2019年12月26日掲載
ワンポイント:エーラーは、デンマークのスター研究者(女性)で、コペンハーゲン大学(University of Copenhagen)・教授。そのエーラーが、13年前、米国のスタンフォード大学(Stanford University)・ポスドクだった時に出版した「2006年のNature」論文の画像がネカトではないかと、2018年3月(40歳?)に指摘された。この論文の成果を根拠にしたがん転移防止の臨床研究は失敗している。ただ、疑惑が多いままで、公式にはネカトと認定されてはいない。撤回論文もない。国民の損害額(推定)は250億円(大雑把)。
【追記】
・2020年3月23日記事:「2006年のNature」論文は2020年3月18日に撤回された:Nature paper on cancer retracted after years of scrutiny – Retraction Watch
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ジェイニーン・エーラー(Janine Erler、Janine Terra Erler 、ジャニーン・エルラー、ORCID iD:0000-0001-8675-6527、写真出典)は、デンマークのコペンハーゲン大学・バイオテクノロジー研究イノベーションセンター(Biotech Research and Innovation Centre (BRIC), University of Copenhagen)・教授で医師ではない。専門はがん転移の分子生物学で、デンマークのがん研究のスターである。
13年前、米国のスタンフォード大学(Stanford University)・ポスドクだった時に出版した「2006年のNature」論文の画像がネカトではないかと、2018年3月(40歳?)に指摘された。
この論文の成果を根拠にしたがん転移防止の臨床研究は失敗している。
2019年12月25日現在、エーラーをネカト者とした調査結果は発表されていない。当然、何も処分されていない。
- 国:デンマーク
- 成長国:英国
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:英国のマンチェスター大学
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に1978年1月1日生まれとする。1996年に大学に入学した時を18歳とした
- 現在の年齢:46 歳?
- 分野:がん
- 最初の不正論文発表:2004年(26歳?)
- 不正論文発表:2004-2013年(26-35歳?)
- 発覚年:2015年(37歳?)
- 発覚時地位:コペンハーゲン大学・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)が「パブピア(PubPeer)」で指摘
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①スタンフォード大学は調査を断念。②研究公正局?
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:調査なし(✖)
- 不正:ねつ造・改ざん
- 時期:研究キャリアの初期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:処分なし
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は250億円(大雑把)。ギリアド・サイエンシズ社が2億2,500万ドル(約225億円)で購入したシムツズマブ事業が失敗に終わった。その額に約1割足した。
●2.【経歴と経過】
出典:Janine Erler – Curriculum vitae – Erler Group
- 生年月日:不明。仮に1978年1月1日生まれとする。1996年に大学に入学した時を18歳とした。また、「Red’s Hot Women 2010」受賞の2011年2月12日の記事で32歳と紹介されている(Winners 2010)。
- 1996-2000年(18-22歳?):英国のサセックス大学・生物科学部(University of Sussex, School of Biological Sciences)で学士号取得:分子遺伝学
- 2000-2003年(22-25歳?):英国のマンチェスター大学・生物科学部(University of Manchester, School of Biological Sciences)で研究博士号(PhD)を取得:分子薬理学。「薬物誘発アポトーシスに対する腫瘍低酸素の影響(The impact of tumour hypoxia on drug-induced apoptosis)」
- 2004-2008年(26-30歳?):米国のスタンフォード大学(Stanford University)・ポスドク
- 2008-2012年(30-34歳?):英国癌研究所(Institute of Cancer Research)・チームリーダー
- 2010年(32歳?):英国の「2010年セクシーな女性賞(Red’s Hot Women 2010)」を受賞
- 2012年(34歳?):デンマークのコペンハーゲン大学・バイオテクノロジー研究イノベーションセンター(Biotech Research and Innovation Centre (BRIC), University of Copenhagen)・準教授
- 2016年10月01日(38歳?):同・教授
- 2016年(38歳?):ルーン・リンディング(Rune Linding)と離婚
- 2018年3月(40歳?):13年前の「2006年のNature」論文の画像がネカトではないかと指摘された
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
AB SCIEX社の宣伝動画:「Dr. Janine Erler Explains How AB SCIEX Service and Support Helps Her – YouTube」(英語)49秒。
SCIEXが2012/09/17に公開
【動画2】
「ジェイニーン・エーラー」と自己紹介。
2016年5月22日記事:Nyheder – Kræftens Bekæmpelse
同じ動画:Cancer – Web-TV Mobil Juniorforskerpris 2016 Janine T. Erler
●4.【日本語の解説】
以下は事件の解説ではない。
★2011年02月25日:医師の一分:「LOXL2 を阻害することで乳ガンの転移を予防」
酵素LOXL2 を阻害することで乳ガンの転移を予防できるという。
LOXL2はガンの転移の初期に重要な役割を果たし、胸部のガン組織から血流に入るのを手助けしている。マウスでの研究ではLOXL2活性を阻害するために化学薬品と抗体を使用した。
★特許申請
2007年1月25日出願:2009-536925号 腫瘍転移のインビボでの処置又は防止のための方法及び組成物 – astamuse
●5.【不正発覚の経緯と内容】
ジェイニーン・エーラー(Janine Erler)は、同じ分野の研究者であるルーン・リンディング(Rune Linding、写真出典)と結婚し、2016年(38歳?)に離婚している。いつ結婚したのかわからないが、リンディングがエーラー事件の事情を知っていて、「撤回監視(Retraction Watch)」に情報を流している。
★論文、特許、臨床研究
2004-2008年(26-30歳?)、ジェイニーン・エーラー(Janine Erler)は米国のスタンフォード大学(Stanford University)のポスドクだった。
その時、後に問題視される以下の「2006年のNature」論文を発表した。
- Erler JT, Bennewith KL, Nicolau M, Dornhöfer N, Kong C, Le QT, Chi JT, Jeffrey SS, Giaccia AJ.
