アンドレゼ・ジェンドリッチコ(Andrzej Jendryczko)(ポーランド)

2018年8月19日掲載。

ワンポイント:21年前の1997年(67歳?)、多量(50-100論文以上)の盗用論文が発覚したシレジア医科大学・教授である。論文撤回以外に処分はされなかった。英語論文をポーランド語に訳し、自分を著者とする翻訳盗用で、盗用文字率は約90%である(推定)。50-100論文以上が盗用とされたが、2018年8月18日現在、パブメド検索で19論文が撤回されている。「撤回論文数」世界ランキングの第30位である(The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch(保存版))。国民の損害額(推定)は3億400万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

アンドレゼ・ジェンドリッチコ(Andrzej Jendryczko、写真出典)は、ポーランドのシレジア医科大学(Medical University of Silesia)・教授で医師ではない。専門は生化学だった。

1990年代半ばから後半にかけて、ジェンドリッチコの論文盗用が発覚した。13年間に発表した125論文のうち50-100論文以上が盗用とされた。英語論文をポーランド語に訳し、自分を著者とする翻訳盗用で、各盗用論文の盗用文字率は約90%である(推定)。

盗用発覚時にはシレジア医科大学を退職し、チェンストホヴァ工科大学(Częstochowa University of Technology、ポーランド語:Politechnika Częstochowska, PCz)・教授・副学長に移籍していた。

2018年8月18日現在、パブメドで検索すると、1985年-1996年の12年間の19論文が1997年-2000年に撤回されていた。19論文の撤回は、「撤回論文数」世界ランキングの第30位である(The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch(保存版))。

シレジア医科大学(Medical University of Silesia)。写真出典By Polar123Own work, CC BY-SA 3.0 pl, Link

  • 国:ポーランド
  • 成長国:ポーランド?
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:xx大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1930年1月1日生まれとする。
  • 現在の年齢:88 歳?
  • 分野:生化学
  • 最初の不正論文発表:1985年(50歳)
  • 発覚年:1997年(67歳?)
  • 発覚時地位:チェンストホヴァ工科大学・教授・副学長
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は米国のスタッテンアイランド大学病院(Staten Island University Hospital)の神経腫瘍学部長・マレク・ウロンスキー(Marek Wronsk)で、論文に発表した
  • ステップ2(メディア):
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①シレジア医科大学・調査委員会。②学術誌・編集部
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
  • 不正:盗用
  • 不正論文数:50-100論文以上が盗用とされた。パブメド検索で19論文が撤回
  • 盗用ページ率:約100%(推定)
  • 盗用文字率:約90%(推定)
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 処分: なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億400万円。内訳 ↓

  • ①研究者になるまで5千万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
  • ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費・施設費など)は年間4500万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
  • ③外部研究費。外部研究費の助成を受けた研究でねつ造・改ざんした場合、その研究費が無駄になる。盗用だと実害は少ない。受給額が判明しないこともあり、0円とする。
  • ④調査経費。第一次追及の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円。学術出版局は1件100万円とした。小計で1,400万円
  • ⑤裁判経費は2千万円。裁判はなかったので損害額は0円。
  • ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。撤回論文は共著が19報なので損害額は1億9,000万円。
  • ⑦研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
  • ⑧健康被害:盗用だし、不明なので損害額は0円とした。

●2.【経歴と経過】

ほとんど不明

  • 生年月日:不明。仮に1930年1月1日生まれとする。
  • 19xx年(xx歳): xx大学で学士号取得
  • 19xx年(xx歳): xx大学で研究博士号(PhD)を取得
  • 19xx年(xx歳):ポーランドのシレジア医科大学(Medical University of Silesia)・教授
  • 19xx年(xx歳):ポーランドのチェンストホヴァ工科大学(Częstochowa University of Technology、ポーランド語:Politechnika Częstochowska, PCz)・教授・副学長
  • 1997年(67歳?):盗用が発覚
  • 1998年3月(68歳?):チェンストホヴァ工科大学・辞職

●5.【不正発覚の経緯と内容】

1990年代半ばから後半にかけて、シレジア医科大学の研究者・アンドレゼ・ジェンドリッチコ(Andrzej Jendryczko)が13年間も論文盗用していたことが発覚した。

