1‐5‐8.✖ 日本版・研究公正局の設置:国会動向

以下は2014年7月22日の記事である。2016年12月5日現在「日本版・研究公正局の設置」を提言しない。
理由は、「1‐5‐5.研究ネカトは警察が捜査せよ!」である。
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別章で具体的に示したように、白楽は、「日本政府は政府機関として科学公正委員会 (科学CIA、日本版・研究公正局)を創設すべきである」と主張してきた。

2013年・2014年、国会で日本版・研究公正局の設置が話題になっている。

【研究公正局 (仮称) の設置運動:藤末健三】

2013年・2014年、医薬品開発の不祥事、理研の不祥事が大きく報道された。それで、日本版・研究公正局を作るようにとの動きが、国会にある。

★ 2013年10月15日、参議院:藤末健三(内閣官房内閣審議官)

2013年10月15日の第185回国会(臨時会)で「研究公正局 (仮称) の設置に関する質問主意書」を参議院議長に提出している(引用:質問主意書:参議院)(研究公正局を青字、下線、は白楽)

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第185回国会(臨時会)

質問主意書

質問第七号

研究公正局(仮称)の設置に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。  

平成二十五年十月十五日 藤 末 健 三

参議院議長 山 崎 正 昭 殿

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研究公正局(仮称)の設置に関する質問主意書 

研究費の不正使用や論文ねつ造等への対応を検討してきた文部科学省の「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」が、九月二十六日、再発防止策に関する「中間取りまとめ」を発表した。本取りまとめにおいては、国から研究資金を受け取るに当たって倫理教育の受講を義務づけること、研究者が所属する組織に対して悪質な不正使用には刑事措置も含めた厳正な対処を行う方針を策定するよう促すことのほか、「研究公正局(仮称)」のような第三者監視組織の設置も検討する必要があるとしている。

本件に関し、以下質問する。

一 米国等諸外国における監視・指導のための取組はどのように行われているか。特に、第三者監視組織の設置状況及びその概要について、示されたい。また、それらに対する政府の評価を明らかにされたい。

二 研究における不正行為及び研究費の不正使用に対しては、これまでも様々な取組が行われてきたが、不正事案は後を絶たない状況である。研究者や組織による自律的な対応には限界があることから、国による監視機能の強化に向けた体制整備が必要であると考えるが、研究公正局(仮称)設置の必要性及び設置の意向について、政府の見解を明らかにされたい。

三 研究公正局(仮称)設置に当たっては、その構成員が当該組織の成否の鍵になると考える。構成員には、是非とも法曹関係者を含む法律の専門家や会計の専門家、海外の取組に精通している有識者を入れるべきであると考えるが、望ましい構成員について、政府の見解を明らかにされたい。

四 データねつ造等の不正行為の有無を判断するためには、その分野の専門家である研究者による調査・検証が不可欠である一方、研究公正局(仮称)がより公正な活動を行うためには独立性の確保が重要である。当該組織における研究者の関与の在り方、公正さを担保するための方策について、政府の見解を明らかにされたい。  

 右質問する。

ーーーーーーーーーーーーーー以上引用

10日後の2013年10月25日、上記に対して以下の答弁がされた。(引用:答弁書:参議院)(下線は白楽)

ーーーーーーーーーーーーーー以下引用

第185回国会(臨時会)

答弁書

答弁書第七号

内閣参質一八五第七号
  平成二十五年十月二十五日

内閣総理大臣 安 倍 晋 三   

       参議院議長 山 崎 正 昭 殿

参議院議員藤末健三君提出研究公正局(仮称)の設置に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員藤末健三君提出

研究公正局(仮称)の設置に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの諸外国における研究の不正に関する監視及び指導のための取組について、網羅的には把握していないが、例えば米国においては、保健福祉省に研究公正局を設置し、不正の告発に対して調査をする等の取組を行っていると承知している。文部科学省としては、これらの取組は、それぞれの国における研究開発に関する資金配分の仕組みや不正事例等を踏まえたものであると評価している。

二から四までについて

 御指摘の「研究公正局(仮称)」のような第三者的監視組織の設置については、文部科学省に設置した研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォースの「中間取りまとめ」(平成二十五年九月二十六日公表)において今後の課題の一つとして挙げたものであり、同省としては、諸外国における取組の状況も参考にしつつ、我が国の研究開発に関する資金配分の仕組みや不正事例等を踏まえながら、その要否も含めて検討してまいりたい

ーーーーーーーーーーーーーー以上引用
白楽の感想
う~ん、安倍晋三・内閣総理大臣は、「要否も含めて検討してまいりたい」と答えている。「要否」ではなく、現段階では、どういう組織を作るかということが問題でしょう。文部科学官僚が書いた答弁書なのでしょうが、文部科学官僚は、どういう状況なら、日本版・研究公正局を作ろうと思うのだろうか?