Lysyl oxidase is essential for hypoxia-induced metastasis.
Nature. 2006 Apr 27;440(7088):1222-6. doi: 10.1038/nature04695. PMID: 16642001.
この論文は、癌細胞が移動し転移するために必要な酵素、フォーカル・アドヒージョン・キナーゼ(FAK:focal adhesion kinase)の活性にリシルオキシダーゼ(LOX:lysyl oxidase)という酵素が影響しているという発見だった。つまり、リシルオキシダーゼの活性が弱くなると、フォーカル・アドヒージョン・キナーゼのリン酸化が減り、不活性になる。だから、リシルオキシダーゼの活性を人為的に弱めると、癌細胞が移動できず、転移できなくなる。
それで、リシルオキシダーゼの活性を人為的に阻害することでがん転移を防げると考え、阻害抗体のシムツズマブ(simtuzumab)を作成した。このエレガントなメカニズムで、何百万人もの命を救うことができるという夢が描かれた。
[白楽の感想。リシルオキシダーゼは細胞内にある酵素だから、阻害抗体のシムツズマブを生体に投与しても、細胞内に到達しないので、効かないと思う]。
「2006年のNature」論文は大きな関心を呼び、400回以上引用された。
論文出版の翌2007年、エーラーはアレスト・バイオサイエンス社(Arresto Biosciences)を共同設立し、リシルオキシダーゼ阻害抗体のシムツズマブ(simtuzumab)の販売準備を整えた。
2008年8月1日(30歳?)、米国特許も申請した。後述するギリアド・バイロジックス社(Gilead Biologics Inc)が申請した(白楽、この時期、どうしてこの会社が出てくるのか、理由はわからないが、どうやら、エーラーの設立したアレスト・バイオサイエンス社は、この時、ギリアド・サイエンシズ社に買収されていたらしい)。
→ US8461303B2 – LOX and LOXL2 inhibitors and uses thereof – Google Patents
2008年(30歳?)、エーラーは米国のスタンフォード大学・ポスドクから英国の癌研究所(Institute of Cancer Research)のチームリーダーに移籍した。
2010年6月(32歳?)、32人の患者を対象にシムツズマブのフェーズ1臨床試験が米国で開始された。
一方、2010年(32歳?)、シムツズマブ事業は米国の大手製薬会社であるギリアド・サイエンシズ社(Gilead Sciences, Inc.)に2億2,500万ドル(約225億円)で売却された。 → 2012年10月8日記事:How Dr Janine Erler changed the face of cancer research – Telegraph、(保存版)
2010年12月(?)(32歳?)、エーラーはがん転移予防で素晴らしい研究成果をあげ、ベンチャーを起業し、英国で目立つ若い女性だった。それで有名人となり(背が高くて魅力的な女性という面もあるらしい)、英国の「2010年セクシーな女性賞(Red’s Hot Women 2010)」を受賞した。 → Winners 2010(含・写真出典)
さらに、2012年(34歳?)、英国の癌研究所からデンマークのコペンハーゲン大学・バイオテクノロジー研究イノベーションセンター(Biotech Research and Innovation Centre (BRIC), University of Copenhagen)・準教授に移籍した。
シムツズマブのフェーズ1臨床試験は1年9か月後の2012年3月に完了したが、残念なことに、エーラーはどういうわけか、臨床試験結果を論文に発表していない。
しかし、シムツズマブがリシルオキシダーゼを阻害したことで、いくつかの固形腫瘍の大きさが減少したと想定されていた。それで、フェーズ1試験が完了する前の2011年11月に、転移性膵臓腺癌(Metastatic Pancreatic Adenocarcinoma)の患者250人に対するフェーズ2臨床試験が開始され、2015年2月に終了した。
また、大腸腺がん(Colorectal Adenocarcinoma)の患者266人を対象にしたフェーズ2臨床試験も2011年11月に開始し、2015年2月に終了した。
さらに、肝硬変(Compensated Cirrhosis Secondary to Non-Alcoholic Steatohepatitis)の患者259人を対象にしたフェーズ2臨床試験が2012年10月29日に開始しされ、2017年1月3日に終了した。
その上、特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis)の患者544人を対象にしたフェーズ2臨床試験も2013年1月31日に開始し、2016年2月23日に終了した。
この間、2015年6月2日(37歳?)、パブピア(PubPeer)は「2006年のNature」論文の数値や画像の一部が加工されていると指摘した。 → PubPeer – Lysyl oxidase is essential for hypoxia-induced metastasis
翌日の2015年6月3日(37歳?)、ツイッターが「転移を抑える酵素を発見」とツイートされている(以下)。
Enzyme discovery could stop spread of breast cancer: #UCPH scientist Janine Erler: http://t.co/f5UR1XYJ35 pic.twitter.com/GfPIOXYBrU