盗用論文のトピックは、ミトコンドリアDNAおよび老化、エストロゲンおよび心筋梗塞、新生児の成長、癌組織中の亜鉛と銅、コレステロールと高血圧、胎盤における抗酸化酵素、癌への細胞内反応、更年期、セレンの影響、電離放射線の影響など多岐に渡っていた。

基本的は盗用方法は、英語の論文をポーランド語に訳して、自分の名前を著者にしてポーランド語の学術誌に発表した翻訳盗用である。各盗用論文の盗用文字率は約90%である(推定)。ポーランド語の学術誌なので、ポーランド以外の人は読まないのでなかなか発覚しなかった。

米国のスタッテンアイランド大学病院(Staten Island University Hospital)の神経腫瘍学部長のマレク・ウロンスキー(Marek Wronski, 写真)がジェンドリッチコの盗用を調査し、1998年の論文に発表した【主要情報源②】。

ポーランドの高等教育の不祥事は3年間で時効となる法律があり、ジェンドリッチコは正式な懲戒処分がされなかった。また、発覚時にはシレジア医科大学を退職し、チェンストホヴァ工科大学(Częstochowa University of Technology)・教授・副学長に移籍していた。さらに、病気で休職中だったため、シレジア医科大学は処分できなかった。ジェンドリッチコは、その後、チェンストホヴァ工科大学を辞任した。

★「1992年のPrzegl Lek」論文

デンマークの研究者・ヤン・フォリングボルグ(Jan Fallingborg)は潰瘍性大腸炎患者のセレン濃度についての自分の論文(以下)がジェンドリッチコに盗用されたことを見つけた。ジェンドリッチコは1989年のフォリングボルグの論文をポーランド語に翻訳し、自分を著者にして、原典に何も触れず、ポーランド語の医学雑誌「Przeglad Lekarski」に掲載した。

被盗用論文

盗用論文

★「1991年のZentralblatt fur Gynakologie」論文

ドイツ語の学術誌「Zentralblatt fur Gynakologie」に掲載された1991年のジェンドリッチコの論文は、「1979年のJournal of Maxillofacial Surgery」の翻訳盗用だった。

被盗用論文は喉頭がんの論文だが、盗用論文でジェンドリッチコは、「喉頭」を「子宮頸部」に変え、患者の年齢、性別、患者数などを整合性のあるように変えた。

★「1993年のZentralblatt fur Gynakologie」論文

他人の「1989年のBritish Medical Journal」論文と他人の「1992年のNew England Journal of Medicine」論文を合わせ、自分の「1993年のZentralblatt fur Gynakologie」論文として出版した。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年8月18日現在、パブメド(PubMed)で、アンドレゼ・ジェンドリッチコ(Andrzej Jendryczko)の論文を「Andrzej Jendryczko [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、0論文がヒットした。

「Jendryczko A[Author]」で検索すると、1982~1998年の17年間の126論文がヒットした。

2018年8月18日現在、「Jendryczko A[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、1985年-1996年の12年間の19論文が1997年-2000年に撤回されていた。

最新の撤回論文は「1996年のGinekol Pol.」論文で、1998年に撤回された。

最古の撤回論文は「1985年のGinekol Pol.」論文で、1998年に撤回された。

★パブピア(PubPeer)

省略

●7.【白楽の感想】

《1》詳細は不明

この事件の詳細は不明です。

ジェンドリッチコ事件はパブメド検索で19論文が撤回されたが、13年間に発表した125論文のうち50-100論文以上が盗用とされた。

盗用の規模が大きい。

1998年当時は大きな事件だったようだ。ただ、インターネットは今ほど発達していなかったので、ネット上の情報は少ない。

事件から20年も経過しているので当時の資料は簡単には見つからない。それに、ポーランドの事件なので、英語の記事は少ない。ポーランド語の記事が多くても、白楽は見落としている公算が大きい。

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●8.【主要情報源】

① xxxx年の「Famous Plagiarists.com」記事:Famous Plagiarists.com © WarOnPlagiarism.org– Science and Medicine Profiles(保存版)
② 1998年のマレク・ウロンスキー(Marek Wronski,)の論文(ポーランド語):Przegl Lek. 1998;55(11):629-33.:[Plagiarism in publications by Dr. Andrzej Jendryczko]. – PubMed – NCBI
③ 1998年のZibigniew Zawadzki&Kamran Abbasiの論文(閲覧有料で白楽未読):BMJ 1998;316:645 :Polish plagiarism scandal unearthed | The BMJ
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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