物質の測定です。その測定値のいくつかは、実は、県の環境基準を超えています。

上司にその測定値を報告すると、上司はいつも、この数値をそのまま報告すると、県は大騒動になるからと、数値を改ざんし、環境基準以下にしてしまうのです。

もう、何か月もこの状態が続いています。

私はもう耐えられません。

と泣き出してしまった。

結局、その女性は入学してこなかった。それ以降、その女性がどうなったのか、白楽は把握していない。

白楽がバイオ政治学を始める前の出来事だった。

その県が何県だったか憶えていない。今なら、もう少しまともに対応出来たと思うが。

もう、日本で、こういうデータ改ざんはしていない・・・・・・わけないですね。

日本政府から「廃棄した」と明言していた文書がでてくるし、官庁は決裁文書を改ざんする。「毎月勤労統計調査」という統計データも改ざんしていた。

原子力発電所の安全データは信用できないと多くの人は思っていますよね。

では、コロナ患者数・死者数、ワクチンの安全性・有効性データは信用できますか? 

コロナで政府が大盤振る舞いし、オリンピック利権で膨大な税金が流れる。で、緊急事態絡みの人流データ・経済データも操作されているんだろうなあ。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●5.【主要情報源】

① ウィキペディア日本語版:インターテック (認証企業) – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:Intertek – Wikipedia
③ 2000年9月22日のリチャード・オッペル・ジュニア(Richard A. Oppel Jr)記者の「NYTimes」記事:Environmental Tests ‘Falsified,’ U.S. Says – NYTimes.com
④ 2000年9月26日のピーター・ウォルドマン(Peter Waldman)記者の「WSJ」記事:Intertek Testing Unit, Three Managers Admit Conspiracy to Mislead EPA – WSJ
⑤ 2000年10月2日の「ICIS」記事:Intertek faces fraud charge | ICIS
⑥ 2001年10月5日の「米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)」プレスリリース:Intertek Testing Services Limited Form 6-K
⑦ 2001年10月8日の「Dallas Business Journal」記事:Intertek unit pleads guilty to federal conspiracy charge – Dallas Business Journal
⑧ 2001年頃(?)のロジャー・ノヴァク(Roger A. Novak)記者の記事:Regulations and You: The long arm of the lab laws、保存版https://archive.ph/wip/mWmEM
⑨ 2001年11月21日のトッド・ベンズマン(Todd Bensman)記者の「8 Acquitted In Lab Fraud Case」記事:Environmental Lab Fraud Case | Richardson, TX
⑩ 2001年11月22日の「AP」記事:Gov’t Lab Workers Acquitted of Fraud
⑪ 2004年7月20日のシドニー・フィッツウォーター(Sidney Fitzwater)地裁・裁判官の記事:MEMORANDUM OPINION AND ORDER
⑫ 環境汚染追及:Index of /CLW_DocsCLW3354.pdf
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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