— Mike Young Academy (@MkeYoungAcademy) 2015年6月3日
そして、3年4か月をかけ2015年2月に終了した上記のフェーズ2臨床試験の結果、シムツズマブは転移性膵臓腺癌の治療に全く効果がなかったのである。(論文は以下のBenson et al 2017)
→ 「2017年3月のOncologist」論文:Oncologist. 2017 Mar; 22(3): 241–e15.:A Phase II Randomized, Double‐Blind, Placebo‐Controlled Study of Simtuzumab or Placebo in Combination with Gemcitabine for the First‐Line Treatment of Pancreatic Adenocarcinoma
他の癌に対するフェーズ2臨床試験の結果も有効性に否定的だった。
2016年11月(38歳?)、ギリアド・サイエンシズ社は、シムツズマブの製品化を断念した。 → Licensed product candidate update – RNS – London Stock Exchange
もともとは「2006年のNature」論文に基づいたシムツズマブの開発だった。もちろん、ネイチャー論文だからといって、何百万ドル(数億円)もかけた臨床研究が無駄になるのは初めてではない。
★発覚の経緯
2012年(34歳?)に、デンマークのコペンハーゲン大学・バイオテクノロジー研究イノベーションセンター(Biotech Research and Innovation Centre (BRIC), University of Copenhagen)で研究室を構えたジェイニーン・エーラー(Janine Erler)は、2016年(38歳?)、欧州のエリート資金提供機関である欧州研究評議会(ERC)から、5年間で200万ユーロ(約2億4千万円)の研究費を獲得した。
エーラーは成功した実業家であり、大成功した科学者としてだけでなく、がんの治癒に最も貢献した人として富と名声を得るところだった。
ところが、ここで、いやらしいネカトハンターが彼女の論文に再使用したゲルバンドを発見するのである。
再記するが、2015年6月2日(37歳?)、パブピア(PubPeer)が「2006年のNature」論文の数値や画像の一部が加工されていると指摘したのである。 → PubPeer – Lysyl oxidase is essential for hypoxia-induced metastasis
また、2018年3月(40歳?)、ドイツのベルリン・フンボルト大学(Humboldt-Universität zu Berlin)でネカト調査する組織・「ヘッド・センター(HEADT Centre: Humboldt-Elsevier Advanced Data and Text Centre)」が、「2006年のNature」論文の画像のネカトを指摘した。 → ヘッド・センター報告書(以下は表紙):https://retractionwatch.com/wp-content/uploads/2018/03/March2018_Erler_Report.pdf
ヘッド・センター報告書は、図4Cの画像の一部が再使用されていることを指摘し、「2006年のNature」論文の綿密な調査を強く要望すると提言した。
ネカトハンターのレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)も、エーラーの13年前の「2006年のNature」論文の画像がネカトだとコペンハーゲン大学と欧州研究評議会(ERC)に告発した。しかし、エーラーにとっては幸いなことに、コペンハーゲン大学と欧州研究評議会(ERC)は、シュナイダーの告発を無視したのである。
そして、2019年6月30日(41歳?)、スタンフォード大学の研究法令順守部長(Research Compliance Director)のキャシー・マクレランド(Kathy McClelland、写真出典)は、エーラーのネカト調査をしないと、エーラーの元夫ルーン・リンディング(Rune Linding)にメールした。メールの要点を以下に示そう。
「この時点で、スタンフォード大学は次の事実により、再度、問題を終結したと結論しました。
–論文は13年前に発表された。
–元データを入手できない。
–提供された情報にアクセスできず、出所が不確実である。
–法令上、データ保持期間およびネカト行為に対して時効になった。
–論文の主要な結果の正しさが、他の論文で複数回再現され検証されている。
これらの状況のもとに、大学は、さらにネカト調査の妥当性・必要性はないと判断しました。従って、問題を終結させます。
なお、2017~2018年頃だと思うが、エーラーの元夫リンディングは研究公正局にエーラーのネカトを調査するよう通報している。ただし、その後、研究公正局が調査を開始したのかどうか、白楽は、わからない。
●【ねつ造・改ざん疑惑の具体例】
★「2006年のNature」論文
本記事で問題にしてきた「2006年のNature」論文である。2019年12月25日現在、撤回されていない。
書誌情報を以下に示す。エーラーが米国のスタンフォード大学(Stanford University)のポスドクだった時の研究である。
- Erler JT, Bennewith KL, Nicolau M, Dornhöfer N, Kong C, Le QT, Chi JT, Jeffrey SS, Giaccia AJ.