【研究公正局 (仮称) の設置:国会の質疑、2014年4月3日】

国会会議録検索システムのサイトで、「研究公正局」を検索した。

★ 2014年4月3日、衆議院:内閣委員会厚生労働委員
[002/002] 186 – 衆 – 内閣委員会厚生労働委員… – 1号
平成26年04月03日

2015年4月発足の独立行政法人・日本医療研究開発機構(参考資料)の中に「研究公正局」を設置する案が検討されている。関連部分のみ抜粋する。
(研究公正局を青字、下線、は白楽)

ーーーーーーーーーーーーーー以下引用
中垣政府参考人(中垣英明、内閣官房内閣審議官)
今、委員が御引用されました、日本学術会議の提言の中で引用されています米国の研究公正局というものは、連邦保健福祉省の公衆衛生庁の一部局として、同局が配分する研究費により実施される研究についての研究不正対策を担っている部局ということで承知いたしております。

また、この研究公正局による調査は、研究不正の申し立てを端緒といたしまして、第一義的には、研究不正を行ったとされる研究者の所属機関が行う調査活動のチェックを基本とし、重大な事案等に限りまして研究公正局みずからが調査を行うものと聞いております。

今回提案させていただいております日本医療研究開発機構におきましても、みずからが配分する研究費によりまして実施される研究に対しましては、専門の部署を置いて、公正かつ適正な実施の確保を図ってまいりたいと考えておるところでございます。

近藤(洋)委員 (近藤洋介、民主党所属の衆議院議員(4期)、1965年生まれ)
現時点では考えていないけれども、法律の枠組み上はできる、こういうことでよろしゅうございますでしょうか。

菅国務大臣
今、政府委員から申し上げましたけれども、みずからの配分する研究費については、専門部署をしっかりつくらせてもらいたいというふうに思います。

長妻委員長妻昭、民主党所属の衆議院議員(5期)、1960年生まれ)
先ほど近藤理事も質問されていましたけれども、不正防止でありまして、科学技術振興機構という独法、今回もその独法から移籍をされますけれども、そこが調査をすると、一九七七年から二〇一二年まで不正と見られる百十四件の研究を調査すると、盗用が六割ぐらい、捏造、改ざんが三割ぐらい、こういう不正があります。配付資料にもございます。

そして、学術会議の提言も、先ほど近藤理事がおっしゃいましたけれども、今議論している独法の中にアメリカの研究公正局の機能を想定した部門をつくって、厳しくいろいろ研究論文をチェックすべきだ、研究不正の監視及び防止に役立たせるべきだ、こういう提言もございます。

そして、今回議論している推進法の十二条にも、「医療分野の研究開発の公正かつ適正な実施の確保に必要な施策を講ずるものとする。」と条文もあるんですね。

ぜひ不正防止についてもこの独法がかなり中心的な役割を持つべきだと思うんですけれども、それが実はないわけでございまして、これから議論するということであります。

長妻委員
今回の議論をしている独法の中で、基礎研究と臨床研究の橋渡し機能が私は弱いと思いますので、今の理事長のお話もありますから、連携の機能を強化していただきたいというのと、あとは、アメリカにあるような研究公正局、研究をチェックする機能をきちっとやはり持たせていただきたいということを強くお願いしたいと思います。
ーーーーーーーーーーーーーー以上引用

白楽の感想
民主党議員が、日本版NIH、つまり、日本医療研究開発機構の中に「研究公正局」を作れとの意見だ。政府は、煮え切らない。白楽は、内閣府の外局として、公正取引委員会と同列の組織にすべきだと考える。日本医療研究開発機構の中に作るのは反対だ。機能が矮小すぎて、組織が形骸化する。

【研究公正局 (仮称) の設置:国会の質疑、2014年4月4日】

★ 2014年4月4日、衆議院:内閣委員会厚生労働委員
[001/002] 186 – 衆 – 内閣委員会 – 10号
平成26年04月04日

「研究公正局」に関連する部分のみ抜粋。
(研究公正局とORIを青字、下線、は白楽)

★ 2014年4月4日、衆議院:大隅典子参考人(東北大学大学院医学系研究科教授)
[001/002] 186 – 衆 – 内閣委員会 – 10号
平成26年04月04日
ーーーーーーーーーーーーーー以下引用
近藤(洋)委員

