2018年10月1日掲載
ワンポイント:2017年、江原(カンウォン)大学・教授のシン(60歳)の多数の論文に盗用・自己盗用・二重出版が見つかり、大学はシンを解雇した。トータル30論文が撤回され、2018年9月30日現在、「撤回論文数」世界ランキングの第16位である(The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch、(保存版))。国民の損害額(推定)は13億5,800万円。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
スンギ・シン(Soon-Gi Shin、男性、顔写真見つからない)は、1992年(35歳)に日本の東京大学で研究博士号(PhD)を取得した。その後、名古屋の民間研究所のファインセラミックスセンターで研究員を9年間務めたのち、韓国に帰国し、東亜大学(Dohg-A University)・教授、次いで、江原(カンウォン)大学・教授になった。専門は材料工学だった。
2017年(60歳)、発覚の経緯は不明だが、シンの多数の論文に盗用・自己盗用・二重出版が見つかり、大学はシンを解雇した。
2000‐2015年に発表したトータル30論文が撤回されたが、この撤回論文数は、2018年9月30日現在、「撤回論文数」世界ランキングの第16位である(The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch、(保存版))。
江原(カンウォン)大学(Kangwon National University)。写真出典
- 国:韓国
- 成長国:韓国
- 研究博士号(PhD)取得:東京大学
- 男女:男性
- 生年月日:1957年7月25日
- 現在の年齢:67歳
- 分野:材料工学
- 最初の不正論文発表:2000年(43歳)
- 発覚年:2017年(60歳)
- 発覚時地位:江原(カンウォン)大学・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
- ステップ2(メディア):
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①4つの学術誌・編集部。②江原(カンウォン)大学・調査委員会。
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:発表なし(✖)。
- 不正:盗用・自己盗用・二重出版
- 不正論文数:撤回論文数は30報
- 盗用ページ率:不明
- 盗用文字率:不明
- 時期:研究キャリアの中期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)。
- 処分:大学は解雇
- 日本人の弟子・友人: 松原秀彰(東北大学・教授)、清水正義、野村浩は共著論文がある
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は13億5,800万円。内訳 ↓
- ①研究者になるまで5千万円。
- ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費・施設費など)は年間4500万円。在職25年x4500万円=11億2500万円
- ③外部研究費。外部研究費の助成を受けた研究でネカトをした場合、その研究費が無駄になる。実際の受給額が判明しないので②に含めた。
- ④調査経費。第一次追及者の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円、学術出版局は学術誌あたり100万円とし、4学術誌なので400万円。小計で1,700万円
- ⑤裁判経費は2千万円。裁判はなかったので損害額は0円。
- ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。撤回論文は30報で、26報が単著で2,600万円、4報が共著で4,000万円、小計で損害額は6,600円。
- ⑦アカハラ・セクハラはなし。
- ⑧研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
- ⑨健康被害:なし
●2.【経歴と経過】
履歴:Soon-Gi Shin (born July 25, 1957), Korean educator, materials scientist | Prabook
- 1957年7月25日:韓国で生まれる
- 1984年(27歳):東亜大学(Dohg-A University)で学士号取得:金属工学
- 1992年(35歳):日本の東京大学(University Tokyo)で研究博士号(PhD)を取得:材料工学。指導教授?
- 1992 – 2000年(35 – 43歳):名古屋の民間研究所のファインセラミックスセンター(Japan Fine Ceramics Center)・研究員
- 2000 – 2005年(43 – 48歳):東亜大学(Dohg-A University)・教授
- 2005年(48歳):江原(カンウォン)大学(Kangwon National University)・教授
- 2017年(60歳):ネカトが発覚
- 2017年8月21日(60歳):江原(カンウォン)大学・解雇
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★論文撤回30報
2017年(60歳)、発覚の経緯は不明だが、最初に韓国の学術誌「Korean Journal of Metals and Materials (KJMM)」がシンの論文の盗用・自己盗用・二重出版に気が付いた。シンの論文9報を撤回した。
この多量の論文撤回が契機となって、韓国の学術誌「Korean Journal of Material Research」もシンの論文を調べた。盗用・自己盗用・二重出版を見つけ、14報を撤回した。
これらの論文撤回を知った研究者(詳細不明)が、さらに、シンの論文を出版しているシュプリンガー社(Springer)の学術誌にも通報した。
シュプリンガー社(Springer)の学術誌「Metals and Materials International」も同じ理由で、シンの論文を4報撤回し、同じシュプリンガー社(Springer)の学術誌「Electronics Materials Letters」も、シンの論文を3報撤回した。
これらをまとめると、4つの学術誌は、2000‐2015年にシンが発表したトータル30論文を撤回したのである。
盗用分析表は公表されていないので盗用の具体的なことは不明である。盗用率も不明である。ただ、二重出版もあるので、盗用率は高いと思われる。
トータル30論文の撤回は、2018年9月30日現在、「撤回論文数」世界ランキングの第16位である(The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch、(保存版))
なお、スンギ・シン(Soon-Gi Shin)の30撤回論文の内26報は単著である。
→ Retraction Watch Database
2017年(60歳)、盗用・自己盗用・二重出版が多数見つかたことで、江原(カンウォン)大学はシンを解雇した。
★博士号
スンギ・シン(Soon-Gi Shin)の経歴を見ると、1992年(35歳)、日本の東京大学(University Tokyo)で研究博士号(PhD)を取得したとある。
念のために調べた。すると、驚いたことに、日本の博士号取得者データベースでヒットしない。
→ CiNii Dissertations 検索 – Soon-Gi Shin
東京大学の「学位論文データベース」でもヒットしない。
どこも報道していないが、スンギ・シン(Soon-Gi Shin)が東京大学で博士号を取得したと経歴で述べているのは、虚偽のようだ。
●6.【論文数と撤回論文】
撤回論文は5章に記載したので、6章は省略する。
●7.【白楽の感想】
《1》詳細は不明
この事件の詳細は不明である。
ネカト防止策は、この事件からは学べない。
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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい。正直者が得する社会に!
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●8.【主要情報源】
① 2018年3月13日、ビクトリア・スターン(Victoria Stern)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Journals retract 30 papers by engineer in South Korea – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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