社会学:ベドア・アルシェブリ(Bedoor AlShebli)(アラブ首長国連邦)

2022年1月5日掲載 

ワンポイント:アルシェブリはニューヨーク大学アブダビ校(New York University Abu Dhabi)・助教授である。2020年11月(39歳?)、「女性院生・ポスドクは女性の指導者より男性の指導者を選んだ方が研究者として成功する確率が高い」と結論した「Nature Communications」論文を出版した。男女差別だと直ぐに大ヒンシュクを買った。慌てたネイチャー・コミュニケーションズ誌・編集部は、データ不備などと胡麻化して、大急ぎで論文を撤回した。学術誌が政治的理由で論文出版を、そして科学研究を歪曲した事件である。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。この事件は、2021年ネカト世界ランキングの「1」の「6」に挙げられた。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ベドア・アルシェブリ(Bedoor AlShebli、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0003-1775-5162、写真出典)は、アラブ首長国連邦のニューヨーク大学アブダビ校(New York University Abu Dhabi)・助教授で、専門は社会学(コンピューター社会学)である。

2020年11月(39歳?)、「女性院生・ポスドクは女性の指導者より男性の指導者を選んだ方が研究者として成功する確率が高い」とした「Nature Communications」論文を出版し、直ぐに大ヒンシュクを買い、ネイチャー・コミュニケーションズ誌・編集部は大慌てで対応した。

論文は男女差があると結論したのだが、男女差=男女差別となり、男女差別はタブーなので、データの不備などと胡麻化して、論文を撤回した。

ネイチャー・コミュニケーションズ誌・編集部は撤回公告に弁解の文章を追加したり、社説で説明したりと、異常な対応をした。

つまり、表面的には著者のズサンさのためにデータに不備があり、論文を撤回したことにした。しかし、本当は男女差別と批判され、ネイチャー・コミュニケーションズ誌・編集部が政治的理由で論文出版を、そして科学研究を歪曲した事件である。

この事件は、2021年ネカト世界ランキングの「1」の「6」に挙げられた。

ニューヨーク大学アブダビ校(New York University Abu Dhabi)。写真出典

  • 国:アラブ首長国連邦
  • 成長国:クウェート
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:アラブ首長国連邦のマスダール科学技術大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:仮に1981年1月1日生まれとする。1999年に大学入学した時を18歳とした
  • 現在の年齢:43歳?
  • 分野:社会学
  • 不正論文発表:2020年(39歳?)
  • 発覚年:2020年(39歳?)
  • 発覚時地位:ニューヨーク大学アブダビ校・助教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は多数だが、その1人は、ロックフェラー大学(Rockefeller University)のレズリー・ボッシァル教授(Leslie Vosshall)。論文撤回する「倫理的義務」があると主張して、ネイチャー・コミュニケーションズ誌に公開書簡を送った
  • ステップ2(メディア):「ネイチャー・コミュニケーションズ誌」、「撤回監視(Retraction Watch)」など
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」・編集部
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:大学は調査していない(✖)
  • 問題:表面は著者のズサンとしたが、本当は男女差別と批判され、学術誌が政治的に出版と科学を歪曲
  • 問題論文数:1報
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。学術誌が政治的理由で論文出版を、そして科学研究を歪曲した損害は、ジンワリだが大きい。

●2.【経歴と経過】

主な出典:①:Bedoor AlShebli – NYU Abu Dhabi、②: orcid.org 、③:Bedoor AlShebli_CV_1221

  • 生年月日:仮に1981年1月1日生まれとする。1999年に大学入学した時を18歳とした
  • 1999 – 2002年(18 – 21歳?):クウェートのクウェート大学(Kuwait University)で学士号取得:コンピューターサイエンス
  • 2003 – 2005年(22 – 24歳?):米国のイリノイ大学アーバナシャンペーン校(University of Illinois Urbana-Champaign)で修士号取得:コンピューターサイエンス
  • 2013 – 2017 年(32 – 36歳?):アラブ首長国連邦のマスダール科学技術大学(Masdar Institute of Science and Technology)で研究博士号(PhD)を取得:学際工学
  • 2019年1月1日- 2020年8月31日(38 – 39歳?):アラブ首長国連邦のニューヨーク大学アブダビ校(New York University Abu Dhabi)・ポスドク
  • 2020年9月(39歳?):同大学・助教授
  • 2020年11月(39歳?):直ぐに問題視される「2020年11月のNature Communications」論文を発表
  • 2020年12月(39歳?):上記論文が撤回された
  • 2022年1月4日(41歳?)現在:助教授職を維持:Bedoor AlShebli – NYU Abu Dhabi