ありがとうございます。

続いて、四名の参考人の皆様にお伺いをしたいと思うんです。

大隅先生から御提言されておりましたけれども、いわゆる研究不正への対応の点をおっしゃっておりました。

この研究不正への対応、なかなか大変難しいことだろう、これで対応できるということではないとは思うわけであります。しかも、基礎の研究の不正の部分から、さらには、最近、きのうも委員会でちょっと質問させていただいたんですが、ノバルティスファーマですか、事件というんでしょうか、大学の臨床、大学病院、大学の研究機関を巻き込んだ、臨床研究における不正等々、さまざまな段階で起きている、こういうことだと思うんです。

この対応について、一つは、学術会議が三月二十四日に提言をされておって、国による臨床研究部門、しっかり関与すべきである、こういう提言。とりわけ、現在構想中の新しい独法で、一部門として、研究不正の監視及び防止の機能を持たせることもあっていいのではないかということも提言をされております。

そのことも含めて、この新独法にそういった役割を持たせるというのはどのようにお考えかということも含めて、また、現在、厚生労働省において、これも臨床研究、薬事法以外の部分について、法的な措置もどうするということを検討されているということであります。ここも、余り厳しくしてしまうと、逆に問題もある。

いろいろな論点があろうかと思いますが、なかなか簡単にこの研究不正の対応は一言でお答えしにくいかとは思いますけれども、この二点、ほかにも何か御提言があれば、それぞれ御回答をいただければ、御発言をいただければと思います。

大隅参考人 (大隅典子、東北大学大学院医学系研究科教授)
ありがとうございます。

私自身、提言といいますか、紙の中にも書かせていただきました研究不正の問題は、科学者コミュニティーの信頼を失わせることとして非常に苦慮しております。

先ほど申しましたけれども、研究費に関してどのように不正を防ぐか、こちらの仕組みの方はかなり整ったのではないかというふうに感じておりますが、いわゆる論文を出すときの不正、こちらの対応というのがおくれていると思います。

米国の例で申しますと、一九八〇年代からこういった論文不正が問題になりまして、アメリカのNIHの上の方、HHSの方ですけれども、そちらの中に研究公正局というものができました。その研究公正局は何を所掌しているかというと、大きく分けてまず二つありまして、一つは調査ですね。何か不正が起きたときに、どのようにそれが起きてしまったのか、どれがどのぐらい悪いのかということを調査するような部門。それからもう一つは、それを未然に防ぐためにはどのようにしたらよいかということで、これは教育でありますとかいろいろな啓発活動、こういったことを所掌する。この二つがありました。

ところが、ごく最近ですけれども、このORIの一番トップの方がおやめになりました。それはどういうことかといいますと、現在、アメリカでこれまで行われてきたORIの仕組みというのが、残念ながらやはりうまくはいかなかった。特に最初の方の調査のところというのが、これはなかなか、やはり個人の保護、人権の保護、いろいろな問題がありまして、所属機関などで行う調査以上に踏み込んだことというのが実際には難しいということがあると思われます。

結局、ORIの方は今何を中心としているかといいますと、教育などを行って、どのようにして研究不正を防ぐか、何がしていいことなのか悪いことなのか、そういったことをEラーニングやいろいろなセミナーを開催するなどによって行っています。実際、例えばファンディングエージェンシーとしてのNIH、すなわち、イントラミューラルではなくて外部の方に配る方の、エクストラミューラルなどの研究費を配った場合には、そこの研究機関においてちゃんとセミナーを行うとかそういったことが行われています。

ですので、新独法の中でそういったことを扱うということであるとすれば、そのような研究費を配分した先におけるセミナー、あるいは来ていただいてということでもあるかもしれませんけれども、研究不正を防ぐようなことを中心としてそれを行っていただくのがいいかなと、個人的にはそういうふうに思います。

竹中参考人 (竹中登一、公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団会長)

製薬企業等におきましては、薬をつくるときに、一番の初めの情報源は論文でございます。したがいまして、私どもは、非常に革新的な論文を読んで、これから薬ができると思いますと、その実験をまず追試します。

実は、先ほど私、例に出しましたバイエルヘルスケアとか、アメリカのバイオテックの大きなアムジェンがネイチャーに数年前に発表しているんですが、彼らが追試をした結果、再現性があったのは残念ながら三〇%ぐらいだったというんです。これは、再現性がなかったから不正とかそういうことじゃなくて、いろいろな実験条件とかそれがきちっとできなかったことにもよるかもしれませんが、そういうことがありました。

