ジェーン・グドール(Jane Goodall)(英)

2017年2月14日掲載。

ワンポイント:1960-80年代のチンパンジーの研究で有名になった若い白人女性の霊長類学者で、2002年から国連平和大使を務める超有名人。2013年、78歳の時に出版しようとした著書に盗用が発覚した。本人も認めている。「全期間ランキング」の3つでランキング入りした。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.盗用解析
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

ジェーン・グドール(Jane Goodall、写真出典)は、英国の霊長類学者で、1977年にジェーン・グドール研究所(JGI:Jane Goodall Institute)を設立し、「スタンフォード大学客員教授(1971年 – 1975年)、ダルエスサラーム大学名誉客員教授(1973年 – )、タフツ大学招聘教授(1987年 – 1988年)、クリーブランド自然史博物館研究員(1990年)、南カリフォルニア大学特別招聘教授(1990年)、コーネル大学アンドルー・A・ホワイト講座教授(1996年 – 2002年)などの要職を歴任した。2002年から国連平和大使を務める。2003年にエリザベス2世より霊長類学研究に対し大英帝国勲章を授与され“デーム”の称号を得る。」(ジェーン・グドール – Wikipedia)。

ジェーン・グドールは間違いなく、史上もっとも有名な自然保護活動家であり、また現在地球上でもっとも有名かつ尊敬を集める女性科学者だ」。(2015 年4月8日のRhett A. Butlerの記事 ジェーン・グドール:地球の未来に希望を抱く5つの理由 – 環境ニュース保存版))

2013年(78歳)、出版直前の著書に盗用が発覚した。本人は盗用を認めている。

グドールの研究や活動を賞賛する日本語記事はたくさんあるが、不思議なことに、盗用を伝える日本語記事は1つもない。

グドール事件は、「全期間ランキング」の3つでランキング入りしている。①Insider Monkeyの「全期間の盗用11大スキャンダル」:2016年8月22日の第2位である。②Toptenz.netの「有名人の10大盗用」:2016年1月28日の第7位である。③「有名人の正気でない見え透いた5大盗用」:2014年2月18日の第5位である。

ジェーン・グドール研究所(JGI:Jane Goodall Institute)のロゴ。写真出典

  • 国:英国
  • 成長国:英国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ケンブリッジ大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:1934年4月3日
  • 現在の年齢:83 歳
  • 分野:霊長類学
  • 最初の不正論文発表:2013年(78歳)
  • 発覚年:2013年(78歳)
  • 発覚時地位:ジェーン・グドール研究所・所長。国連平和大使
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は「Washington Post」紙記者なのか、別の第一次追及者が「Washington Post」紙に通報したのか不明
  • ステップ2(メディア):「Washington Post」など多数
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):なし
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。大学に所属していないので
  • 不正:盗用
  • 不正論文数:1冊の著書の一部
  • 時期:研究キャリアの後期から
  • 研究費:
  • 結末:国連平和大使の辞職なし
This chimpanzee trusted Jane Goodall enough to allow her to groom him. (Photo by Hugo van Lawick, National Geographic Society)

●2.【経歴と経過】

  • 1934年4月3日:英国のロンドンで生まれる
  • 1952年(18歳):ロンドンの高等学校・アップランズ・プライベートスクール卒業
  • 1962年(28歳):ケンブリッジ大学入学
  • 1964年3月28日(30歳):1回目の結婚。夫は、H.バン・ラービック男爵。1974 年に離婚
  • 1966年(32歳):ケンブリッジ大学で研究博士号(PhD)を取得。動物行動学、指導教授はロバート・ハインド(Robert Hinde)
  • 1967年:ゴンベ・ストリーム研究センター所長(Gombe Stream National Park)
  • 1973年(39歳):ダルエスサラーム大学動物学客員教授
  • 1977年(43歳):ジェーン・グドール研究所(JGI:Jane Goodall Institute)

★ウィキペディア日本語版から「経歴」を引用する

出典 → ジェーン・グドール – Wikipedia

人類学の世界的権威であるルイス・リーキー博士と出会い、リーキーの下で働けるよう志願する。リーキーは霊長類学研究、特にチンパンジーの研究に興味を抱いており、グドールを秘書として採用した。

リーキーの薦めでタンザニアのゴンベのジャングルでチンパンジーの研究を始める。 リーキーとグドールは世界で初めてチンパンジーが草の茎を使いアリを捕る行動を報告し、人類固有とされてきた道具を使う能力がチンパンジーにも存在することを証明した。また、草食動物であると考えられていたチンパンジーが雑食であること、チンパンジーの性格に個体差があることを証明し、目覚しい研究成果を上げた。