●4.【日本語の解説】

★2020年12月07日:鳥居啓子(テキサス大学オースティン校冠教授 名古屋大学客員教授)(朝日新聞・論座):「女性教授が指導すると女性研究者は伸びない?」

出典 → ココ、(保存版) 

ネイチャー姉妹紙のNature Communications(NComms)に11月17日に発表された論文が大炎上している。アラブ首長国連邦にあるニューヨーク大学アブダビ校コンピューター学科から出された論文のタイトルは『キャリア初期の共同研究を介したインフォーマルな研究指導と若手著者の業績との関連(The association between early career informal mentorship in academic collaborations and junior author performance)』。

論文データベースの大規模データを分析し、「若手女性研究者は女性指導者のもとでは成功しづらく、女性指導者は若手男性研究者を指導した方が得をする」と結論づけた論文である。

すでに、超大御所の女性研究者である米国ロックフェラー大学冠教授でハワードヒューズ医学研究所正研究員のレズリー・ボッシァル教授(神経科学)がNComms編集部に論文撤回の勧告を公開文書で送っており、スタンフォード大学冠教授でやはりハワードヒューズ医学研究所正研究員のクリスティーン・ジャコブス-ワグナー教授(微生物学)、同大ジュディス・フリードマン教授(構造生物学・生化学)、同大生物学科長であるマーサ・サイアート教授(細胞生化学)ら女性教授有志が呼びかけた「女性科学者と女性研究者へのサポート」と題した公開嘆願書には、わずか3日で約2000人の教員や博士研究者、大学院生が署名した(筆者も賛同し署名)。

その他、SNSでの大炎上は多数のブログ記事にもつながり、出版わずか2日後にはNComms編集部が『この論文は多数の批判にさらされており、編集部では論文の処遇を検討中』とする異例のコメントを出す事態になった。

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続きは、原典をお読みください。途中から閲覧有料。

★2020年12月07日:Prof. Nemuro(Note):「科学のフェミニズム汚染」

出典 → ココ、(保存版) 

Nature Communicationsに掲載された女の計算社会学者がファーストオーサーの論文が、女の研究者たちを激怒させて撤回を求められている。

・・・中略・・・

批判が激しいのは分析手法や結論の導出があまりにも出鱈目だからではなく、女の指導教員に不利な結論だったからである。

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続きは、原典をお読みください。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★発端

2020年11月(39歳?)、ベドア・アルシェブリ(Bedoor AlShebli)は「2020年11月のNature Communications」論文を発表した。

タイトルを意訳すると、「若手(院生・ポスドクなど)の非公式な学術指導者と論文出版成績の関連」となる。

ここで「非公式な学術指導者(informal mentorship)」は公式な指導教授(formal supervisors)ではなく、研究室の先輩や共同で研究する上級研究者などを指す。言葉が長いので、ここでは、以下、「メンター」と書くが、単純に「指導者」とも書く。

3人の著者の内、最初の2人は若い女性で、その著者らが、この論文で、若手女性は、メンターが女性よりも男性の方がより大きな成功を収めると結論した。

★非難

この論文は、2020年11月中旬にオンラインで公開された直後から大勢の研究者に非難された。

ロックフェラー大学(Rockefeller University)とハワードヒューズ医学研究所(Howard Hughes Medical Institute)の神経生物学者である レズリー・ボッシァル教授(Leslie Vosshall、写真出典)は、論文撤回する「倫理的義務」があると主張して、ネイチャー・コミュニケーションズ誌宛ての公開書簡を書いた。