実は、そういうことを企業等では自分の研究に使うときには、当然でございますが、必ず追試をしているわけですが、例えば、それをせずに、そのコンセプトが非常にすばらしいということから、その誤った、不正のある発想をもとにしてまた次の研究をすれば、実はそれは無駄になるわけでございまして、本当にそれは防ぎたいということで、実は、この新独法のところの専門委員をさせていただきましたときに、議事録をお読みいただくと出ておると思いますが、私も、この不正に関する調査といいますか、そういう監査委員会というのを設けてほしいということをお願いしております。

山中参考人 (山中伸弥、京都大学iPS細胞研究所所長・教授)      

研究不正を予防する一つの重要な方法は、日ごろの研究記録をきちっと残すことだと思います。そのためには、単純なことでありますが、ノートの記録が非常に大切です。

私たちは、十年くらい前から、ノートのつけ方ということを、学生さんを含めて全員に、少なくとも年に一回は指導しています。もともとはそれは、研究不正ということではなくて、アメリカの先発明主義に対抗するために、先に出願しても、アメリカの人が、いや、私たちの方が先に発明していましたと言われたら負けてしまいますので、それに対抗する唯一の方法がノートであるということで、そのノートのつけ方。

例えば、ルーズリーフはだめだとか、鉛筆はだめだとか、消した場合に、変更はホワイトで消してはだめで、ペケをして、何が書いてあったかわかるようにしなさいとか、もちろん日付は年まで含めてちゃんと書きなさい、そして、一番大切なのは、定期的にそれを第三者がチェックしてサイン、第三者のサインをもらいなさいと。これをずっと続けてきました。

昨年、一昨年、忘れましたが、アメリカが先願主義に変わりましたので、特許上の意味からはそこまでノートをつける必要はなくなったんですが、それが同時に、研究不正を防ぐ物すごくいい方法だということに気がつきまして、その後もそれはずっと続けています。

ですから、今後、研究不正をこの新しい機構のもとで防ぐ一つの方法は、この機構からもらったお金で研究をする場合は、そういったノートのチェックを徹底させる。私たちもチェックしています。誰々は出していませんという報告が定期的に来ます。僕たちは、出さない人は不正をしているとみなしますと言明しています。それぐらいしないと、やはり、きちっと書けない人はどうしてもいますし、また、書いていても、ちょっとしかないとか、やたら汚いとかいう人は指導しています。見られるということで、しっかり書くようになっています。非常に大きな効果がありますので。

ただ、それをチェックする方は大変なんですね。莫大な、うちだけで三百人近い者が研究室におりますので、それをチェックする人をちゃんと雇用する必要がありますから、だから、やはりこの機構の中ではそういうチェックをする支援員の方の雇用まで含めて、きちっとした対応、やはり予防というのが一番いいことだと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。
ーーーーーーーーーーーーーー以上引用

【白楽の感想】

《1》 「研究ノート」

山中伸弥の「研究ノート」必須論にとても共感する。不正研究の「ねつ造」「改ざん」はこれで防げる。ただ、白楽の経験では、「研究ノート」に研究記録をつけるようにと、学生・院生に具体的に指示したが、できない学生・院生はかなりいた。その場合、データ信頼性に欠けるので、学外研究発表や論文発表をさせていない。

日本の全研究室に研究室共用の「電子研究ノート」を義務化すべきだろう。研究室員のみアクセスできるが、アクセス権限の制限、編集権限など、「改ざん」防止の工夫もする。例:轟眞市の「ブログを基にした実験ノート: 個人の研究活動を効率化する情報環境」、化学向けの「E-Notebook」。

《2》 「再現不能」

竹中登一が、「アメリカのバイオテックの大きなアムジェンがネイチャーに数年前に発表しているんですが、彼らが追試をした結果、再現性があったのは残念ながら三〇%ぐらいだった」と述べている。

出典は以下の論文であるが、再現不能がこんなに高いのは、科学論文として非常にマズイ。「再現不能」結果を論文発表した場合、不正研究とみなすなど、何らかの管理や対策が必要だ。

Meredith Wadman(2013年7月31日):「NIH mulls rules for validating key results」 : Nature News & Comment、Nature 500, 14–16 (01 August 2013) doi:10.1038/500014a

再現性は、「出版後論文議論(post publication peer-review)」の重要な要素である。パブメド・コモンズ(PubMed Commons)などで、「再現できた」「再現できなかった」という情報を投稿してもらうのはどうだろう。有効な気がする。