スタンフォード大学客員教授(1971年 – 1975年)、ダルエスサラーム大学名誉客員教授(1973年 – )、タフツ大学招聘教授(1987年 – 1988年)、クリーブランド自然史博物館研究員(1990年)、南カリフォルニア大学特別招聘教授(1990年)、コーネル大学アンドルー・A・ホワイト講座教授(1996年 – 2002年)などの要職を歴任。

1977年に野生動物研究・教育・保護団体「ジェーン・グドール研究所(JGI)」を設立。

2002年から国連平和大使を務める。2003年にエリザベス2世より霊長類学研究に対し大英帝国勲章を授与され“デーム”の称号を得る。

2007年京都大学から名誉博士号を授与される。現在、執筆の傍ら、世界中を巡り、講演や教育活動を行っている。

Image #: 85306 Scientist Jane Goodall is photographed during production of the CBS/National Georgraphic special “Miss Goodall and the Wild Chimpanzees” in October 1965. CBS/Landov

●3.【動画】

【動画1】
「助けたチンパンジーにハグされるグドール(Jane Goodall Is Hugged By Rescued Chimp.Touching!)」(英語)1分12秒。
Warrior1が2014/02/13 に公開に公開

【動画2】
ナショナルジオグラフィック(National Geographic):「グドール:回顧(Jane Goodall: A Retrospective)」(英語)5分45秒。
http://video.nationalgeographic.com/video/jane-goodall-retrospective

●4.【日本語の解説】

ジェーン・グドール(Jane Goodall)の研究や活動を賞賛する日本語記事はたくさんある。1990年に第6回京都賞を受賞していて、2007年京都大学から名誉博士号を授与され、日本の受けがいい。

しかし、おかしなことに、ジェーン・グドールの盗用を伝える日本語はない。

★1990年、京都賞を受賞:野生チンパンジーの長期調査による行動及び社会、生態の解明

出典 → ジェーン・グドール | 第6回(1990年)受賞者 | 京都賞

タンガニーカ湖北東岸のゴンベ国立公園で、30年間に及ぶ野生チンパンジーの調査により、その行動・社会・生態の詳細を明らかにした。人類のみに固有と考えられてきた行動や能力が、チンパンジーの社会にも見出しうることを実証し、従来の人間観に大きな衝撃を与え、人類進化に関する理論を一変させたばかりでなく、行動科学領域の理論構築にも影響を及ぼした。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

2013年3月19日、「Washington Post」紙は、ゲイル・ハドソン(Gail Hudson)と共同執筆のグドールの新刊本『Seeds of Hope』(Aamazon、表紙写真同)に盗用箇所が見つかったと報道した。有機茶、たばこ、素人の占星術サイト、ウィキペディアから引用なしで文章を流用したのである。

2013年3月22日、アシェット書籍グループは、新刊本『Seeds of Hope』に盗用箇所が見つかったので、4月2日の出版を見合わせると発表した。

グドールは盗用を認め謝罪している。そして、次のように述べている。

「適切に出典を記載することは私にとっても重要です。問題点について、私は自分のチームと真摯に対応します。私の目標は、この本が出版されるとき、最高の規範レベルであるとともに、お伝えするメッセージも最高レベルであると保証することです」

2013年8月27日、結局、『Seeds of Hope』は盗用箇所が修正された修正版が出版された。

●6.【盗用解析】

グドールの盗用部分を示そう。左がグドールの『Seeds of Hope』で右が被盗用部分である。以下の記事をもとに白楽が盗用比較表を作った。
→ 2013年3月19日のスティーヴン・レビングストン(Steven Levingston)の「Washington Post」記事:Jane Goodall’s ‘Seeds of Hope’ contains borrowed passages without attribution – The Washington Post保存版

以下に4例示す。赤字はまったく同じ単語である。

★Choice Organic Teasのフレーズの盗用
 被盗用文章:Organic, Fair Trade Certified Teas – Organic Tea Gardens – Choice Organic Teas保存版

★Wikipediaのフレーズの盗用
 被盗用文章:John Bartram – Wikipedia

★Trees Sycamoreのフレーズの盗用
 被盗用文章:Zodiac signs Astrology and Plants – Trees Sycamore