2022年1月4日現在、その公開書簡はサイトから削除されている。白楽は入手できていないが、公開書簡の内容をまとめると、以下のようだった。

アルシェブリ論文は、若い科学者のキャリアに損害を与えます。

この論文を読んでコメントした何百人もの研究者一般的な理解は、研究方法に大きな欠陥があり、世界の科学界に深刻な害を及ぼす可能性があるということです。

・・・…、女性に指導されることは若い科学者、特に女性の科学者のキャリアに有害であるという著者の結論は、欠陥のある分析に基づいています。「女性のメンター」を避けなさい。そうしないと研究者としてのあなたのキャリアは損なわれます」という論文が発するメッセージは、は貴学術誌によって増幅されています。私は、そのことに非常に落胆しています。

★対応

ネイチャー・コミュニケーションズ誌はツイッターで公開書簡に直接返信し、懸念を提起してくれたボッシァル教授に感謝し、調査が進行中であることを認めた。

2020年11月20日、ネイチャー・コミュニケーションズ誌はソーシャルメディアで声明を発表した。声明を示す前に内容をかいつまむと以下のようだ。

この論文の発表に関して提起された懸念を認識しています。

この問題についてご連絡いただいた方々に感謝いたします。この論文の問題を優先的に調査しております。ネイチャー・コミュニケーションズ誌は、研究における平等と多様性を強く信じ、サポートしています。

2020年11月19日、ネイチャー・コミュニケーションズ誌は論文に編集者のコメントを追加した。 →  Nature Communications

そのコメントは、次のようだ。意訳する。

この論文は批判の対象となっていて、編集者が検討中であることを読者に警告します。論文は、女性指導者の指導の役割を損なう方向で、研究者の指導の成功・不成功にジェンダーが役割を果たす、とデータを解釈しているという批判です。 私たちは提起された懸念を調査しており、これらの問題を解決するよう編集者は対応します。

2020年11月21日、ネイチャー・コミュニケーションズ誌はさらに「研究指導(mentorship)」に関する声明を発表した。 →
Regarding mentorship | Nature Communications (記事を書いたときはあったのに、2022年1月4日現在、削除されていて、リンク切れ)

現在問題視されている「研究指導(mentorship)」に関する論文の発表で、私たちは編集プロセスを振り返り、多様性、公平性、研究への参加を支援するという決意を強めました。

★撤回

2020年12月21日、女性より男性のメンターの方が指導される若手は成功すると主張する論文が発表されてからわずか1か月後、ネイチャー・コミュニケーションズ誌は、批判の嵐の中で論文を撤回した。 → 撤回公告:Retraction Note:| Nature Communications

https://retractionwatch.com/2020/12/21/nature-communications-retracts-much-criticized-paper-on-mentorship/

著者は、読者からの批判に対応する形で、撤回理由を次のように述べ、撤回に同意した。

「私たちの研究発表が個人レベルの苦痛を引き起こし、科学界の多くの人々にそのような多大な反応を引き起こしたことを深く遺憾に思います」。

ただ、ネイチャー・コミュニケーションズ誌は、「個人レベルの苦痛」で論文撤回したという著者の説明はマズいと感じたのだろう。

撤回に伴う社説で、「編集者は、一部の人が不快だと思ったという理由だけで論文を撤回したのではなく、研究方法に深刻な問題があったのです」と著者の意向とは異なる点を強調している。

【問題の具体例】

いくつかは、「7.【白楽の感想】」に記述した。

それ以外だと、ネイチャー・コミュニケーションズ誌は撤回公告で以下のように述べている。 → 撤回公告:Retraction Note:| Nature Communications

ネイチャー・コミュニケーションズ誌が3人の独立した専門家に検討を依頼した。

3人は、論文のアプローチの妥当性と解釈の健全性について、読者からの批判と同じだが、メンターシップの尺度に共著論文を用いるのはおかしい、と批判した。

つまり、共著という状況下での引用バイアスは非公式な指導(informal academic mentorship)に拡張できない。また、メンターシップの質について、この論文では検証していない、と批判した。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2022年1月4日現在、パブメド(PubMed)で、ベドア・アルシェブリ(Bedoor AlShebli)の論文を「Bedoor AlShebli[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2018~2021年の4年間の7論文がヒットした。