Lysyl oxidase is essential for hypoxia-induced metastasis.
Nature. 2006 Apr 27;440(7088):1222-6. doi: 10.1038/nature04695. PMID: 16642001.
図4Cの電気泳動画像では、再使用が明瞭である。
以下の画像の出典:2018年8月13日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ:Janine Erler dossiers which ERC does not want – For Better Science。また、同じ画像は問題画像をまとめたファイルにもある。 → https://drive.google.com/file/d/1RqPH0VTK-NjUg5Jjyw63OS-e6iSrfsR1/view
★「2004年のMol Cell Biol」論文
「2004年のMol Cell Biol」論文の書誌情報を以下に示す。2019年12月25日現在、撤回されていない。
エーラーが英国のマンチェスター大学・院生の時の論文である。
- Hypoxia-Mediated Down-Regulation of Bid and Bax in Tumors Occurs via Hypoxia-Inducible Factor 1-Dependent and -Independent Mechanisms and Contributes to Drug Resistance
Janine T. Erler, Christopher J. Cawthorne, Kaye J. Williams, Marianne Koritzinsky, Bradley G. Wouters, Clare Wilson, Crispin Miller, Costas Demonacos, Ian J. Stratford, Caroline Dive
DOI: 10.1128/MCB.24.7.2875-2889.2004
Mol Cell Biol Published online March 15, 2004.
電気泳動の画像の切り貼りが明瞭である。一枚のゲルで泳動していないのに、貼り合わせて一枚のゲルで泳動したかのように表示している。
以下の画像の出典:2018年8月13日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ:Janine Erler dossiers which ERC does not want – For Better Science。また、同じ画像は問題画像をまとめたファイルにもある。 → https://drive.google.com/file/d/1RqPH0VTK-NjUg5Jjyw63OS-e6iSrfsR1/view
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2019年12月25日現在、パブメド(PubMed)で、ジェイニーン・エーラー(Janine Erler)の論文を「Janine Erler [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2004~2019年の16年間の74論文がヒットした。
「Erler JT [Author]」で検索すると、2001~2019年の19年間の74論文がヒットした。
2019年12月25日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
2019年12月25日現在、「Corrected and Republished Article」のフィルターでパブメドの論文訂正リストを検索すると、0論文が訂正されていた。
★撤回論文データベース
2019年12月25日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでジェイニーン・エーラー(Janine Erler)を「Erler, Janine T」で検索すると、3論文がヒットし、0論文が撤回されていた。Retraction Watch Databaseの上右「Nature of Notice」の右にチェックを入れ、「Retraction」にすると、撤回論文(数)が表示される。
★パブピア(PubPeer)
2019年12月25日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ジェイニーン・エーラー(Janine Erler)の論文のコメントを「Janine Erler」で検索すると10論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》ネカト論文のコスト
ネカト論文の成果に基づいてシムツズマブの特許を取得し、臨床試験をした。当然ながら、開発した医薬品の効果は臨床試験で否定され、2016年11月、ギリアド・サイエンシズ社は、製品化を断念した。
正確な損失額は不明だが、ギリアド・サイエンシズ社はシムツズマブ事業を2億2,500万ドル(約225億円)で購入しているので、少なくとも約225億円の損害を被っている。
ヒドイもんである。
しかし、ジェイニーン・エーラー(Janine Erler)にペナルティは科されていない。コペンハーゲン大学・教授として、今も、研究は注目を集めている。以下に示すように研究室員も多い(写真出典)。なんかおかしくないか?
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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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●9.【主要情報源】
① 2018年8月13日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ:Janine Erler dossiers which ERC does not want – For Better Science
② 2018年3月22日のアリソン・マクック(Alison McCook)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Figures in cancer paper at root of newly failed compound called into question – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
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