★tobacco historyの文章の盗用
 被盗用文章:tobacco history

この本(修正前)は、謝辞に19頁も使っているのに、巻末に「注」や「参考文献」のページがない。それで引用意識が低下し、文献提示をヘマったのかもしれない。

アマゾンのサイトには『Seeds of Hope』は384ページとある(修正版)。

白楽からみると、上記の4例は、引用がなければ、確かに盗用である。しかし、上記で全部なら、4か所なので、384ページのうちの4ページの部分になる。ページあたりの盗用率は1%だ。

ドイツの盗博だと、「178人の内、盗用率の最多は100%でVP74、VP92、VP113の3人がいる。最少はVP39の15.4%だ」(1‐4‐10.ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki))。もう一度書くが、178人もいて、最少が15.4%である

グドールの盗用率が1%なら、盗用・盗用と騒ぐレベルではない気もする。

イヤイヤ、白楽はひどい盗用をたくさん見てきたため、頭がおかしくなっているのであって、ヤハリ、盗用ですね。

「Washington Post」のスティーヴン・レビングストン(Steven Levingston)記者が、ラトガース大学のレナ・ストゥルーベ・植物学教授(Lena Struwe、写真同)に、上に示したグドールの『Seeds of Hope』の盗用例を電子メールで示し、意見を伺った。

ストゥルーベ・植物学教授は、「グドールの『Seeds of Hope』の盗用は、学術的な基準では許容できません。もし、ラトガーズ大学の院生が同じような盗用部分を含むレポートや論文を書いたら、院生の行為は大学事務局に報告され、罰せられ、ことによると退学になります」と答えている。

●7.【白楽の感想】

《1》78歳で初めての盗用?

http://www.biography.com/people/jane-goodall-9542363

ジェーン・グドールは超有名人である。世界中の人々から尊敬を集め、好意を向けられている。そういう人が、78歳で盗用をした。

正確には、出版前の著者で盗用が見つかり、5か月後、盗用部分を修正して、出版した。この場合、「盗用未遂」と言えるかもしれないが、「盗用したけど、修正した」、つまり。盗用はあったと考えよう。

盗用は78歳で初めてしたのだろうか?

とても信じられない。

以下、憶測だが、盗む行為は盗癖と言われるように、多くの場合、盗用も繰り返し行われている。

たくさんの盗用事件を調べてきたが、盗用が発覚したら、それまでのすべての論文や著書に盗用があるかどうか疑って調査するのが王道である。実際、盗用者の過去の論文や著書に多くの盗用が見つかってきている。なぜなら、それがその人の文章スタイルだからだ。

しかし、グドールの他の論文や著書に盗用があったかどうか、調べた話が出てこない。

グドールは超有名人である。そして高齢である。人々は、詮索しないことにしたのだろうか?

グドールは学士号なしで博士号を取得した。博士論文に盗用があった、ということはないのだろうか?

著書リストをみると、135冊もの著書がリストされている。50年間に135冊を執筆したとすると、毎年2.7冊のペースである。多くは科学啓蒙書だが、異常なほどの多作である。他の著書に盗用はないのだろうか?

と、思いもしたが、グドールの著書『Seeds of Hope』での盗用率は1%だった。つまり、99%はオリジナルな文章を書いている。1%なら、盗用する「必要」はなかったハズだ。自分で十分に書けるハズだからだ。

盗用率が50%などの人は、自分で書くのが苦しい人だ。そういう人は他の著作物でも盗用している可能性がある。盗用率が1%程度の人、グドールは、盗用を繰り返し行なっていた可能性はかなり低いだろう。
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●8.【主要情報源】

① ウィキペディア日本語:ジェーン・グドール – Wikipedia
② 2013年3月19日のスティーヴン・レビングストン(Steven Levingston)の「Washington Post」記事:Jane Goodall’s ‘Seeds of Hope’ contains borrowed passages without attribution – The Washington Post保存版
③ 2013年3月23日のヒレル・イタリー(Hillel Italie)の「Associated Press」記事:Jane Goodall apologizes for plagiarizing in new book – CSMonitor.com保存版
④ 2013年3月20日のジョン・スワイン(Jon Swaine)の「Telegraph」記事:Dame Jane Goodall admits parts of book were lifted from online – Telegraph保存版
⑤ 2014年4月1日のマシュー・タイラー(Matthew Taylor)の「Guardian」記事:Jane Goodall blames ‘chaotic note taking’ for plagiarism controversy | Environment | The Guardian保存版
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

http://www.nbcnews.com/feature/maria-shriver/five-defining-moments-one-exceptional-life-jane-goodall-n70471

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