アルシェブリの研究分野は社会学なので、パブメド(PubMed)では、全論文を含んでいないと思われる。

2022年1月4日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、本記事で問題にした「2020年11月のNature Communications」論文・1論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2022年1月4日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでベドア・アルシェブリ(Bedoor AlShebli)を「Bedoor AlShebli」で検索すると、本記事で問題にした「2020年11月のNature Communications」論文・1論文が懸念表明後、2020年12月21日に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2022年1月4日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ベドア・アルシェブリ(Bedoor AlShebli)の論文のコメントを「Bedoor AlShebli」で検索すると、本記事で問題にした「2020年11月のNature Communications」論文・1論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》タブー 

人間社会にはタブー視される言動・思考がある。

日本にも日本社会特有のタブー視される言動・思考がある。

学術研究にもタブー視される言動・思考がある。

学術研究は「事実を探求する」のが使命だが、上記のタブーに触れる・侵害する・超えるのは研究者として危険である。

日本国憲法第23条に「学問の自由は、これを保障する」とあるが、早い話し、「学問の自由」はない。

白楽は、日本国憲法第23条「学問の自由」と「学問のタブー」の関係に長いこと違和感を抱いているが、何がタブーなのかを、ここで大胆に議論するわけにはいかない。タブーだからね。

アルシェブリ事件では、ベドア・アルシェブリ(Bedoor AlShebli)が「2020年11月のNature Communications」論文で、「女性院生・ポスドクは女性の指導者より男性の指導者を選んだ方が研究者として成功する確率が高い」とした。

つまり、男女差別である。タブーの1つである。

公式には論文の方法論に問題があると指摘し撤回されたが、主眼は男女差別を問題視しているのは明らかである。

当然、教授クラスの女性は面白くない。批判する。

冷静に考えて、男性と女性の指導を集計した場合、集計する対象にもよるが、何らかの差があることは「事実」だと思う。

その差が「有意」なら、「有意」な点を指摘し、研究指導での男女性差を改善できる方向につなげられる。

しかし、タブーなので、実世界で「有意」かどうかを含め、研究テーマとするのは、危険である。従って、男女性差を改善できる方向にはならない。

白人、アジア人、黒人など人種による知能差の研究など、もっと、危険である。「有意」だとなると・・・。ハイ、危険です。

危険好きなあなたには → 2016年5月20日の橘 玲(たちばな あきら)記事:「知能や気質は、人種ごとに遺伝的な差異がある」言ってはいけない残酷すぎる真実[橘玲の日々刻々] | 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン、保存版

《2》問題点 

ベドア・アルシェブリ(Bedoor AlShebli、写真出典)が「2020年11月のNature Communications」論文で、「女性院生・ポスドクは女性の指導者より男性の指導者を選んだ方が研究者として成功する確率が高い」とした。

つまり、男女差別というタブーに正対した。

しかし、ネイチャー・コミュニケーションズ誌・編集部は男女差別に正対しなかった。蓋をして避けた。

問題を整理してみよう。

2020年12月21日の「撤回監視(Retraction Watch)」記事のコメント欄の最初に、イヴス・ギングラス(Yves Gingras)が指摘していることに白楽は同意する。それで、白楽風に書いてみる。

第1点.

著者は、撤回の理由に、発表した論文内容に不快感を与えたことを深く遺憾に思うと書いている。

白楽が思うに、これはおかしくないか?

イヴス・ギングラスも指摘しているが、論文の社会的結論に単に不快感を覚えるだけで、論文撤回の理由にならないし、してはいけない。

第2点.

ネイチャー・コミュニケーションズ誌は「このような研究は、調査結果に関係するグループを含め、複数の観点から検討すべきだと思う」と述べている。

イヴス・ギングラスは、これも指摘しているが、ネイチャー・コミュニケーションズ誌は「このような研究」とは「どのような研究」なのかを具体的に示していない。

道徳的に紛糾しそうな、つまり、男女差別につながる恐れのある研究を指していると思うが、しかし、どうしてそう明言しないのか?

そして、なぜ「このような研究」だけが、複数の観点から検討しなければならないのか? これはおかしくないか?

第3点.

また、著者は、撤回告知の文章で「論文の主要な調査結果はすべて有効であると信じている」と書いている。

それで論文撤回するなら、どのデータをどう誤って解釈したのか? どの結論を修正したいのか? これも、イヴス・ギングラスが指摘しているが、正誤表を公開して欲しい。

つまり、表面的には著者のズサンとして論文を撤回したが、本当は男女差別と批判され、ネイチャー・コミュニケーションズ誌・編集部が政治的に科学研究を歪曲した事件である。

同様な歪みが、このところ多い気がする。

学術誌は人種・男女の差に関する論文を、科学研究の結果なのに、追放している。これはおかしくないか? → 2020年9月17日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者とアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「Wired」記事:Science Journals Are Purging Racist, Sexist Work. Finally

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●9.【主要情報源】

①2020年11月23日のタニア・レイノルズ(Tania Reynolds)記者の「Quillette」記事: Retracting a Controversial Paper Won’t Help Female Scientists
② 2020年11月20日のシェリル(Cheryl)記者の「We Rep STEM」記事:Nature Communications adds editor’s note, starts investigation into paper suggesting male mentors more impactful than females – We Rep STEM
③ 2020年12月21日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Nature Communications retracts much-criticized paper on mentorship – Retraction Watch
④ 2021年12月21日の「撤回監視(Retraction Watch)」が書いた「Scientist」記事:The Top Retractions of 2021 | The Scientist Magazine®保存版
⑤ 2020年9月17日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者とアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「Wired」記事:Science Journals Are Purging Racist, Sexist Work. Finally
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Yuki Toda
Yuki Toda
2023年8月27日 7:09 AM

こんにちは。私は学者の元愛人で、わいせつ医師・わいせつ教員被害について調べている市民科学者です。
アルシェブリの「女性院生・ポスドクは女性の指導者より男性の指導者を選んだ方が研究者として成功する確率が高い」という論文ですが、理路や妥当性に疑問を持ちました。
教官が男性で、指導される側が女性だと、セクシュアル・ハラスメントが発生すると思います。「俺と寝ないと、指導をしない」等とごねて、性的に服従させると思います。
大学はセクハラの情報をもみ消したがります。大学のブランドに傷がつくからです。
大学で発生しているすべてのセクハラのうち、裁判等になって表に出てきているものは氷山の一角で、潜在している件数(暗数)が多いはずです。ハラスメント相談室で、滞留しているものがあるはずです。
セクハラ被害に遭うと、被害者の学生は大学を退学、休学等します。例えば渡部直己早稲田大学教授からセクハラに遭った被害者の深沢レナさんは、早大をやめています。かれこれ、6年ぐらい、裁判を戦っているはずです。学費を支払ったのに、それはふいになってしまうし、勉強をするはずだった20代の何年間が、裁判に費消されました。
最近私は、2018年に多摩美術大学彫刻学科の学生が大学に提出した「ハラスメント対策をしてください」という申し入れ書を読みました。「私たちは勉強をしたいのに、ハラスメントに声をあげるはめになっています」という趣旨のことが書いてありました。
アルシェブリは、調査対象の中に教官からのセクハラで退学・休学した女性の数は入れているのでしょうか。
学問の自由というのは、「研究不正を含んでいる論文や、理路や妥当性が怪しい論文を軽薄にばらまいていい」というものではないです。研究不正を含んだ論文をばらまかれると、公共の学問が歪みます。
それから、学問の自由とは、自分が所属する職能集団の中で、どうやったら効率よく出世できるか、処世術を研究するために、公共のアカポスや公的研究費を乱用してよいという自由でもありません。大学教員は、納税者の血税でご飯を食べているわけですから、広く国民みんなのためになるような研究をするべきです。
アルシェブリは大学教員で、自分のお給料の出どころは、学生さんが納めた学費と税金でしょう。学生さんの心身の健康を害さない教育を探究し、アカハラで自殺、退学等する学生の総数を減らしたり、広く国民みんなのためになる仕事をするべきだと思います。
白楽さんの記事の論調も、大学の外に住んでいる地域住民の感覚からはずれていると思いました。